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lineage もうひとつの物語

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冒険者
  ウォレス


ずっと遠い過去、強大な力を持って野心に芽生えたウィザード・べレスを封じ込めるために施した封印術により砂漠と化した広大な地。
その砂漠には何時しか大きな蟻が徘徊しサソリを巨大化させ、砂漠の王者と云われるバシリスクを生み出した。
蟻地獄と云われる流砂の中には通称アリ穴と呼ばれる蟻の巣があり冒険者に人気の狩場となっていた。
アレン達ホワイトナイツのメンバーはその砂漠の中心にあるオアシスへ到達しテレポートできるようマーキングを済ませた後、アリ穴へ潜入すべく準備のためギランのアジトへ戻っていた。

「坊主は回復ポーションを多めに用意しておけ。如何せ敵の数が多い。お嬢ちゃんの回復魔法を頼ることはできん場面がくるはずじゃ」

経験豊富なガンドから指示を受けたアレン達は倉庫からアイテムを取り出し並べていく。

「エレナちゃんは多少動きにくくなるかもしれんがアイアンブーツに替えておけ。足元を齧られやすいからな。」

なぜかエレナだけは名前で呼んでいるのに納得できないアーニャは私の装備は?と不機嫌そうに聞いている。

「お嬢ちゃんはそのままでいい。坊主がお嬢ちゃんには敵を寄せ付けんはずだからな」

がっはっはと声を挙げて笑っているガンドに頷くとアレンを手伝うべく倉庫へ向かった。

「これでいいかしら」

エレナが装備一式を纏いくるりと一周回ってみせる。

「上出来だ。矢を半分ワシが預かろう。動きを鈍らせるのは得策ではないからな」

矢を半分受け取るとアレン達の準備も終わったようだ。

「ガンドさん。準備できました。レッドポーションを100個、緊急用にクリアーポーションを20個です」

「ふむ。レッドポーションを20個減らし、クリアーポーションを10個追加じゃ。何が起こるかわからんからな」

アレンは倉庫に駆け込み指示通りの数を揃える。

「揃ったようじゃな。では説明しようか」

テーブルに地図を広げてオアシスから指を滑らすように動かしていく。

「アリ穴の場所はこことここじゃ。オアシスを基点に両方とも三時間ほどの距離にある。この北東のアリ穴と西のアリ穴は繋がっておる。アリ穴の大きさが理解できただろう」

出入り口がフロアの端の方にあるとしても直線で約半日、一周すれば丸1日以上かかるほどに大きい。

「今回見つかったのは地下4階、食料は7日分用意する。既存のフロアのMAPは入手しとるから恐らく最短ルートを通り地下4階までの階段まで夜明に出れば夕方には行けると思われる。」

「オアシスで集めた情報だとかなりの冒険者が集まってるようですね。果たして俺達の出番があるかどうか」

「そこは心配しなくてええじゃろう。さっきも言った通りひとつのフロアは広大じゃ。それに今は通行しやすいように階段を作っている最中じゃろうて」

自然にできた穴なら整備しないと行き来は難しいだろう。
モンスターのいる場所での工事となるからには時間がかかるのは納得できる。

「なるほど。では1000アデナ用意しておけと言ってたのは工事費用ですか?」

「その通り。採算が取れるまでは通行料として支払うことになるじゃろう。先に潜れる特権を買うと思えば安いもんじゃ」

「では出発は後日ですね?」

エレナは空になった紅茶のカップを弄びながらガンドに問う。

「明後日あたりでいいじゃろう。それまでは休養じゃな。ワシは一度生活費を渡しに嫁に会ってくるとしよう」

「「「ええええええええええええええ!」」」

3人の悲鳴に似た驚きが挙がる。

「奥さんおられたんですか?」

アーニャが真っ先に食いつき質問攻めにしている。

「ああ、ハイネにな。子供もおるぞ。言ってもおまえさん達と同じくらいになるがな。」

「ハイネに寄ったとき一言も言わなかったじゃん。もしかして夜な夜な出かけてたのって酒場じゃなくて帰ってたの?」

聞くところによれば奥さん、長男と長女の4人家族。
ハイネで暮らしており息子と娘は働いているらしい。
父親がこんなところをフラフラしていてもいいのか?と疑問もあるが生活費は渡しているのでそれなりにうまくいっているのだろう。

