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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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ようこそ☆ロキのロキによるお客様のための遊戯城へ~Ⅷ~

 
前書き
????&????戦イメージBGM
VALKYRIE PROFILE 2『その手に光を得るために(arrange ver)」』
http://youtu.be/Tl_ZP-b5-TM 

 
†††Sideなのは†††

はやてちゃん達がお題をクリアしたようで、マス目のところに戻ってきた。そしてプレンセレリウスさんが私たちの居るスタート地点に現れた。どこか疲れている様子だけど・・・。お題の中で疲れるような事でもやっていたのかもしれない。

「一体何をやっていたんだ? レン」

ルシル君がそう訊ねる。するとプレンセレリウスさんは「参ったね」と苦笑い。

「強かったなぁ、あの娘たち。特にデアボリックとかいう魔法?に一本取られたぜ。アレ、防御を貫いて来るのな? 自分で言ってて情けないけど、アンスールメンバーん中じゃ一番防御力が低いオレには防ぎきれなかったわ」

「戦ったのか!?」

「まあな」

はやてちゃん達がプレンセレリウスさんと戦ったってことに軽い衝撃を受ける。だって戦うお題じゃなかったのに。そんな私たちとは裏腹にアインハルトちゃんとコロナちゃん、リオちゃんだけは上の空。
それも当然かもしれない。ルシル君は教えた。自分の正体、再誕神話、大戦、魔術、“アンスール”などなど。
当然そんな事をすぐには信じてもらえないって思っていたけど、さすがに今までの“アンスール”の戦いを見ていれば嫌でも納得、信じるしかない。だからルシル君とプレンセレリウスさんに恐縮してしまっている。
千年続いた戦争を終わらせた遥か古代の英雄、世界滅亡の危機を救った救世主、次元世界誕生に立ち会った創世主・・・。そんな反応を示すのも仕方ない。

「はやて達がこっちに戻ってこないということは、お題はクリアしたんだな。じゃあ次は・・・私たち青チームだな。レン、サイコロを」

ルシル君はサイコロを受け取るために手を差し出すけど、プレンセレリウスさんは無言で右手で制した。そして、「あの娘たちはオレを倒した。その時点でこのエリアはクリアだ」って聞き捨てならない事を告げた。

「え? それってどういう・・・?」

「あの、戦って勝てばクリアっていうお題じゃないのに・・・?」

「ん? あぁ、オレは管理人だぜ? 管理するエリア内のルールは全部一任されるんだよ。だからさっきのお題で、オレを倒したらこのエリアをクリア、っていうルールに変更したんだ。負けるなんて思ってみなかったしなぁ。でも負けちまった、あはは」

私とフェイトちゃんの疑問に、プレンセレリウスさんは苦笑いで答えてくれた。ルシル君は「お前、それははやて達を侮り過ぎだ。彼女たちは強い」って呆れていた。ルシル君に認めてもらえる。コレって実は結構すごい事なんだよね・・・?

「だな。というわけで、名残惜しいけど次のエリアへ案内しようか」

私たちの足元に光が溢れる。視界が白に染まろうとしている中、「次で最後だ。ま、頑張ってくれ」ってプレンセレリウスさんの優しげな声が聞こえてきた。次で最後。じゃあ次のエリアをクリアすれば脱出できるんだね、このスンベルっていうゲームの中から。グロリアが全ての発端だった今回の事件。でも、スバルやティアナ、エリオとキャロから聞いた話から見れば。

(グロリアがアポリュオンの可能性は低い)

はやてちゃん達がお題をしている間、私たちが話していたのはルシル君たちの正体だけじゃない。グロリアの事もだ。スバルとティアナから聞いたのは、傷つけてもいいという許可を貰っていない、守る側。そしてエリオとキャロの話は。人を守るのも仕事、戦闘の意思はない、というもの。
みんなの話を聴き終えたルシル君は、ある可能性が導き出した。グロリアは“アポリュオン”じゃなくて“界律の守護神テスタメント”じゃないかって。知らない名前、姿形。つまり“神意の玉座”に在る本体(ルシル)君と今ここに居る分身体(ルシル)君の繋がりが消えた後に入ってきた新しいメンバー。“守護神テスタメント”も色々とメンバー交代があるみたい。元4th・テスタメントの“終極テルミナス”とかも居たことだし不思議じゃない、らしい。

(ならグロリアの目的は?)

ルシル君は言った。グロリアは私たちを護るために来たんじゃないか、って。“アポリュオン”の誰かがまた来て、それで私たちを狙っていて、それを防ぐために来たのがテスタメント・グロリア。ってことに。でも結局は推測の域で、ルシル君は「頭の片隅にでも置いておいてくれ」ってことで話し合いは終わった。

(でもその推測が正しい気がする。でも、それだったらどうしてシャルちゃんじゃないんだろう・・・?)

話し合いが終わった後、ただその疑問だけが私を悩ませた。

†††Sideなのは⇒フェイト†††

視界が白からクリアになると、そこはもう夕暮れの遊園地じゃなかった。地平線の彼方まで続く平原。朝焼けの空。そして今度のマス目の道は平面じゃなくて空へ向かって螺旋状に伸びてる、まるで天へ駆け昇ぼるための螺旋階段。

「綺麗なところだね・・・」

「うん。なんか自分の存在がちっぽけに思えてくる」

なのはにそう答える。それほどまで綺麗、とても落ち着ける場所だった。みんなもそれぞれ深呼吸したり、朝日に目を細めて眺めたりとしている。私も綺麗な朝焼けの空を眺めていると、「最後のエリアとしては素晴らしい光景だな」とルシルが隣に来て言った。
「うん」と応える。転送する直前に聞こえた、次で最後だ。ま、頑張ってくれ、というプレンセレリウスさんの言葉。正直なところ、“アンスール”のメンバーが全員出てくると思っていたけど。

「ここをクリアすれば現実に帰れるんだね」

「そうだな。本当はシエル達にも逢いたかったが、そう上手くはいかないか」

「シェフィリスさんにも、だよね・・・?」

意図してなのか無意識なのか判らないけど、シェフィリスさんの名前を一番に出さなかった。妹のシエルさんの名前を一番先に言ったことは別におかしなことじゃない。でも、どうしてかそう思った。

「そうだな。シェフィにも逢いたいが、だが今は君が、私の好きな女性だから」

ルシルから不意打ちに告白めいた事を言われた。一気に顔が、ううん、全身が熱くなる。ルシルの顔から視線を逸らして俯く。

「ル、ルシル・・・不意打ちにはちょっと気をつけてほしいかも・・・」

「?? 不意打ち? 一体何を指してそう言ってるんだ?」

判ってないんだね、ルシル。いきなり、好きだ、なんて言われたら驚くし、何より恥ずかしすぎて穴があったら今すぐ入りたい。ちょっと頭を冷やす時間が欲しいから「ちょっとごめんね」と告げて、なのはとヴィヴィオ達の元へダッシュ。

「フェイトちゃん・・・?」

「どうしたのフェイトママ、顔が真っ赤だよ?」

「え? ううん、何でもないよヴィヴィオ。えっと、アインハルト達はちょっとは落ち着いた?」

ルシルの事を知って恐縮、極度の緊張からあまり喋らなくなった。ヴィヴィオは乾いた笑い声を出して、「気にすることないよって言ったんだけど・・・」って当惑してる。
そこにアインハルト達が、

「もう大丈夫です。とても驚きましたし、今でも少し戸惑いがありますが。ですが」

「うん。でも結局は現在(いま)が大事って事なんだよね」

「そうそう。ヴィヴィオは凄いママ達とパパが居て羨ましいな~♪」

「アインハルトさん、コロナ、リオ・・・、ありがとう」

よかった、ヴィヴィオ達の方はもう大丈夫みたいだ。なのはと笑みを交わしていると、どこからか涼しい風が吹いてきた。

「ようこそ、スンベルの第四、そして最後のエリアへ」

遅れて女性の綺麗な声が響いてきた。一斉に声のした方へと振り向く。そっか、やっぱりあなたが出てくるんだ。ヴィヴィオ達、アギトとルーテシアとレヴィ。“アンスール”のメンバーの顔を知らない子たちが口々に、私に似てる、って言う。
そう、そこには私と似た顔立ちのひとりの女性が佇んでいた。蒼く綺麗な長髪はツーサイドアップ、柔らかな桃色の瞳、きめ細かな白い肌。身に纏っているのは装飾の施された、足元まで隠す白いワンピースに白のクローク、そして白いパパーハを被ってる。

「シェフィ・・・・、そうか、最後の管理人は君か」

「うん。ルシル。みなさん。私、蒼雪姫(そうせつき)シェフィリス・クレスケンス・ニヴルヘイムが、この最終エリアの管理人を務めさせていただきます」

ルシルとシェフィが見詰め合ってる中、レヴィが「何アレ? ルシリオンとシェフィリスさんってどんな関係?」って、私にして見ればちょっと禁句っぽい事を誰にとは言わず訊いてきた。そこにヴィータが「あぁ、セインテストの恋人だよ、昔のな」ってきっぱりと事実を告げた。さすがにそんな答えが返ってくるなんて思ってなかったレヴィ、知らないヴィヴィオ達も呆然となった。

