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リンネの記憶

作者:とあーる
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チャプター5 その後

「…さ……ばさ……つばさ…」
声が耳に入ってくるが目が言うことを聞かない。
――昨日と同じだ…
さすがに昨日みたいに技は出されなかったが僕の頬に痛みが走った。
―ペチンッ
「…い…いつつつ…」
そうして強制開眼されると目の前にいたのは婚約済みの彼女だった。
「…あぁ…みさと…おはよう」
「おはよう…じゃないでしょ。いったい何時間寝てたと思ってんのよ!?」
「ん…と…二日ぐらい?」
「あなた、あの事故のあと一週間くらい寝てたわよ」
「えぇっ…」
「ずいぶん…うなされてた…夢でも見てたの?」
夢じゃない、きっとあの世界は夢じゃない。そのことは僕の手のひらが語っていた。
――あ…あのときコロンがつかませてくれたネックレス…きっと…ホントに行ったんだよね…きっと…
「ほら、ボーっとしないで」
彼女は僕に抱きついてきた。
僕も抱き返す。
――暖かい…
その暖かさでポケモン世界での生活を思い出す。
――初めて話しかけてくれたツバサ、いろいろリードしてくれたリリィ、相づち役(笑)のイーゼル、そして起こしてくれて森の中で告白してくれたコロン…
その全てが思い起こされて僕はいつの間にか泣いていた。
「つばさ…大丈夫…?」
「あ…あぁ…大丈夫…」
今思い返してみればあの世界はいろいろこの世界と繋がってたんだなと思う。ツバサもいたし、リリィもエヴァのミサトさんに似てた。もしこの世界とあの世界が繋がってたとすれば…
僕は走り出す。病室を飛び出し病院を飛び出し走った。あの森へ。
どこへ行くかはわからないがひたすら本能に任せて走る。
やがて着いたのは自宅から歩いて15分くらいの程近い位置にある森だった。
入り口は『ヤグルマの森』に似ていた。とともに再び昨日のような動悸に襲われる。
「ハッハッハッ…」
やはりあのときと同じような感じだ。ってことはここが『ヤグルマの森』と対応してるのか?
奥に行くほど動悸は激しくなる。息があがり苦しい中で精一杯の力で叫ぶ。
「コロン~!ツバサ~!イーゼル~!リリィ~!…」
返事はない。やはりここには彼らいないのか。
そう思っていたなか草むらから物音がするので振り返るとそこにはキツネのような顔があった。
「コ…コロン?」
言ったが人間の言葉はポケモンには伝わらないようでロコンはなかなか反応しない。
――やっぱダメか…
僕は肩を落とす。と、ひとつのことを思い出した。
――コロンから貰ったネックレスが…
僕はネックレスをロコンに向けてかざす。するとロコンは目を輝かせこちらに歩み寄ってきた。間違いない。コロンだ。
コロンは近寄ってくると僕の足に抱きついた。
「コロン…約束通り…会いにきたよ…」
僕はコロンに話しかける。
「私も…ずっと待ってた…」
コロンは僕の言葉がわからず僕はコロンの言葉がわからないはず。だが、その言葉だけははっきりと聞こえてきた。

~一年後~

僕とみさとは無事に結婚式を挙げ、ワンルームのマンションを借りて静かに暮らしている。

コロンはというと…
我が家の押し入れに住まっていた。もちろんリリィやイーゼル、ツバサと一緒に。
僕はポケモンの世界で数日間過ごしていたお陰でポケモンと少しだけ心を通わせるようになっていた。
コロンはたまに僕とみさとが一緒に寝ているダブルベッドに入ってくる。もはや僕とみさとの間は彼女の特等席だった。みさとにばれないように僕はコロンと心を通わせる。


ずっと…一緒にいようね…


~Fin~ 
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