| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハイスクールD×D 新訳 更新停止

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第80話 行け、オカルト研究部!

 
前書き
コカビエル戦です。
ちなみに前回使われなかったアルミヤさんの禁手(バランス・ブレイカー)の六つ目の能力も出ます。 

 
ガララ。
『ッ!』
「あ~、頭クラクラする…」
カリスが産み出した巨人達をアルミヤさんが一掃して、そう間も経っていない中、瓦礫に埋まっていたベルが瓦礫を掻き分けて出てきた
「生きていたのですかベルさん?」
「あれぐらいで死んでたら、とっくの昔に死んでるよ。もっとも、今の今まで目ぇ回して気絶してたんだけどな。てか、どうしたんだ?やたらとイライラしてるな?」
「……最高傑作を全てオシャカにされたんですよ」
「だったらまた作りゃ良いんじゃねえのか?」
「………簡単に言ってくれますね……」
イラつきを覚えていたカリスだったが、ベルの飄々とした受け答えに毒気が抜かれたのか、呆れ顔になって嘆息していた。
「そうか!分かったぞ!」
『?』
突如、何かに思考が至ったのか、バルパーが狂喜して自論を語り出した。
「聖と魔、それを司るバランスが大きく崩れているのなら説明は着く!つまり、魔王だけではなく神も…」
ズンッ!
『っ!?』
何かを語ろうとしたバルパーを光の槍が貫いた!
「バルパー、お前は優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れた故だろう」
「コカビエル、これは何のマネ?」
槍を放ったコカビエルに部長が怒気を含ませて尋ねる。
「俺はコイツらがいなくても別に良いんだ。カリス、ベル、お前達は引っ込んでいろ。余興はもう飽きた」
そう言ったコカビエルはイッセーに視線を向ける。
「小僧」
「っ!何だよ!」
「限界まで赤龍帝の力を上げて、誰かに譲渡しろ」
「っ!?なんだと!」
「私達にチャンスを与えると言うの。ふざけないで!」
「フハハハハハ」
部長の激昂に奴は嘲笑で返した。
「ふざけているのはお前らの方だ。この俺を倒せると思っているのか?」
『っ!?』
コカビエルから自身の力の強さの絶対的な自信を感じると同時に放たれた重圧なプレッシャーを感じ、俺達は身震いしてしまう。
そんな中、部長がイッセーの手を握る。
「部長?」
「……時間が無いわ。私が倒す」
部長の覚悟を見たイッセーは部長の手を握り返し、二人はゆっくりと前へと歩を進める。
『Boost!』
そして、進む歩に同調するかの様にイッセーの力が高まっていく。
『Boost!』
数分後、今の音声と同時にイッセーの籠手の宝玉が光り輝く。
おそらく、限界まで力が高まった合図なのだろう。
「来ました部長」
「イッセー…」
部長の呼び掛けに応える様にお互いに手を強く握り合い、イッセーは静かに目を閉じて籠手に意識を集中させる。
「赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」
『Transfer!』
その音声と同時に力が部長に流れていき、部長の魔力が一気に跳ね上がった!
「……なんつう魔力だ!」
「……この距離からでも魔の波動がビリビリ感じる!」
部長の高まった魔力にコカビエルは高笑いしだす。
「ハッハハハハ!良いぞ、その魔力の波!最上級悪魔の魔力だぞ、リアス・グレモリー!お前も兄に負けず劣らず才に恵まれているようだな!」
あれ程の魔力の波動を前にしてもコカビエルは嬉々としながら不敵な態度を崩さない。
「消し飛びなさい!」
部長は手に魔力を集中させ、一気に撃ち出した!
膨大な全てを滅ぼす魔力がコカビエルに襲い掛かる。
が、コカビエルは慌てる事無く、嬉々としながら両の手で受け入れやがった!
