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机に叱られて

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第三章


第三章

「じゃあそれでな」
「わかったわ」
 頬が少し出ているその精悍な顔の男の子が莉奈に言ってきていた。背は一八〇近くあり目はイラスト通り鋭い。茶色い髪を短く刈って立たせている。その彼だった。
「それじゃあ新山君今日は」
「美化委員会の会議に出てから部活に行くからな」
「それを先生にね」
「伝えておいてくれ」
 そうしてくれというのだった。
「頼んだからな」
「わかったわ。それじゃあ」
 こんな話をしていた。この彼が新山雄亮である。莉奈は彼の言葉を受けて頷いていた。
 彼は話を告げると一旦クラスを出た。そうして莉奈はとりあえず自分の机に戻った。するとそこでまた机が彼女に話をしてきたのだった。
「いい調子ね」
「いけてる?」
「ええ、いけてるわ」
 机は小声で彼女に言ってきた。今はクラスの皆もいるのでそれで小声なのである。
「まずは普通に話せるようになったわね」
「そうよね」
「それでね」
 また話をはじめる机であった。
「今度はね」
「今度はどうするの?」
「この諺知ってるかしら」
 まずは諺からはじめてきたのだった。
「諺をね」
「諺って?」
「将を射るにはまず馬を射よ、よ」
 出してきたのはこの諺だった。それを出してきたのである。
「これは知ってるわよね」
「ええ、まあ」 
 言われるとその通りだった。それは彼女もよく知っていた。それで机の問いに頷いたのだった。
「それはね」
「だったらわかるわね。今度は馬を射るのよ」
「その馬って誰なの?」
「まずは顧問の先生よ」
「岩下先生ね」
 その先生が水泳部の顧問である。真面目であるが温厚で優しい性格の先生である。そして公平な性格の持ち主としても知られている。
「あの先生に気に入ってもらうのよ」
「取り入るってこと?」
「ナンセンスね」
 取り入るということにはすぐに否定の言葉で返した机だった。
「それは違うわよ」
「違うの」
「そうよ、それではないのよ」
 また言う机であった。
「いいかしら、つまりはね」
「つまりは?」
「マネージャーの仕事を真面目にしなさい」
 机が提案したのはそのことだった。
「それでいいのよ」
「マネージャーの仕事を真面目に」
「そうよ、そうすれば評価してもらえるから」
 そうなるというのだった。机が言うにはだ。
「わかったかしら」
「ええ、それじゃあ」
「話はこれで終わりよ」
 実際にここで止めるのだった。
「後はあんたがそのお仕事を真面目にするのよ」
「ええ」
 こうして次の作戦が決まった。とはいってもマネージャーの仕事を真面目にするだけだった。しかしこれは確実に効果をあげた。
「いや、いいマネージャーが入ったよ」
 その岩下先生が言うのだった。
「本当にな。おかげで水泳部は凄く助かってるよ」
「そうなのか」
 それを聞いた雄亮はマネージャーである彼女のことを思わざるを得なかった。
 
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