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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第五十四話

 
前書き

今回はギベオン回収の回です+
そして…『ヤツ』が登場です。
 

 









───カノンノとメリアとの休日から数日…事態は進展した。
封印次元を作る材料である一つ、ツリガネトンボ草のドクメントが漸く組み上がったのだ。
これで残す材料はウズマキフスベのドクメントだけとなった。

だが…進展したのは良いことだけではなかった。
増殖したジルディアのキバ。それが原因でジルディアの世界の浸食が速くなっていた。そのせいで静まっていた大地を奪い合う争いが、再び始まろうとしていたのだ。
各地の一致団結も、世界の浸食を前に脆くも崩れさろうとしていた。

今は一応、ウリズン帝国のアガーテ王女とその騎士団が争いが起ころうとしている各地を回って止めてくれているらしいけど…それもいつまで保つかは分からない状況であった。



──────────────────



「──ギベオン?」


「──えぇ、なんでもそれが必要らしいわよ」



──一枚の依頼書を見ながら僕が聞くと、前に立つアンジュが頷いてそう応えた。
なんでも…ドクメントの転写を可能にするための機械の回路に、ギベオンという鉱物が必要らしい。

ドクメントの転写…その提案を出したのはソフィとしいなであった。
世界の浸食を続けるジルディアのキバ。浸食の原因であるキバはディセンダーの力であっても消すことは出来ないが…浸食はディセンダーの力で消すことが出来る。
その力が皆にあれば、というソフィの言葉と、ドクメントの転写が出来ないか、というしいなの言葉をヒントにハロルドをはじめとする研究組メンバーがドクメントの転写を可能にする機械を作ろうと動きだしたのだ。

ただこのドクメントの転写は…事故が起これば肉体の形態崩壊か溶解などが予想される危険なものでもあるけど…少なくとも、なにもしないよりかはいい、という事らしい。


「それで…そのギベオンって何処で取れるの?」


「なんでも隕石に含まれてるらしいんだけど…ちょうど何年か前にルバーブ連山の山頂が隕石で欠けたっていう事件があったから、もしかしたらそこにあるかもしれないってハロルドが言ってたわ」


「ルバーブ連山かぁ……前は途中で赤い煙…ラザリスや暁の従者と色々あって結局山頂まで登ってないんだっけ。…またあの長い山道を登るのかぁ……」


アンジュの説明を聞くと僕は以前の事を思い出し、思わず苦笑いをしてそう言葉を出す。アンジュはそんな僕の様子を見て同じように苦笑を浮かべた。


「確かにあの山道は大変だものね…。…そんな衛司には悪いんだけれど…できればついでに調べてきて欲しい事があるの」


「調べてきて欲しい事……?」






アンジュの言葉に僕は小さく首を傾げると、アンジュは僕に一枚の依頼書を手渡してきた。
その依頼書に目を移すと、その依頼書にかかれていた依頼者の名前は…アレクセイ・ディノイアであった。

「アレクセイって…確かウリズン帝国騎士団の総騎士団長で、前にアガーテさんと…後ミルハウストさんと一緒に来てた人だよね」


「えぇ、その総騎士団長さんであってるわよ。調べてきて欲しい事はその依頼書に書いてある通りよ」


アンジュの言葉に僕は小さく頷くとその依頼書に目を通す。

依頼書にかかれている内容はこうであった。

──ウリズン帝国とその付近の村で数ヶ月程前からある噂が出始めたらしい。
その噂とは、ルバーブ連山に『見たこともない魔物』が出没した、というものであった。
始めはほんの小さな噂であり、その頃各地への謝罪や協定で忙しかったウリズン帝国軍はその事は本当にただの噂だと、特に気にしてはいなかった。

だが、その噂は日を増す毎に大きくなり、帝国軍も討伐隊を結成し、ルバーブ連山へと向かった。
しかし結局…討伐隊は魔物を見つける事は出来ず、何かの見間違いだったのだろうと、討伐は止めとなった。