「面白い!魔王の妹!サーゼクスの妹!」
「くっ…ハアァァァァッ!!!!」
部長はさらに放出する魔力を強める。
「フッハッハハハハハ!!!!」
だが、それでもコカビエルを押し切る事ができず、次第に魔力が弱まっていく。
「……うぅ…」
そして、とうとう部長が力尽きて膝を着いてしまい、魔力はあっさりと霧散してしまった。
コカビエルは軽傷こそ負えど、深刻なダメージは皆無だった。
「……くっ…っ!?朱乃!?」
「雷よ!」
そんな中、副部長がコカビエルを雷で狙い撃つが、コカビエルは難なく翼で受けきっていた。
「俺の邪魔をするか?バラキエルの力を宿す者よ?」
「……私を…あの者と一緒にするな!」
副部長が激昂し、雷の威力が上昇するが、コカビエルに全くダメージを与えれていなかった。
だが、それよりもコカビエルの奴は気になる事を言っていた。
副部長をバラキエルの力が宿る者と言った事だ。
「バラキエル?」
「堕天使幹部の一人だ」
「雷光の二つ名を持つ雷の使い手だと聞くが」
「雷の…使い手…」
俺とゼノヴィアがバラキエルの事を話すとイッセーは何かを薄々と感じた様子だった。
おそらく、俺と同じ結論に至ったはずだ。
「装填聖剣(ブレット)、一斉掃射(フルバースト)!」
『っ!?』
副部長の雷を受けているコカビエルにアルミヤさんが聖剣の一斉掃射を放っていた!
「フッ」
コカビエルは雷を翼で弾き、巨大な光の槍を聖剣の雨に向かって放ち、聖剣の雨は光の槍で相殺されしまった。
「矢よ(セット)、翔べ(トリニティ)!」
「ハッ!」
それを予想していたのか、アルミヤさんは通常の聖剣三本を矢に変えて同時に放ち、千秋も別方向から風を纏わせた矢を放っていた。
「フン」
だが、コカビエルはアルミヤさんの矢を翼で叩き落とし、千秋の矢を風を無視して掴んでしまった。
「ちっ」
「っ」
「小賢しい」
そう言って、千秋の矢をへし折り、副部長の方を一瞥した後、部長の方を見据える。
「それにしても、悪魔に堕ちるとはな。まったく愉快な眷属を持っている、リアス・グレモリー」
「っ!」
「赤龍帝、聖剣計画の成れの果て…」
そして再び副部長を見据える。
「そして…バラキエルの娘!」
『なっ!?』
「なんだと!?」
「朱乃さんが…」
「バラキエル…堕天使の娘…」
コカビエルが告げた事に俺とイッセー、ゼノヴィアは驚愕していた。
「フフフフ、リアス・グレモリー、お前も兄同様ゲテモノ好きな様だ」
「くっ…兄の…我らが魔王への暴言は許さない!何より、私の下僕への侮辱は万死に値するわ!」
兄…魔王や自身の眷属への侮辱に怒りを露にする部長にコカビエルは地に降り立ち、濃厚な殺気と共に言い放つ。
「ならば滅ぼしてみろ!魔王の妹!赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)の飼い主!紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)よ!お前が対峙しているのは貴様ら悪魔にとって宿敵なのだぞ!これを好機と見なければ、お前の程度が知れると言う物だ!」
「っ」
コカビエルのとてつもない重圧に部長が怯んでしまう。
「やい!このクソ堕天使!」
「イッセー!?」
いい加減にコカビエルの口ぶりに怒りに火が付いたのか怒気を帯びた様子でイッセーが部長の前に出る。
「テメエ、これ以上部長や朱乃さんにふざけた事をぬかしてみろ!俺がテメエをぶちのめしてやるからな!」
「貴様、バカなのか?」
コカビエルは光で剣を作りながらイッセーを嘲笑う。
「ああ!バカで結構!いいか、そこを動くな!赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」
『Boost!』
倍加開始の音声が鳴ると同時に俺は木場、ゼノヴィアと共に、遅れて塔城、アルミヤさんも駆け出す。
「イッセー、お前は力を溜める事に集中してろ!」
「その間の時間稼ぎは私達が引き受ける!」
「分かった!」
木場とゼノヴィアが左右からコカビエルに斬り掛かる。
『ハアァァァ!!』
「フッ」
ガキィィィン!
