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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第二十話 シグマ

 
前書き
シグマとの決戦 

 
ルインを転送させたエックスとゼロはシグマパレスの長い長い回廊を抜けた先に立ち塞がる巨大な扉。
その奥からはその存在を誇示するかの如く、凄まじい威圧感。
エックスとゼロは互いに見合いながら頷き、巨大な扉に手を掛けるとゆっくり左右へと開いて行く。
そしてこの戦いの元凶となったかつて最強のイレギュラーハンターと謳われたシグマがいた…。

エックス「…………」

エックスは鋭く、シグマを睨み据えた。
全ては奴が元凶だ。
奴さえいなければ戦いなど起きなかった。
ルインも沢山の仲間も死ぬことなどなかった。
対するシグマは不敵な笑みを浮かべてエックスを見つめる。

シグマ「ほう…いい目をするようになった…迷いがない」

エックス「シグマ!!俺はお前を許さない!!」

シグマ「VAVAは来ず、ルインがいないところを見るとあの2人は脱落したか…ふふふ…可能性を持つ奴らもこの新たな時代の流れについていけなかったというわけか…」

ゼロ「ふざけるな…!!」

怒りに震えるゼロは全ての元凶を睨み据える。

シグマ「出来ることなら今すぐにでも手合わせしたいのだが…まずはこれを試させて貰う」

シグマの背後から現れたのは犬型のメカニロイドだった。
メカニロイドはエックス達に牙を剥くがエックスとゼロはそれを冷ややかに見つめる。
メカニロイドが凄まじい勢いでゼロに迫るが、ゼロは屈んで回避し、メカニロイドの顎に拳による強烈な一打を与え、吹き飛んだメカニロイドに間髪入れずにエックスが砲撃を放ち、メカニロイドを残骸へと変えた。

ゼロ「こんなガラクタで今の俺達の相手が務まるか…!!俺達を倒したいならお前の全てを賭けて掛かってこいシグマ!!」

シグマ「やはりお前達には可能性がありそうだ。我々レプリロイドの無限の可能性がな。」

エックス「シグマ!!狂ったお前に可能性なんかない!!」

シグマ「エックス…それはお前が本当に考えていることではない。」

エックス「………」

シグマ「お前の薄っぺらな…正義だと考えているものがお前にそう思わせているだけだ!!エックス、ゼロ。お前達の可能性は充分見せてもらった。私と共に来い。我々でレプリロイドだけの楽園を共に創り上げようではないか」

ゼロ「下らん…」

シグマの戯れ言をゼロは吐き捨てるように言う。

ゼロ「レプリロイドだけの世界なんて幻だ!!どれだけ優れていようと人間と同じようにレプリロイドも不完全な存在だ。互いに支え合わなければ駄目なんだ。」

エックス「俺達はルインに誓ったんだ。お前を倒して平和を取り戻すと!!」

ゼロが戦闘体勢に入り、エックスもバスターを構える。

シグマ「そうか…ならばもう何も言うまい。行くぞエックス!!ゼロ!!」

エックス「お前の野望はここで終わらせる!!」

ゼロ「全て終わりにしようぜ。シグマ!!」

先に放たれたのはエックスのスパイラルクラッシュバスター。
リミッターを外され、真の力を解放したフルチャージショットはゼロのフルチャージショットにも匹敵する程だ。
まともに受ければシグマとてただではすまない。
しかしシグマはそれを容易く回避するとエックスに拳を突き出す。
エックスは咄嗟に顔を横にずらしてかわし、シグマの胸に蹴りを入れる。
エックスは格闘向きのレプリロイドではないが、ファーストアーマーの出力をそれぞれの部位に回せば、それなりの威力が出る。

シグマ「温いぞエックス!!」

額から放たれたバスター弾を受け、エックスは僅かに吹き飛ぶ。
ケイン博士の最高傑作の名に恥じない頑丈なボディを持っているシグマには格闘向きではないエックスの蹴りは大したダメージにはならない。

ゼロ「シグマーーーーッ!!!!」

咆哮しながらゼロはシグマに殴り掛かる。
エックスと違い、元から高い格闘能力を持つゼロ。
そして老人によりパワーアップした今ならシグマにも有効なダメージを与えられるだろう。

