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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter43「理想と真実の物語〜分史世界破壊命令(前編)」

 
前書き
久しぶりの一週間更新。

調子がいいので載せますね。 

 
分史世界の存在、その発生による弊害を聞かされたルドガーは休むことなく地道に借金返済を続けていた。
そんな中ヴェルから分史世界探知の報せが入る。

「考えてみたら今回のお仕事ってルドガーにとって初任務なんやね」

クラン社に向けエルを連れ歩くルドガーの表情は少し緊張からか強ばっているようにはやてには見えていた。
そんなルドガーを見ているティアナ達フォワードはルドガーでも緊張することがあるのだと、親近感がわいていた。

『なんで借金の人が』

ヴェルから詳細な情報を聞くためクランスピア社に入ると、受付でノヴァとヴェルが話していた……いや言い争っているというべきだろう。
ヴェルの堅い口調が崩れていることから2人が知り合いだと思ったのだが、なんと2人は双子の姉妹だったのだ。
どうやらノヴァはユリウスのことを聞き出そうとしていたようだが当然あのヴェルが話す訳がない。
それからジュード達がやってくるとノヴァはその場を後にした。ジュード達に何故ここに来たのか尋ねると、ルドガーの分史世界破壊任務に同行させてもらうために頼みに来たようだ。

『これ以上巻き込むわけにはいかない……』

しかしルドガーはジュード達の頼みを断る。
彼らの存在はルドガーにとって今や大切な仲間同然であり、とても心強く感じていた。
だからこそ、これ以上この一族のしがらみに巻き込むたくなかった。
ましてやこれからやることを思えば……。

(やっぱりや……ルドガーは)

ルドガーは自分を犠牲してでも何かを守ろうとする人間だということは出会った時から何となく感じていた。
彼は自分の生きる未来を守るため、自ら消滅を望んだリインフォース・アインスと重なって見えるのだ。

『巻き込まれるんじゃないよ。分史世界が、源霊匣の障害で、この世界を危険にさらすものなら……僕は、この世界を守りたい。そのためにルドガーの力を貸してほしんだ』
『…………』

ジュードの力を貸してほしいという言葉に虚を突いた申し出にルドガーは目を丸くするが、彼の決意を感じてルドガーはジュードと握手を交わした。

「感激ですぅ!皆さん善い人達ですよ~」
「アタシにはお人好しの集まりに見えるけど……まぁ、悪くねーな」

握手を交わす2人を見ていたリインは感動したのか目を輝かせており、ヴィータは呆れた口調ではあるが、彼らの絆を気に入ったのか笑み浮かべていた。ヴェルも機密を守るとならジュード達の同行を許可し、早速任務の説明へと入った。

『分史対策エージェントの任務は、分史世界に進入し、時歪の因子を破壊することです。時歪の因子は分史世界を形成する要。通常、“何ものか”に擬態しています』
『“何ものか”の手がかりは?』

効率よく時歪の因子を破壊したいなら、やはり手掛かりは必要になるため、最低限の情報をアルヴィンが求める。

『時歪の因子である可能性が高いのは、正史世界と『最も異なっているもの』です。物質だけでなく、人に取憑いている場合もありますので、ご注意を』

以前偶然分史世界に進入し、戦った異形のユリウスやローエンがあの分史世界の時歪の因子だったのだろう。
物はただ壊すだけですむが、人は違う。時歪の因子が取憑いている人間を“破壊”するということは命を奪うことと同じ。
いや……結局はどちらも同じこと。
世界を壊すことが何を意味するのか……常に頭に入れて置かなければならない。
ヴェルからGHSに分史世界の座標を受け取ると、人目につかない場所へ移動する。
分史世界に進入する瞬間を一般人に見られないための配慮だ。
皆の準備と覚悟を確認し、全員が頷くのを見るとGHSの座標を頭の中でイメージし探り、分史世界との進入点を繋げる。初めて自らの意思で分史世界へ進入に成功した。ここはトリグラフ中央駅のようだ。
だが正史世界と何も変わっていないように見えるからか本当に違う世界なのかと疑問に思ってしまう。

そんな時、ルドガーのGHSにヴェルから連絡が入る。

「というか使えるんだね」

異世界にもかかわらずGHSの通話が使用可能なことを不思議に思ったフェイト。
それもヴェルのルドガーの骸殻の力を利用しているという説明で納得がいったようだ。
時歪の因子は骸殻能力者が接近すれば反応が現れ、時歪の因子を破壊すればこの分史世界は消滅する…のだが……

