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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第一章 地球編 北アメリカ
  第1話 終わりの始まり

 
前書き
今から約百年後の未来の話。

技術は驚異的に進歩‥‥‥しなかった。
反重力により空を自由に飛び回れるプロペラ機も、
空間を歪曲させて長距離の瞬間的な移動を可能にするドアも、
設定的には生まれるはずだったドラ〇もんも完成しなかった。

 それには大きな理由があったのである‥‥‥。
 

 
20xx年世界中でほぼ同時に発生した超大規模地震と
それにより引き起こされた大津波により
世界の人口はおよそ十数億人程になってしまう。
しかし、大地の底に眠っていた不思議な微生物の発見と
それを用いた復興により、人類は自らの祖先が破壊した地球を
癒す権利を得たのである。

その微生物は、原理はわからないが吸収したエネルギーを
数十倍にして放出するという
ものすごくエコで汎用性のある生物らしい。

これにより、世界中で自然力発電所が主流になり
環境問題も少しずつだが改善に向かっており、
食糧問題も1日2食程で1日分以上のエネルギーを
摂取できるこのご時世では大分マシにはなっていた。
このままいけば地球はまさに完璧な星となっていただろう。
しかし、この再び平和となった生活は
たった一度の"掃除"によって完全に崩れてしまうのであった‥‥。


21xx年 ーアメリカー
あれから15年たった‥‥‥。現在世界の国の数は約37ヶ国。
小国はほとんど消滅し、大国も残ってはいるが
破壊されるのは時間の問題かもしれない。
だが“奴ら”も北や南寄りの寒い国では、
長時間活動できないらしく、あまり信仰されていないらしい。

逆に、赤道上やその周辺の国は完全に絶滅していて
“奴ら”の無法地帯と化してしまったらしい。
人間の絶滅した国は風化した建物などを破壊しながら
徐々に森へと姿を変えているらしい。

オレの名前は明日来《アスラ》。今年で16歳になる。
最悪の年に生まれた子供である。
名字がないのは、今人類は敵味方言ってる場合ではなく
みんな家族として迎えられるため
名字がほとんど必要なくなったからである。

腰の左側に"日本刀"を携えている。 
ものすごい切れ味で上手に使えば
鉄をも斬り裂くと言われているらしい。
(ちなみに俺は鉄を斬ろうとしたことがないので、事実は不明。)

‥‥‥え? “奴ら”って?  
この質問に答える前にオレは建物に身を隠した。  
‥‥‥“アレ”のことさ。
オレは目線を壁の向こうの巨大生物に向けた。
そこには、黒くてツヤのある鎧のようなものに覆われた
6本脚の 大きな角の生えた、まるで甲虫の様な生物がいた。

奴らは"鎧虫"。オレらの星の虫とほぼ同じ姿をしているが
体長は2m~10mほどで、虫嫌いの人は
想像するだけで失神しそうなほどの大きさである。
名前はこっちの虫と同じ名前で呼ばれている。

全身を頑丈な“鎧骨格”で覆われていて
並の武器では傷一つ付けられない。
もちろん“鎧骨格”あまり硬くない"鎧虫"もいるが
代わりにものすごいスピードで移動する。

全身に弱点と思われるものが点在しており
それを破壊していくと"鎧虫"は自重さえ
支えきれないほど弱ってしまい、その場から動かなくなる。

今見ている奴は多分カブトムシの仲間と思われる姿をしている。
オレはそいつにに夢中になって、後ろに迫る影に気付けなかった。
 
 ツンツン  

後ろの影はオレの肩をつついた。

「うおおぁぁっ!!?」

オレは急いで後ろを振り向いた。
そこにはいつもの見慣れた顔があった。

「あんまり油断してると後ろからやられちゃうよ。」 
「びっくりした~ マリちゃんか。」

彼女はマリー。オレと同い年で少しタレ目気味。
アメリカ人のクォーター(4分の1)でほぼ日本人顔をしている。
髪も眼も真っ黒。本名は真理《マリ》だが
みんなは親しみやすいようにマリーと呼んでいる。
(オレはマリちゃんと呼んでいる。)
‥‥‥とってもかわいい。

「みんな待ってるよ。おばさんなんて眉間にシワ寄せてたし。」

後の一言がなければ、喜んで帰っていただろう。

「それは怖いなぁ。帰りたくねぇ~。」

と言いつつ オレは家まで急いで走った。
 


    **********



 ーアジトー

「遅ぉぉ~~~~~~~~い!!」

 パコォォォォン!