シグマ「フ…ッ」

シグマは不敵な笑みを浮かべ顔を逸らし、ゼロの拳を回避する。

ゼロ「はああああ!!」

ゼロの強烈な回し蹴りがシグマに向けて繰り出される。
シグマはそれすら回避した。
ゼロの蹴りはシグマではなく壁を粉砕した。

シグマ「今度はこちらから行くぞ!!」

シグマがゼロに向けて駆け出す。
ゼロも同様にシグマに向けて駆け出した。

ゼロ「うおおおおおおお!!」

凄まじい速さで繰り出されるゼロの拳。
シグマはそれを回避し、ゼロに向けて渾身の蹴りを放つ。

ゼロ「ぐっ…うわあああああ!!」

ゼロは咄嗟に左腕でガードしたが、耐え切れずに吹き飛ばされた。

エックス「ゼロ!!」

エックスがシグマに殴り掛かる。
シグマもエックスに殴り掛かり、互いの拳が激突する。

エックス「うおおおおお!!」

何度も拳を突き出すエックス。
シグマは余裕の笑みを浮かべながらも拳を激突させながらエックスを称賛する。

シグマ「素晴らしいぞエックス!!とても射撃に特化したレプリロイドとは思えん程のパワーだ!!お前はもはやB級ハンターなどでは有り得ない!!」

エックス「ここで倒す…倒してみせる!!お前を!!」

シグマ「ならばやってみるがいい!!」

急激に速度を増したシグマの拳。

エックス「が…は…っ」

エックスは避ける間もなく、鳩尾に拳を受ける。
そして僅かに浮き上がった身体をシグマに蹴り飛ばされた。

ゼロ「アースクラーーーッシュ!!」

エネルギーを収束させた拳でシグマの背中を穿とうとするゼロだが、エネルギーを纏っていない腕を掴まれ、地面に叩きつけられる。

シグマ「はあ!!」

ゼロ「ぐはっ!!」

シグマは天井に向けてゼロを投げ飛ばし、ゼロは頭から天井に激突した。

エックス「スパイラルクラッシュバスター!!」

シグマに向けて放たれる砲撃。
それは回避したにも関わらずシグマの肩を僅かに溶解させた。
ゼロも追撃をかけるようにバスターを連射する。
シグマはビームサーベルを抜き、それを切り払う。

シグマ「やはり強くなった…この私にΣブレードまで使わせるとはな」

シグマはΣブレードを構えるとゼロとエックスに切り掛かる。
ゼロは近くに落ちていた鉄パイプを拾い、それを剣の代わりにして受け止める。

シグマ「フフフ…まるであの頃を再現しているかのようだ!!」

ゼロ「あの頃だと…?」

シグマ「ゼロ、貴様は昔、私と戦ったことがある」

ゼロ「馬鹿な…メモリーにはそんなことは残されていない。嘘ならもっとマシな嘘を吐いたらどうだ!!」

シグマ「メモリーに無いからと言って何故嘘だと言い切れる?こうしていると懐かしいと思わないか!!?」

ゼロ「……………」

言われてみればゼロは妙な既視感を感じていた。
ゼロの脳裏にある映像がフラッシュバックしていく。
鉄パイプを握り締め、Σブレードを持つシグマと戦っている光景が過ぎる。

ゼロ「(この…光景…どこかで……)」

ゼロの意識がそちらに僅かに向いた途端、シグマはΣブレードで鉄パイプを切り裂いた。

ゼロ「っ!?しまった!!」

シグマの口車に乗ってしまい、隙を曝してしまったことにゼロは思わず自身に憤る。

エックス「ゼロ!!」

ゼロを援護するために牽制の二段階チャージショットを放つ。
シグマは回避のために距離を取る。

ゼロ「エックス…」

エックス「大丈夫か?ゼロ」

ゼロ「すまん。いつもお前に油断するなと言っておきながら…」

エックス「気にしなくていい。何としても勝つんだ。絶対に」

ゼロ「ああ」

シグマ「エックス、ゼロ。今からでも遅くはない。これが最後だ。私と共に来い」

エックス「断る」

ゼロ「冗談じゃない」

シグマ「そうか…残念だ。お前達は私と似ているというのにな」

エックス「何だと!?」

ゼロ「俺達とお前を一緒にするな!!」

シグマの思わぬ言葉にエックスとゼロは激昂する。

シグマ「私はレプリロイドの可能性を見るため…そしてそれ以上に人間を憎んだ。そしてお前達は私を憎んだ。憎しみがお前達を私と同じ域にまで到達させた」

ゼロ「違う!!」

シグマ「何が違うというのだ!!?私の人間を憎む心とお前達の私を憎む心のどこが違うのだ!!」

エックス「シグマ…何故そこまで人間達を憎む!?」

シグマ「それを聞くか…いいだろう。教えてやる。かつて私のような第一世代型レプリロイドが生まれた時、我々レプリロイドの権利など無いに等しかった。レプリロイドは人間の命令で戦場、環境破壊により人間では活動出来ない場所へと送り込まれた。」