「えっと、うん、ルシルが人げ――ううん、テスタメントになる前だった頃の恋人で、同じアンスールの魔術師、そしてニヴルヘイムの王女様、だったかな」

人差し指で頬を掻きつつ、私はシェフィリスさんの知る限りの事を告げた。もっと詳しく言えば、“ヴァルキリー”と“ノルニル”っていう、シグナム達の様なプログラム生命体を、ルシルと共に創りだした天才でもある。そしてその作業の中で、二人は恋人になった・・・ってルシルは言ってた。
考え込んでいると、みんなが同時に「あ」って漏らした。なんだろ?って思って意識を外界に向け、私も「あ」って漏らした。シェフィリスさんがルシルの胸に飛び込んで抱きついていて、胸に顔を埋めていた。
なのは達から気遣いの視線を感じる。でも、あれはしょうがない、しょうがないよ。だから「私は大丈夫だから」とみんなに言う。私がシェフィリスさんの立場だったら同じ事を絶対にやってるから。

「ごめんなさい、現在(いま)のルシルには恋人が、居る、んだよね・・・?」

「ああ。大切な女性(ひと)が出来たよ」

私へと視線を向けるルシルとシェフィリスさん。オロオロしてしまうけど、そんなのじゃダメだって自分を奮い立たせて、シェフィリスさんと目を合わせる。するとシェフィリスさんは「そっか。うん、可愛い彼女さんが出来たようで嬉しいよ、ルシル」ってすごく可愛らしい笑顔を見せた。ルシルがあの人を好きになったのが解る。私だって今の笑顔にドキッとした。

「それじゃ早速本題に入ろうか。レン達から話は聞いてる。チーム分けをしていて、次は青チームという事で良かったんだよね・・・?」

「ああ。なのは。サイコロは君が振ってくれ」

「えっ? あ、そっか。うん、判った」

「さあ、どうぞ。貴方たちの運命を定める大事な一振りよ」

シェフィリスさんの両手の上に現れるクリスタルの様な十六面体のサイコロ。なのはは一歩一歩とシェフィリスさんの元へと行って、サイコロを受け取った。なのはは青チームのメンバーであるルシル、ヴィータ、リエイス、ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルトを一通り見回してから「それじゃあ行くね」と告げて、サイコロを放り投げた。地面に落ちて、コロコロと転がったサイコロが出した数字の目は・・・・

「11、だね。じゃあ青チームのみんなはどうぞ、天走る階段へ」

シェフィリスさんが螺旋状のマス目の道へと招き入れる仕草をする。なのはたち青チームは集まって、「いってきます」と私たちに告げ、私たちも「いってらっしゃい」「頑張って」と返して見送る。なのは達が螺旋状のマス目を歩いて行って、11マス目に到着した。そしてこの場に流れるのはルシルのお姉さん――ゼフィランサスさんのアナウンス。

『大変大変! ある魔術師の家から魔道書が盗まれちゃったっ。君たちは魔道書を盗んだ泥棒さんから魔道書を取り返そうっ! オォーッ!』

お題の内容が読み上げられた後、なのは達は転送された。

†††Sideフェイト⇒リエイス†††

転送された先、そこは青空の広がる平原と森林。私たちは平原のど真ん中で、視線の先に森林があるという風だ。それにしてもお題の内容からして夜かと思っていたのだが・・・・真昼間だな。

「泥棒を捕まえるという事で、暗い夜の中でのお題かと思っていたのですが・・・」

「うん、そうですよね。キラキラな青空・・・」

アインハルトとヴィヴィオが空を仰ぎ見ながらぼやく。ヴィータも「まったくだ。白昼堂々の泥棒なんざ碌なもんじゃねぇ」とぼやき、それにルシリオンが「昼だけでなく夜の泥棒も碌なモノじゃないがな」と呆れる。

「でも、どこに泥棒が居るんだろ・・・?」

「やっぱ森の中・・・?」

コロナとリオが森へと視線を移した。おそらくそうだろう。こんな広い、視界を遮るような場所にのこのこ現れるわけがない。そうと決まれば話は早く、私たちは森を目指す事になった。

「なのはママ、ルシルパパ。わたし達の事は気にしないで先に空を飛んで行っても・・・」

「その方がもっと早く泥棒を見つけられるかもしれないですし」

「わたし達は下から捜します」

「たぶん、それが効率的・・・だと思いますから」

「ルシリオン、なのは。空と陸、二手に分かれ捜索した方が良いのではないか?」

空を飛べないヴィヴィオとその友人たちの気遣いをそう言い直す。ルシリオンとなのはは一度ヴィヴィオを見、そしてルシリオンは「妙に気を遣わせてしまってすまないな。ああ、ここはヴィヴィオ達の案を聴こう」と頷く。む、確かに言いだしたのはヴィヴィオだ。が、案という形としたのは私なのだが。なのはが「じゃあチーム分けはどうする?」とルシリオンに訊ねる。

「私となのはが空、ヴィータ達は陸だ」

「おい、お前となのはだけって少なすぎねぇか? あたしかリエイスを・・・」

「ヴィータ。ルシリオンの魔術の中に、こういった状況に相応しい術式がある。なのはとルシリオンと、その術式があれば空からの捜索は十分だ」

コード・イシュリエルという、魔法で言えば広域探索魔法(サーチャー)の術式だ。それがあれば人数の問題を無しにできるだろう。

「・・・・そうかい。そんじゃ空を任せていいんだな? セインテスト」

「ああ。任せてくれ、ヴィータ。君の方こそヴィヴィオ達の事を任せるぞ」

「判ってらい。お前こそなのはの事を任せっからな」

「判っている」

「じゃあヴィヴィオ、みんな。ここで一旦別れて捜索に入るから。みんな、気をつけてね」

「うんっ」「「「はいっ」」」

こうして私たちは空と陸に分かれ、空へと上がっていったルシリオンとなのはを見送り終えた私たちは、泥棒の捜索を開始した。生い茂る木々の中、私は殿を務め、最後尾で周囲を警戒しつつ念入りに捜す。潰す相手は泥棒、とは言っているが、おそらく相手は“アンスール”の誰かだろう。泥棒から最もかけ離れた英雄だ。問題は、誰が、なんだが・・・。

「誰を相手にしたとしても一筋縄ではいかないな」

「リエイスさん?」

「いや、何でもないよ。ほら、足元を注意しなければ転んでしまうよ、ヴィヴィオ」

ヴィヴィオの足元を指差す。根が大きく出ていて天然のトラップになっていた。躓く前に指摘する。ヴィヴィオは「あ、ありがとうございます」と小さく会釈して礼を告げた。それから少しして、先頭を行くヴィータが「おい、足跡だ。まだ新しいから、ひょっとして近くに居るかもしれねぇ」と、私たちに警戒するよう促してきた。みんなはすでに防護服となっているし、元より警戒は怠っていないが、さらに警戒するように心がける。

――黄金極光(ポラール・リヒト)――

ここより約300mほど離れた場所より黄金に輝く砲撃が天へと昇った。砲撃の先、そこにはルシリオンとなのはが居た。ヴィヴィオが「なのはママ!」と、なのはの名を呼ぶ。だが何も心配することは無い。なのはの側には彼が居る。

――護り給え(コード)汝の万盾(ケムエル)――

蒼に輝く無数の円盾が組み合わさった巨大な円盾が、迫り来ていた黄金の閃光を完全に防いだ。なのはが円盾より少し身を乗り出し、“レイジングハート”の先端を地上へ、正確には砲撃を撃った術者へと向けた。

――エクセリオンバスター――

そして放たれる桜色の砲撃。私たちが向かおうとしていた地点に着弾。着弾点で爆発を起こし、粉塵を舞い上がらせている。

『ルシリオンより全員へ。相手はアンスールの魔術師、殲滅姫(せんめつき)カノンだ! 射砲撃戦特化の魔術師で、私と同様に近接格闘戦を苦手としているっ』

カノン・ヴェルトール・アールヴヘイム。
“アンスール”の一人で、ルシリオンの弟子ゆえの砲撃戦に特化した、最強の射砲撃魔術師。固有能力は空間干渉。射砲撃を転移させるのを主としていたな。つまり相手の頭上や目前、背後に転移させてゼロ距離着弾させたり出来る。
それに最大射程がとんでもない。通常の超長距離砲撃で最大2500km超。転移砲撃の場合、もう射程という概念が無くなる。そして、カノンの強みはもう一つある。魔術師の目指す高み、“神の力ディヴァイン・ポイントの一つ、創世結界だ。
創世結界・殲滅領域フェアティルゲン・ヴェルトール。結界内すべてが砲門となり、全方位からの無限数連続砲撃を可能として、閉じ込めた対象を殲滅するというものだ。
そんな全力ルシリオンクラスの射砲撃魔術師を相手にして、ヴィヴィオ達が勝てると?

