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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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番外ネタ その2  腹が減っても食う物は選べ!

 
前書き
今回は本編とは全く関係ない話になります。 

 
 江戸の治安を守る事で有名な組織、真選組。彼等の活躍は江戸中に知れ渡っており、町民を守り、その町民の治安を脅かす攘夷志士の討伐に一役買っている。正に守りのエキスパート集団と呼べた。
 そんな真選組に、ある一つの危機が訪れようとしていた。
 場所は変わり、真選組屯所内にある会議用の部屋。其処に隊士達一同が集められ皆胡坐を掻き座っている。そんな隊士達の視線の先に居るのは、真選組局長の近藤勲と、副長の土方十四郎であった。

「今回お前達を集めたのはほかでもない。俺達真選組存亡に関わる重大な事態が発生したからだ」

 何時に無くシリアス感をかもし出しながら近藤は言う。その言葉を受け隊士達がどよめきだす。額には冷や汗が流れ落ち、目はあっちこっち向きまくり、山崎はラケットを持って逃げようとし、土方はそれを捕まえてストンピングを始める。そんな感じで所謂プチパニック状態に陥っていたのだ。

「近藤、一体どんな事態なのだ?」

 居ても経っても居られずにシグナムは尋ねた。彼女としては世話になっている組織がこのまま廃れるのは黙って見てはいられないと判断したのだろう。彼女らしい心遣いだった。

「うむ、皆心して聞いてくれ。実は―――」

 近藤が覚悟を決め隊士達に事情を説明する。隊士達の殆どが固唾を呑んでその理由に聞き耳を立てる。皆の緊張がピークに達しようとしている中、近藤は重い口を開いた。

「今日から数日間の間、はやてちゃんが此処を離れる事になった。故に、今この屯所で炊事機能が完全に麻痺してしまったんだ!」

 カッと目を見開いて近藤が豪語した。その理由を聞いた途端守護騎士であるシグナム、ザフィーラ、シャマルの三名は揃ってずっこけた。

「そ、そんな理由なのか? もっと危険な事じゃないのか?」
「何言ってんだシグナム。腹が減っては戦は出来ぬって言うだろうが! 第一、俺達の飯は全部お前等の主が工面してくれたんだ。それが居なくなっちまったって事はだ、俺達がどうにかしてこの数日間を生きていかなきゃならねぇってことなんだよ」

 今更ながら隊士達の飯は全てはやてが担当してくれていた。とても9歳児のお子様とは思えぬ腕前で常に隊士達の腹を満たしてくれていたのだ。だからこそ真選組は常に全力全開、フルパワーで任務に当たれたのだ。
 しかし、そのはやてが数日間留守だと言うのはかなりとんでもない事態だと言える。

「だが、何故主が此処を開けるのだ?」
「どうやら寺子屋で【春の合宿勉強会】と言う奴に参加したらしい。因みにヴィータちゃんもそれに参加した為に数日帰って来ない」

 原因はどうやら寺子屋の合宿だったようだ。しかも一緒に通っているヴィータもまた例に漏れずそれに参加している為に此処には居ない。つまり、暫くの間自分達で飯の工面をしなくてはならないと言う事になったそうだ。

「と、言う訳でだ。今日から暫くの間交代で全員の飯を作る事にする。順番はくじで決めるが、まぁどうせ適当に組まれるのだから覚悟する様に! 以上、解散!」
「え? そ、それだけ! それだけなの!? もっとこう、重大な危機とかないの?」

 慌てふためくシャマル。どうやら騎士でもある彼女の脳内ではそれこそ江戸をひっくり返すような事態を連想していたらしい。そんな彼女に向い、近藤は一言、簡潔にこう述べた。

「ないの」と―――




     ***




 そんな訳で今日から始まった真選組での自給自足生活。今まで衣食住の内食を殆どはやてに任せっきりだったが為にはやてがいなくなるとその食の機能がろくすっぽ機能しなくなってるのは承知の通りだった。
 まず最初に食事当番を任命されたのは意外や意外の土方だった。
 一応鬼の副長と言われるだけあり包丁の扱いや基本的な調理器具の扱いはそれなりに手馴れている。が、問題が一つあった。

