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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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入学編〈下〉
  現代魔法と超能力者との違い

新入部員勧誘(争奪?)というバカ騒ぎが終わったので、入学関連のイベントは一段落した。最も今回は主に報復活動をしてくる輩や差別用語発しただけで逮捕してしまったので、今年度で一番逮捕者が出た1週間でもあった。俺らのクラスでも、いよいよ魔法実習が本格的に開始をした。本格的な魔法の専門教育は高校課程だけど、入学試験に魔法実技が含まれている事は承知済み。なので、ここにいる生徒たちは入学時点である程度の基礎的な魔法スキルを身に付けている。授業もそれを踏まえて行われるからか、いくら基礎から体系的に教え直すといっても、実技が苦手な生徒にとっては入学早々ついて来れない事が多い。一科と二科の区分けは側面から見れば、この格差を考慮して双方に悪影響が出ないようにする合理的ではある。まあ一科の上級生の半分を俺らが逮捕して、差別用語を二度と言いませんという誓約書まで書かせたから問題ないし、陰口を叩いたとしてもすぐに電撃による痺れが発生するようになった。あるチップを埋め込んだので、それとこの区分けはある意味で一方的な切り捨てだと思われたとしても。

「940ms(ミリ秒)。一真さん、クリアです!」

「ふう。ようやくか、5回目でクリアとはな」

『一真様には制限という力をセーブしてありますから、しょうがないかと』

『まあそうだな。力を制限していないと、一科生並みに見られてしまうしな』

蒼太と俺での脳量子波で会話をしていたが、今俺達は魔法実技の真っ最中だった。今日の実技は、基礎単一系魔法式を制限時間内にコンパイルして発動する。という課題を二人一組になってクリアするのが今やっていた内容だ。蒼太は俺らの後ろで見ているが。起動式を読み込み、それを元にして、魔法師の無意識領域内に在る魔法演算領域で魔法式を構築して、発動する。これが現代魔法のシステムである。俺がやるのは、現代魔法や古式魔法でないのがほとんどだからそういうシステム無しでもできるが。今の俺は現代魔法を教わる生徒だから、このシステムを使っての実技をする。

このスキームの中で、機械に記録可能なデータである起動式を機械には再現不可能な魔法式に変換するプロセスを、情報工学の用語を流用して「コンパイル」と呼んでいる。現代魔法は、魔法発動に必要な工程をデータ化して起動式に変換し、これを元に魔法式を構築するというスキームで正確性・安定性・多様性を実現した。代償として超能力者のような念じただけで事変を改変する速度犠牲にさせたが。俺は超能力者ので多種多様に使えるから、現代魔法やCADをあまり使用していない。あくまでカモフラージュとしてだけど。

CADの使い方についていまいち理解できないのもいると思うから、説明でもしようかな。一方を魔法師でもう一方をパソコンと考えればいい。まず魔法師からだが、CAD→起動式→魔法演算領域→魔法式→魔法発動となる。その矢印の間に沿って説明すると、CAD→起動式は魔法師が使うのをCADで指定する。起動式→魔法演算領域は、CADが起動式を魔法師へ送る。魔法演算領域→魔法式は精神領域で起動式から魔法式へに変換させる。魔法式→魔法発動は魔法式を使って魔法を発動。

もう一方のパソコンで考えてみると、SSD→圧縮ファイル→CPU・グラフィックボード→画像や動画→ディスプレイに表示。説明すると、SSD→圧縮ファイルはSSDから圧縮ファイルを読み込む。HDDでも良いのではと思うけど、HDDはCADを使わない場合と考えた方がいい。読み込む速度が違うからだ。SSDとHDDはCADを使わない場合の早さの違いについてだ。圧縮ファイル→CPU・グラフィックボードは圧縮ファイルのデータを送る。CPU・グラフィックボード→画像や動画は解凍するためにCPUやその他が頑張る。画像や動画→ディスプレイに表示は最後に見たいものを開くと言う感じである。起動式は圧縮ファイルで魔法式は解凍されたファイルと言ったほうが分かりやすいかな。

