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アイドルでも女の子

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第七章

「お綺麗で優しくて」
「演技も確かでね」
「尊敬する様になりました」
「あら、そこまでなのね」
「だって弥生さん最高ですから」
 実際にそうだからだというのだ。
「本当に」
「そこまで言うのね」
「雑誌の対談もしましたけれど」
 ドラマのことでそうしたことは言うまでもない。
「あの、雑誌に載ってる部分以外にも」
「お話したらしいわね」
「はい、凄く楽しかったです」
「ううん、美月さんを本当に好きになったのね」
「正真正銘のオスカル様ですから」
 だからだというのだ。
「尊敬しない筈ないじゃないですか」
「もうあの人は弥生ちゃんにとってそうした存在なのね」
「お姉様ですね」
 まさに少女漫画のそれだというのだ。
「現実に私の前におられる」
「そこまで言うのね、けれど」
「けれど?」
「美奈世ちゃん女の子ね」
 少し苦笑いになってだ、妙子は弥生に言った。
「本当にね」
「女の子ですか」
「そう、アイドルでもね」
 そうした特別な立場でも、というのだ。
「女の子ね」
「弥生さんに憧れてるからですか」
「ええ、そうした女の人に憧れるのもね」
「女の子ですか」
「女の子にはそうしたところがあるからね」
 誰にでも、というのだ。
「だからね」
「私は女の子なんですね」
「純粋な、ね」
「純粋な女の子ですね」
「そうだってことがよくわかったわ」 
 妙子は美奈世を今は優しい笑顔で見て話していた。
「今回のことでね」
「そうなんですか」
「けれどいいことよ」
 そうしただ、純粋な女の子であることがというのだ。
「このことはね」
「私が女の子であることは」
「とてもいいことよ」
 こうも言う妙子だった。
「だからそのままでいてね」
「女の子で、ですね」
「少なくとも二十歳まではね」
 この年齢までは、というのだ。
「アイドルでいる間はね、そしてそれからも忘れないでね」
「二十歳になってからも」
「女の子の心はとても大事なものだから」
「だからですや」
「忘れないでね」
 妙子は美奈世に念押しさえした。
「幾つになっても」
「女の子の心を」
「アイドルでも女の子で」
 そして、というのだ。
「二十歳を過ぎてもね」
「女の子として、ですね」
「そう、やっていってね」
 こう美奈世に言う妙子だった、そして美奈世はその妙子の言葉に素直に頷く、そうしてアイドルとして生きていくのだった。女の子の心を忘れずに。


アイドルでも女の子   完


                           2014・7・28 
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