それぞれの斬撃を光の剣で防いでしまう。
「ほう、聖剣と聖魔剣の同時攻撃か。面白い!」
「いい加減にそのニヤケ面をひっぺがす!」
「そこ!」
「ハァッ!」
前方、頭上、後方から俺、塔城、アルミヤさんで攻めに行くが…。
シュバババババッ!
『ぐあぁぁぁぁっ!?!?』
刃の様に振るわれた翼で難なく吹き飛ばされてしまい、塔城いたってはかなりの重症を負ってしまう。
アーシアがイッセーと共に駆け寄っていたので、大事には至らないだろう。
「フフフフ、フッフッフフフ」
倒れ伏している俺達を見据えて奴は愉快そうに笑みを浮かべていた。
「ッ!」
「っ!?」
「ハァァァァッ!!!!」
そんな奴を背後から燕が拘束(ホールド)し、頭上から鶇が殴り掛かる!
「ほう。だが、甘い!」
ドガァッ!
『キャアァァァァァッ!?!?!?』
だが、奴は燕の拘束(ホールド)を強引にほどき、燕を鶇に叩き付けて二人をそのまま吹き飛ばしやがった!?
「いちいちちょこまかと横槍を入れられても面倒だ」
その二人に光の剣で衝撃波を放つが、木場とゼノヴィアが空かさず間に入り込んで、剣を盾にする。
『ぐ…ぐぐ…ぐぁぁぁっ!?』
防ぎきりはしたが、衝撃で二人とも吹き飛ばされてしまった!
「フフ…ッ!」
もう一度光の衝撃波を放とうとする奴にアルミヤさんによる聖剣の雨が降り注いでいた。
「こんな物!」
その聖剣の雨を翼で全て叩き落としてしまった。
だが、アルミヤさんはその隙に奴の懐に入り込み、手に持つ剣を振るっていた。
「フゥッ!」
「ッ!」
ガキィィィン!
その一撃を奴は光の剣で受け止められる。
「ハァッ!」
「フフッ!」
そこからは別次元と思える程の剣戟の応酬だった。
アルミヤさんの斬撃をコカビエルは光の剣で防ぎ、翼による斬撃を織り混ぜながら反撃し、対するアルミヤさんはコカビエルの光の剣と翼による斬撃をかわし、受け流しながら鋭い剣戟を繰り出し、自身の因子によって剣が刃こぼれ、砕けるなりすればすぐさま別の剣に持ち変えて応戦していた。
入り込む余地が全くと言う程無い!
「ハハハッハ!良いぞ!良いぞ!下手に徒党を組まず、貴様単体で来た方がよっぽど良いぞ!」
「チッ」
だが、必死に応戦するアルミヤさんに対し、コカビエルは明らかに楽しんでいた。
「どうした?そんな粗悪品ではなく、先程の様に強力な聖剣を複製して見せたらどうだ?」
「……そう簡単に複製を行えれば苦労はしない!」
「フン、やはり消耗が激しい様だな」
「分かっているのなら聞くな!」
「フフ、万全な状態で尚且つ強力な聖剣を持ち得ていれば、あるいは俺を倒し得たやもしれないな!」
「そう都合良くは行くはずもあるまい!だからこそ、いろいろと小賢しい手を使わせてもらう!」
「ッ!」
そう言い、アルミヤさんは剣戟の応酬から高々とバック宙で離脱し、コカビエルから距離を取ろうとする。
「破操(ゼクス)、開始(オン)!」
その最中、今までとは違う別の呪文を詠唱しだす。
「剣の聖屑(ブレイドダスト)…」
「っ!?」
それと同時にコカビエルの足下にあるアルミヤさんの聖剣の破片が光り輝く。
「剣の聖屑(フォーメーション)・渦(ボルテックス)!」
破片はコカビエルを中心に旋回し、収束してコカビエルを切り裂こうとする。
「チッ」
コカビエルは翼で体を覆って防いでいた。
その隙にアルミヤさんは片手に弓を、もう片方の手に矢となる聖剣が二本、フリードが持っていた天閃のエクスカリバーを二本持っていた。
そして、二本のエクスカリバーを矢に変え、弓につがえる。
「矢よ(セット)、翔べ(ツイン)!」
天閃のエクスカリバーの能力なのか放たれた矢は光その物と言える程の速さでコカビエルに迫る。
ただでさえ速い矢に対して、コカビエルは破片の猛襲で身動きが取れない。
当たる!そう思った瞬間、コカビエルから光の衝撃波が発せられ、破片ごと矢が吹き飛ばされてしまった!?