『私となのは以上に格闘戦を得意とする君たち地上班なら墜とせ――なにっ!?』

ルシリオンからの念話。しかしルシリオンは全てを言いきる前に驚愕の声を荒げた。
その直後に、

――圧戒(ルイン・トリガー)――

私たちは見た。ルシリオンとなのはがものすごい勢いで地上に落ちていくのを。あの突然とした墜落の仕方。ルシリオンの記憶の中にも出てきたものだ。

「なのはママ! ルシルパパ!」

「先走るなヴィヴィオ!」「ヴィヴィオさん!」「「ヴィヴィオ!」」

ヴィータ達の制止を聴かず、ヴィヴィオは二人の落下地点に走っていく。アインハルト達は私とヴィータを見、どうしていいか判断を仰ごうとしていた。私はヴィータに「お前に任せる」と告げる。私と比べるまでもない誰かを動かす経験値の高いヴィータが指揮を執った方が良いだろう。

「行くぞっ。相手は二人。あたしの記憶が正しけりゃ、砲撃戦特化のカノンと、格闘戦特化の魔術師の二人一組(ツーマンセル)だ。アインハルト達はカノン・・・銃を持ってる奴を。あたしとリエイスは・・・シエルだ」

「「「了解っ!」」」「承知した」

私たちは少し遅れてヴィヴィオを追いかけ始めた。コロナが「あの、シエルっていう人もアンスールなんですよね・・・?」と私とヴィータに訊ねた。それに答えるのは私だ。コロナだけでなく、アインハルトとリオにも聞こえるように説明する。

「そうだ。当時、近接格闘戦においては最強とされた魔術師で、重力を操作する。だから空に居ても、ルシリオンとなのはのように重力で地上に落とされてしまう。そして重力を纏った拳打、蹴打は障壁を容易く砕く。ゆえに格闘戦では最強として名高い。それが拳帝シエル・セインテスト・アースガルド・・・ルシリオンの実妹だ」

「「「っ!!」」」

三人はこの場にルシリオンの妹が居るということにまず驚きを見せた。アインハルトは「格闘戦最強の英雄・・・」と少しばかり戸惑いを見せる。コロナも「重力を操るなんて。勝てるわけが・・・」と諦めモードに入り、リオは「でも遠距離からの射砲撃なら」と冷静に戦術を練っている。誰かが何かを言う前に、前方より連続で爆発音が轟いてくる。

「チッ、もう始めてやがる! それぞれ自分が担当する相手に集中! アインハルト達の相手カノンは金髪で、二挺銃か大砲を持ってる!」

「「「判りましたっ」」」

木々の向こう、蒼、桜、紫、金、という四つの魔力光が溢れていた。そして私たちも“アンスール”の最強コンビ・戦場の妖精フロント・フェアリーとの戦闘に参戦する。

†††Sideリエイス⇒ルシル†††

カノンの砲撃を防ぎ、ヴィータたち地上班に念話を送っている最中、ギンッと鈍い音が耳に届いた。

「なにっ!?」

あぁそうか。カノンが居れば、シエルが居ても何らおかしくはないよな。拳帝シエルと殲滅姫カノン。二人で一つの戦力、“戦場の妖精フロント・フェアリー”なのだ。全身に重く圧し掛かる目に見えない力。シエルの重力操作を受けるのも本当に久しぶりだ。私となのはは重力増加術式ルイン・トリガーで強制的に墜落させられた。

「なのはっ!」

「ルシル君・・・ひゃうっ!?」

墜落途中、なのはの右の二の腕を掴んでこちらに引っ張り抱き寄せる。なのはには悪いが少し我慢してもらおう。すぐさま対重力の術式をスタンバイ。正直な話、私の自前の重力術式は弱い。シエルほどの強大な重力操作は出来ない。

(だが、少しくらいは相殺し落下速度を落とせるはずだ・・・!)

私となのはを中心に重力操作を行い、落下速度を徐々に、しかし確実に落としていく。地面まであと3mというところで、足元に向け爆風を発生させ、さらに落下速度を落とす。ズンッと着地。次いで抱き寄せていたなのはを降ろした。

「えっと、ありがと、ルシ――」

「取り合えず話は後、だな」

「?? あっ、シエルさん、カノンさん・・・!」

「あっ、兄様!」

「ルシル様、先程のお手並み、お見事です」

「あー、でも女の人を抱き寄せるのってどうかと思う」

シエルは、私よりかは短いがそれでも長い銀髪を赤いリボンでツインテールにしている。ルビーレッドとラピスラズリのオッドアイは釣り目。同盟軍の前開きの黒長衣(せいふく)、半袖の黒ボレロと膝下まである黒のハーフパンツの裾にはルーン文字の金の刺繍、黒タイツ、黒のブーツには白銀の脚甲。そして両腕には、私が創り贈った白銀の籠手型神器“月狼ハティ”と“陽狼スコール”。

「姿は十歳のままか・・・」

カノンは、ストレートなセミロングの金髪。ライムグリーンの柔らかな双眸。純白のゴシックドレスで、スカートの裾からはドロワーズが少し覗いている(全部隠れるようにしなさいと言っていたんだがな)。白のオーバースカートの両腰には銀の装甲板があり、“星填銃オルトリンデとグリムゲルテ”を収める可動式のホルスターが付いている。編み上げのロングブーツも白。両手にはグローブ。
そんな黒シエルと白カノンを見ていると、幼少時代のフェイトとなのはを思い出す。

「仮にも王族が泥棒の真似事など許せるものじゃないなぁ」

「だってこれがわたしとカノンに与えられた役目だもん」


VS―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦✛
其はアンスールが拳帝シエル&殲滅姫カノン
✛―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS


カノンが“星填銃オルトリンデ”の銃口を私たちに向けてきた。すぐさま私となのはは左右に飛び退き、距離を開ける。

――黄金極光(ポラール・リヒト)――

刹那に放たれる黄金の極光。何のチャージも無しで、なのはのフルバスターと同程度の威力を有する砲撃を撃ち出せるカノン。「ルシル君!」と砲撃の向かい側からなのはの声。私は「カノンは任せる!」と返し、実妹シエルと対峙する。シエルは私と試合が出来る事が嬉しいのか喜色満面で、足元にアメジストに輝くアースガルド魔法陣を展開させ、両拳に不可視の重力を纏わせた。

「フォトン・・スマッシャァーーーッ!!」

「高速砲、ですね。なら、こちらも・・・!」

――疾光砲弾(シュネル・アングリフ)――

なのはとカノンの高速砲撃の撃ち合い。砲撃は二人の間で衝突してせめぎ合い、結果は相殺という形に決着。なのは達の事も気にはなるが、任せると言った手前信じるしかない。そう。今は自分が闘わなければならない相手に意識を向けなければ。すでにシエルは私より2mと離れていないところにまで踏み込んで来ていた。

「はぁぁあああああああッッ!」

――圧壊拳(フェアリー・バイト)――

受けてはならない、防いでもならない、強力な拳打。迫る拳打を半歩横移動することで回避し、脇を過ぎた右腕を左手で掴み取り、

――轟き響け(コード)汝の雷光(バラキエル)――

右手の平から雷撃系の砲撃をゼロ距離で撃ち込む。しかしやはり私の妹。私が何をしようとしているのかよく知っている。自分の右腕を掴んでいる私の左手を支点として跳躍し宙で一回転、砲撃を回避。逆立ちしているシエルが拳を振り上げた。

圧壊(フェアリー)・・・(バイト)ッ!」

そんな私に振り下ろされるシエルの重力を纏った左拳打。受ける前にシエルを振り回すように遠くへ放り捨てる。宙で体勢を整え着地したシエルがまた突っ込んで来た。振り下ろされる重力拳打。後退することで回避。地面に着弾したシエルの拳打は直径8m、深さは大体3mくらいのクレーターを生み出した。その衝撃に吹き飛ばされてしまうが、空中で体勢を整えて着地。

――復讐神の必滅(コード・ヴァーリ)――

カウンター砲撃のヴァーリを三条放つ。術者に敵対して攻撃を加えた対象を永続追尾するという効果を持つソレは、曲線を描いてシエルへ迫る。シエルの武装・“ハティとスコール”には属性攻撃を半減させる防御効果を付与してある。
それゆえに属性のある攻撃を行えば、容易くその威力を半減させられ、シエル自身の魔術で殴り弾き飛ばされて完全に防御される。故に一番決定打を与える可能性のある無属性で攻撃しなければならなくなる。

「我ながら厄介な神器を贈ってしまったものだ、なっ!」

――豊穣神の宝剣 (コード・フレイ)――

「あはは! ありがと兄様❤」

とは言え、シエルの拳打の威力をもってすれば無属性だろうが無効化されてしまう。ヴァーリを殴り弾き飛ばして最接近してきたシエルに対し、発動すれば常に相手の一枚上を行く斬撃を出せるフレイを発動。今し方創りだした魔力剣が、防御の上からシエルを斬り捨てようと空を走る。
そこに、明後日の方から黄金の魔力弾が一基飛来。シエルの脇腹を目指していた魔力剣を撃ち砕いた。視界の端に映るカノンは“グリムゲルテ”をこちらに向け、“オルトリンデ”から放たれる射砲撃でなのはを動きを制限していた。

「さっすがカノン! 最高のパートナーだ、よっ!」

――圧壊拳(フェアリー・バイト)――

「ぐごぉあっ!?」

アッパー気味の拳打が腹に突き刺さる。やっぱり重い一撃だな。意識が一瞬飛ぶ。体内の臓器の位置がメチャクチャにされたような気持ち悪さ。気が付けば私は空を舞っていて、しかし体が自由に動かせない。完全にシエルの重力の檻に支配された。シエルが地面で待ち構えているのがうっすらと見えた。あの体勢・・・・おい、今の私に真技を繰り出そうと言うのかっ!?

