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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第十九話







「報告ッ!! ここから五里先に曹、劉、董の旗と各陣営を確認しましたッ!!」

 孫堅軍と合同で進軍していると、斥候として放っていた兵士が報告してきた。

「地図で確認すると、十二里先に廃城があってそこに黄巾軍の主力部隊がいるみたいです」

 七乃が地図を見ながら言う。

「ならば、三軍と合流するかの」

 美羽はそう決断した。





―――袁術軍陣営―――

「董卓軍が諸将は董卓軍陣営にて集合せよ、軍儀を行うと使者が申しています」

 三軍に合流して陣営を設営中に使者が来た。

「断る理由は無いのぅ。七乃、零、長門は妾と董卓軍陣営へ行くのじゃ」

「分かりました」

「うむ」

「………分かりました」

 俺は少し間を置いて了承した。

 ………百パー、曹操いるよな?

「どうかしたのか長門?」

「いやぁ……何でもないよ何でも……」

 零に言われるが俺は何でもないと答える。

 ……何も起こらない事を祈るか……。






―――董卓軍陣営―――

「失礼するのじゃ」

 途中で再び合流した孫堅達と案内された天幕に入った。(孫堅軍の代表は孫堅、孫策、周瑜の三人)

「「ッ!?」」

 うわぁ……曹操いたし、しかも目が合ってしまっ た……。

 まぁ直ぐに逸らしたけどな。

「お、長門やんかッ!!」

 董卓軍の代表は霞だった。

 霞は俺を見ると直ぐに抱き着いてきた。

「久しぶりやな長門」

「そうやな霞。桜花は?」

「桜花は今回は留守番や。新兵の訓練しなあかんからな」

「そうか……。ま、元気ならそれで充分やけどな」

「……そろそろ始めないかしら?」

 曹操が言う。

「それもそうやな。ウチが黄巾軍討伐軍の将軍張遼や。何進の代理やけど、作戦とかは皆で考えてな。ウチは戦闘するしか取り柄が無いからな」

「あら、中々視野が広いようね?」

「まぁ事実やからね。何か作戦はある?」

「黄巾軍が占領している廃城の地図は有りますか?」

 周瑜が霞に聞く。

「あるで。斥候を放って廃城の周りの地理を調べたわ」

 霞が地図を出す。

 ……廃城の裏は森か……。

「……そこの貴方。貴方は何か意見でもあるかしら?」

「ん?」

 急に曹操が俺に聞いてきた。

「何故自分ですか?」

「あら悪いかしら?」

「……分かりました。自分が思うに、廃城の後方にある森を利用すべきでしょう」

 俺は地図の森を指差す。

「その根拠は?」

「我が連合軍の兵力は八万六千。対して黄巾軍は十万二千。我々は数が足りないから奇襲で黄巾軍と戦うしない。んで、連合軍は一万を森へ配備して残りは廃城の正面へ布陣する。そして夜中に森からの部隊が廃城の食料庫を火矢で焼き、その混乱中に一万が廃城へ突撃して乱戦にさせる。更に城門を開いて、待機していた七万六千の部隊も廃城に突撃して黄巾軍を一網打尽。どうですか?」

「……中々の案ね。他には?」

 曹操が皆に聞く。

「その一万の部隊は誰が出すんだ?」

 ここで劉備と共に義勇軍を率いている北郷一刀が口を開いた。(てかいたんだ……)

「なら妾が出すのじゃ」

 美羽が言う。

「私の部隊からも出すわ」

「私からも出そう」

 曹操と孫堅も頷いた。

「んじゃぁ王双の案でやるわ。これで解散や」

 霞の言葉と共に軍儀は終了した。





―――自分の天幕―――

「……よし」

 あれから自分の天幕に戻り、出撃の準備をしていた。

 俺も一万の奇襲部隊に行くからな。

「隊長。曹操殿が隊長に面会したいと言っています」

「曹操が?」

 凪が天幕に入ってきた。

 てか来ないでほしいよ曹操。

「……会わないとあかんな……」

 俺は溜め息を吐いて天幕を出た。





―――陣営前―――

 陣営前に曹操と夏侯惇、夏侯淵がいた。

「久しぶりね曹徳……今は王双かしら?」

「あの……曹徳とは誰ですか?」

「……何、嘘を言っているのかしら?」

「いや自分は王双なんですが………」

 はぐらかす。もうはぐらかすしか無いよ。(滝汗)

「えぇいッ!! 何故、華琳様に何を嘘をつくんだ曹徳ッ!!」

 夏侯惇がキレた。

「だから自分は曹徳とやらではありませんよ」

「では曹徳では無いという証拠があるのかし ら?」

「ほぅ。どんな証拠ですか?」

 曹操が俺の右肩を指差す。

「曹徳の後ろの右肩には傷が付いているはず よ。私との試合で曹徳は右肩を負傷したから ね」

 ……確かに右肩に傷があるな。

 てかあれは試合だったのか?

