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ダブルデート

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第二章


第二章

「イタリア料理のね。オーナー兼シェフじゃないか」
「いや、それは関係ないだろ」
「全然な」
 二人は首を傾げさせて母の今の言葉に返す。
「それと俺達の見分けがつくって」
「関係ないだろ」
「まあそうだけれどね」
 母もそれは認めた。
「けれどあんた達も今の専門学校から出て」
「ああ」
「店に入るからさ」
「シェフの修行は怠るんじゃないよ」
 母はこのことは強く言うのだった。
「伊達に中学、高校の頃から仕込んでるんじゃないからね」
「わかってるさ、それは」
「料理なら任せてくれよ」
 これは強く言う二人だった。
「それはさ」
「ちゃんとさ」
「基本はパスタだよ」
 これだというのだった。
「パスタができないと何もできないからね」
「イタリア料理の基本だしな」
「やっぱりな」
「そういうことだよ。しっかりと勉強するんだよ」
「わかってるって」
「ちゃんとしてるからさ」
「じゃあ食べな」
 母はあらためて二人に話した。
「刺身だよ、今日は」
「ああ、それじゃあな」
「食べるか」
 こんな話をしてから夕食を食べる二人であった。そうしてだった。
 その日曜だ。二人は連れ立って駅前のコーヒーショップにいた。そこで二人向かい合わせで席に座りコーヒーを飲んでいた。
 そこを待ち合わせの場所にしていたのだ。まず和弥が言う。
「なあ」
「何だよ」
「まさかな」
「ああ、そうだな」
 直弥も兄に言葉を返す。
「同じ服持ってたなんてな」
「デザインだけじゃなくて色もな」
「全部同じだったなんてな」
「何だよ、これ」
 和弥はうんざりとした顔で述べた。
「本当に俺達これじゃあ見分けつかないぞ」
「つくのは父ちゃんと母ちゃんだけだな」
「親だから見分けはつくだろ」
 それはだというのだ。
「幾ら何でもな」
「けれど相手はな」
「ああ、そうだな」
「つかないとな」
「絶対にな」
 こう話す二人だった。見ればどちらも白いコートにセーター、それに下も白いズボンである。靴だけが黒くそれがやけに目立つ。
 だがその白尽くめのデザインまでそのまま同じの服の二人はだ。困った顔で言うのだった。
「なあ、せめてな」
「せめて?」
 和弥が直弥に言ってきた。声まで全く同じだ。
「アクセサリーで区別がつけばな」
「アクセサリーか」
「マフラーでもあればな」
 こう言う和弥だった。
「赤と青とか。そういう色でな」
「ああ、そうしたらよかったな」
 直弥も兄の言葉に頷いた。
 
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