話を元に戻すと、魔法式の構築という余分な工程を介在させる以上はこれはもうどうしようもないこと。魔法式の構造時間をゼロにすることはできないと思われるが、限りなくゼロぬい近付けることは可能。現代魔法が魔法式構築の速度を重視するのは背景があったのだ。CADも元々は起動式を記録する為だけのストレージ機器だったけど、すぐに魔法発動高速化に力点が置かれるようになった。今回使っているCADは、個人別の調整が不要である代わりに高速化支援の機能は全然組み込まれていない。今使っているのは旧式であるが、高校に使うにはちょうどいいモノでもあった。これがあるお陰でコンパイルの練習が今日の実習目的であるからだ。ペアである美月はすぐにクリアできたが、片方がクリアしないと居残りとなる形になるが、やっとクリアしたので俺はホッとしたのだった。

「意外でした。一真さん、実技は少々苦手だったのですね・・・・」

今回の課題のような単一系統・単一工程の魔法であれば、起動式の展開完了・読込開始から起算して魔法の発動まで500ms以内が、魔法師として一人前と呼べる目安となっている。1000msを切るのに5回の試技を必要とした俺にとっては、ホントに現代魔法というのは、面倒何だなと思った。

「意外というより、俺の魔法は現代でも古式でも違うから。ここの学校に入って実習があるのなら、現代魔法での実技をしなければいけないからな」

「確かに一真さんの魔法は、現代や古式とは違いますが。一真さんみたいな人が、実技が苦手だなんて」

少々首を傾げていた美月だったが。まあ確かにこの実技が、現代でなく超能力者のようなのだったら0から0.1の間だと思うんだが。どうも現代だと魔法発動までは時間がかかるようだ。

「俺が言うのもあれだけど、もし現代魔法の実技が人並みだったら俺はこのクラスにはいなかったさ」

「そうですね。一真さんが現代魔法の実技が得意だったら、完璧すぎる超人のように見えてしまうので近寄りがたいとは思いますね」

完璧超人はちょっと言い過ぎかと思ったが、まあ確かに今は使う者がほとんどいない属性使いでもあるし。唯一の末裔が光井さんだけど、彼女の名字に光が入っているから光に関しての魔法が得意と聞く。

「それに一真さんがここに入ったお陰で、一科との大きな溝を深めないで済んだのも一真さんのお陰なんですよ?」

「まあな。それが俺のやる使命だと思っている。一科と二科の事についての認識を改めるべきだとね。それに実力はあっても、現代と枠がハマらないから二科に入ったような感じだしな。ある意味で、二科になってよかったと思っている。そうしなければ、深雪がエリカたちと友人になれなかったのだからな」

「はい。ところで、さっきはギリギリでクリアになりましたけど。実践を想定するなら、一真さんはもっと速く発動できるのでしょ?」

美月がただの二科生なら、俺がやる実技については納得するのだろう。だが、彼女の目は特殊すぎる目、いや特別な目を持っていることを。

「なぜそう思う?」

「先ほどの実技ですけど、一真さん、凄くやりづらそうでした。現代でも古式でも当てはまらないのは承知しているのですが。母が翻訳家なのでこういう言い方もあれですが、英語の質問に英語で考えて英語で答えられる人が、無理矢理日本語で回答してそれを英訳することを要求されているみたいでした。あと最初の実技のときに、一真さんは一旦構成しかけた魔法式を破棄してコンパイルをやり直したでしょう?タイミング的に見ても、起動式の読込と最初の魔法式の構築が並行していました。あれを見て思ったのですが、一真さんは現代魔法なら、起動式を使わずに直接魔法式を構成できるんじゃないかって」

起動式を使わずに、CADという補助具で使用していなくても同等の速さで魔法を行使する。この技術は秘匿というのを義務付けられている。それを今回ので見抜かれたのだったけど、前回は会員制のカフェで見せたからだ。一瞬にして氷にしてからの液体と固体に戻した事も。というより現代でも古式を使わない俺にとっては、現代魔法についてはある程度学んでいるし。

