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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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死と共にはじまるものは、生である

 
前書き
死と共にはじまるものは、生である
                —ホセ・マルティ—

 

 




地球温暖化が各地で叫ばれる最中、猛暑日が続くとある日——

ある高校に異変が起きた

1人の男子生徒を担架に乗せ、慌ただしく保健室に運び込まれたものの・・・

部活の仲間や教員たちが青ざめた顔で祈る中、手当ての甲斐なく熱中症で死亡した

黄色い太陽が焼き尽くしたような、夏の日だった












まさか、口酸っぱく注意されていた熱中症で死ぬことになるなんて思いもしなかった

先生、職員会議もんだな・・・

いや、絶対それだけじゃ済まないだろうけどさ

悪いことしちゃったな



死んだっていうのに軽すぎるかもしれないけれど

今は本当にそんなことはどうでもいいんだ

目の前の光景が明らかにおかしい

彼方には、見たことのある額当てにべスト、手裏剣やクナイを使った牽制攻撃、もはや目では追い切れない回避行動

此方には、これまた見たことのある黒マント姿の男たちで、赤い雲が刺繍されている

マントを靡かせながら次々に人外的な攻撃を繰り出している




これが走馬灯なのだろうかいや絶対違う


巷で噂の・・・トリップとかいう奴だろうか

ここは神様が現れるのがテンプレだろうに、何をしているのか

現実逃避がてらまだ見ぬ神への暴言を考えた隙に、誰かの忍術の余波が俺を襲った



(あぁ、霊体じゃなくて生身だったのか・・・)



傷口からとめどなく溢れる血を拭おうとした処で、俺の意識は途絶えた





















誰かの声が聞こえる

甲高く、それでいてか細い泣き声

声の主を探そうと目をあけようとして違和感に気づく

瞼がひどく重い

とてもじゃないが自力では開けない

怪我の影響だろうか、包帯でも巻かれているのだろうかと考えているうちに、突如腹部が熱をもった

じんわり、いや、そんな優しいもんじゃない

熱を認識した途端、激しい痛みが俺を襲い、その衝撃で微かに瞼が開いた



ターバンの上に額当てを付けた青年と、まるで汚らわしいとでも言わんばかりの目を向ける、白衣の中年たち

いつの間にか泣き声は止んでいたが、こいつらが泣いていたわけではなさそうだ



三日月が掘られた額当て



そんな額当てがあっただろうか
もう長い間ナルトは読んでいないから新キャラだろうか、それともアニメのお約束、オリジナルだろうか



「・・・泣きもしないとは・・・気味の悪い器だ」

「いや全く・・・九尾の人柱力といえども、もう少し赤子らしさが見たかったですな」



九尾?

人柱力?そんな馬鹿な、ナルトはどうしたんだ、四代目はどうした、お前らは何者だ?

どうして器と言って俺を見てるんだ


「封印は無事に施された
 
 しかし適合するかどうかはまだ分らぬ

 地下神殿にて隔離せよ」

ターバン男が俺を抱き上げた

いくら忍者といっても、簡単に横抱き出来るほど俺は小さくなかった

俺は転生したのか?

赤ん坊から、一からやり直しなのか?


「畏まりました

 もしものために医療忍者を数名傍に付かせます

 ・・・里長、姉君の、・・・御遺体はどう処理いたしましょうか」


「我が姉と言えど、こ奴は先代人柱力

 他里に暴かれぬよう荼毘にふし、地下神殿に無縁仏として処理せよ」


短い返事を残し白衣の男たちは去って行った

麻袋に詰められたナニカを持って






「・・・恨むなら、好きなだけ恨め
 
 お前から平凡な人生を奪ったこの叔父を、この月隠れの里長を・・・恨んで生きていけ」







男は震えながら俺を抱きしめて、諦めたかのように呟いた

この記憶を最後に、6歳までの間、俺の意識は途切れることとなる




 
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