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逆説ロミオとジュリエット

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7部分:第七章


第七章

「それでいいな」
「・・・・・・わかりました」
 ジュリエットもまた一人にさせられた。そのうえで想いを募らせる。するとだ。彼女もまたその想いを抑えられなくなってしまったのだった。
「私は。あの方を」
 許されないとわかれば余計にだった。彼女もまたそうなった。それから暫くは両家の争いはなかった。しかしある日のことである。
 ロミオはヴェローナの街を歩いていた。家臣達が一緒である。
 その彼等にだ。ロミオは問うた。
「いいのかい?街を歩いて」
「カプレーティ家の者達ですか」
「あの者達のことですね」
「うん、会うんじゃないのかな」
 このことを危惧して話すのであった。
「そうなったらその時は」
「その時はその時です」
「斬り合うまでです」
「それだけです」
「そしてどちらが残るかまで戦う」
 ロミオの顔がここで鋭くなった。
「そうなるんだね」
「今まではたまたま会わなかっただけです」
「それだけです」
「ですが今日はです」
 違うとだ。彼等も言うのだった。
「違います。会えばその時は」
「その時は斬り合い最後まで戦う」
「ロミオ様、宜しいですね」 
 傍らにいるロベルドも彼に言ってきたのだった。
「それで」
「そうだな。それならばだ」
 主である父の決定である。それならばだった。
「僕もやはり」
「はい、我等もいますので」
「思う存分カプレーティの者達を斬りましょう」
「そうしましょう」
「わかった」
 頷くしかなかった。そうしてであった。
 彼等はヴェローナの街を歩む。やがて彼等は酒場に入りそこで酒盛りをはじめた。その時にロベルドはふとロミオに言うのであった。
「あの」
「あの?」
「実はですね」
 こっそりと彼に囁いたのである。
「この酒場の外に面白いものを用意してあります」
「面白いもの?」
「はい、ヴェネツィアの商人が来ておりまして」
 こうロミオに話すのだった。
「それでなのですが」
「商人から」
「はい、ロミオ様への贈りものです」
「僕にかい」
「用意してあります。どうぞお受け取り下さい」
「そんなに気を使わなくていいんだけれどね」
 ロミオはロベルドの言葉にいささか困った顔になって返した。彼は酒を飲んでいない。しかし彼等と共にいてそれで話をしているのだ。
「別に」
「いえいえ、そう仰らずに」
「どうしてもなのかい」
「はい、そうです」
 こう話してであった。ロレンツォはまた若い主に勧めた。
「どうぞお受け取り下さい」
「そうか。そこまで言うのなら」
「きっと御気に召されます」
「わかったよ、それじゃあね」
「はい」
 彼の言葉を受けて店の外を出る。その時にロレンツォも家臣達もこっそりと目配せをする。そのうえで一人が店の裏手に回った。だがロミオはこのことを知らない。
 そしてである。ロミオが店の外に出るとだ。確かにそこには一人の男がいた。
 彼はだ。ロミオにこう名乗ってきた。
「ヴェネツィアから来ました」
「らしいね。それで僕への贈りものとは」
「これです」
 こう言ってその商人が差し出してきたもの、それは。
「これをどうぞ」
「これは・・・・・・」
 見ればそれは指輪だった。ダイアの美しい指輪だ。それを出してきてだ。そのうえでロミオに対して言ってきたのである。
 
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