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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  14話

「それにしても、君は天性のセンスがズバ抜けているな、サスケ」
「あんたに言われても……皮肉にしか……聞こえないんだよ!!」
サスケは肩で息をしながら、私の方を写輪眼で睨む。どうにもあの眼は感情の昂ぶりが発動の条件のようだが……まだ任意の発動は難しいようだな。手合わせが始まって数手の内は発動できず、私の動きに対応は出来ても拮抗は出来ていない。
もっとも、あの眼が無くともサスケはスポンジのように戦闘経験を吸収し、それを応用するというスピードが桁外れに早いので下忍の間は別段無くとも困りはしないだろう。
それに眼に関しては忍になって何かしらの危機を迎えれば、彼であればそれで完全に眼を掌握するだろうな。となると、私が彼に教えるべきはその実戦での戦い方だろうな。
言ってしまえば、格上の相手との戦いだ。
「サスケ」
「なんだ?」
「次からは少々戦いの方向性を変えるぞ」
「ああ、構わないが……どうするんだ?」
「次から忍術、トラップ、待ち伏せ、奇襲やら持てる手段を総動員させて私の面を取って見せろ。
代わりに私は君を即死"は"しない程度の威力に抑えた力で君を襲う。流石に回天は使わないが、白眼の視界やらは使わせてもらうぞ」
「……つまり、本気のあんたから一本取って見せろって事か?」
「ああ、そうだ。現時点において、正面から戦えば私は君より強い。その相手に君は勝たなければならない、そういう戦い方もこの先必要だろう?」
「イタチか?」
「それもあるが、たった二人のうちはの弱い弟なれば君の眼を得ようとする輩など幾らでもいる」
「……それをどうにかする為のってことか」
「ああ、それで倒せれば言うことはないが、最低でも逃走のための足止めを成功させねばならん」
「逃走か……」
「君にとっては不本意だろうが、本来の目的を達成するためなら自分の矜恃や誇りなど捨ててしまえ。君の目的はそうでもせねば実現できぬ類のものなのだからな」
「ああ、そうだな」
彼の目的が殺害なのか尋問なのかは知らんが、どちらにせよイタチをそこまで追い詰めねばならない。
とてもじゃないが並大抵の覚悟でどうにかなるような話ではない、地を這いずり泥水を啜るような事になるのを承知でその道を行ってもらおうか。
「さて、今日はここまでだ。腹が減っただろう、何か奢ってやる」
「まだやれる……って言いたいが、チャクラが無い事なんて見抜かれてるんだろ?
それと先に言っておくが、俺は納豆と甘い物は無理だからな」
「了解した、付いてくるといい」
というわけで、少し早いが夕食をとらせてもらおう。



今日は先にネジにサスケの相手をしてから、夕食をとっては帰るという旨を伝えている。流石にネジ無しで里の外に出るとなると問題だが、里内であって居場所を伝えた上でのそう長くない時間であれば多少の自由は許されている。
で、私はいつの間にやら顔馴染みの……いやこの場合、仮面馴染みとでも言うべきか?店員の前では面を取ったことはないので、顔は知られていないのだからな。
……まぁ、結局手間のかかる任務を終えた後にテンテン達とよく来る中華料理屋に来た。
「店主、奥の部屋は空いているか」
「はい、いつものお席が」
「それは結構」
私はサスケを連れていつもの奥の個室席へ向かい、いつものようにメニューに眼を通す。
「……あんたがこういう店に来るっていうのは意外だな」
「む?どういうことだ?」
「あんたの事だ、食事なんて栄養さえ取れれば何でもいい扱いだと思っていた」
「……なぜ、私の周りの人間は私をそうおかしな方向へ誤解してるのだ?
そも、非常時ならともかく普段は食事に関しては妥協はないぞ。可能な限り美味いものを食らうというのは精神衛生的にもいい事だ。
君も憎しみなりなんなりを持つのは結構だが、せめてこういった日頃の行いには余裕を持つといい。人間、余裕がなければ日々に支障をきたすからな」
「ああ、そうかい……」
「遠慮なく注文するといい、支払いは私持ちだ」
「じゃあ、炒飯と海鮮炒め、玉子スープを……「それだけか?」……点心も頼む「……」……棒棒鶏も追加だ!!」
「存外少食なのだな、店主注文だ。彼には炒飯、海鮮炒め、玉子スープと点心を。
私は叉焼麺、海老炒飯、酢豚、揚げ物三種盛り、野菜炒め、青椒肉絲、豚の煮込みに餃子と北京ダック、食後に杏仁豆腐とドラゴンフルーツの盛り合わせだ」
「はい、畏まりました」
店主はメモを取ると個室から出て厨房へ帰って行った。
「どうした、サスケ?」
「あんた、さっきの注文を全部食べるのか?」
「当たり前だ」
「……その体の何処に消えていくんだ?」
「普通に生活すればこの位食べるのではないか?」
「あんたはもう少し常識を学ぶべきだ」
「いや、適正体重は保っているのだから問題はないだろう?162cmの45.4kgの女子としては比較的高身長ではあるが、体に緩みはないぞ?」
「……あんた、女性としての恥じらい的なものはないのか?」
「何を恥じる?私の体に恥じる所などないぞ」
「聞いた俺が馬鹿だった」
……ネジといいサスケといい、女性としての恥じらいなど子供が産める年齢になってから気にするべきだろう?
その後、デザートまで食べ終えてから店を出ると意外な人物に出会った。
「む、ナルトか?」
「おっ、ねーちゃんもメシ?」
「ああ、食べ終えた後だがな」
「そっか……って後ろで顔色悪そうな奴がいるけど、誰だってばよ?」
「うちはサスケだ……全く、あの程度の量で音を上げるとは不甲斐ない」
「ふざけんな……なんだあの店、量が多すぎるだろ。なんで全部大皿なんだよ……」
「……あー、ねーちゃんと一緒に食べたのか」
「む、サスケを知っているのか?」
「だって、前にねーちゃんと戦って負けたの勝ってた奴だろ?なんでねーちゃん降参したんだってばよ?」
「色々用事があってな、その辺りは私個人の欲だ」
「ふーん、けど俺ってばああいうのなんか納得できねーってばよ」
「ふむ、その真っ直ぐな思考では出せぬ解もあるという事も知った方がいい。それは君を悩ませる事にもなるだろう。
とはいえ、私個人としては君のそういった考えは非常に好ましい、その在り方を損なわぬよう励むといい。」
「ねーちゃんの言う事は相変わらず良く分かんねーってばよ」
「お前、バカだろ……うっぷ」
「普段ならバカって言われて怒ったんだろうけど、本当に大丈夫か?顔色滅茶苦茶悪いってばよ……」
「……済まん」
「ふむ、ナルト。家までサスケに付き添ってやれ」
「えー?何で俺が?」
「同じ学年なのだろう、親交を深める機会ではないか?それに君は最近私に負け方が無様になってきている、それの罰とも考えたまえ」
「……分かったってばよ」
ナルトは渋々サスケに肩を貸して、サスケの家へと運んでいく。
ふむ、なんというかああして見ると兄弟のよう……ん?
何故友人では無く兄弟なのだ?相性は悪くはないだろうがほぼ初対面の二人に何故その単語を当て嵌めた?
……血液が胃に回ったかどうにも呆けているのか。少し歩いて腹ごなししてから家に帰るとしよう。
 
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