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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第125話 鮮卑族

 
前書き
ちょと少ないです 

 
 正宗の軍と鮮卑軍により救出され冀州入りした麗羽一行は正宗の居る鄴城に無事到着した。現在、彼女達は湯殿で戦と旅の疲れを癒している。同じ頃、正宗は泉と瑛千、彼女達と共に冀州に同行してきた鮮卑軍の大帥(将軍)と謁見の間で目通りしている最中だった。この場には泉と瑛千と大帥以外に正宗、揚羽、冥琳、真悠(司馬季達)が同席していた。

 「お初に目にかかります。私は鮮卑王の名代『柯最』。この度はご尊顔を拝す栄誉をいただき光栄の極みでございます。また、清河王(正宗)のご正室がご無事であられたこと祝着至極にございます」

 柯最と名乗った女は片膝を着き拱手し頭を垂れながら口上を述べた。

 「此度の援軍礼を言う。わが妻を無事助けられたのは鮮卑王のご助力無ければ難しかったことだろう。鮮卑王にはよしなに伝えて欲しい。後日、相応の礼をさせてもらう」
 「はっ! 主も清河王のお力になることができたこと喜んでいることと存じます。主は清河王との同盟を幾久しく強き絆であることを望んで居ります」

 正宗と目通りした柯最は鮮卑軍の中核を成す人物で鮮卑王の右腕であった。鮮卑王によるこの人選は破格のものだといえた。

 「柯最と申したな。そなたが急ぎでなくば、鮮卑軍の将校を酒宴に招きたいと思っている。もちろん将校以外の鮮卑軍の兵士達にも酒宴の場を別に設けるつもりでいるが如何かな?」
 「わざわざお気遣いいただき恐縮にございます。我が配下の者も喜ぶことでしょう。喜んでお招きをお受け致します」

 柯最は喜色をはらんだ笑みを浮かべ酒宴の招待を受けた。その様子からして彼女が宴会好きなことが窺える。

 「では酒宴の時刻まで体をゆっくりくれ。柯最に」

 正宗は部屋の隅で控える侍女に目配せをした。侍女は柯最達を客室へ案内しようとした。

 「清河王、一つお願いしたき儀がございます」

 柯最が正宗の言葉を遮るように正宗に言った。正宗は柯最を向き直り彼女を訝しげな表情で見た。

 「願いとは?」

 彼は一拍置いた後、柯最に話を促した。

 「清河王は冀州の富国強兵に心血を注いでおいでと聞き及んでおります。主は鮮卑の王族、部族長の子弟を冀州に遊学させたいと考えております。つきましては清河王に許可をいただきたく存じます」

 正宗は面倒気な表情で一考したあと揚羽達の控える方向に視線を送る。彼女達の表情も彼と同様の思いのようだ。唯一真悠は感情を感じさせない無表情で柯最を見ていた。正宗としては遊学の件を喜ばしく思っていない様子だった。正宗陣営としては鮮卑族は同盟にあるとはいえ、有力な異民族の有力者達の子弟を自らの膝元に招きいれることに躊躇したのだろう。子弟達は人質ともいえるが間諜ともなりえ、冀州内を好き勝手に調べられることは正宗にとって避けねばならないことだった。

 「遊学の話は急な話のため即答できかねます。十分な協議の上、返答させていただきます」

 揚羽は柯最に淡々と答えた。

 「良い返事をいただけること期待しております。清河王、それでは宴席まで暫し休ませていただきます」

 柯最は侍女に伴われながら謁見の間を後にした。彼女が完全に去ると同時に揚羽達は謁見の間の中央に進み正宗に向きなおる。

 「鮮卑族をどうみる?」

 最初に口火を切ったのは正宗だった。

 「この時期に合わせて申し出てくるとは。表向きは人質、実態は我らの領内の視察といったところでしょう。あわよくば鮮卑族に利する知識や技術を得たいと考えていると思われます」