「おい、何だこれは?」

 隊士達一同の目の前に並べられたのは丸皿の上にでんと盛られた黄色い謎の物体だった。その物体からは何処か油っぽくて酸っぱい臭いが漂う。それでいて何故か食欲を奪われる。
 が、何処かで見た物体だと誰もが連想できた。

「決まってるだろう。焼きそば土方スペシャルだ」

 どうやら土方が言うにはこれは焼きそばの類らしい。が、目の前に出されているのはどう見ても焼きそばじゃない。絶対にこれに焼きもそばも含まれて居ない。

「ねぇ、土方さん。この黄色い物体は何?」

 恐る恐るシャマルが黄色い物体を指差しながら尋ねる。目元が青ざめておりかなり食欲を失せさせているらしい。
 そんな彼女の質問に土方は迷う事なく応えた。

「決まってるだろう。マヨネーズだ。俺の愛用の特性マヨネーズだから美味いぞ。安心して食え」

 はっきり言って安心できなかった。確かにマヨネーズと焼きそばは相性は良いのだが、だからと言って焼きそばを覆いつくす程の量のマヨネーズが掛けられていては食べる気など失せてしまうものだ。
 しかし、そんな事を鬼の副長が許す筈がなかった。

「因みに言っておくが、飯を残した奴は士道不覚悟で切腹だからな。心して食え!」
(嫌な二択選択だぁぁぁぁぁ!)

 隊士達の目の前には正に死か死しかない。格好良く言うならば正に今は【デッド・オア・ダイ】状態なのだ。つまり、どっちを選んでも死しか見えないのだ。

「こ、こんな物を食わねばならないのか?」
「流石に、これはちょっとねぇ……」

 青ざめる隊士達の中でザフィーラとシャマルもまた青ざめながら皿に盛られた黄色い物体を凝視していた。本来なら美味しい焼きそばの筈がその上に盛られた黄色い物体のせいでかなり不味そうに見えてしまっている。
 とても食べる気が起きなかった。

「どうした二人共。折角土方が用意してくれたんだ。食わねば失礼だぞ」

 そんな中、シグナムだけは気にせず黙々と食べている。流石は烈火の将と呼ばれるだけありその肝っ玉は他の追随を許さなかった。
 隣に居た二人が彼女の雄姿を見ようと視線をむけ、そしてその思いは絶望に変わった。
 確かに、シグナムは土方スペシャルを美味しそうに食べている。だが、それとは対照的に彼女の瞳に光はなく、死人の様な目をしていたのだ。

「し、シグナム……一体何があったの!?」
「ふっ、ふふふっ、あいつの補佐をする事になってから早数日。その間、これを食べない日などなかったのだ。今ではこれの味に取り込まれてしまったと言っても良いだろうなぁ」

 要するに土方の補佐を担当してしまったが為に無理やり食わされ続けてきたのだろう。その為彼女の中の精神が崩壊し、今では土方スペシャルを美味しいと誤解するまでに精神が汚染されてしまったようだ。

「どうしたザフィーラ、食が進んでないじゃないか! お前は我等の盾なのだ。もっと食え! そして力をつけろ!」

 そう言ってザフィーラの土方スペシャルを持ちそれを近づけてくる。それが近づく度にザフィーラの鼻につんときついマヨネーズの臭いが漂ってくる。
 胃袋がキュッと締まる思いがした。

「む、無理だシグナム! 流石の俺でもそれを食べる事は出来ない!」
「遠慮するな! 何なら私が直接食わせてやるぞ!」
「いやいやいや! それは流石に絵的に不味い気がするんだ―――」

 言葉が終わるよりも早く、シグナムが土方スペシャルを一口分すくいとり無理やりザフィーラの口の中に押し込んだ。
 その際シグナムが「そぉい!」と掛け声を上げたのは記憶に新しい事だったりする。

