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魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~

作者:DragonWill
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A's編
  闇の書の秘密

二度目の戦いの翌日。

無限書庫での調べものがあらかた終わったユーノは捜査本部に報告に行くために転送ポートを通って月村家を訪れていた。

「お疲れユーノ」

龍一は帰ってきたユーノに声を掛けた。

「目の下凄いクマだけど・・・大丈夫かい?」
「オフコース!!大丈夫!!」

何だろう・・・ユーノの様子がおかしい。

徹夜の影響でハイにでもなっているのだろうか。

「あまり手伝えなくてごめんね」
「そんなことないよ!!」
「調査の方はどう・・・」
「あのねっ!!無限書庫って本当に凄いとこだったよ!!」
「・・・お、おう・・・」

普段とはかけ離れたユーノの態度に龍一はたじろいてしまう。

このユーノはかつて見たことがある。

古代文明の遺跡をまるで遊園地に来たかの様に興奮して眺めていたあの時と同じ空気だ。


『Fu○k you!!ぶっ○す!!』
「・・・・・・・・・」


いかん・・・・妙なこと思い出しちまった。

あの事は速やかに忘れよう。

「今までどの大学にも図書館にも博物館にも保管されていないような貴重な資料が何十冊も並んでて、凄い光景だったよ」

まるで宝の山を見つけたようなうっとりとした表情を浮かべるユーノ。

実際、彼にとってはまさに宝の山であろう。

「はあ・・・。あそこを3日・・いや半日だけでも自由に利用できるなら、今まで資料不足で書けなかった論文をいくつも書くことができるのになぁ・・・・・」

そう言うユーノの表情はまるで店のショーケースに飾られているトランペットにあこがれる貧乏な子供のようであった。

「まあ、終わったらハラオウン執務官にでも頼めばいいんじゃない?報酬ってことで」
「無理だよ。あんな宝の山に私用で利用させてもらえるわけないよ」

そうユーノは残念そうに言ってきた。

「まあ、それは今は置いといて・・・闇の書について何か分かった?」
「うん。いろいろとね。これから報告に行くんだけど、君には先に話した置いた方がいいかな」
「ありがとう」
「実はね・・・・・・」


ユーノの報告で闇の書についていろいろなことが新たに判明した。

ます、闇の書は本来の名前ではなく、正式には『夜天の魔導書』と言うらしい。

元々は古代ベルカの時代のある魔導師が各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究するための研究資料であり、今の様な破壊活動を行うような戦闘能力は一切なかったと言う。

今の様に破壊の力を振るう状態になってしまったのは、歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したためだと推測されるが正確な確証は得られなかった。

夜天の魔導書には蒐集した魔法をある程度再現する機能があり、元々は魔法のプログラムが正しく動作するか確認するための機能でしかなかったが、それを恐らく戦争などの目的の為に破壊目的にプログラムを改変したため、大して危険な力を持たなかった魔導書が危険な存在に変わってしまったらしい。

守護騎士プログラムも製作者の魔法を後世に残すための一環で記録されているだけで、本当に緊急時しか機能しないプログラムでしかなかったらしい。

改変、いやこの場合改悪と言った方がいいか・・・・その改悪の影響で、蒐集した魔法を兵器として使う機能や守護騎士プログラムの実戦的運用機能などが追加され、旅をする機能と自動修復機能が暴走しているのだと言う。

特に主に対する性質の変化が一番深刻であるらく、研究資料でしかなかった魔導書を兵器として運用するために蒐集した魔力を主に還元できるように中途半端に機能を追加したせいで、一定期間蒐集がないと主の魔力を蒐集してしまい、完成すれば主の魔力をすべて使い切って破壊活動を行うと言った最悪の代物になってしまったらしい。

そして主への浸食と破壊活動の根本的な原因となっているのは追加された不完全な自動防衛運用システム『ナハトヴァール』であり、本来ならば魔導書を運用するための融合管制システムが存在するのだが、魔導書が完成すれば一定時間でナハトヴァールの方が優先的になってしまい自力で止めることができなくなってしまうらしい。

「・・・・以上が今回の調査で判明したことです」

ユーノの説明が終わると会議室に沈黙が流れる。

「ある意味、闇の書の主こそが一番の被害者とも言えるな・・・」
「剛さん!!」

剛の言葉に、かつて闇の書の事件で父親を失ったクロノの事を知るエイミィが食って掛かる。

「そうだろ?選ばれれてしまえば最期、どんな選択をしようとも、待っているのは『死』と言う救いようのない運命のみなんだからな」
「・・・・・・・・」

その一言に一同は黙ってしまう。

自分勝手に力を得るためだけに多くの人を襲っていただけだと思われていた主だが、ここにきてただ生きたいと願って僅かな可能性に縋っているだけと言う可能性が出てきたためである。

