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時と海と風と

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アルマ・クラストールという男

 
前書き
 原作の前提部分が破綻してたりするのでアンチタグ入れてます。 

 
 草木の一本も見当たらない砂とごつごつした岩だらけの無人島に、四人の男たちが立っていた。
 彼らの容姿は様々で、身の丈二メートル五十センチを超える大男、それすらも上回る巨漢、はたまた一般的成人男性程度の背丈の者もいる。

 そんな四人は互いが互いに向かい合っているわけではなく、また四人全員が肩を並べている訳でもない。三対一。その構図だ。
 そして付け加えるならば、『三』とは海軍本部最高戦力と称される大将の三人、『一』とは見た目歳若い一人の青年のことを指す。

「よう。三大将が揃いも揃って、一体俺に何の用だい?」

 青年が他三人へと問いを投げかける。しかし、問いの形を取っていながらも彼にはその答えが分かっているのか、口の端は皮肉げに吊り上っていた。

 西から吹いた風が彼の黒髪を撫ぜ、前髪の下からは楽しげな光を灯した黒曜石のような漆黒の瞳がちらちらと覗く。

 海軍――絶対正義を掲げ、海賊を代表とした世に蔓延る悪を討滅せんとする全世界規模の軍隊。その巨大な組織における最高戦力こそが今ここにいる三人、海軍本部大将だ。そしてそんな実力者たちと対面しているにもかかわらず、青年の態度は微風を受ける柳のごとく飄然としていた。
 それは、たとえ三大将が相手であろうと己が敗れるはずがないといういっそ傲慢なまでの自負がゆえである。

 青年からの問いに対し、並々ならぬ闘志を漲らせながら彼と相対する男たちのうちの一人――海軍本部大将センゴクは簡潔に言葉を返した。

「貴様を、捕えに来た」
「ははっ、そうかい。まあ頑張ってくれや」

 カラカラと笑いながら青年は軽く流す。やれるものならやってみろ、そんな彼の心の声が聞こえてくるようだった。
 そんな掴みどころのない青年の様子も意に介さず、センゴクは静かに自分たちの意志を告げる。あたかもそれが決定事項であるかのように。

「悪いが今日こそは縄についてもらうぞ、『刻針』の」

 押し詰められたその声に一体どれだけの決意が籠っているのか。決して大きな声ではなかったというのに、それは十メートル余り離れたところに立つ青年の耳にもよく届いた。

「おや、そちらさんは随分とやる気のようだ。……ふむ、なんだい。お前さんたち、もしかして俺を相手に本気で勝つつもりかね?」
「無論。洒落や気まぐれで大将三人を集めるはずもあるまい。貴様を倒すためだけにこれだけの戦力を注ぎ込んだのだ、なんの成果もなしにおめおめと帰るわけにはいかん」
「はっは、そりゃまたご苦労なことで」
「ふん、笑っていられるのも今のうちだ。今回、我らは本気なのだから」
「あーまあ、お前さんたち海軍にゃ俺はかなり美味しい獲物だもんなぁ」

 青年は自身の立場を理解している。

 世界最強。

 海軍から多額の懸賞金を賭けられなおかつこの広い海の世界で最も強い者と呼ばれている海賊が、現在は仲間も作らずたった一人で旅を続けているのだ。昨今大海賊時代とまで呼ばれるようになってしまった世界の流れへ歯止めをかけるのに、これほど狙いやすい獲物もいまい。時の大海賊白ひげでは配下が多すぎて手が出せないが、単独行動を続けなおかつ知名度の高い彼であれば、捕えることのメリットがそのための労力を上回ると判断したのだろう。

 そして青年は、そんな向こうの思惑を理解できるからこそ思う。

(……舐めんじゃねえよ、世界政府)

 世界最強その名より、三大将を上に見る。その傲慢が気に入らない。
 彼は自身が誰よりも強いという自負を持つがゆえに、他者の驕りを認めない。だから教えてやるのだ。お前たちが一体誰に喧嘩を売ったのかを。

 刻針海賊団船長。世界最強の男。懸賞金額九億六千万ベリー。そんな男を大将三人ぶつけた程度で(・・・)捕えられると思っているのなら、勘違いも甚だしい。
 (おの)が矜持を侮辱されたという怒りがふつふつと滾る。しかしそれを決して相手には悟らせず胸の奥だけに秘めて、青年は口を開いた。

「そうさなぁ。たしかに、お前さんらが背負ってるもんも相当重いんだろう。決して譲れやしないんだろう。……だがな、それでも――」

 ああ、それでも変わらない。それだけは決して変わってはならないのだ。

 笑え。
 不敵な笑みを浮かべ、彼は世界も震えよと宣言する。



「――――勝つのは、俺だ」



「「「――――ッッッ!!」」」

 気圧されたように大将たちが半歩下がった。まだ戦いは始まってもいないというのに、張り詰めた緊張感で額に汗がにじみ出している。

「さあ、海軍の威信と最強の名を賭けた大勝負といこうじゃねえか」

 青年は腰に下げた刀の柄へとそっと手を添えた。銘を『星嵐』。最上大業物工の一振りに数えられるその刀は、ただひたすらに強度と切れ味のみを追求した結果生まれた逸品だ。漆黒の刀身にまるで星空のような銀の光の粒が散っているためこの名がつけられた。

 剣気とも呼ぶべき斬るという意志を握る刃へと束ねていき、青年は戦闘開始の合図となる名乗りを上げる。

「世界最強、“刻針”アルマ・クラストール。推して参る――」
「……っ! 我らとて、正義の名を背負う以上負けるわけにはいかんのだっ!! だから貴様はここで終われ刻針!!」

 海軍の威信を賭けて。センゴクの咆哮と共に他二人の大将たちも一斉に戦闘態勢へと入る。
 青年、アルマはその魂の叫びとも言うべき雄叫びを正面から受け止め、その上でそれを叩き潰すと決めた。

 戦うからには容赦はしない。そうとも、始めから全力だ。
 彼我の差、約十五歩。されど一足で事足りる。

「死ぬ気で構えときな。じゃねえと――」
「……!? ちぃっ!!」

 大将たちが彼の動きを認識した時にはもう遅い。すでにアルマは神速の踏込みを終えている。そこから放たれるは斬撃の極致、世界で誰にも止めること叶わぬ絶対無比の大閃断。


 【無限刹那】


「――案外あっさり死ぬぜ?」

 彼が放った一閃は、大将たちの知覚可能速度の限界すらも凌駕した。



  *  *  *



 この日偉大なる航路(グランドライン)の名も無き島で行われた戦いのことを知る者は少ない。
 何故ならば、戦いの結果が紛れもない海軍側の敗北だったからだ。威信を賭けた戦いの結果が完敗。それを世界政府が全世界へと公表出来ようはずもない。

 大将二名は瀕死の重傷、残る一名も軽くない怪我を負い三大将全員が撤退。海軍の最高戦力たちをまとめて破った刻針のアルマは、その後、大将たちのバックアップに来ていた軍艦の包囲網を強引に突破しそのまま姿をくらませた。

 そうしてこの翌日より、刻針のアルマの懸賞金額が更に一億ベリー余り上乗せされることとなる。


 【WANTED】

 “刻針”アルマ
 懸賞金額 十一億ベリー
 DEAD or ALIVE(生死問わず)
 
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