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世界聖戦 絶域攻魔の栄光

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第九話 新しい仲間

 
前書き
今回も颯君は間桐と表記します。 

 
潮風香るマリアナ諸島沖の空母の甲板の上で間桐は夕焼けの海を眺める。
「颯くーん、あの時敵の攻魔の手応えはどうだったの?」
上官の間桐に向ってタメ口を聞くのは寺嶋香織(テラシマ カオリ)上等攻魔曹だ。
「おい、香織。間桐大尉は特別精鋭飛空攻魔隊長だぞ!先の防空戦で大尉に昇格された。上官には敬語を使え」
タメ口を注意するのは香織の兄の寺嶋進(テラシマ ススム)上等攻魔曹だ。
「えー、まだ14歳だよー?それに可愛い顔してるし〜」
攻魔士は通常、高校三年生で全寮制訓練期間が終了する。つまり実戦レベルの攻魔士ならば最年少でも18歳。
しかしそれでもまだ養成期間などがある為、この場の間桐以外の全員は21歳以上だ。
「進さんの言う通りだよ、香織ちゃん。隊長は見た目は幼いけど大尉なんだから。気を付けないと」
進と同じく香織に対して注意するのは実崎美乃梨(サンザキ ミノリ)上等攻魔曹だ。
「幼くて悪かったですね、中学生はタバコも吸ったこともなければ酒も飲んだことがありませんし。やはりこんな子供が踏ん反り返って威張ってるのが癪に障りますかね?山本副隊長殿?」
間桐はこの部隊最年長である副隊長の山本忠(ヤマモト タダシ)少尉に問いかける。
「い、いえ!断じてそんな事は無いかと。確かに隊長は外見に少々幼さを感じますがしっかりしておりますし。それに実戦経験者でもあります。年齢問わず能力のある者が上に立つ、それは近頃の軍の常かと」
「あぁ、そう思ってくれるなら結構ですが。でも僕の幼さは拭えないか…」
山本の言葉に間桐は苦笑する。
「ガチガチの敬語は僕もあまり好きじゃありません。無理にとは言いませんが公式の場では型にはまった言葉遣いで頼みます。分かってるとは思いますが僕の指示には従って下さいよ?」
「もちろんですよー、間桐大尉ー。ちょっと可愛いからちょっとついー、ね?」
「……もう香織上等攻魔曹はそれで良いです」
間桐は深くため息つく。
「先ほどの質問に答えるます。敵のミサイルの攻魔力は確かに強力でした。しかしあちこちで攻魔が消散していたため完全体ではないでしょう。それにあれ程の大きさがあればもう少し強力な攻魔が搭載出来たはずです。敵の攻魔自体の技術は我が国の2070年当時程の物だと思われます」
「成る程、じゃあ私達には約30年分の優位があるのね。それにしてもどうして盗まれちゃったものかしら?」
香織は首を傾げる。
「おそらく米露の諜報員によって持ち出されたんだろうな。民間にまで出回ってしまっては秘匿しても限界がある。絶域攻魔重火器の優位性はもうすぐなくなるだろう。つまり我々攻魔士や絶域士達が鍵となるわけだ」
進は悠々と答える。
「そうですね、通常兵器などに絶域攻魔を搭載しただけの絶域攻魔重火器は原理させ分かってしまえば比較的単純ですし。それに比べて人間に搭載した絶域、攻魔両士は至極複雑。搭載出来たとしても長期間の訓練が必要となります。それこそ幼少期から訓練して完全体、それの戦力は桁違いです」
実崎も同調する。
「それは事実だが、あまり自分の力を過信するのはよくない。戦争が長引けば敵も絶域、攻魔両士を投入してくることも考えられる」
山本が釘を刺した。
「まあ皆さん、一時間後の作戦の事だけ考えましょう。米露太平洋艦隊の総戦力は空母52隻、攻撃ミサイル巡洋艦98隻、護衛イージス艦123隻、フリゲート艦無数、軍事輸送艦艇約400隻という規格外の数です。おそらく絶域攻魔が伴うでしょう。対する我々は空母4隻、攻撃ミサイル巡洋艦12隻、護衛イージス艦24隻といったところです。数は極めて少数ですがいずれも我が国の科学技術が詰まった生粋の艦艇です。米露と戦力的に比較すればそう大差は無いと思います。しかし数で攻める物量作戦を敢行されたら我が艦隊も相当な被害を被る事になりかねない」