『ただし時歪の因子を破壊できるのは、骸殻能力者の武器だけです』
『そうなの!?』

レイアが驚いた声で聞き返す。
つまり時歪の因子を見つけるのも破壊するのも全てルドガー頼みということになるわけだ。
更に……

『最後に、時歪の因子を破壊しない限り正史世界には戻れませんので、ご注意を』
『なっ!?』

最後の最後にとんでもない注意事項を今さら淡々とヴェルが一同に告げた。
ヴェルを呼び止めようとしたがすでに通話を切られてしまっていた。

「めちゃくちゃ大事なことやないか……」
「とにかく時歪の因子を探すしかないみたいだね」

本腰を入れなければこのまま永遠にこの分史世界に閉じ込められる。
自分達も手伝えることができればと呟くはやてとなのは。
その時、駅のアナウンスが正史世界ではテロで破壊されたはずのアスコルド行きの列車到着を告げる。

「正史世界と最も異なるものに時歪の因子が取憑いている可能性が高いのなら……」
「正史世界でテロで全焼したアスコルドに時歪の因子があるかもしれんな」

フェイトとシグナムは時歪の因子の発見率の高い条件に当てはまるアスコルドが怪しいと予想し、アルヴィンも同じことを言っている。
だが断定するにはまだ早いため、情報収集をレイアとジュードに任せ、ルドガーと残りのメンバーはアスコルド行きの列車に乗り込む。

『来たのか、アルフレド』

自然工場アスコルドに到着したルドガー達一行。
そこへアルヴィンを“アルフレド”と呼ぶ男が現れた。

『ジランド!』

男のことをそう呼ぶアルヴィン。
声色と表情から鑑みるとこの2人の関係は決して良好ではないのかもしれない。

「アルフレドって?この人今アルヴィンさんに向かってそう言ったよね?」
「そういえばルドガーから聞いたことがあったなぁ。アルヴィンって名前は偽名みたいなもので、アルフレド・ヴィント・スヴェントっていう名前やったはず」

はやては以前ルドガーから聞かされていた。
事情があって本家とは疎遠になっているが、実は名家の御曹司と聞かされた時は人の生きる道は分かれてしまうものだと思ったものだと思い出す。

『ここは分史世界。やってみる価値はあるかと』
『……だな』

正史世界では不仲だったのだろうが、ここは分史世界だ。
それにジランドは分史世界のアルヴィンと勘違いしている。分史世界の自分自身と成り代わり上手くジランドを利用すれば目的の達成に近付けるかもしれない。

『すまない、叔父さん。以後、気をつけます』
『……わかればよい』

「「「叔父さんだったのか」」」

アルヴィンのジランドと会った瞬間の感じから仲の良い間柄とは思わなかったが、まさか身内の人間だと思わなかったのか、数人の六課メンバーの驚きの声が重なる。アルヴィンは叔父さんとジランドを呼び、アスコルドの成果を見せてほしいと頼む。ジランドは了承し、工場の案内と説明を始める。このアスコルドの工場はジランドが捕獲した大精霊アスカからエネルギーを採取し食料を生産しているらしい。自然の枯渇により滅亡への道を進むエレンピオスにとってこの精霊利用は未来を左右する産業に発展するとか。

『こいつ、時歪の因子しゃないよな?』
『いいや、違う』

アルヴィンが小言でルドガーにささやき、ルドガーは違うと答える。そうと分かればもうジランドは必要ないと取ったのか、アルヴィンはアスカが捕らえられている場所を聞き出すとジランドを気絶させる。

『ごめんな、叔父さん』
『アルヴィン、乱暴すぎですよ!』

アルヴィンのやり方を咎めるエリーゼ。アルヴィンは気に留めずアスカを確かめるべきだと話す。彼女と同じくアルヴィンの行いが過ぎているのではと声を漏らすスバルだったが、決して忘れてはならないことを思い出し、複雑な表情になる。

『この世界を壊しにきたんだ。そうだろ、ルドガー?』
『…………』

そう。この世界は分史世界であり、正史世界を救うために破壊しなければならない。
アルヴィンやローエンが言うことは正論なのだろう。
無論ルドガーも理解しているが、そう簡単に割り切れないのかもしれない。
工場のセキュリティを解除しつつ、ルドガー達はアスカが拘束されているドーム中央にたどり着いた。

「ま、眩しいですぅ!」
「まるで小さな太陽みたいですね」

腕で目を光から庇いながらリインとシャーリーが呟く。強烈な光を放つ装置。恐らくあの中に居るのが大精霊アスカなのだろう。ローエンに時歪の因子反応が出ているか質問されるが、まだ何とも言えない。
アスカを拘束する装置を破壊すれば何かわかるかもと考えたアルヴィンは銃で装置を破壊しようとするが、背後から銃弾がアルヴィンの銃に命中する。