「ぐ、ぐはぁっ! 口の中一杯に酸味と油の味と卵の味がぁぁ! ってか、これ焼きそばなのに焼きそばの味が全くしないぃぃぃ!」
「さぁ食え! もっと食え! そして貴様も私と同じ世界に入れぇぇぇ!」

 その後も有無を言わさずシグナムに無理やり土方スペシャルを食わされる盾の守護獣。哀れ、余りにも哀れな光景だった。
 そして、それを見ていた隊士達もまた青ざめた顔をしてそれを哀れんでいた。

「ぐ、ぐふぅっ……」
「ふむ、全部食い切ったか。どうだ、味は?」
「ふが、ふがふがふがが……」

 全然飲みこめてない為何を言っているのかさっぱり分からない。だが、既に精神がいっちゃってるシグナムにはこう聞こえていたらしい。

【美味い、もっとくれ!】と―――

「そうか、美味かったか! おい、土方! ザフィーラがおかわりを要求しているぞ!」
「ふっ、流石はベルカの騎士だ。俺の味覚を分かってくれて嬉しいぜ。おかわりならたんまりあるぞ。お前等も遠慮せずガンガン食え!」

 そう言って、意気揚々と土方がまた持ってきた。しかも明らかに最初のより量が3倍近く増量されている。それを目の当たりにしたザフィーラは青ざめると言うよりも顔面蒼白の方が近かった。
 急いでこの場を離れなければ不味い。そう思い逃げようとしたが、そうはさせまいとばかりにシグナムに頭を抑えられてしまった。

「遠慮するな。折角の土方の好意を無駄にするか?」

 そして再び始まる地獄絵図。隊士達は同じ地獄に遭う位なら自ら地獄に落ちた方が良いとばかりに一斉に土方スペシャルを食った。急いで食い切った。味なんて気にしないで食い切った。
 後に残ったのは口の中に広がるマヨネーズの味とマヨネーズの香りとマヨネーズ(以下略)しか感じられなかった。
 



 初日の朝食でこんな目にあってしまったのだから、次はちゃんと吟味しなければならない。隊士達は祈る思いで次の選抜を決めた。
 その結果、次に決まったのは―――

「む、私か」

 あろうことか最初のあれで散々暴走したシグナムだった。隊士達の中で青ざめる者も居れば床を叩いて泣き喚く者も居るし、中には刀を抜いて腹を切ろうとする輩まで出る始末だった。

「まぁ、料理と言う輩は作った事はないが何とかしてみよう」

 そう言って厨房へと向う烈火の将。先の言葉が完全に決め手となり、隊士達はパニック状態に陥ってしまった。先の土方スペシャルよりも酷い物が出来る。彼等の研ぎ澄まされた感覚がそう告げていたのだ。
 隊士達の予想はある意味で当たってしまった。昼時となり、シグナムが作り、隊士達の前にそれを出した。皿の上に盛られたのは真っ黒に染まった意味不明の物体だった。

「おい、何だこれは?」

 流石に居た堪れなくなったのか、土方がこれを指差して尋ねる。

「見て分からないか? 【卵焼き】だ」
「これの何処が卵焼きだ! どっちかって言うとこれはもう卵焼きじゃなくて可愛そうな卵だろう! こんなの食える訳ないだろうが!」

 流石の土方もこれには激怒する。そして席を立とうとしたが、そんな土方の喉下にシグナムの刃が当てられる。
 ギョッとした土方が恐る恐る彼女を見ると、其処には朝食の時と同じように目の死んだシグナムが居た。

「土方、貴様先ほど言ったなぁ。飯を残したら士道不覚悟で切腹だと」
「い、嫌……そもそもこれは食える物じゃないし。第一これ食ったらマジで死ぬかも知れないしってんでそのぉ……」
「貴様も侍なら腹括れ! 今此処でこれを食すか? それとも私の介錯を受けて腹を切るか? さぁ、二つに一つだ!」
 
 どうやら、相当シグナムは根に持っていたようだ。何せ土方の補佐をする様になってからと言うものの、三食土方スペシャルの日もあった。幸いはやてが食事を作った際にははやての料理が食えたのだが、しょっちゅうその際に土方にマヨネーズをぶっ掛けられて料理を台無しにされていたのが日常茶飯事の光景であった。
 そんな日常に鉄槌を討つべくシグナムが反撃に転じたのだろう。