「今回の海戦には特別精鋭飛空攻魔隊が不可欠ってわけね」
香織は得意げだ。
「その通りです。我々は少数精鋭の単独で敵艦隊に突っ込みます。まず敵艦艇の絶域を粗方破壊。その直後に味方の巡航ミサイルが飛来し打撃を与えます。その後に…進上等攻魔曹何かあるならどうぞ」
そう言われると進は立ち上がる。
「申し訳ありません。一つ質問があります。我々がわざわざ絶域を破壊しなくても攻魔ミサイルは敵の絶域を突破出来るのではないでしょうか?」
皆も進と同じ事を思っている様子だ。
「そのことなんですが…防空戦の時敵ミサイルの攻魔完全体ではありませんでした。しかし我が国とは全く異質の長所があったと思います。それは敵の攻魔は対絶域に特化したものだったのです」
「それはつまり…我が国は敵が絶域、攻魔の行使を想定していなかった為、敵艦艇の絶域の突破は困難を極めると?」
「はい、力押しで突破は出来るでしょう。しかし突破に攻魔力を相当量消費する為、攻魔の破壊力はかなり弱まってしまいます。我々の兵器のほとんどはもはや火薬を使わず攻魔に頼っています。今回使用される攻魔ミサイルは超高熱エネルギーで目標艦艇を蒸発される類いです。破壊力は通常兵器以下になるでしょう。現在、効率良く絶域を突破し敵に打撃を与える事が可能な『対絶域攻魔ミサイル』の開発が急ピッチに進められています。しかしそれが戦線に投入されるまでは我々の任務が不可欠です」
『成る程』
一同は間桐の説明に頷く。
「理解いただけなら幸いです。ここからが本題です。攻撃目標の敵艦隊は日本本土に向い北上中ですが現在はソロモン諸島沖に存在します」
「えー!?ソロモン諸島!?ここから1000km以上軽くあるじゃないの」
間桐の説明に香織が目を丸くして口を挟む。
しかし山本は何かに気づいた様子だ。
「あぁ!成る程!敵も我々がここまで離れた所から攻撃を加えてくるとは思わない。今回は奇襲をかけるということですか」
作戦の本質を理解した山本は感心した様子だ。
「え?でも私達颯君みたいにそんな長く飛べないよ?」
香織は首を傾げる。
「香織上等攻魔曹、我々は航空機とは違い滑走路を必要としない飛空攻魔士です」
香織をはっと何かに気づいた様子だ。
「その様子だとお気づきになられたと思います。我々は数島の無人島を経由して敵艦隊に奇襲を仕掛けます。ミサイルの襲来に敵艦隊が撹乱しているうちに我々は戦場を離脱。我々の任務は以上です。あくまでこれは机上の策です。実戦ではいかなる場合に対処出来るよう心構えをお願いします」
間桐の言葉に一同は深く頷く。
「ではもう直ぐ出発しましょう。各員準備を整えて下さい」
世界聖戦が始まって二ヶ月。米露軍はオーストラリアを拠点に太平洋を北進し日本への侵攻を開始した。
それを迎え撃つべく大日本帝国の精鋭である総括軍は『大日本帝国総括軍機動艦隊』を派遣した。
御堂統(ミドウ ミツル)艦隊司令長官は五人を激励する。
「各員一層奮起努力、任務を達成されたし!お前達の活躍を期待している!武運を!」
『は!』
御堂は敬礼をし間桐達も敬礼を返す。
「皆さん、コマンド詠唱を。」
五人はコマンド詠唱を開始する。
「絶域、攻魔、攻魔特殊能力A(加速).C(高速飛行)を解放。攻魔刀、攻魔衝波ブラスター、戦闘服を粒子形成。コンタクトスタート」
間桐は詠唱を終えるのと同時に皆も詠唱を修了する。
「さあ、行きましょう」
間桐は甲板を蹴り凄まじい加速で上昇した。他の隊員達もそれに続く。
五人の編隊は夕焼けの空に消えた。 
 

 
後書き
あれれ、遥華ちゃんは?と思った方もいるかもしれません。遥華についてはいつか別の機会に書こうと思っております。別の戦場にいると思って頂ければ幸いです。アクセスしていただいた貴方に最大の感謝を!ありがとうございました。 
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