『どういうつもりだ、アルフレド!……俺の手柄になにをっ!』

振り替えると意識を取り戻したジランドが怒りの表情でこちらへ迫ってくる。

『きゃあっ!』
『エル!』

エルを庇うように身を乗り出すルドガー。
ジランドは銃を乱射し説得をアルヴィンが試みたが通じない。
その内の1発の流れ弾が装置に命中してしまう。

『ア、アスカが!』

流れ弾の命中で損傷した装置から解放されるアスカ。
六課メンバーが自業自得だと思う中、ルドガー達はアスカと戦い、辛くも勝利した。
力尽き、その場に倒れたアスカからは時歪の因子反応はないが、そのまま放置するわけにもいかない。
ルドガー個人の感情であるが装置を破壊しアスカを解放することを選ぶ。

『クルスニクの一族……』
『!』
『まだカナンの地を見つけられないのか?』
『しゃべった!』

言葉を話すアスカにルドガーやエルは驚く。

『始祖と同じく、我らとの共栄を望なら、カナンの地へ急ぐことだ。そろそろ二千年……オリジンが魂を浄化するのも限界だろう』
『オリジン……?』

「オリジンって、ジュードさんが作ろうとしてる源霊匣のことじゃないの?」

オリジンという名前が源霊匣と同じことに疑問を持つフェイト。
アスカが言うにはオリジンは“無”を司る最強の大精霊だとか。
同じ大精霊から最強と恐れられるオリジンはいったいどれほどの力を有しているかなど六課メンバーには想像もできるはずもない。

『大精霊オリジン……ジランドは、そいつから源霊匣の名前をとったのかな』
『私がなんだと……?』

後ろにいたジランドが近づいてくる。しかもアスカに向け無数に銃弾を撃ち続け始める。

『貴様等……なにをしたのかわかっているのか!こいつが居なくなれば、数十万人分の食料生産力が消えるんだぞ!エレンピオスの未来の可能性を逃すわけには---!』

性格はどうあれ、ジランドはエレンピオスの未来のことを考えていた。
しかし彼のその行いは彼自身に悲劇をもたらす。

『ひっ!』

突如アスカが飛び上がり、ジランドに接近……次の瞬間アスカがジランドに襲い掛かる。

『ぎゃあああ!!』

アスカの牙に引き裂かれ、ジランドの断末魔の声が中央ドームに響き渡った。

「いやっ……!」
「キャロ!エリオ!」

あまりにも無惨な光景に悲鳴を上げるキャロ。
エルを庇うルドガーと同じようにフェイトが幼いキャロとエリオをそのおぞましい光景を見せぬよう庇っている。

『だが、人間はかくも傲慢……今なら、クロノスの気持ちもわかるぞ』

そう言葉を残したアスカの体は光を放つ始め、一瞬の強い光と共にその姿は消え去っていた。

『これは……』

情報収集に出ていたジュードとレイアが駆けつけ、一部の部分が原形を留めていないジランドの死体を見て驚いるが、すぐに成果を教える。
ヘリオボーグの先の荒野で、髪の長い精霊の目撃情報があったようだ。
ジランドの遺体を埋葬するというローエンとエリーゼを残し目撃場所と思われる次元の裂けた丘と呼ばれる場所を目指す。

『ね、ルドガー。この世界を壊すって、つまり……』

街道を移動中、街の様子をアルヴィンがジュードとレイアに尋ねる。
異なる点といえばリーゼ・マクシアの存在が知られていないことぐらいで、分史世界が正史世界と同じ人が生きる世界だと話すレイア。
この世界を破壊するということはそこで暮らす数十億という人間を全て殺すことだ。
それは想像を絶する重荷になるだろう。

『……レイア達は気にしなくていい』
『気にするなって……わかってるの、ルドガー!?』

それは分史世界破壊という重荷を彼女達に背負わせないために口にした気遣い。
だが気にするなと言われて簡単にそうできることではない。

『ああ……わかってるよ』
『ルドガー……』

その場を去るルドガーの背中を見たアルヴィンは、ルドガーが全ての罪を自分一人で背負うつもりでいると確信を持って話す。はやては人一人の命の大切を理解していると思っていた。かつて闇の書の呪いで緩やかに着実と命をすり減らしていたはやて。彼女を救うため約束を破り魔力を持つ者から魔力を蒐集したヴォルケンリッター達は、魔力を奪いはしたが命を取ることはしなかった。しかし、魔力蒐集の後遺症で後に障害が現れ、中には命に関わる程のものもあった。その罪をはやては“加害者の首謀者”として今でも背負い続けている。
そしてこのルドガーを見て思った。
クルスニク一族に限らず人や世界は矛盾を抱えてでも、生きようとしているのだと。

