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オズのムシノスケ

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第二幕その十

「だからね」
「来てくれたのね」
「そうなんだ、それで今は」
「皆でグラウンドの石拾いをしてるのよ」
 ドロシーは実際に屈んで石を拾いながらトトに答えました。
「トトもどうかしら」
「そうだね、ドロシーがするのならね」 
 それならと答えるトトでした。
「僕もね」
「それがいいわね、石拾いをすればグラウンドが綺麗になるから」
「綺麗にすることはいいことだからね」
「身体を動かすこともいいことだけれど」
「綺麗にすることもだからね」
「それに綺麗にすることもね」
 このこともだというのです。
「身体を動かすことの一つよ」
「スポーツなんだね」
「いい汗をかくわよ」
「それじゃあ今度はこれで身体を動かすよ」
「それじゃあね」
 こうドロシーに答えてでした、トトもでした。
 石拾いに参加しました、お口で拾って一つの場所に集めていきます。そうして皆で石拾いをしていますと。
 そこに教授も来ました、それでこう言うのでした。
「おや、石拾いとは」
「ちょっと石が目立っていたんで」
 カルロスが教授に答えます。
「それでなんです」
「グラウンドを綺麗にしているんだね」
「駄目でしょうか」
「石拾いを駄目と言う人はいないよ」
 これが教授の返事でした。
「いいことをどうして駄目だって言うんだい?」
「それじゃあ」
「有り難う」
 お礼すら言う教授でした。
「では私も参加しよう」
「えっ、教授もですか」
「まず自分から動け」
 ここでこんなことも言う教授でした。
「それが王立大学の校則だよ」
「だからですか」
「私は自分の部屋は自分で掃除しているよ」
 そうしているというのです。
「毎朝ね」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
「今もですか」
「私も参加させてもらうよ」
「わかりました、それじゃあ」
 こうしてでした、教授も石拾いに参加するのでした。丁渡運動服のままだったので汚れる心配はありませんでした。
 そうして石拾いをしていましたがここで。
 ふとです、教授はあるものを拾いました。それはといいますと。
「おや、これは」
「どうしたんですか?」
「ボタンだよ」
 見れば金色のボタンです、確かに。
「ボタンがあるとはね」
「ここで誰か前にサッカーをされてたんでしょうか」
「そうかも知れないね。いや」
「いや?」
「このボタンの持ち主は」
「お心当たりがあるんですか」
「ボタン=ブライトのボタンじゃないかな」
 こうカルロスに言うのでした。
「ひょっとしたらね」
「ボタン=ブライトっていいますと」
「そう、いつも何処かにいるね」
「水兵さんの服を着た男の子ですよね」
「彼が来ていたみたいだね」
 手に持っているボタンを見ながらです、教授は言うのでした。
「どうやらね」
「そうですか、じゃああの子は」
「今何処にいるかだね」
「はい、若しかしてこの近くね」
「ううん、それはどうかな」
 教授はカルロスの問いにいぶかしむ顔で返しました。 
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