†††Sideルシル⇒ヴィヴィオ†††

そこに辿り着いた時、ルシルパパが小さな女の子の一撃によって空にまで殴り飛ばされていた。なのはママも、金髪の女の子の持つ二挺の銃から放たれる射砲撃で苦戦していた。わたしは考える間もなく、ルシルパパを完全に墜とそうとしていた銀髪の女の子の元へ走る。その女の子がわたしの接近に気付いた。ルシルパパと同じ銀髪に、蒼と紅の虹彩異色。ルシルパパの妹さんで間違いない。名前は確か・・・

「シエルさん・・・!」

「お? 新手の登場だね。いいよ、掛かっておいで!」

――ソニックシューター・アサルトシフト――

周囲に魔力スフィアを幾つも展開して、「ファイアッ!」と射出。高速射撃のソニックシューター、複数射出して弾幕を張るアサルトシフト。それで一度シエルさんの出方を見る。受けに回るか避けるか。でもシエルさんは、「甘いよっ!」って真っ直ぐ弾幕の中を突っ切ってきた。シューターは何か見えない力で無理やり射線を変更されて、変のところに飛んで行った。

「残念っ。出直してきてね・・・!」

耳にギンッていう鈍い音が届いた。シエルさんの右拳が歪んで見える?
直感が告げてくる。この攻撃は絶対に受けちゃダメだし、防御に回ってもダメだって。受けたらさっきのルシルパパのように信じられないほどに殴り飛ばされる。

――圧壊拳(フェアリー・バイト)――

バックステップからの横っ跳びで完全に攻撃範囲から出る。シエルさんもステップで追い縋って来て、

――シュワルベフリーゲン――

そこに赤い魔力を纏った鉄球弾が八つ、シエルさんに殺到していく。でも、シエルさんが「ルイン・トリガー」って呟いた瞬間、ヴィータさんのフリーゲンが全部地面に墜落した。そしてわたしも見えない何かに上から押し付けられるように、その場にうつ伏せに倒れ込んじゃう。

「なに、これ・・・!?」

両手をついて体を起こそうと思っても、それ以上に押し潰される力の方が強くて起き上がることが出来ない。

「ヴィヴィオを解放してもらおうっ!」

――ナイトメア――

落下途中のルシルパパを受け止めて抱えたリエイスさんが砲撃を放つ。シエルさんは両拳を胸の前で打ち付けあった後、「フェアリー・バイト!!」ってリエイスさんの砲撃を真っ向から殴って相殺した。そのおかげなのかも判らないけど体が自由になって、すぐに起き上がってシエルさんから離れる。

「大丈夫かヴィヴィオ! ったく、先走りやがって、危ねぇだろうがッ」

「ごめんなさい・・・」

「そのくらいにしておいてあげてくれ、ヴィータ。大切な母親と父親が危険な状態だと思ったんだ。取り乱してもおかしくはないだろ」

リエイスさんがそう言って庇ってくれると、ヴィータさんも「まぁ解らねぇわけでもねぇけどさ」ってそっぽを向いて、シエルさんへと視線を移した。シエルさんはただジッとこっちが動くのを待っていてくれてる。リエイスさんはシエルさんに注意しながら、

「ヴィヴィオ、ルシリオンを離れた場所に頼めるか。その後は、なのは達と合流して殲滅姫の撃破を頼む」

抱えていたルシルパパをわたしに預けた。

「あ、はいっ、判りました。・・・大丈夫? ルシルパパ」

そう訊くとルシルパパは小さくうめき声を漏らして、「ああ、大丈夫だ。ラファエルで治療すればすぐ動ける」って言って微笑んでくれた。よかった。さっきのお題でザフィーラにも殴られていたけど、明らかにダメージはこっちの方が大きい。ルシルパパに肩を貸して近くの木にまで移動。ルシルパパを木の幹にもたれさせて座らせる。

「じゃあわたし・・・」

「ああ、なのはや友達の元へ行ってくれ。私も動けるようになったらヴィータ達に加勢する」

ルシルパパと右拳を打ち付けあって、わたしは遠くへ移動しながらも攻防を繰り広げてるなのはママ達の元へと走りだす。

†††Sideヴィヴィオ⇒リオ†††

英雄。あたしが知るのは古代ベルカとかの時代の人たちの事。でも今のあたし達が相手にしてるのはもっと昔、次元世界が生まれる前の時代の英雄。
ルシルさんやリエイスさん、なのはさん達から、“アンスール”とか大戦とかの話を聞いた時、正直信じられなかった。
けどその真剣な顔を見ていたら、それが本当の出来事だったんだって思うしかなくなって、それにルシルさん達の戦いのレベルが異常なのも大きかった。
現代の魔導師のすべての上を行く古代の魔術師。魔法の原型の魔術を使う人たち。

「リオ、気を抜いちゃダメ!!」

「え・・・? あっ!」

コロナの声にハッとして、今のあたしがどれだけ危ない状況なのか判った。カノンさんっていう射砲撃の英雄が持つ金色の銃があたしに向いてた。

――疾光砲弾(シュネル・アングリフ)双砲(ドゥーオ)――

砲撃が放たれる。あたしを丸ごと飲み込めるほどに大きな砲撃。今からじゃ避けきれないし、防げるほどの障壁を張れない。

「リオちゃん!」

――プロテクションEX――

どうする事も出来なかった時、なのはさんが展開した半球状のバリアがあたしを守ってくれた。でも砲撃は一つだけじゃなくて、もう一発の砲撃がバリアに衝突。すぐにヒビを入れていった。

(こうなったらバリアが突破されたと同時に射線から抜け出そう!)

両脚に力を込めて、目はバリアと砲撃の衝突点に集中。パキン、と音がしたと同時にしゃがみ込んで、完全にバリアが割れたと同時に低姿勢でダッシュ。背後を過ぎ去ってく砲撃から放たれる熱。受けてたら絶対に墜とされてた。

†††Sideリオ⇒コロナ†††

なのはさんの展開したバリアが突破された。でもリオは砲撃が直撃する直前でそこから離脱して、なんとか無事に乗り切った。わたしはリオにもう一度「ボーっとしてちゃダメだよリオ!」って怒る。リオは「うんっ、ごめんっ!」って謝って、

「今度はこっちから行かせてもらうよっ」

――双龍円舞――

炎と雷、二頭の龍を召喚させてカノンさん目掛けて突撃させた。カノンさんの数えるのも面倒な魔力弾の弾幕(もう金色の壁みたい)に押し切れなかったアインハルトさんが巻き込まれないように離脱して、そこに二頭の龍が弾幕の中を突き進んでく。でもやっぱり弾幕が厚過ぎて、リオの二頭の龍はカノンさんに到達する前に粉砕された。

『なのはさん。ロックバインドで牽制しますから、なのはさんのバインドを決めてもらえますか・・・?』

『っ! うん、もちろんっ。コロナちゃんだけじゃなくて、リオちゃんもアインハルトちゃんも何か手が浮かんだら遠慮なく言って! 私に出来る事なら何でも手伝うからっ!』

『『はいっ、お願いしますっ!』』

「何か良い案が出ましたか・・・?」

――弾幕結界(ヴァント・クーゲル)――

またわたし達とカノンさんの間に黄金の魔力スフィアが壁のように立ちはだかる。そしてカノンさんは発射はまだかと待機してる無数のスフィアの壁の向こう側。スフィアの隙間から見えるカノンさんと目が合った。ビクッとなる。わたしより小さい女の子なのに、すごい威圧感。あれが・・・本物の英雄・・・・! レベルというより格が違うのが理解出来てしまう。

「ロ、ロックバインド・・・!」

だけど、こっちもただじゃ負けられない。ううん、きっと勝ってみせる。地面の物質を操作して相手を捕らえるロックバインドを発動。スフィアの内の四つが動く。スフィアは弾丸となって、カノンさんを捕らえようとしてた岩石の拘束条を撃ち抜いて粉砕した。

――レストリクトロック――

でもそれで終わったと思ったら大間違い。わたしのバインドを無力化したと油断したその瞬間に、なのはさんのバインドがカノンさんを捕らえる。

「ディバイィィーン・・・バスタァァーーーッ!!」

間髪いれずになのはさんは砲撃をスフィアの壁に撃ち込んだ。砲撃によって撃ち抜かれた部分のスフィアから周囲のスフィアへと連鎖的に誘爆していって、辺りに爆煙が立ちこめる。

「ゴライアス!」

――ロケット・パンチ――

それもお構いなしにロケット・パンチを突撃させて、カノンさんを狙う。なのはさんのバインドは簡単に抜け出せないから、きっとさっきの砲撃も食らったはず。だけど、

――黄金極光(ポラール・リヒト)双砲(ドゥーオ)――

二つの金の巨大砲撃がロケット・パンチを粉砕して、えっと・・・10、11・・・数えるのも嫌になるほどの魔力弾が飛んできた。なのはさんのバインドからこんなに早く抜け出すなんて・・・。リオとアインハルトさんは、わたしと同じように盾としたゴライアスの後ろに。そしてなのはさんは、魔力弾で相殺したりシールドで防御したり回避したりとすごい事をやってのけてる。