「さすがにいい目をしているとしか言えないな」

俺はあくまで冷静にしていたが、美月はサッと蒼褪めた。美月は自分の目については隠しておきたいらしいが。こちらの技術については、もう知っていると思われるけど。それに秘匿ではなかったのだけどな。

「まあ確かに俺は起動式を使わずに直接魔法を使えるから、もっと早くできるよ。しかしあくまで現代魔法という鎖があるから、こういうのは隠しておきたかったけど。基礎単一工程から難しい魔法まで起動式無しでもできるけど、カモフラージュをしていたからね。現代だと五工程が限界かな」

現代魔法において工程という言葉には、魔法を発動するプロセスそのものと、目的とする現象改変を行う為に組み合わせられた複数の魔法の、一つ一つの魔法処理の二通りの意味を持つ。ここで一真が言った「五工程の魔法」は、五つの魔法処理を組み合わせて一つの事象改変を行う術式を意味している。ただ一真の場合は、「五工程の魔法」はあくまで現代魔法に沿った事であって本来なら工程無しで、一つの事象改変が出来る事を。

例えば卵をキッチンからテーブルへ魔法で移動させる場合は、加速・移動・減速(負の加速)・停止(移動の終了)の四工程が必要となる。移動魔法は物体の速度と線形の座標を書き換える魔法であり、加速の工程を省略すると対象物に慣性を無視した加速が掛かる。卵だと割れてしまうだろう。移動の工程を省いて加速と減速だけで処理しようとすると、卵は放射線軌道で飛んでいくことになり、恐ろしく精密な減速制御が必要となる。工程が増えても加速魔法である程度まで減速を掛けて、移動魔法で速度をゼロにする方が容易い。対人戦闘辺りになると、相手を吹き飛ばす魔法は移動の単一工程で終わらせる。相手にダメージを与える事が目的だから減速など必要ない。一真の場合は現代魔法とは違い超能力者みたいな感じであるため、ある程度の物の移動に工程などは加速・停止といった二工程で移動できる。例えば念力での移動や物量が大きいとエスパー系のエレメンツというより属性でサイコキネシスで一気に運ぶこととなる。

「五工程あれば、戦闘用でも十分だと思うのですけど・・・・」

一般論で言えば、民生用魔法は戦闘用魔法より多段階の工程が必要とされる。美月の言うように、単一工程から五工程の魔法で戦闘用魔法の大半はカバーされる事となる。

「まあ確かにそれで十分であり、多段階工程の魔法を使うとしても、それは現代魔法で使わないといけない。俺が使うのは百年前の超能力者と同じくらいだけど、他の奴らから見られたら、スカウトという名の拉致か洗脳をされるかもしれない。となれば多段階魔法を使うには起動式を必要となる訳で。処理速度が劣っていたとしてもそれを相応の評価で見られても仕方がない事だと思っている」

そこまで考えているから、現代魔法を学んでいるからな。俺の力は他勢力から見れば異能の力とされる。現代魔法でもBS魔法師という呼び名がある。魔法としての技術化が困難な異能に特化した超能力者のことであって、BSは「Born Specialized(ボーン・スペシャライズド)」の略で、BS能力者、或いは先天的特異能力者、先天的特異魔法技能者とも呼ばれる。「BSの一つ覚え」などと陰口を叩かれることもあるが、特性が要求任務と合致すれば通常の魔法師よりも優れた功績を残す者もいる。一真の場合もここに当てはまるのではと思いがちであるが、エレメンツ使い(属性またはタイプ使い)は最初から使えるし、エレメンツは日本で開発された最初の魔法師とされている。全ての魔法または全ての異能の力を無効化する力や他では魔法という扱いではなく、能力の一つだと思う。美月は魔法を使う目的がなかったが、美月は「目」をコントロールする為に魔法を勉強していただけだったらしく、将来のことや、魔法を使って何をしたいかは考えてなかったと少しエキサイト気味だったけどね。美月の独演会はエリカのツッコミで終わったが、そういう考え方もいいのだと思ったのだった。 
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