実際、今回の事件は過去のものと大きく違い、死者は一人も出ていない。

今まで人格らしい人格を感じられなかった守護騎士の変化や、過去の事件と比べると『らしくない』配慮など、まさにその可能性を増大させている要因が多かったのである。

「停止や封印の方法は?」

剛の言葉にも私情を挟まずクロノはユーノに肝心の質問を投げかけた。

「残念ながらまだ・・・引き続き調査を進めていくつもりです」
「そうか・・・エイミィ、最終手段の方は?」
「艦長が手配してくれています。アースラはもうドック入りしてるんじゃないかな?」
「あの~最終手段とは?」

零課の職員の一人が疑問を投げかける。

「対艦反応消滅砲『アルカンシェル』。被弾した対象を空間歪曲と反応消滅で着弾地点から半径百数十kmの空間ごと滅ぼす、文字道理最後の手段です」

その説明に会議室がざわつく。

「そんなもの!!わが国で使わせるつもりですか!!本部長殿!!」
「当然、否だ。今言った通り、これは最後の手段。自国にむけて核攻撃以上の暴挙だからな。だが、事はそれだけ深刻であることを肝に銘じてほしい」
「そんな!!」

あまりもの異常事態に騒然とする会議室。

「ふーん♪結構盛り上がっているね♪」

しかし、その喧騒も一人の少年の声で遮られてしまった。

大して大きな声でもないにも関わらず、会議室中に響き渡った声にその場にいた全員が注目する。

そこには大きな帽子を被った少年がいつに間にか立っていた。

通路の真ん中に立っているにも関わらず、誰も彼が声を発するまで気付けなかったのである。

「「「「「!?」」」」」
「だ、誰だ!?」
「子供・・・?」
「いや・・まさか・・・・」
「もしかしてあの方は・・・・・」

ざわめく会議室だがどうやら一部彼の正体に気付いた者もいるようである。

「久しぶりだね、剛ちゃん♪遊びに来ちゃった♪」
「今度はその恰好ですか・・・・随分可愛らしい姿になりましたね、傍観者(ブックマン)
「「「「「!!」」」」」
「嘘だろ・・・」
傍観者(ブックマン)ってあの・・・?」
「神域魔導師の一人・・・序列12位・・・・」

再びざわめきだす一同。

しかし、今回のざわめきには先ほどの様な不信感は一切なく、驚愕や畏敬の念が多大に込められていた。

「剛警部、そのお方は?」

事情を呑み込めないアースラ組を代表してクロノが聞いて来た。

「初めまして異世界の魔導師さん♪僕の名は・・・もう大昔すぎて忘れちゃったから傍観者(ブックマン)って呼んで♪神域魔導師とも呼ばれてるんだ♪」
「は、はあ・・・」

自己紹介されてもピンとこないクロノ。

「まあ説明しよう・・・」

地球にも管理局と同じように魔導師ランクが存在する。

世界最大の魔法研究機関である魔法協会(ソサイティー)『円卓十三議会』がその審査を行っているのだが、管理局ほど細分化されていない。

例えば、管理局のランクはD~A、AA、AAA、S、SS、SSSの9段階評価に加え、±補正が掛かって更に細かく分類される上に、ランクも陸戦、空戦、総合、結界魔導師など得意な系統や戦闘方法などでランクの種類が変わってくるが、地球のものはかなり大雑把で、基本はE~Aの5段階評価と通常評価規定外のSランクが公式で定められている。

管理局のランクはあくまで『任務の達成指数の目安』であるため、必ずしも戦闘力に結びつくわけではないが、『陸戦』や『空戦』の名目や『逮捕=武力制圧』と言った管理局の体質があり、戦闘力に直結されて考えられやすく、評価項目もより実践的な部分を評価するのに対し、地球のランクはあくまでも『魔導師』としての評価でしかなく、評価対象は魔力素からの魔力への『変換』、魔力の『運用』、術式の『構築』、魔法の『制御』の4つしかなく、戦闘能力は一切評価はされない。

土御門や禊は学生時代にS評価を貰った天才児だが、実戦ではC評価の近松には敵わないのがいい例である。

ちなみに、結城弥生がA判定で八坂明美がB判定、小林はD判定で高町なのはは管理局の判定では空戦AAA+であるが地球の評価ではせいぜいDとCの間を行ったり来たりであろう。

そして、公式では最高ランクはSであるが、非公式ならば更に上のランクも存在する。

それがSSランク、通称神域魔導師と呼ばれる存在である。

世界にも13人しかその位階を持つ者がいないそれは、言ってしまえば『魔法を極めたがため人の身でありながら神の領域に片足を踏み入れた人外の化物』の称号である。

公式なランクでもないため当然専用の試験があるわけでもない。彼らがその称号を得る方法はただ一つ、確固たる事実だけである。

戦闘のみならず、人の身にあまる偉業を成し遂げた確固たる事実こそが彼ら足らしめる要因なのである。

「彼はその世界に13人しかいない神域魔導師の一人、序列12位傍観者(ブックマン)。本人すら本名を覚えていないはるか昔、有史以前から悠久の時を生きる不死者らしい」
「そ、そんな馬鹿な!?」