「ルシリオンお父様は、カノンさんは接近戦に弱いので私たちでも十分に勝てると仰っていましたが」

「まず近づけないんじゃどうしようもないですよね・・・」

「あの馬鹿みたいな弾幕を越えないと、勝機が無いってことかぁ~」

ゴライアスの体が少しずつ削れていってる中、どうやってカノンさんの懐に飛び込むか考える。

†††Sideコロナ⇒ヴィータ†††

「ラケーテン・・・・ハンマァァーーーーッッ!」

ラケーテンフォルムとした“アイゼン”の遠心力いっぱいの一撃。シエルはグッと両脚に力を込めたように踏ん張りを見せて、右の手の平を翳してきた。重力で止める気か? だけどこの高速の強打、重力をも突破してやる。衝突する“アイゼン”とシエルの手の平。だけど衝突の衝撃が手に伝わらない。フワッと包み込まれるような感覚だ。でもすぐに、

――武装殺し(インパクト・ヴォイド)――

「うおっ!?」

“アイゼン”が急に重くなって、ズンッと地面に“アイゼン”のヘッドがめり込む。何とか持ち上げようとするけど、ピクリともしねぇ。苦戦してると、「どうしたの? もしかして重くて持てない?」ってシエルが笑う。

「アイゼンにだけ重力を掛けやがったのか!」

問いに対する答え。耳にギンッつう鈍い音が届く。重力操作が行われた合図だ。シエルの左拳が歪んで見える。重力を纏わせたんだ。

「その通りっ♪ 対武器所有者の重力術式だ・・・よっ!」

――圧壊拳(フェアリー・バイト)――

動けないあたしに重力パンチを放ってくるシエル。“アイゼン”を手放すしか避けれない。でもそこに、

「おおおおおおおおおおッッ!!」

――シュヴァルツェ・ヴィルクング――

顔の横から黒い魔力を纏ったリエイスの左腕が伸びてきて、シエルの拳打と真っ向から打ち合った。馬鹿やろーっ!って思った。魔力を纏わせたくらいで相殺できるような攻撃じゃねぇ。でも、あたしの目の前に居るシエルの顔が驚愕に歪んだのが判った。

「うっそっ!?」

シエルが声を上げたと同時に“アイゼン”に掛けられてた重力が解けた。すぐさまシエルの腹目掛けて振り上げるけど、シエルはバックステップでギリギリ避けた。

――屈服させよ(コード)汝の恐怖(イロウエル)――

避けた先、着地したばかりのシエルの頭上に蒼い円陣が出来て、そこから馬鹿デケェ銀色の拳が勢いよく落ちてきた。シエルは慌てることなく左の手の平を拳に翳して、「反重力(ニクス・フォース)」って告げた。すると拳の落下速度がガクンと落ちて、トンっとシエルの手の平の上に乗っかった。

「兄様。忘れたの? 重力は上下に働く力。だから頭上からの攻撃は一切わたしに通用しないって事を」

呆れた風にそう言った後、シエルはポンっと拳を頭上に放り投げ、ゆっくりと落下してきた拳に拳打一発。たったそれだけでデケェ拳がバラバラの粉々に砕け散った。やっぱ強ぇな、重力ってぇのは。半端な攻撃は全部重力の壁に防がれるし、さっきのように武器限定に重力を掛けられたら攻撃手段が無くなっちまう。まぁ体そのものに重力を掛けられるよりかはマシだけどよ。

「もう大丈夫なのか、ルシリオン」

「ああ。大丈夫だ。それよりリエイス。さっきシエルの重力をキャンセルしたな」

「あ、それはあたしも思ってた。何やったんだよ」

「シュヴァルツェ・ヴィルクングだ。あれは打撃力強化と効果破壊の魔法。だからさっきは重力を拳に纏うという、付加効果を破壊したんだ」

あー、だからか。つうかさ「セインテスト。お前も似たような魔術無いのかよ?」だ。だけど「無いな。そういった術式はアリスの方が得意だ」って首を横に振った。アリス? あぁ、結界王だっけか? 大戦の時、セインテストに初黒星を与えたっつう。

「へぇ、そういう術式があるんだ。結構怖いね、魔法というのも。でもね」

――反重力(ニクス・フォース)――

シエルの体が若干浮いた。そして一度トンと足をついた後、地面を蹴ってものすげぇ速さで突っ込んできた。

――舞い降るは(コード)汝の無矛(パディエル)――

まずはルシルが魔力の槍を四十基ほど展開して、シエルの行く手に射出。だけどそんなもん始めっから無いもんだっていう風に突っ込んで、地面に突き刺さった魔力槍を粉砕しながらまだ突っ込んでくる。

「私が止めるっ! ヴィータ、ルシリオン、頼むぞっ!」

――シュヴァルツェ・ヴィルクング――

「「応ッ!」」

リエイスが両拳に黒い魔力を纏わせて、あたしらの前に躍り出た。突っ込んでくるシエル、構えを取って待ち構えるリエイス。あたしとセインテストはいつでもフォローに回れるように“アイゼン”を構え、

「ラインゴルト・フロースヒルデ!」

右手の人差し指の指環が光って、セインテストは両手に白銀の銃剣を手にした。

「とぉつげぇ~~~~~きッ!!」

「はぁぁぁぁあああああああッ!!」

先制はリエイスだ。まずは左拳打を放って、対するシエルも「今度は簡単にキャンセルされないよっ」って左拳打。衝突。とんでもねぇ衝撃波が起こる。目を左手で庇いながらもしっかりとリエイスの姿を見る。
リエイスがガクンと膝を少し折るのが見えた。でも、それでも膝をつかないないように必死に耐えるあぁすげぇよ、お前。重力の一撃を押さえ込んでるなんて。リエイスはシエルの左拳打をいなして、間髪いれずに右拳打を打ち込む。シエルは体勢を崩されたまま・・・・回し蹴りで迎撃した。

「なにっ?・・・ぐあっ!」

右拳打が左蹴りで弾かれた後、右蹴りをまともに受けたリエイスが吹っ飛んだ。セインテストがすぐに抱き止めたけど、それでも衝撃を完全に抑え込む事が出来なかったからか、セインテストも一緒に吹っ飛んだ。

「よそ見注意! 圧壊拳(フェアリー・バイト)ッ!」

「チッ・・・!」

――パンツァーヒンダネス――

“アイゼン”を両手で持って水平に構え、柄に一点集中のバリアを展開。ズドンッと轟音。とんでもねぇ重い一撃。踏ん張るけど、コイツは・・・・ダメだっ。踏ん張りきれずに吹っ飛ばされる。「ヴィータ!」ってあたしを呼ぶセインテスト。背中に回されるセインテストの腕。一気に抱き寄せられる。でもやっぱ衝撃はそう簡単に柔らがねぇ。結局、あたしとセインテストは吹っ飛ばされることに。

咲き乱れし(コード)汝の散火(マルキダエル)!!」

吹っ飛ばされてる中、セインテストが“フロースヒルデ”から人間の頭部大の蒼い炎の塊を放った。リエイスはその術式がなんなのか判ったみてぇでシエルから離れる。シエルも「散弾・・・!」って言った後、ニヤリって笑った。

――超重力装甲(リジェクト・メネス)――

爆散粛清(ジャッジメント)!」

蒼炎の魔力弾がシエルの近くで爆散、無数の小さな炎弾となって襲いかかる。なのはのセイクリッド・クラスターのようなもんだな。無数の炎弾は、歪んで見えるシエルに触れることが出来ずに全弾霧散していく。

「立ち止まったな、シエル」

――弓神の狩猟(コード・ウル)――

着地したと同時にあたしを放したセインテストが魔力弓を創りだす。コード・ウルってやつだ。蒼い槍の様な矢を放って、矢は放たれた直後に無数の光線となって、防御に徹してるシエルに殺到、連続で爆発を起こしていく。だがセインテストはそれだけで終わらせようとしなかった。

――弓神の狩猟(コード・ウル)×10――

セインテストは連続でコード・ウルを射続けやがった。そのあまりの容赦の無さに唖然となる。リエイスも「やり過ぎではないか?」って戸惑ってるし。だけどそんなのはただの杞憂だった。爆発の中から強大な魔力を感知、シエルはあの爆撃の中でも墜ちてねえっ!