「クッ」
「フフフ、惜しかったな。今のはさすがに肝を冷やしたぞ。」
「魔剣創造(ソード・バース)ッ!!」
「?」
木場の叫びと同時にコカビエルの周囲に複数の魔方陣が出現し、魔方陣から剣が現れた。
「まだ来るか。良いぞ来い!」
剣が一斉にコカビエルに襲い掛かるが、全て翼で防がれてしまう!?
「この程度か」
そう言って、全ての剣を翼で砕いてしまう。
「ウオォォォォッ!!!!」
だが、その隙に木場はコカビエルに近付き、突きを放つ。
が、その刃はコカビエルの指に難なく捉えられる。
空かさずもう片方の手に剣を作って斬り掛かるが、それも指によって捉えられる。
「フフ、バカが」
「まだだ!」
それでも諦めまいと、口元に剣を作り、柄を歯で噛み締めて、体勢を崩しながら一閃する。
「っ!?」
コカビエルもさすがにこれは虚を突かれたのか、顔を斬り付けられた。
だが、傷は浅く、頬を横一文字のり傷を作っただけだった。
「貴様…ッ!」
そこへ千秋の風を纏った矢が迫る。
「邪魔だ!」
コカビエルは光の槍を放る。
「キャッ!?」
光の槍は矢を飲み込み、そのまま一直線に千秋を襲った。
幸い、軽傷だったが、今ので黒鷹(ブラックホーク)が破壊されてしまった。
「ウオォォォォッ!!!!」
「何!?」
そんな中、木場が斬り掛かると同時に電流による身体強化をして駆け出していた俺は奴の眼前に迫っていた。
とことん虚を突かれた為かコカビエルは俺に反応できずにいた。
「猛虎…硬爬山ッ!!」
ドゴォォォッ!
「グホォッ!?」
ありったけの力を込めた八極拳を左の脇腹に打ち込んでやった!
「チィッ!」
ドガッ!
「ガハッ!?」
だが、決め手には至らず、木場のいる場所まで蹴り飛ばされてしまった!?
さらに倒れ伏している俺達へ目掛けて強大な光弾を撃ち込んできた!?
「くっ…」
俺達の前にアルミヤさんが割り込み、右手を前に出す。
そこから剣が幾重にも出現し、盾となった。
だが、光弾は剣の盾を粉砕しながらアルミヤさんに迫る。
アルミヤさんもさらに剣を出現させ、光弾をなんとか相殺させたが、右腕が光弾の余波でボロボロになってしまっていた。
空かさずコカビエルが光弾を撃ち込んできたが、そこへゼノヴィアが割り込み、光弾をデュランダルで受け止める。
「ぐっ…ハアァッ!!」
なんとか光弾を凪ぎ払ったが、再び光弾が撃ち込まれてきた!?