「そうですぜぃ、土方さん。此処は迷わず食うべきでさぁ」

 そんなシグナムを煽るかの様に向い側に座っていた沖田が手を叩いてはやしたてる。

「総梧、てめぇ……」
「あれれぇ、鬼の副長がもしかして自分で言った事を守れないんですかぃ? こりゃやばいですねぇ。副長交代の日も近いんじゃないんですかねぇ、近藤さん」

 チラリと、沖田は近藤を見た。その近藤と言えば、シグナムが作った可愛そうな卵をさも美味そうに食っていたのだ。

「うむ! 総梧の言う通りだ。それにトシよ。これも結構いけるぞ! まぁ、お妙さんの作ったのに比べたらまだまだ劣るところもあるかも知れグバハァッ!」

 言葉の途中で近藤は口から大量の血を吐き出し、そのまま倒れてしまった。その光景に青ざめる隊士達と土方。
 その土方の横では狂ったような笑みを浮かべてこちらを睨むシグナム。最早逃げ場はなかった。

「サァ、選ベ。土方。ソレヲ食ウカ腹ヲ切ルカ?」
「おいぃぃぃ! お前どんだけ精神汚染されてんだ? 最早原作のキャラ崩壊してんじゃねぇかぁ!」

 怒鳴る土方。だが、忘れないで欲しい。そうさせたのはほかでもない土方本人なのだから。
 まぁ、あの後結局何時までも渋っていたのでシグナムと悪乗りで沖田が一緒になって土方の口に大量の可愛そうな卵を詰め込んだのだが。
 そして、隊士達はまたしても自らの足で地獄へ走っていったのは言うまでもない。




 朝食、昼食が揃って地獄絵図となった食事。そして時刻は既に夕刻時。最期の締めを誰が飾るかと言う事でくじが行われた。

「あぁ、今回は俺みたいでさぁ」

 間延びした声で沖田が当たりくじを手にとってヒラヒラさせてる。またしても隊士達のSAN値がガリガリと削られていく音がした。

「安心して下せぇ。俺は間違っても其処に居るアホ二人みたいなイヌの餌や粗大ゴミみたいな飯は作らない自信がありやすんで」

 下衆な笑みを浮かべながら沖田は例の二人。つまり土方とシグナムを見入った。それに二人は激怒したが何処吹く風だった。
 まぁ、作っちゃったもんはしょうがない。これから先、この二人に料理を作らせる事はないだろうと信じながら。
 そんな訳で沖田が作ったのは真っ赤なスープと赤い飲み物であった。
 見た目的にはとても美味そうだ。これだけでも隊士達は安堵の表情を浮かべた。

