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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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入学編〈下〉
  事情聴取×真実と偽りの情報

今回の事件の首謀者である司甲は、拘束されて第一高校内でのテロ行為は鎮圧とされた。最も蒼い翼の警察関連が来たときには、CBメンバーは既に撤退していた。オートマトンも大型トラックの中にしまわれた後は、待機モードとなりある場所に向かったのだった。そしてCBメンバーとトレミーは、ある場所の周りにて待機命令を出した一真によって待機していたのだった。

その頃保健室では、壬生先輩の事情聴取が始まっていた。右腕の治療をしながらであった、興奮させないようにと校医が進言したが壬生先輩自身が全てを話すという希望があったので聞くことにした。メンツは俺と深雪に蒼太と沙紀、レオにエリカ、会長・委員長・会頭の生徒首脳陣がいた。一通り鎮圧したとはいえ、まだ詳しい事はほとんど分かっていない。学外からの侵入者たちは教職員たちが蒼い翼関連の警察に引き渡すべく手元で拘束されているし、生徒会長・風紀委員長・部活連会頭という立場であっても、その前に生徒という立場なので手を出せない。まあ俺は端末に入ってくる警察の情報を見ているけど、司甲は尋問できる状態ではないし、唯一の情報源である壬生先輩が詳細な情報を持っているので、会長たち三人が揃っている訳ではある。

話は壬生先輩が彼らの仲間に引き込まれたところから始まった。去年、入学してすぐ司に声をかけられたこと。剣道部にはその時既に司の同業者が少なからずいた事を。剣道部だけでなく、生徒の自主的な魔法訓練サークルを装って思想教育が行われていた事。彼らが第一高校の内部に、想像以上の時間をかけて周到に足場を築いていたという事実は、会長たちにとっては予想外な驚きに満ちていた。壬生先輩の話に最も衝撃を受けていたのは、委員長だったけど。会長と会頭とは衝撃を受けるポイントが違って見えた。

「すまん、心当たりが無いんだが・・・・・」

目を白黒させている委員長に、エリカが棘のある眼差しを向けていた。だが、委員長にはその視線を意識する余裕がなかったらしい。

「壬生、それは本当か?」

狼狽の滲む声で委員長に問われ、壬生先輩が俯いたのは一秒未満。顔を上げたのは、吹っ切れた表情で頷き吹っ切れた口調で答える。

「今にして思えば、あたしは中学時代『剣道小町』なんて言われて、いい気になっていたんだと思います。だから入学してすぐの、剣術部の新入生向けの演武で渡辺先輩の見事な魔法剣技を見て、一手のご指導をお願いしたとき、すげなくあしらわれてしまったのが凄くショックで・・・・。相手にしてもらえなかったのはきっと、あたしが二科生だから、そう思ったらとてもやるせなくなって」

「チョッと・・・・チョッと待て。去年の勧誘週間というと、あたしが剣術部の跳ね上がりにお灸を据えてやった時の事だな?その時の事はよく覚えている。お前に練習相手を申し込まれた事も忘れてはいない。だがあたしは、お前をすげなくあしらったりしていないぞ?」

「傷つけた側に傷の痛みが分からないなんて、よくあることです」

真剣に首を捻っている委員長を、皮肉成分たっぷりの口調でエリカが非難する。

「エリカ、少しの間黙っていろ」

それを一真が制止したのだった。それ以上を言わせないために。

「何?一真君は渡辺先輩の味方なの?」

「いいから黙ってろが、小娘が!今すぐ殺されたいのか?んー?」

小娘と言われてエリカは反論しようにも出来なかった。というより、この場にいた全員が喋れない状況となったのだ。一真は覇気と殺気をエリカにぶつけていたはずが、いつの間にかこの部屋の中まで殺気と覇気という空気が広がったからだった。唯一この空気に動けたのは深雪なので、一真を落ち着かせようとしてから覇気と殺気を閉じたのだった。

