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SAO ––TS少女のデスゲーム攻略

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第1話

すっごい疲れた……。

俺が病院に入院している間、たくさんの人がお見舞いに来てくれた。

病室に入ってきた時には今にも卒倒しそうな顔をしていたが、俺が無事だとわかると、

「心配かけないでよ……」

と言いながら優しく抱きしめてくれた友人(無論女の子だ)。

俺の顔を見るなり説教し始めたが、何処かホッとした表情が浮かんでいる担任の先生。

大泣きしながら病室に飛び込んできて、物凄い力で俺を抱きしめてきた父。

そして、俺の顔を見ると

「ったく。何やってんだよ……」

と言い、そっぽを向く実の弟。……弟よ、そんな事言いつつも目が涙でうるんでいるの、お姉ちゃんは気づいているぞ。

他にも何人かの人が来てくれたのだが、如何せん俺は人の顔を覚えるのが苦手で、誰なのかさえわからない。年齢的に多分同じ学校の生徒だろう。……なかには、顔を真っ赤にして、カタコト口調で喋る男子もいたが。そんな状態なら俺の容体よりも、自分の心配をしろっての。

いや、見舞いに来てくれたことについてはとても嬉しいことなのだが、何が大変かというと、来た人全員の前で、女の子を演じるということだ。本来の自分を隠し続けるということは、思った以上にストレスが溜まるらしい。

今は無事に退院して、学校に通い始めているのが、女の子で生活しなければいけないことに変わりはない。むしろ逆に、人と接する機会が増えたので、疲れが増幅するばかりだ。

俺は学校から帰ってくると、すぐに鞄を放り投げ、ベッドに倒れ込む。そして、

「はぁーーー……」

と、盛大な溜息をついた。

この体で暮らして12年程になる。だが、前世の記憶が戻ってからずっと、自分の体が自分の物ではないような違和感を感じているのだ。実際、記憶が戻って始めて風呂に入った時、他人の風呂を覗いているみたいで凄く妙な気分になった。

俺はのっそりと起き上がり、ほぼ無意識に自分のパソコンを立ち上げ、インターネットに接続した。今まではあまり使わないものだったが、病院から退院してからは、かなり頻繁に使っている。(恐らく、前世の記憶の影響だろう)

さて、何を調べようか……とあれこれ考えていると、

「……ん?」

一つの広告が、俺の目に留まった。

『世界初のVRMMO ソードアート・オンライン βテスター募集中!』

––––––– 「VR」?それって確か、マシンによって作り出された仮想空間のことだっけ?そういえば、前にテレビで「完全な仮想空間が完成した」とかどうとか言ってたような……。

とはいったものの、ついこの間まで普通の女の子をやっていた俺にとって、この話題はあまり興味が無かった。なので、VR技術について、詳しいことはよく知らないのだ。

だが今の、男の記憶と人格を持った俺は、この広告に興味津々だった。

「VRMMO? ……MMOを仮想空間でプレイするってことか?……どういう意味だ……?」

MMOというジャンルのゲームは、前世で何度もプレイしたことがある。それが「VR」になったというのは、一体どういうことなのだろう–––––––––。

まずは、VR技術について調べるとしよう。



***


俺のテンションは今、最高潮へ達している。

パソコン上の広告で《VRMMO》の存在を知った俺は、VR技術について、事細かに調べた。

––––––まず、VRというのは「Virtual Reality(仮想現実)」のこと。ここまでは俺も知っていたのだが、半年前、それを完全に実現したゲームハードが、天才学者「茅場晶彦」が所属する電気機器メーカー《アーガス》から発売された。

それが、《ナーヴギア》だ。

このマシンを使うことにより、人の脳を仮想空間に接続することができる。これを《完全(フル)ダイブ》と呼ぶらしい。

だが、ナーヴギアが発売された当初は肝心なソフトの方が、パズルや知育など、ぱっとしないものばかりだったそうだ。せっかくの完全ダイブ技術を、全く生かし切れていない。当然、コアゲーマー達は、不満を募らせる一方だった。