 揚羽は自らの考えを忌憚なく言った。

 「揚羽殿。しかし、この話を無碍に断ることは難しいです。麗羽殿の救出に成功したのは彼らの助力があってこそ。ここはのらりくらりと暫く交わしてはどうでしょう」

 冥琳が発言した。揚羽も彼女の意見に同時するように頷く。

 「兄上、私は条件を設けて鮮卑族の遊学の件を受け入れるべきと思います」

 真悠は遊学の話を無視する流れに異を唱えた。彼女は鮮卑族との同盟をまとめあげた実績があり、鮮卑族のことを正宗達より一番知っているといえる。そのためか何か考えがあるのかもしれない。

 「真悠、その根拠は何です」

 揚羽は無表情で真悠の表情を窺い言った。

 「鮮卑族は兄上との関係を強固なものにしたいと考えていることは確かです。彼らは人質でなく欲を言えば婚姻関係を持ちたいとも考えています。ですが、流石にそれは無理だと考え今回のことになったのだと思います。あわよくば知識と技術を得たいと考えているでしょうが、それは致し方ないことではありませんか?」
 「真悠、やけに鮮卑族の肩を持つのですね?」

 揚羽の表情は能面のような無機質になった。

 「姉上。私をお疑いなのですか。先祖の名にかけて姉上が疑われるようなことは決してありません」

 真悠は揚羽に対して慌てて弁明した。

 「隠していることをいいなさい」

 揚羽は冷徹な表情で感情の篭らない声で真悠に言った。真悠は彼女の雰囲気に気圧され話出した。

 「鮮卑族との同盟をまとめる際に拓跋氏の者に協力を得ました」
 「その者の名は?」
 「拓跋力微の娘、拓跋沙漠。拓跋氏は鮮卑族の中では有力氏族です。彼女は漢人の文化に強く憧れていて我々に大しても興味を持っていました。お陰で彼女と仲良くなることが出来て同盟交渉の際にも私に協力してくれました。彼女は同盟交渉に協力することの条件に正宗様への願いを申し出てきました」
 「その者の望みが我が領内への遊学というわけですか?」
 「はい、姉上。拓跋沙漠は初め洛陽への遊学を希望していましたが、異民族出の者が太学に入学するなど無理な話。彼女の冀州への遊学を兄上に頼む旨を約束しました」
 「正宗様に断りも無く勝手に決めるとは何事です」
 「拓跋沙漠とは口約束でしたので折を見て兄上にお願いするつもりでした。こうも彼女が露骨に依頼してくるとは」

 真悠は溜息をつく。揚羽は実妹の姿に呆れた様子だった。

 「拓跋沙漠はどのような人物だ。危険な人物なのか」

 今まで揚羽達とのやり取りを黙って聞いていた正宗が口を開いた。

 「油断ならない人物であることは間違いありません。彼女は鮮卑族の外交交渉役で漢人の商人だけでなく大秦人の商人とも交流があるようです」
 「鮮卑王が援軍に大師を送りこんだ理由も頷ける。しかし、拓跋沙漠は大秦人とも交流があるのか。興味深いな。彼女に一度会ってみたいものだ」
 「兄上ならばそう仰ると思いました。兄上、遊学の話を進めてもよいでしょうか?」
 
 真悠は正宗の態度に気を良くしたのか喜々とした表情になる。

 「真悠、控えなさい!」

 揚羽は真悠を強い口調で制止した。

 「正宗様、真悠が築いた拓跋沙漠との友誼は強めるべきと思いますが、条件がございます」

 揚羽は真悠を黙らせた後、正宗を向き直り言った。

 「準備なく鮮卑族の要人を招いては問題だな。揚羽、条件とは何だ」

 揚羽が提案した条件は次の3つだった。

 一つ、遊学の受け入れは半年後とし、場所はこの鄴城。鄴城の外壁の外に要人が生活する屋敷を用意すること。
 一つ、鄴城の内壁内への出入りは正宗様と重臣が応諾した上でお召しになる場合に限り許可すること。これを犯した者は遊学の許可を取り消し帰国させること。
 一つ、鄴城外への外出を禁止すること。鄴城外へどうしても外出しなければならない場合、正宗様と重臣より外出許可を得て高級武官を警護として同卒すること。
 一つ、鄴県の県境を越えることは禁止すること。これを犯した者は遊学の許可を取り消し帰国させること。