だがそれから数日…再びその魔物の噂が出だしたのだ。
帝国軍は再度討伐隊を送るが、再び見つからず…止めると再び目撃例が出…今もまだその繰り返しが続いているらしい。



「…それで、その調査と討伐を僕達に依頼してきた、って言うことか」


「そういう事みたい。…噂ばかりで帝国軍が討伐に行くと必ず現れない謎の魔物。帝国軍は結局また各地を回らないといけなくて忙しいみたいだから、私たちの所に総騎士団長さん直々に依頼してきたのよ」


依頼書に書かれた内容に目を通して僕が言うと、アンジュは小さく頷いてどこか真剣な表情で僕の持つ依頼書に視線を向けた。
噂だけの謎の魔物…かぁ…。


「…分かった。一応山頂まで行く道のりで探してみるよ。それで…その魔物の特徴は?大きな噂になってるんなら、姿を見てる人がいる筈だし」


「…その事なんだけど…私もそう思って向こうの人達に聞いてみたのよ。そしたら返ってきた言葉が……」


僕の問いにアンジュは小さく溜め息を吐くとそう言いながら僕を真っ直ぐと見、一旦言うのを止め間を開けると…再度口を開いた。



「──その謎の魔物は……なんでも身体を『結晶』で覆われた姿をしているらしいの」








───────────────────





「──いつもは山頂に霧が濃く掛かっているが、今日はそこまで見通しは悪くなさそうだ」


「…うん、そうみたいだね。この感じだと、山頂まで行けそうかも」



──ルバーブ連山。僕達は山頂に向かう山道を歩きながら、アスベルが下から見える範囲での山頂の様子を見て出した言葉に僕は頷いて答えた。

依頼を受け、ルバーブ連山の山頂に向かうメンバーは僕、アスベル、メリア、レイヴンさんとなった。


山道を歩きながら、アンジュからのついでの依頼…『結晶を身にまとった魔物』を探してもいるけど…今のところ見つかってはいなかった。

『結晶を身にまとった魔物』…アンジュが話していた特徴だと十中八九、ジルディアの浸食を受けた魔物だろう。
…だけど、このルバーブ連山…それにその付近にはジルディアのキバは出現していない。だから此処には少なくとも、浸食した魔物は現れない筈なんだけど……。



「……衛司…?」


「っと…なんでもないよ、大丈夫」


ふと、不意に隣から聞こえた声に僕は顔を向けると小さく首を傾げて僕を見つめているメリアの姿があった。考えすぎてたのか、多分表情に出ていたんだろう。
僕は小さく笑ってそう言うと、そっとメリアの頭を撫でた。メリアはそれで分かったのか『ん…』、と小さく言って頷くと心地良さそうに目を細めた。

…本当、メリアやカノンノのこんな表情を見ると考えことが吹き飛ぶくらい安心するや。


「ぁ~…お熱いねぇ、衛司君。熱すぎておっさん、見てて胸やけしそうだわぁ~」


「…茶化さないでくださいレイヴンさん」


メリアの頭を撫でているとその僕達の様子をニヤニヤという感じの表情で見ながらそう言ってきたレイヴンさんに、僕は小さく溜め息を漏らしてそう言い返した。
この後、しばらくレイヴンさんに茶化され続けたけどアスベルに先を急ぐよう言われ、僕達は再度山頂を目指して歩き出した。





────────────────


「──…どうやらやっと山頂のようだな」


「やっとかい。おっさん、もうヘトヘトだわ~」



──若干霧のかかった山道をしばらく歩き、僕達はようやく霧の失せた山頂らしき場所についた。
山頂までの道のりの中でも、噂の魔物を探したけど…やっぱり見つける事は出来なかった。
…やっぱり噂は噂だったのかな…。








「…っ……!」


「…?どうしたの、メリア?」


「……血の臭いがする…。…それに…嫌な感じも…」


突然、隣を歩いていたメリアが立ち止まり、何か嫌な物を見たかのように表情をしかめた。僕は思わず首を傾げて聞くと、メリアは表情を変えないままそう静かに答えた。
血の臭いに…嫌な感じって…。


「メリア…それって…」


「皆、誰かいるぞっ!」


メリアに再び聞こうとするが、それは前を歩いていたアスベルの声に止められた。
アスベルの言葉に前を見ると…そこには人の後ろ姿があった。
やや遠く、本来なら一体何者なのかは分からない筈だけど…僕はその後ろ姿に、見覚えがあった。