『明日夏、替われ!』
俺はドレイクに言われるがまま、人格を入れ替えた。
「このっ…ウオォラァッ!!」
ドレイクは光弾を雷刃(ライトニングスラッシュ)で受け止め、オーラで刀身を強化して光弾を切り裂いた。
切り裂かれた光弾はそのまま後方の校舎の一部に当たり、校舎を破壊してしまった。
「ほう、今のを全て防いだか」
コカビエルがそう言うが正直喜べない。
今のでアルミヤさんは右腕が重傷、ゼノヴィアはなんとか無傷だが疲弊、俺にいたっては疲弊に加え、何より雷刃(ライトニングスラッシュ)の刀身が根元からボッキリと逝ってしまっていた。
折れた刀身は少し離れた場所に突き刺さっている。
『わりぃ、疲弊してる時に光弾を受け止めてる状態で急にやったから結合が甘くなってた』
どうやら中途半端な状態で無茶した為に折れてしまった様だが、どのみち、ああしなければ雷刃(ライトニングスラッシュ)ごとやられていたんだ、贅沢は言えねえ。
とりあえず、使い物にならない武器を持っていても仕方がないので、雷刃(ライトニングスラッシュ)の残った柄と鞘をその辺に捨てる。
「しかし、悪魔もだが、教会の戦士(エクソシスト)のお前達も仕えるべき主を無くしてまでよく戦うものだ」
「何!?」
「どう言う事!」
「コカビエル!主を無くしたとはどう言う意味だ!」
「おっと、口が滑ったか」
「答えろ!コカビエル!」
「よせ!ゼノヴィア!」
コカビエルの態度にゼノヴィアは怒気を孕んで食って掛かり、アルミヤさんはそんなゼノヴィアを制止する。
「フフフフ、フッハハハハ、ハッハハハハハ!そうだな、そうだった!戦争を起こそうと言うのに今さら隠す必要など無かったな!フハハ!先の三つ巴の戦争で四大魔王と共に神も死んだのさ!」
『っ!?』
コカビエルが告げた事はとんでもない事実だった。
「う…嘘だ…」
神の死と言う事実にゼノヴィアは狼狽していた。
いや、ゼノヴィアだけでなく、この場にいる全員が驚愕していた。
例外は…。
「アッハハハハ!なんだよそれ!神が死んでるとか!アッハハハハハハハ!」
心底楽しそうに笑い飛ばしているベル。
「やはりそうでしたか」
「なんだ、お前も気付いていたのか?」
「あの聖魔剣を見た時から薄々は」
この事実を口にしたコカビエル、薄々と感づいていたらしいカリス。
「………」
教会の戦士(エクソシスト)にも関わらずゼノヴィア程ショックを受けていない様子のアルミヤさんだけだった。
「……神が…死んでいた……バカな事を!そんな話聞いた事も無いわ!」
「あの戦争で悪魔は魔王全員と上級悪魔の多くを失い、天使も堕天使も幹部以外のほとんどを失った。もはや純粋な天使は増える事すらできず、悪魔とて純血種は貴重なはずだ」
「そんな……そんな事……」
元シスターのアーシアも相当なショックを受けていた。
「どの勢力も人間に頼らなければ存続ができない程落ちぶれた。天使、堕天使、悪魔、三大勢力のトップ共は神を信じる人間を存続させる為にこの事実を封印したのさ」
「………嘘だ……嘘だ……」
ゼノヴィアは絶望しきった表情で地に項垂れてしまう。
「そんな事はどうでも良い。俺が耐え難いのは、神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味と判断した事だ!耐え難い、耐え難いんだよ!一度振り上げた拳を収めるだと!?あのまま戦いが続いていたら、俺達が勝てたはずだ!アザゼルの野郎も二度目の戦争は無いと宣言する始末だ!ふざけるな!!」
コカビエル学校初めて見せた憤怒の表情に思わず腰が引けてしまった。
「君達とて、種の存続が危うい状態だったのだろう?ならば賢い選択だと思うがね」
「それが甘っちょろいんだよ!!そんなのは臆病者のする事だ!!」
アルミヤさんの言い分にますます怒気を孕ませていた。
「……主はもういらっしゃらない……それでは、私達に与えられる愛は……?…」
「フッ、ミカエルはよくやっているよ。神の代わりとしてに天使と人間を纏めているのだからな」
「………大天使ミカエル様が神の代行だと……?…では、我らは……」
「システムさえ機能していれば、神への祈りも祝福も悪魔祓いもある程度動作するだろうしな」
「………ぁ……」
