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告白させて

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第七章


第七章

「じゃああいつに言わせて」
「岡村さんにそれを聞いてもらう」
「それか」
「いいわね」
「それで行くわよ」
 女連中は男連中のそれぞれの顔を見ながら強い顔で告げた。こうして彼等は真彦と理佐のところに行ってその策略を仕掛けたのであった。
 まずはだ。男連中がだ。真彦を学校の屋上に誘い出した。
 学校の屋上には誰もいない。ただ青い空と白い校舎が見えるだけである。その二つを見回す場所で彼の話を聞くようにしたのだ。
 彼等はだ。真彦を前にして問うた。
「なあ、いいか?」
「聞きたいことがあるんだけれどな」
 何気なくを装って彼に問う。青い空の下で。
「御前岡村さんのことどう思ってるんだ?」
「実際にどうなんだよ」
「どうっていうのかよ」
 真彦は彼等の言葉を受けてだ。まずは険しい顔を見せた。
「それって言わないといけないのかよ」
「一つ言っておくが誰にも言わないぜ」
「それは約束するぜ」
 彼等はまずこのことを言った。
「絶対にな」
「それはな」
「言わないのかよ」
「ここにいるのは男だけだぜ」
 嘘だがあえて言ってみせた。
「それで何でなんだよ」
「隠しごとしても仕方ないだろ」
「なあ」
 それぞれ顔を見合わせて演技をしてみせる。
「それならな」
「そうじゃないのかよ」
「それもそうか」
 真彦は乗ってしまった。男同士で今屋上には彼等以外の誰もいないという現実もまた彼をしてそう誘い出してしまったのである。
「男同士だしな」
「内緒にしても仕方ないだろ」
「そうだろ?」
 これは実は別の意味で言った言葉だ。もう既に皆知っているという意味だ。
「だからな。言えよ」
「本当に秘密にするからな」
「そうか」
 ここまで聞いてだ。真彦も遂に頷いた。
「それならな」
「それでどうなんだ?」
「岡村さんのことな」
 このことを実際に問うてみせた。全員で真彦に促す。
「どう思ってるんだよ」
「好きなのか?嫌いなのか?」
「じゃあ言うな」
 真彦はまずは一呼吸置いた。心の整理をしているのだ。
「それじゃあな」
「ああ、それでな」
「本当はどうなんだ」
「好きだよ」
 彼は遂に言った。
「俺岡村さんのことが好きだ」
「本当か?」
「嘘じゃないよな」
「嘘なものか。入学式ではじめて見た時から好きだった」
 その時からだというのだ。彼は真剣そのものの顔で語る。
「あんな奇麗な娘いないだろ」
「まあ確かにな」
「奇麗だよな」
 これは多くの者が認めることだった。理佐は確かに奇麗だ。しかし真彦の言葉はこれで終わりはしない。彼は聞かれもしないのにさらに言った。
「それにな」
「ああ、それに」
「どうなんだよ」
「可愛いしな」
 今度の言葉はこれだった。
「あんな可愛い娘いないだろ」
「言葉一緒じゃないのか?」
「だよな」
「奇麗が可愛いに変わっただけでな」
「一緒だよな」
 男連中は今の真彦の言葉にはいささか呆れてしまった。しかしそれはすぐに抑えてそのうえであらためて彼の話を聞くのだった。
 
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