次元の裂けた丘には、正史世界にあったという次元の裂け目はなかった。断界殻が解放された影響で消滅したのではと考えたレイアだったが、ジランドがエレンピオスにいたことから、この分史世界は未だ断界殻が解放されず残っているというアルヴィンの推測に、ジュードとレイアもそうではないかと考えた。

『ホントにわかってるー?』

2人の話を聞いて頷いていたルドガーだったがエルに話を理解しているか疑われ、エルの頭を鷲掴みにして、ガシガシと揺らす。その反応からああコイツわかってなかったと悟るはやて。

『まだどこかにマクスウェルが---』

そんな時突如、ジュード達の前に閃光と共に白銀の長髪で褐色の肌の男が崖の向こう側に現れる。

『長い髪の精霊!?』

宙に佇む男は精霊だ。
精霊はゆっくり目を開き、ルドガー達を見下ろす。

『……あちらもこうであれば、彼の地へ手出しできないのだが』
『彼の地……それって!』

謎の精霊の前に駆け寄るエル。

『カナンの地のこと?』

エルがそう叫んで尋ねると、謎の精霊は答えるとことなく、手を上げると精霊術をエルに向け放った。

『エル!!』
『きゃあああ!!』

ジュードが叫ぶが精霊術がエルの周囲で爆発する。

「嘘……」
「!いや、見て!」

エルが爆発に巻き込まれた瞬間を見て信じられない目をするが、ティアナが何かに気付く。

『ぐっ……!』
『ルドガー!』

爆煙が晴れた先には、クォーター骸殻を発動したルドガーが立っていた。
精霊術が直撃する直前に身を挺してエルを守るったルドガー。
だがダメージからかルドガーは膝をついてしまう。

『クルスニクの一族。あきもせず“鍵”を求めて分史世界を探りまわっているのか』

精霊がそう呟いて直ぐ、ルドガーの背後から銃声が鳴り響く。
精霊に向けてアルヴィンが発泡したのだ。

『何様だよ、お前?』

殺気混じりに精霊に言葉を言い放つアルヴィン。
驚くべきことに精霊は3発の銃弾を全て片手の指の間止めてみせた。
これにはさすがの六課メンバー達も驚かずにいられない。
精霊はアルヴィンの問いに答える。

『我は、カナンの地の番人……大精霊クロノス』

自らそう名乗った精霊、クロノス。
時歪の因子を作り、分史世界を殖やしている言うならば全ての元凶と何の前触れもなく遭遇してしまったのだ。

『貴様らも時空の狭間に飛ばしてやろう』

更にクロノスはジュードの冷静さを失わせるだけの言葉を口にする。

『人間に与する、あの女マクスウェルと同じようにな!』
『マクスウェル!?』

その名を聞いたジュードは拳を握ると、クロノスと戦う構えを取った。

『ま、待てジュード!』

今にも飛び掛かりそうなジュードを静止するルドガーだったが、ジュードは接近してくるクロノスに拳を叩きつける。

(あの温和なジュード君をあないな風にさせるミラさんはどないな人なんやろう?)

ひたすらクロノスに得意の格闘戦に持ち込んで戦うジュード。
その姿を見て、彼を激情に駆り立てるきっかけとなったミラ=マクスウェルがどういった人物か知りたくなったはやて。ジュードにとってミラ=マクスウェルが大切な存在なのは確かだ。
場違いだがもし自分の身に何か有れば自分の想い人はジュードのように必死になってくれるのかと考えしまう。

ジュードを先頭に繰り広げられる戦い。いつもに増して前に出るジュードを援護するため、彼に当たらないように銃でルドガーは応戦する。
だが時間が経つにつれ、ジュードの動きが鈍くなる。
出だしからペースを考えず突っ走っていれば当然だ。

