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セイレーンの意地

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第三章

「そして必死だった」
「意地です」
 オルフェウスはいぶかしむ仲間達に答えた。
「意地がありましたので」
「意地か」
「意地の為なのか」
「私もそうでしたが彼女達もです」
 そのセイレーン達もだというのだ。
「自分達の歌に絶対の自信がありましたので」
「その為か」
「必死になってか」
「私と戦ったのです」
 オルフェウス、彼というのだ。
「命を駆けて」
「そして君もまたか」
「そうしたのだな」
「命を賭けていました」
 実際にそうだと答えるオルフェウスだった。
「正直あと少しで」
「倒れていたのか君か」
「そうなっていたか」
「危ういところでした、しかし」
 それでもだというのだ。
「私は勝ちました」
「よくやってくれた」
「お陰で助かった」
 英雄達はオルフェウスに言った。
「本当にな」
「危機を乗り越えられた」
「君のお陰で」
「その通りだ、今回は君の功績だ」
 イアソンも彼に言うのだった、再び。
「その命懸けの戦いでな、しかし」
「しかし、ですね」
「セイレーン達は怪物だがそれでもな」
 それでもだというのだ。
「意地があるのだな」
「そうです、彼女達にも心がありますから」
「それでだな」
「そして誇りがありますから」
 それ故にというのだ。
「あそこまで、です」
「必死に戦ったのだな」
「そうしました、歌に絶対の自信があるからこそ」
「君に戦いを挑みか」
「はい、誇りと意地を賭けてです」
「君と戦ったのだな」
「そうでした」
 オルフェウスはこうイアソンに答えた、そしてだった。
 その後の話でだ、彼はこうも言った。
「彼等にも心があるのです」
「怪物にもか」
 イアソンはオルフェウスの言葉に深く頷くことになった、それはテーセウスも他の英雄達もだ。そのうえでセイレーン達がいた島の方を見た、もう島は見えなくなっていてだ。そこには海が深い青をたたえて波を見せていた。


セイレーンの意地   完


                           2014・8・23 
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