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I want BRAVERY

作者:清海深々
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十五話 初陣



「こっち!」

 とりあえず、今は逃げるしかない。
 このままでは二人とも精神が食われてしまう。

「ぇ?」

 シャドウに襲われるのに恐れ、とうとう蹲るように丸くなってしまった女の手をひっぱってそのまま走り出す。
 女は突然手をひっぱられ、事態についていけないのか疑問の声を上げる。

(勇気関係ないじゃないか!めっちゃ怖ぇよ!)

 無理やり立たせてそのままぴっぱる。
 正直怖すぎる。
 女の方はまだ足に力が入らないようで、今にも倒れそうだが、その勢いを利用して無理やり走る。

「あれなんなの!?わけわかんないよ!」

 女は混乱した声を上げる。

「そんなん俺が知るっかての!」

 恐怖から少しでも気を紛らわそうと、いつもより大きめの声で言う。

(本当は知ってるんだけどね)

 こんなとこで説明しても、女はたぶん混乱してわからないだろうし、今はそれどころではない。

(とにかく、影時間が終わるまで逃げるっきゃない!)

 走って。走って。
 そのうち、手をひっぱられることで、だんだんと女も自力で走り始めた。

 もし、もしも俺が主人公だったら、ここでペルソナにでも目覚めるイベントがあるのかもしれない。
 でも今手元に召還機はない。
 それに、桐条先輩が過去に召還機なしでペルソナを召還した時ほど、俺に強い覚悟はない。

 だから今は逃げるしかない。

 そうやって走って逃げていても、追ってくるシャドウとのキョリは縮まらない。
 後ろを時々振り返りながら思う。

(なんだって、あのスライム体系でこんなに足速いんだよ!)

 そう愚痴らずにはいられない。








 まさしく緑の世界。
 地面にある赤い血の水溜りを踏むたびに、パシャ、パシャと水しぶきならぬ血しぶきがあがる。

(あーこりゃ、帰ったらこのズボンは洗濯だな・・・てか洗濯して血ってとれるのか?)

 跳ねた血がズボンの裾につくのを見て思う。

 今の俺の格好は部屋着で、かなりラフな格好をしている。
 しかも割りとお気に入りで、血がついてとれないとなるのはちょっとショックだった。

 街中の棺桶のようなオブジェクトを使いながら、それらがシャドウの道を邪魔してくれると信じてギザギザに走る。

 そうやって暫く走っていた時だった。

「前っ!」

 手を引っ張っていた女から声が上がる。
 後ろを気にしながら走っていたため、前方にはあまり気をつけていなかった。

「マジかよ!」

 女の声で前に顔を向けると、そこには俺達を挟み撃ちしようとしてきたのか、シャドウがもう一体現れた。

「っ!」

 すぐに、横の脇道へ入る。

 そのまましばらくその道を走っていると、

「嘘!行き止まり!?」

 先は行き止まりだったようだ。

(おいおい、マジかよ。マジなんですか!?脇道は死亡フラグなんですか!?)

 行き止まりの壁を見て、女はついにへたり込んでしまった。

「もう・・・いやぁ」

 ボロボロと涙をこぼしてしまう。

 しかし、シャドウは獲物を追い詰めたも同然。
 俺達へと向かってくる。

(早くも死亡!?ありえねぇ!こんなとこで死ぬとか!)

⇒戦う
 女を囮にして逃げる
 土下座する
 諦める

(・・・おい、なんだこの選択肢。2は鬼畜、3とかシャドウに効果あんのかよ!)

⇒戦う

「やるっきゃない、ってか?」

 ポケットから例の三角形のキーホルダーを取り出す。

「無理よ!もう無理よ!」

 女は俺の武器(?)を見てさらに悲痛そうな声をあげる。
 それはそうだろう。

 まさか三角定規で戦おうとするなんて無謀すぎる。
 だけど、俺の武器はこれではなく目だ。

 『脅威の幻視』くらいは役に立つだろうと考え、目を凝らす。

 すると、うっすらとシャドウの体に線が見える。

(『直死の魔眼』も使える!・・・いけるかもしんないな)

 そのことにわずかに希望を見出す。

「ふぅ・・・」

 息を静かに吐き出す。
 戦う覚悟を決める。

 途端、シャドウが襲いかかってきた。

 『脅威の幻視』で光が見えた右半身を左へずらす。

 次の瞬間そこへ、シャドウの手が襲いかかっていた。

 避けたことで安心したのもつかの間、自分の今立っている位置により濃く光が見える。

 バッとバックステップをとる。

 次の瞬間にはそこへ2体シャドウが手をたたきつけていた。

 その瞬間わずかにシャドウに隙ができる。
 そして運よくそのシャドウの横っ面に太い線が見える。

 そこへ切り込もうと足に力を入れるが、

「くっ」

 正直ビビって体がシャドウに近寄ろうとしない。

(怖えぇ!!勇気とか、もはや勇気(笑)レベルなんですけど!)

 叫ばすにはいられな

「っ!」

 目の前で光が見えたので今度は右へと大きく跳ぶ。

 なんとかしなければいけないのだが、どうにも体が思うように動かない。
 恐怖と、影時間の中で全力疾走したことによる体力消耗だろう。

(倒さないと駄目か・・・なんとか『直視の魔眼』で線は見えてはいるんだけど)

 後ろに女がいるということもあり、あまり無茶な行動をとって後ろに行かれるわけにはいかない。

 そう『直視の魔眼』で線や点は見えているのだ。
 見えるには見えるのだが、

(お前ら真っ黒すぎて!見えづらいんだよぉぉ!)

 こんな状況だからこそ、叫ばずにはいられない。。

 
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