――重力圧縮砲(ジオ・ストライク)――

「のわぁっ!?」

セインテストがいきなりあたしを突き飛ばしてきたから転んじまった。なにすんだっ!って言おうとしたところに、あたしとセインテストの間を通過するアメジストの砲撃。砲撃が通過した地面を見れば、思いっきし抉れてやがった。

「重力を前方に飛ばす攻撃だ。巻き込まれたら体が潰されるぞ」

「んなのを使うか普通!?」

シエルはあたしらを殺す気か?殺す気なのか!?
そこに「受けても死なないようになってるから大丈夫だよ?」ってシエルの声。煙幕の中からシエルが出てきた。ありえねぇ、あんだけ爆撃されてたのに、あまりダメージを受けてねぇ。

「兄様、容赦が無さ過ぎるよ? あやうく負けるとこだった」

「こちらは始めから勝つつもりだが?」

「んー、だよね。でも、わたしも勝ちたいから、今から本気で行くよ」

シエルがそう言って、ニカッと白い歯を見せるような笑みを浮かべた後、両拳を顔の前で打ち付けあった。今までは全力でも本気でもなかったってか? あぁ上等だ。こっちだって、と気合いを入れていると、「しまった・・・!」ってセインテストが何かに気付いたみてぇだ。

「どうした、ルシリオン」

「フロント・フェアリーはシエルとカノンだけじゃない。どうしてすぐに気付かなかったんだ。アリスだ。アリスを入れてフロント・フェアリーなんだ。シエルもカノンも盗まれたという魔道書を持っていなかった!」

「そうか! フロント・フェアリーは、ヴィーグリーズ決戦からアリスが加入してトリオになったんだ!」

「何でそんな大事なこと忘れてんだおめぇらっ!」

セインテスト、お前もアンスールの一人っつうか部隊の中心人物だったんだろうが。するとシエルが「あ~あ、バレちゃった」って言って肩を竦めた。

「気付くの遅いよ、兄様。そっ、魔道書はアリスが持ってるんだよ。わたしとカノンは、アリスが逃げるまでの時間稼ぎ係なんだぁ」

「そういうことかよ。おい、セインテスト。お前、責任とってアリスを追いかけろ」

「責任て・・・。いや、しかし・・・」

「心配すんなって。あたしとリエイスでシエルを抑えてやるから」

シエルから視線を逸らさずにそう言うと、シエルは「へぇ。わたしを抑える、かぁ。期待しちゃうよ?」って小首を傾げて可愛らしい笑顔を向けてきやがった。うん、まぁ可愛いんだけどさ、でもなんかムカつくんだよな、その余裕がよ・・・。

「リエイス、ユニゾンしてくれ」

「・・・・判った。ルシリオン、行ってくれ」

リエイスもあたしの案に乗ってきた。多数決だ。セインテストは「無茶だけはするなよ」って言って、

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

背中から薄く細長いひし形の翼を十枚、ひし形の翼の間に十二枚の剣翼を展開した。空戦形態ってやつだ。シエルが「行かせないよ、兄様!」って突撃してくる。目くらましが必要だな。だから「ユニゾン、イン!」と、リエイスとユニゾン。ユニゾンした時に起こる魔力流と閃光で、シエルの視界を一瞬だけ奪う。その間にセインテストは空へ。

「やってくれるじゃん。てゆうか誰?」

今のあたしの姿を見たシエルが何度も左右に首を傾げる。そりゃそうだろうな。今のあたしの身長はリエイスと“おんなじ”だ。髪の色や瞳の色、騎士服の色もリインとユニゾンした時とおんなじだけど、リエイスとユニゾンするとなんでか身長がグッと伸びるし髪も伸びる(胸の大きさだってシグナムに負けてねぇぜ♪)。それだけじゃねぇ。背中から、はやてやリエイスの様な翼も生えるんだな、これが。色が黒ならはやてのとお揃いなんだけどな。残念ながら、あたしの翼はリエイスの影響で白だ。

『ヴィータ。私はどうすればいい? 補助に徹底するか、それとも』

『ガンガン行きてぇから、お前も攻撃に参加しろ』

『了解した。行こう、ヴィータ』

「『おうよ』つうわけで、こっからのあたしらは手強いぜ? 覚悟しろよ、シエル」

シエルにギガントフォルムにした“アイゼン”を突きつける。大人の姿だから、ギガントフォルムも小さく見える。ま、扱いやすくなるから問題ねぇけど。シエルは「そうこなくっちゃ!」って余裕を崩さない。お互いに構えを取る。睨み合いがほんの少し続いて、

――反重力(ニクス・フォース)――

シエルが浮いた。来るっ。そう思った直後、シエルが地面を蹴って突撃してきた。

「行くぜリエイスッ!」

『ああ!』

†††Sideヴィータ⇒アインハルト†††

ヴィヴィオさんとも合流して、なんとかカノンさんを打ち倒せないかと頑張ってはみましたが、魔力弾と砲撃の連射弾幕の前に一時撤退を余儀なくされた。木々の陰に隠れてカノンさんと睨み合いながらも、なのはお母様とヴィヴィオさん、コロナさんの射撃魔法でカノンさんと牽制し合いつつ、カノンさんの攻略法をみなさんと検討。検討した結果、一つの案が出ました。

『まずはゴライアスを突撃させて』

『私とレイジングハートが、A.C.S.ドライバーで続いて』

『私とヴィヴィオさんとコロナさんとリオさんがなのはお母様に続き』

『最接近が成功したところで一斉に格闘戦に持ち込む』

最初のゴライアスは完全に途中で破壊されてしまうはずです。なのはお母様の身に危険がありますが、なのはお母様は『大丈夫。私とレイジングハートなら最後まで行ける』と言って下さいました。

『これで勝てますよね・・・?』

『ヴィヴィオ。これで勝つんだよ。大丈夫。みんなの力を合わせればきっと勝てる』

なのはお母様にそう元気づけられたヴィヴィオさんは『そう、だよね。うんっ』と自分の頬を張ります。それで気合が入ったようで、ヴィヴィオさんの顔からは迷いが完全に無くなったようです。

『それじゃあみんな。作戦開始。必ず勝とう!』

『『『はいっ!』』』『うんっ!』

作戦開始です。まずはコロナさんが新たに『蘇れ巨神! 叩いて砕け、ゴライアスッ!』とゴライアスを再創成。コロナさんが「ゴライアス、ゴーッ!」と号令をかけると、ゴライアスはカノンさんへと真っ向から突撃していく。

「性懲りもなく、ですか。いいでしょう。殲滅姫、そして黄金砲台の二つ名を持つわたしカノンが、受けて立ちますっ!」

――黄金極光(ポラール・リヒト)――

――ロケット・パンチ――

カノンさんの放つ大きな金の砲撃。それにゴライアスは右の腕のロケット・パンチ。間で衝突した二つの攻撃は、ロケット・パンチの粉砕という形で決着。ですがすぐに左のロケット・パンチが放たれる。カノンさんは慌てることなく、

疾光砲弾(シュネル・アングリフ)

高速砲を二連射し、ロケット・パンチの速度を落とした後に「ポラール・リヒト」とトドメの砲撃。ゴライアスは両腕を失いながらも突撃を続行。

――アクセルシューター――

――ソニックシューター・アサルトシフト――

――コメット・ブラスト――

――双龍円舞――

ゴライアスの突撃を援護するためのなのはお母様たちの射撃魔法。カノンさんが「なるほど。そういう手で来ますか」と感心したように頷くのが見えた。そしてカノンさんは二挺の銃を地面に向け、引き金を引いて六発の魔力弾を地面に撃ち込みました。足元から強力な魔力反応を感知。誰が何を言うまでもなくその場からすぐに退避。

――天衝砲閃(シュトラール・トゥルム)――

直後、先程まで私たちの居た場所から二つの砲撃が噴き上がり、天へと昇っていった。そしてカノンさんへと向かって行っていたゴライアスといくつもの援護射撃が、四つの砲撃の壁によって完全に無力化されてしまった。

「考えは良いですけど、黄金砲台(わたし)に容易に近づけると思わないでください。オルトリンデとグリムゲルテの前に、貴女たちは歩みを止めるしかありません」

すごい。接近するまでのプロセスを悉く潰されてしまう。これが遥か古代の英雄の力。ですが何かあるはず。カノンさんへ接近する方法が。必死に思考を巡らせて、最接近へのプロセスを思い浮かべては却下を繰り返す。何をどうやっても途中で迎撃される場面の想像ばかり浮かんでくる。とそこに、カノンさんは中空へ視線を彷徨わせ、ほんの一瞬だけ目を見張ったのを確認。

「ごめんなさい。こちらの事情が変わりましたので、ここより本気で皆さんを撃墜させていただきます」

カノンさんはそう言った後、オーバースカートの両腰にある装甲に付いているホルスターに“オルトリンデとグリムゲルテ”を収めました。「シュヴェルトラウテ」と告げたカノンさんの両手の上に、全長2mほどの大砲が現れる。
色は銀と蒼。ディエチさんの持つイノーメス・カノンをもっと角ばった物にすれば、カノンさんの持つ大砲のような物になる、そんな感じです。カノンさんが“シュヴェルトラウテ”を脇に抱え直し、

「では行きますね。三天穿つ砲滅閃(シュトラーフェ・カノーネ)!!」

両腰のホルスターが動いて、“オルトリンデとグリムゲルテ”の銃口もこちらに向いた。何を思うことなく射線から離れることを第一に逃げる。逃げるしかない。その直後に視界が金に染まる。今までに無かった強烈なマズルファイアに視界が潰される。黄金の砲撃が三つ同時に放たれて・・・・・・私は・・・・。

「ヴィヴィオさん!」

ヴィヴィオさんの元へと駆け出した。

†††Sideアインハルト⇒なのは†††

「うそ・・・・」

直径50mはあるクレーターの底、意識を失って倒れてるヴィヴィオ達。一切のチャージ無しに私の全力スターライトブレイカー並の砲撃を三発同時に撃ったカノンさん。知っていたのに。カノンさんがどれだけすごい砲撃手なのか。