『今度は貴様か、クルスニクの一族』
『選手交代だ。はああっ!!』

ジュードに代わってクロノスとつばぜり合うルドガーは、言葉を交わすとクォーター骸殻を発動させ、クロノスを異空間に転移させ、戦いを続ける。

『なるほど……貴様が“鍵”だったのか』
『鍵?ぐっ!』

槍ごと回し蹴りで弾き飛ばされ、なんとか肩膝を着くだけですむ。

『テトラスペル!』

追撃に地水火風の四属性の攻撃が迫る。

『絶影!』

三角の陣が浮かび上がった瞬間、反射的に瞬間移動でクロノスの頭上に飛び、槍を突き立てるように刺す。

『ぬるい!』

しかしその攻撃もあっさりと躱されしまった上に、腕の刃でルドガーは弾き飛ばされる。

『おおっ!!』

地面を衝撃で跳ねながらも槍を投擲するバドブレイカーを放つ。

『小賢しい真似を!』

異空間が解かれ、元の丘に戻るルドガーてクロノス。
そこへレイアとジュードがクロノスの懐まで接近し、得物をぶつける。

『愚かな…不意を突いたつもりだろうが---』

話すの止めるクロノス。
その時彼の目には地面に無数の影が現れ、それは徐々に大きくなっていく。

『『レインバレット!』』

影の正体はルドガーとアルヴィンが放ったレインバレット。
ジュードとレイアが接近戦を仕掛けているのを囮に、2人が上空に向け放ったものだ。
ジュードとレイアはクロノスが上に気を取られている隙にその場を離脱。
通常の倍の数のレインバレットがクロノスを襲い、ほぼ全ての弾が命中する。
更にそこへジュードが前進し、拳を構えると技を放つ準備を整える。

『烈破掌!』

赤い衝撃がクロノスの腹部に見事ヒットし、クロノスは前屈みに飛ばされる。
なのははジュードの使った技が、エルフォーがルドガーに当てた技だとわかったようで、相手をほぼ確実に怯ませることのできる烈破掌をどうにかスバル達に覚えて貰えば、戦術の幅が更に広がるだろうと考えていた。
一人飛ばし続けて戦っていたことをパーティメンバーに謝罪するジュード。
激戦を終えた一同の元へ、ローエンとエリーゼが駆け付ける。
あのルドガーと彼に引けを取らない実力者であるジュード達が全力で挑んだのだ。
ティアナは確実にクロノスに戦闘継続が出来なくなるダメージを与えられたと思った。

『……汚れてしまった』

だがクロノスは特にダメージを負った様子まなく、平然と左肩に付着した汚れを払う。

「な、何なのよコイツ……!」
「あれだけの攻撃を受けて全くの無傷だというのか!?」

ティアナだけでなくシグナムもクロノスの力を目の当たりにして驚愕を露にしている。
白い悪魔、歩くロストロギア、金色の死神など自分達を不名誉な二つ名で呼ぶ者がいるが、それならルドガー達が戦っているこの怪物はどうなるのだ。
自惚れてはいないが、なのはとはやて、フェイトでもクロノスに太刀打ちできるかどうかわからなかった。

クロノスは軽く首を鳴らすと、ルドガー達に向け強烈な術を放った。
なのは達もルドガーと同じように思わず目を閉じる。
だが攻撃はいつまで経っても直撃しない。

『ユリウスさん!』
『!』

ジュードの声に驚いたルドガーは、大きく目を見開いて前方を見る。

『ぐうう……おおっ!』

クロノスの術からルドガーを守るため、骸殻に変身したユリウスが身を呈していた。
だがそれも長く持ちそうにもない。

『時計を!お前の!』

振り向いたユリウスがルドガーの時計を求める。
一緒迷ったルドガーだったが、兄には何か考えがあると思い、時計を差し出す。

『ぐっ……うおおおっ!』

差し出された腕を掴むユリウス。
その瞬間強烈な光がユリウスを包み込み、現れたユリウスはクロノスの術を弾き返す。

「骸殻が変わってます!」

ハーフ骸殻からスリークォーター骸殻にレベルが上がっていることに気付いたシャーリーが声を上げる。
また原理は分からないが時計を複数使用すれば骸殻のレベルが上がるのだという推測し、彼女は益々骸殻に対する興味を持った。

『ルドガー!』

ユリウスはルドガーの手を引いて、弾き返したクロノスの術から生まれた空間の歪みへと飛び込んだ。

『逃げるが勝ちだぜ!』

アルヴィンはエルを抱え、ルドガー達の後を追って歪みに飛び込む。
ローエンとエリーゼもそれに続く。

『ルルも!』
『『わかってる!』』
『ナァ~~~!』

最後にルルを掴んだジュードとレイアが歪みへと駆け込み、全員がクロノスから逃れることに成功した。

『……運がよかったな』

閉じた歪みを見てクロノスはそう呟いた。



偶然とはいえ鮮やかな幕引きに、これが運も実力の内ということだと六課メンバーは思った。


 
 

 
後書き
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