 「囚人ような扱いだな」
 「囚人より余程良い扱いかと思います。要人を受け入れるのです。彼らに何かあれば正宗様の責任問題にかかわります」

 正宗が独白すると揚羽が口を開いた。

 「揚羽殿の仰る通りです。それにこの条件ならば要人警護を理由として鮮卑族を言い含めることができます」

 冥琳は揚羽の提案に同意した。

 「わかった。揚羽進めてくれ。それで対応は誰に任せる」
 「真悠は常山郡の政務に忙しいでしょうから私にお任せください。椿(馬良)と柚子(馬謖)を補佐につけてくださいませんでしょうか?」

 揚羽が鮮卑族の遊学中の対応を行なうと名乗りでた。真悠に任せることは不味いと考えたのかもしれない。

 「揚羽、それで頼む。真悠、鮮卑族が鄴に遊学中の間は常山郡に篭っていろ」
 「何故です! 私は鮮卑族を一番に知っています。私にお任せください」
 「真悠、お前の話を聞いて、今回の援軍の将軍が鮮卑王の右腕であった理由に合点いった。この人選には拓跋沙漠の影が見える。これ以上は言わずともわかるな?」
 「真悠、正宗様の仰る通りです。鮮卑王との同盟関係は対等です。遊学とはいえ鮮卑族の有力氏族の子弟を同盟相手に送るなど人質を送ると言っているようなものです。相手にそう思われることを理解してもなお遊学させたい理由があるということです。面子より実利をとるくらいです。鮮卑王は余程の実利があると考えたのでしょう。それも最近決めた訳でなく、以前から準備していたのでしょう。援軍として来た将軍が正宗様に願い出たことが何よりの証拠です」

 揚羽は正宗の話を補足するように言った。

 「今回のことに拓跋沙漠が関わっているのでないかとは思っていました。彼女は兄上に異常な興味を持っていましたし是が非にでも遊学の話を進めたそうでした」

 真悠は揚羽の考えを察したように言った。正宗は彼女の話の最後の部分を聞き眉をひそめた。彼は拓跋沙漠が自分へ向ける関心に嫌な気配を感じ取ったようだった。

 「揚羽の話で大筋あっているだろう。鮮卑王が魅力的に感じた実利とは何だと思う?」

 正宗は面倒な表情を浮かべ揚羽達の顔を順番に見た。

 「冀州は以前にも増し豊かになっています。また、特産品の開発に力を入れているお陰で資金も潤沢にあります。このことから察するに拓跋沙漠は交易の利権を得たいと考えているかもしれませんね。冀州の繁栄を考えれば、それ以外の可能性もあると思います」

 冥琳は正宗の質問に答えた。揚羽達も表情から同意見であることは読み取れた。

 「真悠、お前では遊学してくる鮮卑族の対応役は都合が悪い。まずは拓跋沙漠と他の遊学してくる鮮卑族の出方を見て、必要に応じてお前に意見を求めようと考えている。安心しろ。お前を疎んでのことではない」

 正宗は真悠に優しい微笑み言った。真悠は彼の表情に安心したのか、それ以上何も言わなかった。

 「鮮卑族の件は一先ず片がついたな。泉と瑛千、今回の任務よくやってくれた」

 正宗は泉と瑛千を笑顔で讃えた。その表情は本当に嬉しそうだった。彼にとって麗羽が大切に思う気持ちが感じ取れた。彼の雰囲気に泉と瑛千も我がことのように喜んでいるようだった。

 「正宗様、もったないことにございます」
 「正宗様の力になることができ嬉しい限りでございます」

 泉と瑛千は口々に謙遜した返事をした。

 「両名とも褒美を期待しているといい」
 「ありがたきしあわせ」

 泉と瑛千は片膝をつき拱手し頭を垂れ礼を述べた。

 「泉と瑛千。お前達も宴までゆっくりと湯にでもつかり疲れをとるといい」

 泉と瑛千は礼をいい謁見の間を後にしていった。 
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