「すまない、続きをどうぞ。壬生先輩」

「え、ええ。先輩は、あたしでは相手にならないから無駄だ、自分に相応しい相手を選べ、と仰って・・・・。高校に入ってすぐ、憧れた先輩にそんな風に言われて・・・」

「待て・・・・いや、待て。それは誤解だ、壬生」

「えっ?」

「あたしは確か、あの時こう言ったんだ。『すまないが、あたしの腕では到底、お前の相手を務まらないから、お前に無駄な時間を過ごさせてしまうことになる。それより、お前の腕に見合う相手と稽古してくれ』とな。違うか?」

そう訊ねられたらどうやら壬生先輩の勘違いだったらしいが、何か引っかかるなと思った。委員長が相手にならないなど言っていないということであり、剣の腕ならば去年から委員長より上だったそうで。そういうことらしいから、委員長は稽古の相手を辞退したそうだ。委員長は魔法絡みだと上らしいが、委員長が学んだ剣技は、魔法の併用を前提とされたもおんであって、魔法を最大限に活かすらしく純粋に剣の腕を修めた壬生先輩に剣技では敵わないと。

「壬生先輩、少しの間頭に手を置いても構いませんか?」

「え、ええ。でも何をするつもりなの?」

「それはやってみてのお楽しみです。目を瞑って楽にしてください」

そう言って目を瞑った先輩の頭の上に手を置く俺。もう片方の手は掌を広げてから投影された。それは壬生先輩の過去の記憶そのものだった。そして委員長が壬生先輩に言ったところで、映像が途絶えてしまう。そして映像が見れるときには、委員長が立ち去ったあとのことだった。

「深雪さん。一真君は一体何をしているんですか?」

「お兄様は過去の記憶を見ているのですよ。そしてそれをもう片方の手を媒介にして、投影しているのです。ですが、渡辺先輩が言ったところで映像が途切れてしまうのは何かで書き換えられたとしか思いません」

過去の記憶が見えるなんてあり得ないと思ったここにいるみんなだったが、もう片方の手に映っているのは確かに過去の映像らしい。それでも委員長が言ってるときだけ、映像が途切れるのは、何らかで記憶をいじったか書き換えられた可能性だと深雪と蒼太に沙紀は思った。

「ありがとうございました。では先ほど見せた壬生先輩の過去の記憶には何らかで書き換えたか上書きされた痕跡がありました。それと壬生先輩のこの一年間は無駄ではありませんよ。エリカが先輩の技を見て、言っていたように、エリカの知る『剣道小町』と呼ばれた剣技とは別人のように強くなっていたとね。恨みに憎しみというマイナスパワーで身に付けた強さは、哀しい強さかもしれません。でもですね、それは壬生先輩自身の手で高めた先輩の剣であり、恨みに凝り固まりでなく嘆きに溺れる事もなく、己自身を磨いた一年は無駄ではありません」

「・・・・・・・・・・」

「己自身の強くなるきっかけは人それぞれなのですよ。人は努力したという理由は数えきれないほどあるでしょう。努力をどれだけの時間をかけたのかは、知りませんが成果を否定するのであればこそ、費やした日々が無駄となると俺は思いますが」

「織斑君・・・・・」

俺を見上げる壬生先輩の目は、涙でいっぱいだったので身体を寄せてみた。そしたら壬生先輩が身体を預けるようにして、俺の服を握りしめて泣いていたのだった。まあこれに関して空気読まないバカはいないと思うけど。皆はおろおろしていたけど、俺は無言で肩を支えて、深雪たちは静かに目を閉じていたのだった。で、落ち着いて壬生先輩にティッシュを渡してから、同盟の背後組織がブランシュであることが語られたのだった。

「予測通りすぎて、あまり面白くありませんね。お兄様」

「深雪さんの言う通り、面白みがない。あまりにも本命すぎて」

「現実はそんな感じですよ、委員長に深雪。さて、問題が一つ残っていますね。奴らが今どこにいるのかを」

俺は今後の行動方針を、既定の如く発言したのだった。と同時に耳に付けている通信機から、奴らの場所辺りにドウター反応があると。それもいつもとは違うようで、奴らがいるところから反応があると。もしかしたら鬼がドウター化したように、敵の人間がドウター化したのではないかと推測をしていた。 
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