「総梧、お前料理できたんだなぁ。見直したぞ」
「当然でさぁ。今の時代は男でも料理する時代ですからねぃ」

 自信有り気に鼻を鳴らす沖田。そんな沖田に何故か不満そうな表情を浮かべる土方とシグナム。

「けっ、上っ面だけ出来てたって意味ねぇんだよ」
「その通りだ。料理とは中身も出来てなくてはいかんのだ。その辺は抜かりないのだろうなぁ?」

 如何にも上から目線で訪ねる両者。しかしそんな両者の問いに沖田は全く気にも留めず鼻で笑って見せた。

「安心してくだせぃ。俺の料理はあんたらの作るイヌの餌とは格が違いますからねぃ」
「あぁ、そうか。ならば楽しみだなぁ……って、どう言う意味だごらぁ!」

 ぶち切れる土方を無視し、沖田は自分の席に座る。そんな沖田を見た土方は流石に回りの目を気にしてか席に座る。そして皆目を輝かせて目の前に置かれたスープにがっついた。
 それから数秒と経たずに隊士達の口の中はパニックに見舞われた。
 沖田の作ったスープは確かに見た目は及第点より上のランクだった。だが、問題は中身だった。
 実はこのスープ。一見すると赤いトマトスープに見えるのだが、実際は唐辛子で作った超激辛スープだったのだ。更にそれだけでは留まらなかった。トドメとばかりに隣に置かれた飲み物で辛さを中和しようとしたのだが、実はこのジュースもまた唐辛子をふんだんに使用した激辛ジュースだったのだ。
 激辛と激辛のクロスオーバーの前に隊士達は勿論騎士達の舌は爆発炎上となり、皆一斉に水飲み場へと駆け込み、水をがぶ飲みしようとする。だが、屯所内にある井戸は何故か分厚い板で固定されており全く動かせない状態になっていた。

「あぁ、言い忘れてましたが、此処には飲める水はないですぜぃ」

 ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら沖田が言う。彼の言う通りであり、屯所内にある飲み水や飲み物は全て処分されており、飲める物と言ったら沖田が用意した激辛ジュースだけとなっていた。
 更に外に逃げる事も出来ない。
 食事中に外に出るのは士道不覚悟で切腹。と言う滅茶苦茶な局中法度を付け加えられた為に屯所内では鱈子唇となった隊士達がのた打ち回って苦しんでいる光景が映し出されていた。
 無論、その中には近藤、土方、シグナム、シャマル、ザフィーラの姿もあったのだが。




     ***




 それからと言うもの、食事当番のくじは何故か土方、シグナム、沖田の三名にばかり当たるようになった。土方が作ればマヨネーズのフルコース地獄となり、シグナムが作れば可愛そうな卵を食す羽目となる。そして沖田が作れば超激辛コースへと突き落とされる始末だった。
 最早、隊士達の精神はマッハで崩壊寸前まで叩き落されてしまった。
 今、この屯所に希望の光はないのだろうか?
 そう思っていた矢先、変化が訪れた。
 それは、はやて達が帰ってくる前日の夕食時の事だ。何時もの様にくじで食事当番を決めるのだが、今回は全く別の人間が当選した。

「え? 私ですか!?」

 そう、当選したのはシャマルだった。隊士達は既に意気消沈となり席に座り、まるで死刑宣告を待つ死刑囚の様な感じのオーラを放っていた。
 散々な物を食わされたが為に隊士達の中には幻覚や幻聴を患った者も居たし、自決しようとした者も多数居た。この状況をどうにか打破しなければならない。でなければ武装警察真選組はお仕舞いになってしまう。

「お待ちどうさま。頑張って作ってみましたよ」

 半ば自信無さげにシャマルが出したのは極ありふれた料理だった。白い飯に味噌汁。鯵の開きに納豆とのりと言う極々普通の食事だった。
 だが、それを隊士達は涙を流してがっついた。見た目もそうだが味も問題はなかった。強いて言えば平凡な献立だったのだ。
 だが、隊士達にはその平凡な献立がまるでご馳走の様に思えていた。
 気がつけば誰もがおかわりを要求し、涙と鼻水が入り混じった食事を気にせずがっついている。相当なまでに飢えていたのが伺える。

「美味い! 美味いっすよシャマルさん! あんたはマジで俺達の女神様だぁ!」

 隊士達が泣きながらそう豪語し、そして飯を食いまくる。その光景にちょっとだけ恥ずかしかったのか頬を染めてはにかむシャマルが居た。
 
「ま、辛うじて及第点ってとこだな」
「うむ、微妙な味付けだが食えない訳ではない。が、まだまだ修練が必要だな」

 その横では。やっぱり上から目線で料理を食べる土方とシグナムが居た。ってか、あんたら。何でそんなに自信満々で居られるの? 
 と、心底そう思えていたりする。
 こうして、はやてが居ない間の怒涛の三日間は終わりを迎える事となった。
 その三日間を教訓として、真選組内に新たなルールが加わった。

1.土方、シグナム、沖田の三名には絶対に飯を作らせない事。
2.必ず食える物を出す事。
3.困ったらシャマルに頼め!


 この三つが新たに局中法度に加えられる事となったのである。




     おしまい 
 

 
後書き
次回から本編に戻ります 
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