「いっだあぁぁぁぁぁッッ!」

おばさんの振り下ろしたフライパンが頭頂部にヒットした。

「~~~ッッ"鎧虫"がうじゃうじゃいて
 なかなか帰れなかったんだよ!」
「ならそんなとこ行かなけりゃいいでしょうがっ!」

もっともな意見を言われて、オレは反論できなかった。

この人はクレアおばさん。 
俺を今日まで育ててくれた大切な人である。
29歳でとっても綺麗。たいてい何でもできることが自慢。
とても厳しくて、常にお仕置き用の
裏のボコボコになったフライパンを装備している。
ギャグマンガ的システムによって意外と軽症で済んでいるが
あまりやられすぎると、死ぬのではないかと時々思う。

「ハッハッハッ。その辺にしといてやれ、クレア。」
「あなたは少し優しすぎよ!だからあんな事までする子になったのよ!」
「いや、そのままじゃ死んじまうよ。」

この人はハロルドおじさん。クレアおばさんの夫である。
34歳の元軍人。今もその経験を生かして戦っている。
普段は気さくだが、戦場ではまるで鬼の様だと言われている。
(おばさんはそこに惚れたらしい。)
最近の仕事は家事と、クレアおばさんの怒りの炎を消火することである。

「でもあんまり無茶はするなよ。迅さんからも注意されたろ?」

 ガチャ 

「ただいま~。」

遠くから聞き慣れた声が聞こえた。

「おっ 噂をすれば。おーい 迅!
 こいつまた"鎧虫"見に行ったらしいぞ。学ばないよな~。」
「本当ですか?それは。何回も言っただろ、アスラ。
 "鎧虫"を見に行くと遅くなるって。」
「いや、そっちじゃないだろっ。」 

今ツッコんだのはホークアイ。オレより一個年下の今年で15歳。
射撃の名手で、視力は3.2ぐらいあるらしい。狙った獲物は逃がさない。

『いや、俺の説明のきっかけ雑すぎだろ!』

彼はこれから多分ツッコみの仕事が増えるだろう。

さっき帰ってきた男の名前は迅《ジン》。
(さっき聞いたけどもう一回言っておく)
オレの師匠で兄貴的存在。
糸目で顔の右側に大きな"火傷の痕"がある。
極度の天パだが、イケメン。
実は人間ではないが、それを踏まえてみんな彼を親しく思っている。         
見た感じは20代後半だが、実年齢116歳でこの家族の中で最も最高齢。
長く生きているゆえの穏やかさを持っている。昔はすごく偉かったらしい。

「さぁ、修行に行くぞ!アスラ!」
「おー!!」
「待ちなさい!まだ話は終わってないわよぉーー!!」

二人は猛スピードで逃げて行った‥‥‥。 



**********



 ー近くの森ー

カンッ コンッ ガッ ガンッ コンッ カンッ パカンッ!!

森の中に2人が木の棒で闘う音が響いている。

「ふーーっ。疲れたから少し休憩しよう。」
「わかった。」

アスラは体中にアザができていたが、迅は傷一つついていなかった。

「迅、ずりーぞ!たまに3mぐらいフツーにジャンプしやがって!」
「ごめんごめん。でもそうしないと避けれないくらいの良い太刀さばきだったよ。」
「1発ぐらい受けろよ!こっちはスゲー痛いんだぞ!」
「戦闘においてたった1つの傷が命取りって事を教えたかったんだよ。」

ごもっともだった。しかしアスラは叫んだ。

「にしても限度ってもんがあるだろ!!」
「おっ、そろそろ夕食の時間かな?」

辺りにはいい匂いが漂っていた。多分カレーの匂いだ。

「話をごまかすなぁぁーーー!!!」

アスラは森に響き渡る程の大声で叫んだ。


 ー再びアジトー

「みっちり迅さんにしばかれたみたいね。体は大丈夫なの?」

アスラにスプーンを渡しながらクレアは聞いた。

「おばさんのフライパンよりはマシかな。でもやっぱり少し痛いや。」

心配になったマリーはアスラに聞いた。

「腕は使える?食べさせてあげよっか?」

アスラは焦って、そこまでボコボコにされてないから大丈夫だよ
と言い、笑ってごまかした。

「二人とも、まるで夫婦みたいねぇ。」

ニヤニヤしながらクレアは言った。

「そんな事ないよ。ね、アスラ?」
「あ、あぁ‥‥‥‥」

マリーはいつもの様子だが
アスラはものすごく動揺していた。
その様子をみんなはほのぼのと見ていた。

 夕食後ー

「さっきカレーに何か固いものが入ってた気がしたんだけど‥‥‥もしかしてオレの歯かな?」

口の中に指を入れて調べたが、歯は欠けていないようだ。

「クレアおばさんに診てもらったら?」

マリーが心配そうに聞いてきたので、

『そこまでしなくても大丈夫だよ』

と言おうとしたがその瞬間、急に視界が狭まった。
地面が左右に激しく揺れている。
 
マリーが声をかけているように見えるが、何も聞こえない。

一瞬体重がなくなった。 


  ドシャッ!!


アスラはその場に大きな音を立てて倒れてしまった。 
 

 
後書き
はたしてアスラの身にいったい何が起こったのか?
 
次回 第2話 アスラ、人間やめるってよ お楽しみに! 
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