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夏祭り

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第五章


第五章

 小林さんだった。小林さんをどうしても見てしまっていた。そうしてだった。
 綿菓子とたこ焼きの後は合流してフランクフルトもお好み焼きも何でも買った。まずはとにかく食べた。
 焼きそばもたい焼きもクレープもだった。とにかく皆で徹底的に食べた。育ち盛りだから皆食べることについては何の問題もなかった。  
 そして食べてからだった。僕達は遊んだ。
 射的もして輪投げもした。けれど景品は全く当たらない。
「絶対に当たらないようにしてないか?」
「そうだよな」
 この時はまだ景品は夜店の景品は頑張れば手に入るものだと思っていた。けれどそれが商売であり絶対に手に入らないとわかったのは大人になってからだ。
 そのことに気付かないまま。この時の僕達は話していた。
「まあ頑張ったらな」
「ああ、手に入るよな」
「糞っ、プレステ欲しいのにな」
「俺はラジコンだよ」
「私はぬいぐるみ」
 射的でも輪投げでもだった。そうしたのは全然当たらなかった。
 そうして誰が幾らやってもいい景品は手に入らないままで。僕達は金魚すくいもした。
 その中でだった。僕が金魚すくいの水槽の前に座ると。
 まただった。小林さんが隣に来た。膝を折って座って僕の隣に来て。
 静かに微笑んで。こう言ってきた。
「お隣いいかしら」
「あっ、うん」
 戸惑いながら。僕は答えた。
「いいよ」
「それじゃあね。やろう」
「僕金魚すくいはね」
 僕は首を捻って苦笑いになって話した。
「あまり得意じゃないんだ」
「そうなの?」
「殆んど捕まえたことないんだ」
「紙ってすぐに破れるからね」
「そうだよね。本当に簡単に破れるから」
「難しいわよね」
 小林さんも笑って僕に言ってきた。
「私もあまり得意じゃないの」
「そうなんだ」
「金魚ってすぐに逃げるし」
 その素早さもまた憎らしいまでだった。僕は今でも金魚すくいは苦手だ。
「紙突き破るし」
「少しでも大きい金魚はそうだよね」
 水槽の中の金魚達は殆んどが小さい。けれど中には何か大きいのもいたり黒いデメキンもいる。ああいうのは捕まえようとしても無理なのはこの頃もわかってきていた。
「何ていうかさ」
「金魚すくいって難しいよね」
「そうそう」
「けれどそれでもね」
 どうかと。僕に笑顔で話してくれた。
「金魚すくいって楽しいよね」
「そうそう、すぐに破れるけれど」
「破れまいって必死になってするから」
「面白いんだと思うわ」
 こうした話をしながら僕達は金魚すくいをした。けれどだった。
 僕も小林さんも一匹も捕まえられなかった。二人共紙をすぐに破られた。
 僕は紙を見ずに入れて一匹捕まえようとしたらその端をやられた。小林さんは跳ねた大きい金魚に水に入れようとしたそこで破られてしまった。
 こうしてだった。僕達は金魚すくいを終えて。お店の前から去ろうとすると。
 他の皆もだった。それぞれヨーヨーやスーパーボールを手にしながら言ってきた。
「そこの金魚強くないか?」
「滅茶苦茶元気いいだろ」
「変に大きいしな」
「何なんだよ」
 こんな話をしてだった。僕達は合流してだった。そうして。
 夜店のとこから離れて。境内の静かな場所に来て。
 そこで夜店で買った花火を出して火を点けて。今度はそれを楽しんだ。
 普通の持つ花火だけじゃなくて鼠花火やロケット花火もやりながら。僕達はこんなことを話した。
「今年のお祭りっていつもより楽しいよな」
「ああ、かなりな」
「皆といるから?」
「そうじゃないの?」
 皆花火をしながらこう話す。
 
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