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ペットを買おう

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第五章

「これからまた会いたいけれどいいかしら」
「これからもですか」
「携帯のメール教えて欲しい?」
 やや受身になっての言葉だった、ここは。
「貴方さえよかったらね」
「あの、教えてくれるんですか」
「ええ、いいわよ」
 くすりと笑ってだ、蜜は有一に答えた。
「貴方がまた私と会いたいのならね」
「お願いします」
 昨夜のことがまだ頭の中を支配している、その有一にこれ以外の返事はなかった。考えられることなぞ出来なかった。
「それじゃあ」
「わかったわ、それじゃあね」
「はい、お願いします」
 是非にと言う彼だった。
「じゃあこれからも」
「会いましょう」
「はい」
 目を輝かせて言う有一だった、そして。
 有一と共にシャワーを浴びてだ、蜜は朝の日差しの中で仕事に向かう服を着てだ。そうして出勤してだった。
 働き有一と会いだ、それが暫く続き。
 何時しか有一を自分の部屋に入れて同棲する様になっていた、そして遂に。
 有一はまだ学生であるがその彼とだ、お互いの両親の同意までこぎつけたうえで結婚した。その彼女にだった。 
 同僚達は驚きを隠せない顔でだ、彼女を囲んで言うのだった。
「おめでとうって言うべきだけれど」
「それでもね」
「何て言うべきかしら」
「ちょっとね」
「びっくりしてるわ」
 こう言うのだった、結婚が決まった彼女に職場の中で。
「蜜が結婚って」
「まあ年齢的にはね」
 三十に達している、所謂アラサーでそうした年齢ではある、はっきり言えばかなり焦る年頃になっている。
「私達もだけれど」
「それでも相手はね」
「まさか二十歳の大学生って」
「物凄い年下じゃない」
「そんな子をどうしてゲットしたのよ」
「凄いことになってるけれど」
「ペットをね」
 ここでだ、笑って言う蜜だった。
「貰ったのよ」
「ペット?」
「ペットをなの」
「ええ、飼ってね」
 そうしてというのだ。
「そうしてなのよ」
「まさかって思うけれど」
「旦那さんってまさか」
「かなり年下だけれど」
「ひょっとしなくても」
「そうよ、ペットでもあるのよ」
 蜜は笑顔で同僚に話した。
「皆ペットを飼ってみたらって言ったじゃない」
「ええ、前にね」
「確かにそう勧めたわ」
「一人暮らしって寂しいからね」
「ペットがいると違うからね」
 このことは彼女達も認めた。
「それでね」
「そうあんたに言ったわ」
「ペットもどうかってね」
「言ったわよ」
「それで考えたのよ」
 それからだというのだ。
「ペットを飼うのならね」
「旦那様をなの」
「それも年下の」
「そう、そうしたの」
 こう言うのだった。 
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