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机に叱られて

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第五章


第五章

「だからね」
「その間に仲も」
「向こうはいい感情を持ってるし」
 それはもう確信している机だった。
「あとは一緒に帰ったり話掛けたりしてね。部活の中でね」
「部員とマネージャーとして」
「そういうこと。それだと何の問題もないでしょ」
「そうね」
 まさにその通りだった。ここで机が水泳部のマネージャーになるように言ったことが再び生きるのだった。そこも考えていたのである。
「それは確かに」
「だからよ。わかったわね」
「ええ。じゃあ」
「勢いをそのまま強くさせるのよ」
 机はまた言った。
「それで手編みのセーターまでね」
「仲を進展させて」
「いきなさい」
 こうしてその最終作戦が発動されることになった。莉奈は密かにセーターを編みながら彼とさりげなく一緒に帰ったり話をしたりした。こうして仲を進展させていくのだった。
 それで遂にセーターを編み終わった。ここでまた机と話すのだった。
「後はこれをなのね」
「部活の後で出すのよ」
 そのタイミングを話した机だった。
「その後でね」
「部活の後でなの」
「水泳の後は身体が冷えてるわ」
 机はここでもわかっていた。
「だからそこでね」
「そこでセーターをなのね」
「そうよ。温水プールっていってもね」
 机はそれでもだというのだ。
「それでもよ。冷えているからね」
「そこでセーターを、なのね」
「わかったわね、それで」
「ええ」
 それで頷く莉奈だった。
「それじゃあ」
「よし、わかったわね」
 机はさらに彼女に告げた。
「それじゃあよ。行きなさい」
「それでね」
 こうしてまた動くことになった莉奈だった。その放課後雄亮が部室を出るまで待った。そうしてさりげなくを装って彼の前に出て来たのであった。
「まだ帰ってなかったの」
「今帰るところだ」
 こう素っ気無い声で莉奈に返す彼だった。
「丁度今だ」
「そうなの。今なの」
「そっちもか?」
 自分のことを答えたうえで今度は自分から尋ねた。
「今から帰るのか」
「そうよ」
 まさにその通りだと返す莉奈だった。しかし本心は隠している。
 学校の中はもう暗くなってきている。夜だった。そして急に寒くなってきている。冬の寒さは夜になってさらに冷たいものになってきていた。
「今からね」
「そうか。じゃあ帰るか」
「ええ。ところでね」
 ここで密かに勝負をはじめた莉奈だった。
「寒くない?今」
「そうだな。それはな」
 それを言われるとその通りである。机の読み通り冬である。その後なのでプールからあがって水の冷たさもさらにプラスされて身体がかなり冷えてしまっていた。
 意識すると余計にだった。寒さと冷たさを感じる雄亮だった。
「結構な」
「そう思ってね」
 切り札を何気なく出してみせた。
「はい、これ」
「これ?」
「これ着て」
 こう言ってそれを出したのであった。
 
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