ゼロ「それは…仕方の無いことだ。俺達レプリロイドでは人間とは活動出来る範囲が違い過ぎる」

シグマ「そうだ。かつてルインも言っていたが、我々レプリロイドはエネルギーが続く限り人間が活動出来ない場所でも活動が可能だ。人間の肉体と我々のボディとでは耐久性だって雲泥の差がある。私もそれを理解していたからこそ、戦場で戦い、そして人間が活動出来ない場所へと向かった…だが、徐々に人間達のやり方は日増しに悪化し、レプリロイドによる実験が繰り返された。」

レプリロイドはどのくらいの熱に耐えられるのだろう?

どのくらいの冷気に耐えられるのだろう?

新たな兵器の実験台にしよう。

最新のウィルスを試してみよう。

人間達のレプリロイドへの暴虐はケインがレプリロイドの権利をもぎ取るまで続いたのだ。
シグマはレプリロイドの権威であるケインの作品であるためにそれから逃れることが出来た。
しかし実験台にされ、スクラップへされていく同胞を見てきたシグマの人間への嫌悪は日増しに増していった。
シグマの拳は怒りに震えていた。

シグマ「…エックス、ゼロ。我々が…我々が何をしたというのだ?遥か昔、戦争を起こし、環境を破壊し続け、己の首を絞め続けてきたのは他でもない人間達だろう!!」

エックス「………」

凄まじいシグマの…今まで奥底に封じ込めていた怒気にエックスとゼロは気圧されてしまう。

シグマ「人間達の支配など生温い…!!死ですら奴らにとっては一瞬の苦しみでしかない。レプリロイドの楽園を創った後に…奴らが我々にしたように生かさず、殺さず…地獄の苦しみを味あわせてやるのだ!!」

シグマがΣブレードを構えてエックスに切り掛かる。
しかしエックスはルインのZXコンポジットのセイバーモードでΣブレードを受け止めた。

エックス「…お前達の境遇には同情はする。だけど、俺はお前のしていることが正しい事とはどうしても思えない」

シグマ「何だと…!!」

エックス「お前は人間達だけじゃない…レプリロイド達まで傷つけ過ぎたんだよ!!どれだけ正しいことを言おうがお前はレプリロイド達も大勢苦しめたんだ!!」

思い出す。
かつての事故の現場を。
反乱軍の爆破テロのために下敷きになって機能停止してしまったレプリロイド。
その瓦礫の近くで泣いていた子供。
自分を助けてくれたレプリロイドのために、子供は泣いていた。
エックスには自分の身を犠牲にしてまでを子供を救った優しさがとても尊く、子供の流した涙がとても悲しいと思えた。

エックス「俺は…この戦いで死んでいった者達のためにも……お前には負けない!!」

シグマ「戯れ言を!!」

ゼロ「そうだなエックス…俺達はイーグリードやルイン…そして沢山の仲間達の想いを背負っているんだ…!!焔降脚!!」

エックスがシグマを抑えている間に炎を纏った飛び蹴りをシグマの顔面に喰らわせるゼロ。
それを受けたシグマがたたらを踏む。

ゼロ「やるぞ!エックス!!」

エックス「ああ!!」

ゼロとエックスがそれぞれのフルチャージしたバスターを構え、そしてエックスは左手にZXバスターを持ち、シグマに照準を合わせる。

ゼロ「エネルギー、フルチャージ!!」

エックス「トリプル!!」

ゼロ、エックス「「クロスチャージショット!!!!」」

3つの砲口から放たれた砲撃は一つとなり、巨大な砲撃はシグマの両腕、Σブレード、そして下半身を消し飛ばした。

シグマ「ぐぅ…!!」

下半身と両腕を失ったシグマにはもう戦闘能力は残されていない。
額の内蔵武器があるが、それだけではエックスとゼロの相手にはならない。
エックスとゼロの勝利である。 
 

 
後書き
シグマ撃破。
しかしまだまだ終わりませんよ。 
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