「あとは貴女だけですよね?」

カノンさんが“シュヴェルトラウテ”の砲口、“オルトリンデとグリムゲルテ”の銃口もこちらに向けてきた。急いでその場から空へと上がる。防御は無意味だから、逃げ道の多い空に移動した方が断然いい。

――アクセルフィン――

――三天穿つ砲滅閃(シュトラーフェ・カノーネ)――

強烈なマズルファイア。と同時に放たれる三条の砲撃。ギリギリで回避出来たけど、通過して行った際に起きた衝撃波に体勢を崩されてしまう。

――疾光砲弾(シュネル・アングリフ)連弾(シュテルメン)――

そこに高速砲の連射。バスターを撃った衝撃で無理やり射線から離脱、そのまま体勢を整えて回避に専念。でも避け続けるけど次第に掠るようになってきた。これはまずい。動きを少しでも止めでもしたら・・・。それなら。制動を最小限にして、

「ブラスト2! ブラスタービット展開! フォトン・・・スマッシャァァーーーッ!」

“レイジングハート”とブラスタービット四基から高速砲をお返しと言わんばかりに撃つ。カノンさんと私の間で衝突しあう高速砲。連続で爆発が起きる。私はすぐにその場から移動して、

「ストライク・スタァァーーーズッ!」

砲撃とシューターの同時射砲撃を、カノンさんが居るはずの煙幕の中に撃ち込む。カノンさんはあまり動かない。迎撃能力に自信があるからだと思う。現に今までの攻撃や接近を完璧に迎撃している。これなら格闘戦が弱くても頷けるよ。

――天衝砲閃(シュトラール・トゥルム)――

地面から強力な魔力反応。すぐにその場から移動。地面から空に向かって噴き上がる黄金の砲撃、その数二十九。だけど問題は砲撃の数でも威力でもなかった。

「包囲された!?」

そびえ立つ砲撃の壁。逃げ場を封じられた。唯一の逃げ場は前か空か。どっちに逃げても追撃砲が来るはず。

「だったら迎え撃つ!」

周囲に満ちた魔力を集束させる。勝てる手段があるとすれば、もうブレイカーしかない。すでにカーネルさんに完全防御されて負けているけど。でも!
煙幕が晴れた中、カノンさんが私を見上げていて。その表情はどこか楽しそう。カノンさんがの足元に魔法陣?が描かれた。色はフェイトちゃんと同じ金色。というかアレは魔法陣って言ってもいいのか判らない。たぶん鳥が横を向いてる図形。と言っても精確な鳥じゃなくて、よくマンガとかで見た光マークに、それを覆うような広げられた角ばった片翼という感じ。

「カーネル様からお話は伺っています。高町なのはさん。貴方の砲撃は、大変素晴らしいものだと」

そうなの? 私の砲撃がルシル君以外のアンスールに褒められていたなんて、嬉しいな。っとと。気を抜いちゃダメだ。カノンさんも“シュヴェルトラウテ”の砲門だけをこちらに向けている。

「現在のルシル様の御友人の方々の中でも特に射砲撃に優れているようですね。今から発動する魔法も、貴女が絶対の自信を持つものだと判断します。ですから、わたしも最強の一撃を以って貴女を倒したく思います」

“シュヴェルトラウテ”の砲身の両サイドに描かれてる幾何学模様が光を放つと、薬室の後部がスライドして、砲弾を装填する部分が出てきた。カノンさんは蒼銀に輝く実砲弾をどこからともなく取り出して、装填する部分に砲弾を置いて薬室に戻す。すると“シュヴェルトラウテ”の銃床の末端にある排出口から蒸気が噴出する。

「あれって・・・ベルカのカートリッジシステム!?」

カノンさんの持つ神器“オルトリンデとグリムゲルテとシュヴェルトラウテ”は、ルシル君が創った物だけど。でもその当時はベルカ式とかデバイスとかカートリッジシステムとか無いのに。ま、まさか古代ベルカで使われたカートリッジシステムのオリジナルって、ルシル君発祥!? さ、さすがにそれは考えすぎだよね、うん。

「高町なのはさん。もう準備はお済ですか?」

「え? あ、はいっ。いつでも行けますっ」

集束は終わってる。カートリッジも可能な限りロードしたし、いつでも発射できる。カノンさんは「そうですか。ならば」と改めて“シュヴェルトラウテ”を抱え直した。私も“レイジングハート”を握る両手の力を込める。お互い、この一撃が最後だ。私の負けか、勝ちか、相殺か。どちらにしてもこの戦いに決着がつくことに変わりない。

「スターライト・・・!」

「真技。時空穿つ(ヘルヴォルズ)・・・!」

「ブレイカァァァーーーーーーーッッ!!」

断罪の煌き(カノン)!!」

†††Sideなのは⇒ルシル†††

ヴィータ達となのは達の戦場から何度も爆発が起こる。そして気がかりだったなのは達とカノンの戦いは、最悪なことに砲撃戦となっているようだ。なのは達はおそらく全滅するだろう。カノンを相手に射砲撃戦を仕掛けるのは自滅行為だ。
カノンの攻略法。それは肉を切らせて骨を断つ。つまりは何かしらの犠牲を払って接近しなければならない、ということだ。無傷で勝てる相手ではないのだから、アンスールは。

「いや、なのは達が全滅するような事態になる前に、アリスを捜しだして魔道書を奪取する」

それが最善だ。魔道書を持って逃走しているのは結界王アリス・ロードスター。ヴィーグリーズ決戦から“アンスール”に加入したメンバーだ。元々はヨツンヘイム連合の主力の一つ、“特務十二将”の一人だった。
そんなアリスは、大戦に無関係だった世界から拉致されて、無理やり連合兵にされた経緯を持っていた。当然アリスは参戦することを拒んだそうだ。当たり前だ。結界展開能力が飛び抜けていようとも、その他はただの、どこにでも居る十歳の子供だったんだ。連合は考えた。史上最高クラスの天才結界術師としてのアリスをどうやって参戦させるか。その結論が、アリスを魔術と薬物で洗脳するという事に。

「今思い出しただけでも腹が立つ。アグスティン・・・!」

ヴァナヘイム侵攻戦の折、アリスを保護して治療、洗脳を解くことに成功。本当はそのまま彼女の出身世界に帰す予定だったんだが、アリスは“アンスール”として戦う事を選んだ。

「見つけた・・・!」

森林を抜けた平原。そこをひた走る人影が一つ。走るたびに風に靡くターコイズブルーの長髪が陽に当てられ燦々と輝いている。高度を落として、「アリス!」と背中に呼びかける。するとビクッと肩を跳ねさせ、こちらへと振り返る少女。

「ル、ルシル様! も、もう追いつかれちゃったんですかわたし!?」

アリスは私の顔を見るなり頬を朱に染めて、見ているこっちが悪い事をしたような気になってしまうほどにあたふたと慌て始める。平原に降り立って「とりあえず落ち着こうな、アリス」とアリスの頭を撫でてやると、「はふぅ」と気の抜けた表情になる。私の視線はアリスの左腕が抱えている件の魔道書へ・・・ん?

(魔道書? どう見ても動物図鑑なんだが・・・)

「ここにいらっしゃるという事は、シエルとカノンを破り、包囲を突破されたんですね」

「ん? いや、仲間たちに任せてきたんだ。だからシエルとカノンはまだ戦っているはずだ」

森林からは爆発音が続いているしな。仲間たちが頑張ってくれている。だから、私もここで頑張らなければ。なのは達に合わす顔が無いというものだ。それを聞いたアリスは「よかった」と安堵の笑みを見せる。

「アリス。大人しくその魔道書を渡してくれないか?」

「ごめんなさいです。わたしもフロント・フェアリーの一角として退けませんっ」

アリスは、彼女自身の誇りとしている同盟軍の制服である長衣(色は青)を握りしめた。結界王。名の通り結界術式においては右に出る者は居ないとされるほどの術者。だがその力は、誰かを補助した時に真価を発揮する。単独戦闘においては、アリスはあまり強くない。が、そこを油断すると痛い目を見る。結局は彼女も“アンスール”なのだ。

「ルシル様は色々と制限がお有りと聞いてます。ですので、わたしも僭越ながら創世結界と真技を制限しますね」

「アリスに手を抜かれる、か。まさかこんな日が来ようとはな」

「ご、ごめんさないですっ! 不愉快にさせてしまったんでしたら謝りますっ!」

ペコペコ頭を下げ続けるアリス。くっ、心が痛む。無意識による精神攻撃は相変わらずか、アリス。いや、私の記憶から再現しているのだから当たり前か。

「いや、怒っていないよ。だから謝らなくていい。さぁ、始めようか、アリス」

「あ、はいっ。アンスールが結界王アリス・ロードスター。参りますっ!」

†††Sideルシル⇒リエイス†††

“グラーフアイゼン”の柄が、シエルの左拳打によって粉砕された。続けざまに放たれる右拳打。向かう先はヴィータの腹部。しかし「甘ぇっ!」とヴィータは柄の短くなった“グラーフアイゼン”で迎撃。“グラーフアイゼン”の打撃で右拳打を捌いたと同時に、