アーシアがショックのあまり倒れ、傷が治った塔城に支えられていた。
「アーシア…」
「………無理も無い……私だって理性を保ってるのが不思議なくらいだ……」
敬虔な信徒程、この事実は耐え難い物だろうからな。
「とは言え、神を信じる者は格段に減っただろう。聖と魔のバランスを司る者がいなくなった為、その聖魔剣の様な特異な現象も起こる訳だ。本来なら聖と魔は混じり合う事などあり得ないからな」
「あ~なるほど。じいさんが言おうとしてたのはそれの事か!あれ、でもボス、知られちゃマズイ事だからじいさん殺したんだよな?でもボスがバラしちゃったって事は、じいさん無駄死にじゃね?」
「ハハハッハ、確かにその通りだな」
「アッハハハハ、じいさん運ねえな!」
ベルは心底可笑しそうに高笑いする。
「まあ、どうでも良い事だ。今は戦争をする事だ!お前達の首を土産に俺だけでも、あの時の続きをしてやる!」
とんだ戦争狂だ。
だが、その戦争から生き残るだけの実力がある。
「あ~らら、戦意損失かな?」
ベルの言う通り、俺達は改めて目の前の存在の強大さを思い知らされ、意気消沈してしまっていた。
あの威風堂々としていた部長でさえ、覇気を失っていた。
「ふざけんなぁ!!」
『っ!?』
「……イッセー…」
そんな中、イッセーの叫びが響いた。
「お前の勝手な言い分で俺達の町を、仲間達を消されてたまるかぁ!!」
この様な状況の中でもイッセーの闘心は衰えていなかった。
いやむしろ、自身が住んでいる町の危機、仲間の危機、その元凶であるコカビエルに対する怒りで高まってさえいる。
そうだったな。
こいつはこんな事で諦める様な奴じゃないってのは。
改めてこいつの事をスゲエと思ったよ。
「それに…それに俺はな…ハーレム王になるんだぁぁぁ!!!!」
「……はぁ?」
イッセーが高々と宣言した目標…いや、野望を聞いたゼノヴィアは間の抜けた声を出していた。
まあ、普通はそんな反応だろうな。
だが、俺の中には呆れもあるが、こんな状況でも野望を諦めないこいつの愚直さに感心していた。
ある意味スゲエよお前。
「テメエなんかに俺の計画を邪魔されたら困るんだよ!」
「クク、ハーレム王?ハハ、赤龍帝はそれがお望みか。なら俺と来るか?」
「え?」
「ハーレム王などすぐになれるぞ。行く先々で美女を見繕ってやる。好きなだけ抱けば良い」
…………………。
コカビエルが告げた提案を聞いて、俺の思考が停止した。
「……………」
停止した思考のまま、チラっとイッセーの方を見る。
「……………」
イッセーは固まっていた。
「……そ…そんな甘い言葉で……お…俺が騙されるものかよぉ…」
そして、長い間の後、説得力の欠片も無いだらしない顔で拒否反応を示した。
…………………。
……………。
………。
…。
お…。
お前…。
「お前なぁぁぁぁぁ!!!!」
パァァン!
俺は武装指輪(アーム・リング)に何故か収納されていたハリセンでイッセーの頭を叩いていた。
「お前な!間があるのは良いが、もうちょいシャキッと拒否しろよ!」
「え!?間があるのは良いの!?」
木場に驚愕な表情でツッコミを入れられた。
「こいつのスケベさを考えれば迷うのは予想できる!こいつのこう言うスケベな所をどうこうしようなんて、もう諦めてるんだよ!それよりも!返せ!俺の感心を返せ!」
「お、落ち着けよ明日夏!?」
「誰のせいだ!誰の!」
俺はイッセーの襟首を掴んで思いっきり前後に揺らしていた。
「イッセー!!」
「はい!!」
部長の怒声でイッセーは背筋をピンっと伸ばす。
「す、すみません!どうにもハーレムって言葉に弱くて…」
「ハーレムに限らず、エロ方面全般に弱いだろお前!」
「……ごもっともです」
まったく、こいつは!
「そんなに女の子が良いなら、この場から生きて帰れたら、私がいろいろしてあげるわよ!」
「……………」
あ、あの部長、何故そこでそんなセリフが出るんですか?
「……マジですか?な、なら…おっぱいを揉むだけでなく、す、す、吸ったりとかも?」
……お前も何訊いてるんだよ!
「ええ。それで勝てるのなら安い物よ」
普通に答える部長。
……悲しいかな、この後の展開が読めてしまう…。
「ッ!!」
カァァァァァァッ!