「…あれは…まさか…っ!」



見覚えのある後ろ姿に僕は思わず声を出した。
紫色の髪に、髪と同じ色をした紫のマント。
見間違う筈はない…『僕で操られていた時に見た後ろ姿』だからだ。


「なんで…貴方が此処にいるんだ…サレっ!」


僕は皆の前まで歩きそう後ろ姿の男に声を上げた。僕の言葉に皆が驚いた表情を浮かべ、そして男はゆっくりと此方に振り返った。


「──おや、おやおや。これは奇遇だねぇ…衛司君、それに…アドリビトムの皆さん」


「…っ…サレ…っ!」


「あ~らら…こりゃまた本当に面倒なのにあっちゃったわね~…」


振り返った男──サレは僕達を見ると不気味に口元を吊り上げてそう言葉を出した。
サレの姿を見てメリアは短刀を手に持ち、レイヴンさんはメリアと同じように弓に手を掛けてそう呟いた。


「サレ…どうして貴方が此処に…。それに貴方はウリズン帝国に捕まった筈じゃ…」


「うん、まぁ確かにあの時は危なかったねぇ…。君達のおかげで捕まり欠けたわけだし。それでどうして此処にいるかは…単なる力試しさ」


「力試し…?」


「そう…力試し」


サレは僕達を見ながら不気味に笑みを浮かべ続け、ゆっくりの立っていた位置を動いた。
するとそこには…サレが前に立っていた為に見えていなかったが…身体の至る所から血を流し、無残に息絶えている巨大な黒の獣のような魔物…『ベヘモス』の姿があった。


「これは……っ!」


「フフ…フヒャヒャっ!そう、僕がやった…僕がやったのさっ!僕の新たな力でっ!!」


「新たな…力…?」


「フヒャヒャヒャっ!そう、力さっ!…見せてあげるよ、君達にも…この力をっ」


不気味に笑みを続け、サレはそう声をあげると、自分の右手を上げて指を鳴らす。
すると突如…サレの周りから赤い煙が出現し、サレを包み込んだ。



「赤い煙…っ!?」


「なんでサレに……」


赤い煙の出現に皆が驚く中、赤い煙は少ししてすぐに消えた。
そして煙が消えた場所には…身体の至る所から結晶を生やした…まるでラザリスを模したような姿をしたサレが立っていた。


「な…その姿は…っ!」



「フヒャヒャヒャヒャっ!その通りっ!僕はジルディアの…ラザリスの力を手に入れたのさっ!」


驚く僕達を前に、両手を広げながら高らかに笑い、そう声を上げるサレ。
…それじゃあ噂の『結晶に覆われた魔物』って……サレの事だったのか!


「…っ…衛司…凄く嫌な感じが…サレからする…っ!」


「…うん、分かるよ…正直…あのサレはヤバい感じがするよ」


サレの姿を見ながらメリアがそう声を出し、僕はそれに小さく頷いて答えて木刀を構えた
見ていて分かる…今のサレは以前、ヴェイグと戦った時より遥かに高い殺気を纏っていた。


「フフ…本当はすぐに帰る予定だったけど…君達が
来たんだ。ちょうどいいや…君達でも『力試し』してあげるよ」


僕達が構えたのを見てサレは不気味に笑みを浮かべたままそう言うと結晶で出来た細剣を取り出し、僕達に突き付けるように構えた。


「さぁ…楽しませておくれよ。この僕を……ジルディアに、ラザリスに使える騎士…『狂風』のサレをねぇっ!ヒャァァハハハハハっ!」



──こうして、狂気に堕ちた元騎士との闘いが始まった。





 
 

 
後書き


以上、第五十四話、如何だったでしょうか?


むちゃくちゃですよね、えぇ…←




【総騎士団長まいたけ←】
名前だけ再登場のまいたけ様です←
原作ではアレな人でしたが、此方では綺麗な設定のまいたけ様です←



【『狂風』サレ】
皆様お待ちかね、サレ様再登場です+
とりあえず『狂風』については、基本ジルディアに浸食された魔物って名前の頭に『月光』とか『煉獄』とかついてたりするので、それと同じような感じにしてみました+
だから厨二臭くてサーセン←←



皆様、感想やご意見など、良ければ宜しくお願いします+ 
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