 曹操は武器持ちで俺は木刀だったはずなんだが……。

「まぁいいでしょう。見たければどうぞ」

 俺は上の衣服を脱いで後ろを振り向いた。

「「「ッ!?」」」

「どうですか? 背中や肩は傷があるので曹操殿が申した傷はどれですかな?」

 背中などには山賊や盗賊などの戦いで何箇所か傷を負ったりしていた。

 曹操が指摘した右肩の傷はあるけど、曹操自身もどれが自分が負わせた傷か分からないからな。

「………どうやら私の勘違いだったようね」

「でしょう?」

「話は代えるわ。王双、私のところに来ないかしら?」

「お断りします。自分は袁術軍がいいので」

「………そう、邪魔したわね。行くわよ春蘭、秋蘭」

「「はッ!!」」

 三人が歩きだす。

「……………(ニコリ)」

 すると、夏侯惇が振り返って俺に微笑んだ。

「……………」

 ……夏侯惇は完璧に俺だと気づかれてるな。(てか、さっきの言動は芝居か?)

「まさか、まだあの約束を覚えていたんだろうか……」

 俺はそう呟きながら陣営に戻ろうとする。

「あ、王双さんッ!!」

「あん?」

 今度は劉備、北郷、関羽、張飛、諸葛が現れた。

 ………何やねん今度は……。

 思わず関西弁が出たが気にするな。

「何ですか?」

「王双、何でその鎧を袁術軍が使用しているんだ?」

 北郷が俺に聞いてきた。

 鎧? あぁ戦国時代の鎧を使用しているからか。

「よく分からんが我々がこの鎧を使用したらあかんというのか?」

「い、いやそうじゃないんだ。ただ気になったから………」

「なら別に構わないでしょう」

「なッ!? 御主人様に対して何という聞き方だッ!!」

 関羽が怒る。

「ただ普通に返答しただけでしょう関羽殿。それとも何か粗相でもしましたか?」

「はわわ。今のは王双さんが正しいですよ愛紗さん。それに御主人様、挨拶も無しに用件を告げるのは………」

「う、済まない王双……」

「……………」

 北郷は謝るけど、関羽は何か納得いかない表情をしていた。

 ……北郷の行いは全部いいと思っているの か?

 まさかな………。

「王双、いきなりこんな形で申し訳ない。急に尋ねてきたのは鎧の事なんだ」

北郷が真剣な表情する。

「さっきも聞かれましたな。それで我が軍の鎧がどうかしたんですか?」

「その、袁術軍の鎧は俺がいた世界から約五百年前に使用されていた鎧なんだ」

「へぇ……それで?」

「それでって……」

「そう言われてもこちらが困りますよ。たまたまでしょう」

「たまたま………」

 北郷はそれっきり何かブツブツと呟いてい る。

「それと劉備さん」

「は、はい」

「貴女が目指すのは何ですか?」

 俺はあえてこの質問をした。

「私は……この世の中の皆が、笑って、幸せになれる世界を作りたいと思っています」

 ………はぁ。

「劉備さん、正直言って無理でしょうな。むしろ、妄想に近い」

「なッ!? 貴様ァッ!!」

 関羽が激昂して、俺に武器を構える。

「あ、愛紗落ち着けッ!!」

 北郷が関羽を抑える。

「劉備さんよ。それを無意味だと分かるか?」

「無意味ではありませんッ!! 私達は真剣ですッ!!」

「真剣ならどのように皆を幸せにするんです か? 今のように力で押さえるんですか?」

「そ、それは………」

 劉備は何も言えなかった。

「漢王朝を幸せに出来る案があるなら構いませんけど、案が無いならただの妄想だと思いますよ自分はね。そういう現実味が無い話はやめていただきたいもんです」

「……………」

「失礼な言い方ですが、それが自分の意見です。それでは準備があるので失礼します」

 俺は劉備達にそう言ってその場を離れた。





―――劉備側SIDE―――

「何という奴だッ!! 桃香様の理想が妄想だとッ!!」

 陣営へ帰り道に関羽が怒っていた。

「はわわ。でも王双さんの意見は一理ありましゅ」

「朱里ッ!!」

「はわわ。でも、私は妄想を理想に変えたいです」

 諸葛は劉備に言う。

「そう……だね。うん、私達は私達で頑張ろ う」

「そうだな。俺達はそのために頑張っているんだからな」

北郷はそう締め括った。







 
 

 
後書き
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