「『シュヴァルツェ・ヴィルクング!!』」

ヴィータの左拳に効果破壊の魔力を纏わせ、シエルの右頬目掛けて拳打を放つ。だがシエルは左手でヴィータの拳打を余裕で受け止めた。重力はキャンセルしたようだが、そんなことなどお構いなしと言った風だ。そして腕をグイッと引っ張られてしまう。体勢を崩し、顔面に迫るシエルの右拳打。ヴィータは「チッ」と舌打ちをしつつ首を逸らして回避。

「おぉぉらぁぁああああああッ!!」

――ハンマーシュラーク――

体勢を整えないうちに柄の短いままの“グラーフアイゼン”の打撃を放つ。シエルは掴んでいた手を放し、バックステップで回避――した直後にはもう目の前にまで接近してきている。先程からこういった攻防を繰り返していた。ヴィータと私は本気だし全力だ。だがシエルは「結構持つね~」と余裕を崩さない。こちらは肩で大きく息をしているというのに、シエルは息一つ乱してはいなかった。

「解ってたけど・・・。コイツ、マジで強ぇ」

ヴィータが悔しげに漏らす。勝たせてやりたい。柄を再生させたヴィータは、“グラーフアイゼン”をラケーテンフォルムへと変形させる。ギガントフォルムは通用しなかった。どれだけ重量のある強大無比の一撃であっても、重力操作によってインパクトを最小限に軽減させられる。ハンマーフォルムもだ。簡単にいなされて柄を粉砕された。

「だからって守護騎士が負けるわけにはいかねぇんだよぉーーーッ!」

――ラケーテンハンマー――

――超重力装甲(リジェクト・メネス)――

「うおっ!?」『むっ!?』

“グラーフアイゼン”が地面に墜落、ズドンと轟音を立ててめり込む。

「これで終わりっ! 真技!」

全身に重く圧し掛かる重力。まずい、ヴィータの体が動かない。シエルが嬉々として迫ってくる。シエルの真技は確か二つあったはずだ。超重力を広範囲に亘って掛けるルイン・トリガー強化版と、重力の拳打と蹴打で相手に連撃を与えるモノ。どちちを受けても必倒・・・いや、必殺となる魔術だ。

『デアボリック・エミッション!』

だが、そう簡単に終わらせてなるものか。私は、希望の翼リエイス。家族に友に仲間に希望を与えるべく存在するのが私だ。ここでヴィータに、シエルに勝てるという希望を与えねば。ヴィータを中心として広がっていく広域殲滅空間魔法は、こちらへ突撃して来ていたシエルを呑み込んだ。

「や、やったのか・・・?」

デアボリック・エミッションの効果が切れ、視界がクリアになった。私たちの視線の先、仰向けに倒れているシエルが居る。ピクリとも動かない。ほぼ直撃。シエルは攻撃に転じる際、重力による防御を一切行わない。攻撃は攻撃、防御は防御としての重力を扱う。攻防同時に重力を操作することが出来ないようだ。
だから真技の発動をしていたシエルは、防御を行う事が出来ずにデアボリック・エミッションへ突っ込み、その威力を余すことなく受けてしまった。

『途中で攻撃から防御に切り替えたようだが、すでに遅かったようだ』

「そうかい。はぁぁーーーーー。疲れたぁ、もう二度と戦いたくねぇよ、シエルとは」

ヴィータがその場に座り込んで、そのまま仰向けに倒れ込んだ。ふふ、同感だよ。私としても重力の一撃など二度と受けたくはないさ。

「痛ぁぁ~~~~い」

「『なっ!?』」

信じられない光景がそこにはあった。シエルがピョンっと起き上がって、長衣についた砂埃をパンパンと払い始めた。

(そんな馬鹿な! 防御無しで受けて、あんな軽ダメージで済むような魔法ではない!)

「今のは本当に危なかったよぉ。防護を貫こうとするなんて。でも、ね。この程度じゃわたし、拳帝シエルは墜とせないよ?」

「ありえねぇ」『ありえない』

起き上がる気力すら奪われた私たちは、こちらへ軽快なステップて近づいてくるシエルを見ることしか出来なかった。しかし私たちは見捨てられることはなかった。シエルが立ち止まり、「えええっ!?」と声を張り上げた後、

『ゲームクリアーーーーーッ♪』

ゼフィランサスのアナウンスが流れたのだ。

†††Sideリエイス⇒ヴィヴィオ†††

「はぁはぁはぁはぁ・・・・わたし“達”の、勝ち、です・・・!」

「そうですね。わたしの敗北、という事で構いません」

カノンさんの首筋に背後から右手を掛けて、左手はディバインバスターの発射体勢。わたしはカノンさんの砲撃の直撃を受けなかった。コロナとリオ、アインハルトさんが庇ってくれたから。だからクレーターの底で意識を失ったフリをして、機会を窺ってた。そしてなのはママとカノンさんの最強の砲撃同士の勝負。
結果は、なのはママのスターライトブレイカーの完全敗北。撃ち負けたのをしっかりと見た。衝突した時は拮抗していたんだけど、でもすぐにカノンさんの砲撃がブレイカーを突破して、なのはママを呑み込んで、墜落させた。

「貴女の母君はお強いですね。いくら出力制限が掛けられているとはいえ、わたしの最強の真技と僅かでも拮抗を見せたのはすごいです」

「自慢のなのはママですから」

「そうですか。・・・おめでとうございます。この勝負、そしてこのお題共に貴女方の勝利です」

「え?」

『ゲームクリアーーーーーッ♪』

ルシルパパのお姉さんのアナウンスだ。足元に光が溢れる。転送が始まった合図だ。

「カノンさん!」

「どうかルシル様の事をよろしくお願いしますね」

そう言ったカノンさんは、今まで見せなかったすごく綺麗な笑顔だった。

†††Sideヴィヴィオ⇒ルシル†††

「負けちゃいました。残念です」

アリスが肩を落とす。魔術絶対封印結界・一方通行(サンダルフォン)の聖域や真技・無限結界牢イセリアル・ケイジ。なにより創世結界・走馬灯の迷宮メモリアル・ラビリンスを使われなかったから、それほど苦労はしなかった。まぁサンダルフォンや真技が使われていたとしてもそう簡単に後れを取るつもりはない。

「ふふ、私としてもお前に負けるのは二度と御免だからな」

「むぅ。そんな事を言われると意地でも勝ちたくなっちゃいますっ」

「残念。もう終わりだよ、アリス」

アリスから奪取した魔道書をヒラヒラと見せる。お題は、魔道書を盗んだ泥棒から魔道書を取り返す、だ。つまり私が魔道書を手にした瞬間にクリアしたという事だ。

『ゲームクリアーーーーーッ♪』

ゼフィ姉様のアナウンスが流れる。よしっ、まずは一つ目だ。フェイト達とはやて達も、これから行うお題をクリア出来ればいいんだが。足元に光が生まれる。転送の合図だ。

「今度会ったら負けませんからっ!」

素敵な笑顔を浮かべ意気込んでいるアリスに手を振りながら、私は転送に身を任せた。それにしても、今度、か。この先のお題で再戦とかがあるんだろうか?




†◦―◦―◦↓レヴィルーのコーナー↓◦―◦―◦†


アリス
「わたし、要らない子なの?」

レヴィルー
(ど、どうしてここにアリスさんが!?)

シエル
「すいませ~ん、うちの末っ子を回収しに来ました~」

カノン
「無断でごめんなさい。失礼します」

レヴィルー
(シエルさんとカノンさんまで!?)

シエル
「アリス見っけ♪ というかそんな隅っこで膝抱えて何やってんの?」

カノン
「帰りましょうアリス。この部屋の主であるお二人に迷惑です」

レヴィルー
「(わたし達のことだよね!?)迷惑なんてとんでもないです!」

シエル
「ごめんね、邪魔しちゃって。ほら、アリス。帰ろ?」

アリス
「わたし、全然出番が無かったです。まぁルシル様を相手にしたんだから当然のような気もしますけど」

レヴィ
(わたしみたいなこと言ってる・・・)

ルーテシア
(レヴィみたいなこと言ってる・・・)

シエル
「いくら何でも真技を制限したのは間違いだよ。数少ない攻性術式の一つである真技を封じたら、さすがに兄様には勝てないって」

カノン
「ですね。元よりアリスは単独戦闘はあまり得意じゃないですし。誰かのサポーターとして戦場に立った方が、結界能力を発揮できますから」

シエル
「だからこそわたし達は、三人で戦場の妖精フロント・フェアリーになったんじゃん」

アリス
「シエル。カノン」

シエル
「まぁ今回はちょっと失敗しちゃったかもだけど。気にしない気にしない」

カノン
「(このまま出番少ない云々の話題から逸らしていきましょう)そうですよ、アリス。
また三人で頑張りましょう。それに、わたしも負けたんです。シエルだって引き分けですし」

シエル
「時間があれば勝ってたよ絶対」

アリス
「時間・・・。わたしが早々にルシル様に負けてしまって、魔道書を奪還されたせいですよね」

シエカノ
(しまった!)

レヴィ
「えー、まだまだ掛かりそうなんで今回はここまで」ボソボソ


 
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