そんな中、ナーヴギアの基礎設計者である茅場晶彦によって、つい先日発表されたのが、世界初のVRMMORPG、《ソードアート・オンライン》だ。

俺も、「当たったらラッキーだろう」ぐらいの気持ちで、SAOのベータテスターに応募してみたのだが、まさか、本当に当選するとは……。知らせが届いた時、本当に心臓が止まりそうだったぞ。

そんなわけで俺は急遽、必要なハードを揃えることにした。まあそのおかげで、今までコツコツ貯めてきたお金の大半が消えたけど。

ちなみに、俺が買ったナーヴギアを見た母が、

「あら、美雪ってこんなのに興味があったの?意外ねぇ……」

と、やたらニヤニヤしながら言ってきた。そういえば俺、今まで物を欲しがったことって殆ど無いな……。俺が自分の意思で買ったものといえば、本ぐらいだろうし……。きっと、俺が何かに興味を持ったって事が嬉しいのだろう。

「それにしても美雪に、こんな男の子みたいな趣味があったとはねぇ……」

……そりゃあ、今の俺は中身が男だからなぁ。

色々考えているうちに、ナーヴギアを起動する準備が完了した。これを頭に被れば、俺は仮想空間に行けるのか…… 時代も進歩したなぁ。前世の俺の時代では、タッチスクリーンでゲームが操作できるってだけで、凄い凄いって騒がれてたのだから。

キャリブレーションやらID、パスワードの作成をさっさと済ませると、俺が物凄く楽しみにしていた、『キャラクターメイキング』が始まった。



アバター––––––つまり、ゲーム内での自分の分身となるキャラクターを作成する作業なのだが、俺が注目していたところは、自分でアバターの性別を選べるというところだ。つまり、現実が男でも「女」アバターを使うことができるし、その逆、現実が女でも「男」のアバターを使うことが可能なのだ。

俺は、迷わず「男」のアバターを選択した。

現実世界では女の子の演技をするのに相当疲れていたのだ。せめて仮想空間の中だけでも「男」として振る舞ったっていいだろ!ネナベ?そんな事知ったこっちゃない。俺の人格は今は男だ!文句あるか!?

そこから2、3時間はキャラクターメイキングに没頭していた。それだけ、アバターにはこだわりがあるのだ。

俺が作成したアバターは、前世の俺の姿とほぼ同じものだ。
––––––小顔で、やや釣り上がった目。縮れた黒髪。やんちゃな男の子のようで、何処か可愛らしさを含んだ顔。

俺は、懐かしい顔を見て込み上げてきたものをぐっと抑えた。でも、こうして前世の自分の顔を客観的に見ると、結構整っている気がするんだけどなぁ。何で彼女いない歴が年齢と一緒だったんでしょうねぇ……。あれか、やっぱり男は顔じゃないってことなのかね……。

まあ、その件に関しては今は置いとくとして、俺は早くこのアバターを使いたくて仕方がないのだ。プレイヤーネームを、「Hayato」と入力し、(ハヤトとは、前世の俺の名前だ)目の前に表示されていた「OK」ボタンを押した。

その瞬間、俺の視界は暗闇に包まれる。やがて、目の前に虹色のリングが見え、気がついた時には、俺の足は地面に着いていた。

俺はゆっくりと目を開く。そこには、見慣れた家の天井とは違う、それこそ別世界が広がっていた。

「ここが、仮想世界なのか……?」

自分の髪に触れてみた。前世ではよく気にして触っていた、縮れ毛の感触だ。現実世界とはやはり少し異なるが、かなりリアルに再現されている。

自分の顔に触れた。目、鼻、耳、口……全てのパーツが俺の望み通りの形をしている。

自分の胸辺りに触れた。そこには当然、女の子の特徴である2つの膨らみはなく、代わりにガッチリとした胸板があった。

––––––––俺の体は今、完璧と言っていいほど、前世のものにそっくりになっていた。

「っっしゃああぁあ!!!」

この時をどれほど待ち望んでいたことか……。

俺は、周りに他のプレイヤーが居ることさえ忘れて、大声で叫んだ。
 
 

 
後書き
相変わらず文章が薄っぺらい……。

一生懸命作ったアバターは、果たしてどうなってしまうのでしょう……w 
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