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アイドルでも女の子

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第四章

「オスカルもいるし他の人もね」
「いるんですね」
「そうよ、そうなるわ」
 こう言うのだった。
「あそこに行けばね」
「是非行きたいですね」
「まあその時間はないけれどね、いえ」
 ここでだ、妙子は気付いたのだった。
「これもいいかも知れないわね」
「あっ、じゃあ」
「宝塚の男役出身の女優さんと対談してみる?」
 妙子は美奈世にこう提案したのだ。
「どうかしら」
「何か夢みたいですね」
「夢とかじゃなくてね」
 そうしたものではなく、というのだ。
「現実のお仕事よ」
「オスカル様とお話出来るんですね」
「オスカル様って」
 様付けした美奈世にだ、思わず笑ってしまって言う妙子だった。
「本当に好きになったのね、美奈世ちゃんも」
「だってあまりにも素敵ですから」
「あの格好よさに惚れたのね」
「好きになったら駄目ですか?」
「アイドルは恋愛禁止よ」
 妙子はアイドルの絶対の不文律をここで美奈世に告げた、美奈世には事務所に入った時から言っていることだ。
「スキャンダルは最大の敵よ」
「アイドルの、ですね」
「そう、けれどね」
 それでもだというのだ。
「女の人を好きになっても」
「いいんですか」
「同性愛はね」
 妙子もわかりかねていることだった、それで言うのだった。
「一緒に歩いてもお友達同士で通るし」
「普通にですね」
「デートしても。まあ普通よね」
「じゃあ私がオスカル様にお会いしても」
「いいわ、そしてね」
「そして、ですか」
「ええ、そもそもオスカルは実在人物じゃないから」
 漫画の登場人物である。
「好きになってもね」
「いいんですね」
「ナポレオンでもね」
 歴史上の実在人物でだ、しかも男でもというのだ。この場合は。
「別にいいわね」
「ナポレオンですか」
「あの人なら別に好きになっていいわよ」
「そういえば続編の主人公ナポレオンでしたね」
 エロイカという作品だ、舞台は同じ国だがその世界観が一緒かどうかというと少し違う感じがするであろうか。
「何か大臣の人達に裏切られてましたね」
「そういえばそうだったわね」
 タレーランとフーシェにだ、この二人が政治力及び知力においてナポレオンを凌ぎしかも全く信用出来ない人物だったことがナポレオンの不幸だった。
「あの人も最期バッドエンドだったわね」
「それにナポレオンさんって顔よくないですから」
「オスカルに比べて」
「やっぱりオスカル様ですよ」
 美奈世は妙子に熱い声で言った。
「あの人しかいないです」
「本当にあの人好きなのね」
「大好きです、愛しています」
「まあ女の人を愛するのならいいわ」
 アイドルは恋愛禁止でもだ。
「それに実在人物じゃないしね」
「だから余計にですね」
「いいわよ、あの人を好きになっても」
 オスカルなら、というのだ。
「それでオスカルを演じた人と対談してもね」
「それじゃあお願いします」
「ええ、ただ美奈世ちゃんがベルばら好きってね」
 それはとも言う美奈世だった。
「やっぱり女の子ね」
「女の子はベルサイユのばら好きなんですね」
「男の人が読んでも面白いっていうけれど」
 この人の作品全体に言えることだ、だからこそ不滅の名作となっているのだ。細かい検証と性格描写、破綻しないストーリーのどれもが見事だからこそ。 
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