「そうじゃ、おまえらも来るか?ご馳走してやるぞ」

家族に興味があった3人はその一言に大いに賛同しハイネへと向けテレポートしていった。

突然お客を連れて帰ったガンドが奥さんにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。



ガンド家にて一泊した翌日の夕方、ホワイトナイツはオアシスにて情報を集めつつアリ穴探索の準備をしている。

「出発は明日の夜明。北東のアリ穴を目指す。再度確認するぞ。穴の中では坊主が先頭、その後ろにお嬢ちゃんとエレナちゃんが並び最後尾にワシが立つ。一度新フロアの手前で情報を集めるとしよう」

焚火を中心に座るメンバーはガンドの言葉に頷き了承を示す。

「立ち振舞いも打ち合わせと変わらずじゃ。何か質問はあるかな」


三人を見渡し質問が無いことを確認すると立ち上がり他のキャンプへと歩いていく。
恐らく情報を集めに行ったのだろう。
アレンは焚火に薪を追加しグレートソードを持ち少し離れた場所で何時もの鍛練を開始する。
残された女性二人は持ち物をもう一度チェックするためテントの中へ入り込んだ。
そして一時間程経過しアレンが戻り休む準備をしているとガンドが一人の男を連れて戻ってきた。
一目で屈強な戦士というのがわかる体つきをしており革の鎧を身に付けている。
ガンドと同年代に見えることから知り合いなのだろう。
アレンは気にすることなく声をかけた。

「ガンドさんお帰りなさい。そしていらっしゃい」

笑顔を向け挨拶をすると焚火の傍へと案内しアーニャがお茶を用意する。

「ありがとう。俺はガンドの古い友人でウォレスという者だ。グルガンディというパーティーのリーダーをしている」

差し出された右手を握り握手を交わしながらアレンも名乗る。

「アレンといいます。ホワイトナイツのリーダーをしています。此方はアーニャ。もう一人テントの中にエレナというエルフがいます」

「たまたまそこで会ってな。こいつらもアリ穴へ明日向かうようじゃ。そこでなんだが合同で行こうかと思うんじゃが──」

「ガンドさんの友人であれば問題はないと思います。むしろ歓迎しますよ」

アーニャもアレンの言葉に同意を示しエレナも問題ないだろうと答えた。

「こちらとしても助かる。早速メンバーを呼んでこよう」

ウォレスは立ち上がりパーティーのキャンプへと向かっていった。

「あやつとは昔同じパーティーだったんじゃ。腕は確かじゃしメンバーも見たところそこそこやるようじゃ。未知の場所には危険が付きまとうからの。多いほうが安心じゃろう。それにメンバーを知ったらビックリするぞ」

そうしているうちにウォレスが戻りメンバーの紹介をしようとするが。

「サミエルさん!お元気そうで!」

アレンは直ぐ様駆け寄りサミエルの手をとる。

「アレンさんか!ガンドさんと同じパーティーとは!」

「なんだ?知り合いか?」

ウォレスにサミエルがオーレン戦の説明をすると驚いた表情でアレンを見る。

「すると君が魔神を斬ったオーレンの英雄か!」

「英雄!?たしかに魔神を斬りましたが皆の協力があってのことです。英雄と呼ばれるようなものではないです」

アレンの成した魔神斬りは有名になっているようでウォレスはしこたま関心している。

「どうじゃ?ワシらのリーダーに不足はないじゃろう?」

得意気なガンドにウォレスは頷きアレンを再度見る。

「ガンドが従うのも理解できる。成る程な──」

そしてオーレン戦の話に花を咲かせたウォレス達は残り二人のメンバー紹介を忘れ、ようやく気付いたのはそれから二時間後のことだった。
二時間も放置された二人の忍耐力は称賛を受けてもおかしくないであろう。
そのまま宴会に突入した盛り上がりは深夜遅くアーニャ、エレナの鉄槌が落ちるまで続いたという。

二日酔いの為翌日の出発は見送りとなった。
 
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