『っ!?』
イッセーの目が見開いた瞬間、籠手の宝玉がかつて無い程輝き出した。
「あ、あれは!?」
「あんな輝き、かつて見た事も!?」
「神器(セイクリッド・ギア)は宿主の想いに応えて力を定めますから」
予想と寸分違わない展開になってしまった。
「吸う!ついに吸えるんだ!今の俺は、そう神すら殴り飛ばせるぜ!あ、神様いないんだっけ、アハハハ!よっしゃぁぁぁ!!やられてもらうぜコカビエル!部長の乳首を吸う為に!!」
『Explosion!』
その音声と同時にイッセーは駆け出し、コカビエルは光の槍を放つが、イッセーは難なく弾き飛ばしてしまう。
「フゥゥゥアァァッ!デヤァァァッ!!」
「グォアッ!?」
見事なストレートにコカビエルは後ずさる。
と言うか、俺や木場が虚を突いてやっと与えた物とは違い、真正面からぶつかって初めて与えたダメージであった。
「ぐっ……女の乳首を吸う想いだけでこれ程の力を解き放つ赤龍帝だと!?なんだお前は?どこの誰だ!!」
「覚えとけコカビエル!俺は兵藤一誠!!エロと熱血で生きる、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宿主で、リアス・グレモリー様の兵士(ポーン)だ!!」
コカビエルの問いにイッセーは高々と答える。
「……カッコ付けてるつもりかも知れないけど…」
「……いろいろとダメダメです、イッセー先輩…」
「……けど、あれがイッセーなんだと思うと、納得しちまうんだよな」
俺の言葉にオカ研のみんなが苦笑していた。
ちなみに…。
『ギャハハハハハハハ!!!!アッアッハハハハハハハ!!!!!!』
俺の中にいるドレイクは爆笑していた。
お陰様で、毒気がずいぶん抜けてしまった。
「なんか真面目な理由で戦意損失してたのがバカらしくなってきた」
「そうね。そうよ!私達はまだ負けていない!諦めた時が負けなのよ!イッセーに続きましょう!」
『はい部長!!』
さっきまで消沈していたオカ研のみんなの意志が奮い起つ。
「おいおいマジかよ!?さっきまでの絶望雰囲気が無くなっちまったぞオイ!」
「それを成したのが彼と言う訳ですが…その原料になったのが女性の乳を吸いたいと言う願望なのがなんと言いますか…」
あのベルやカリスさえも呆気に取られていた。
「フフ、下級悪魔の分際で俺の顔に触れるとはな!これは面白い!面白いぞ小僧!!」
「なんかボスまでヒートアップしてねえか?」
「していますね…」
「まあでも、水を指す様だけど、もう時間ねえんじゃねえのか?」
確かに、大地崩壊の術が発動するまでそう時間は無いだろう。
けど…。
「だったら、時間内に倒せば良いだけの話だろ!」
「それもそうだな。もう崖っぷちなんだ。進むしかねえよな!」
我ながら脳筋な考えだ。
俺の言葉にオカ研のみんなが頷いていた。
『お前ってさ、徐々にイッセーに感化されていってるんじゃねえのか?』
今さら何を…。
そんな物、あいつに憧れた次の日から当に気付いてるよ。
戦意を奮い起たせ、強大な敵にいざ挑もうとした瞬間…。
「じゃあ、少しだけ後押ししてあげようかな」
『っ!?』
突然の第三者の声にこの場にいる全員が驚愕した。
特に俺、イッセー、千秋、鶇、燕の五人が。
今の声は!?
ギャオォォォォオオ!
突如として一頭の龍が現れ、校庭に頭から突っ込んだ瞬間 、仕掛けられていた大地崩壊の術式と共に消滅した!?
「ッ!誰だ!」
コカビエルは声を荒げながら、声の発生源の方を見る。
俺達もその方角を見ると、片手に銃を持ちながら腕くみをし、校舎の壁に背を預けている、夜にも関わらずサングラスをかけている一人の青年がいた。
「通りすがりのこの学園の生徒の保護者…かな」
間違っちゃいないな。
なんせ、その青年は…。
「あ、兄貴…」
士騎冬夜、俺と千秋の兄である男であったのだから。 
 

 
後書き
途中、ギャグも含めながら進み、最後は明日夏と千秋の兄である士騎冬夜の登場です 。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