クロノが驚くのも無理はない。

自分の母に桃子やプレシアの様な見た目と年齢が明らかに釣り合っていない人間はよく目にするが、それはただのアンチエイジングであり寿命が延びているわけではない。

しかし、目の前の少年はなのはたちと変わらない見た目であるにも関わらず、数千年生きていると言うのだ。これで驚かない方が不自然であろう。

しかし、それを可能にしたからこそ、彼を神域魔導師足らしめているのである。

神域魔導師は戦争における個人での戦果、死者の蘇生、神の召喚、不老不死など人には不可能であることを可能にした称号なのである。

「それにしても、どういう風の吹き回しだ?君は現世に関わらないのを信条にしていたのではないかね?」
「確かに♪僕はこの世界のどの勢力にも囚われずにただその歴史をもっとも公平な立場で記録することを信条にしているからね♪今回はそこの坊やにお礼の意味も兼ねて特別サービスと言ったところかな♪傍観主義の僕の数少ない干渉♪これは貴重(レア)だよ♪」

ユーノを指さしながら答える傍観者(ブックマン)

「ぼ、僕ですか?」
「そうそう♪100年以上前にどこから僕の情報を聞きつけたのか、今の管理局の前身となった連中が僕に接触してきてね♪僕の知識を貸してほしいって頼まれたんだ♪でも僕は直接彼らに力を貸すのは信条に反したから彼らに無限書庫を作ってあげたんだよ♪」
「無限書庫を・・・・作った!?」

クロノが驚愕の声をあげる。

「そんな馬鹿な!!あれだけの規模の蔵書量を個人で揃えられるわけが・・・」
「いや。彼ならあり得る」

クロノの言葉を剛が遮る。

「彼のレアスキル『千面相(セルフライアー)』は『自己の在り方を自己認識の通りに固定する』能力。・・・・なるほど、無限書庫の正体はあなた自身だったという訳ですね?」

この能力は例えるならば、『自分は鳥だ』と認識していれば鳥の姿に変わり、『自分は若い』と認識していれば若き頃の姿になる。

この使い方はまだ序の口に過ぎず、彼は生き物だけでなく無機物や概念、空間そのものにも自身がそうであると認識しているならばその通りの姿に変わり、彼を示す人数すら0と1以外で表現することもできる。

彼が不老不死なのはこの能力で自らの死を認識していない為であり、その能力であらゆる時代のあらゆる場所に普遍的に存在し、その歴史を記録し続け、彼の姿の一つである無限書庫に本と言う形で蓄え続けてきたのである。

「その通り!!いやあ、せっかく僕の知識を誰でも利用できる形を取ったのにいざ作ってみても誰にも利用できずに100年以上放置されっぱなしだったからね♪初めてまともに利用してくれたのが嬉しくてユーノくんへのお礼としてもう一つ君たちが掴んでいない情報を提供しに来たんだよ♪」

心底嬉しそうな笑みを浮かべた傍観者(ブックマン)は一人の少女の写真を見せながら話を続ける。

「彼女が今回の夜天の書の主である八神はやてだよ♪彼女はとても優しい娘でね、突如目覚めた守護騎士たちを何の疑いもなく家族として受け入れて何事もなく過ごしていたみたいなんだけど、それが仇になったみたい♪魔導書の強い浸食が彼女を蝕んでもうほとんど猶予が残っていないみたいだよ♪」
「そんな!!」
「だから彼女の守護騎士たちも最低限の護衛以外はみんな必死になって蒐集に走っているよ♪それが主の破滅につながることにも気づかずにね♪」
「どういうことだ?闇の書は完成したら主を食いつぶすだけなのに・・・・」
「多分改悪の影響で記憶の継承が不完全なんだと思うよ♪彼女たちはあの娘が闇の書の真の主として覚醒すれば浸食が収まるとでも思っているんじゃないかな?」
「・・・・・」
「この間闇の書のページを消費しちゃったこともあって今は死ぬ気で魔力を蒐集している♪特に高町なのはの様な桁違いの魔力を持った未蒐集者を血眼になって探しているみたい♪」
「彼女たちなら月村の屋敷に護衛と共にいるはずだ」
「それとこれが最も重要な情報なんだけど・・・」
「なんだ?」










「この間の仮面の男が月村の屋敷の情報を流したみたいで彼女たちは今日明日中に総力戦を挑んでくるみたいだよ?」

傍観者(ブックマン)の言葉と同時に月村の結界が破られた警告音が鳴り響いた。
 
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