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首縊り

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第四章

「だからだ」
「ううむ、鬼達の噂だったのですか」
「それからだったのですか」
「縊鬼の怨みは鬼にはかからない」
 あくまで生きている者達だけにかかるものだというのだ。
「それで噂になっていたのだ」
「そうでしたか」
「ではだ」
 関羽は縊鬼を見ている、そして言うのだった。
「今からだ」
「はい、今からですね」
「その鬼を」
「そなた達は拙者の力で守っている」
 見れば二人の周りには白い気がある、それがだというのだ。
「案ずることはない」
「これが関羽様のお力ですか」
「この気が」
「うむ、そこで見ているのだ」
 関羽が縊鬼を制するのをというのだ。
「わかったな」
「ではお願いします」
「今より」
「よし」
 関羽は青龍偃月刀を両手に持った、そのうえで。
 鬼に対して一閃させた、間合いは離れているが。
 それでも鬼を斬った、気が出てそれが鬼を斬ったのだ。
 斬られた鬼は瞬く間に姿を消した、関羽はその煙の様に消えていく鬼に対して言った。
「そなたの本来の世界に行くのだ」
「私の本来の世界に」
「ここは生きている者の世界だ」
 だからだというのだ。
「そなたは行くのだ、案内は送る」
「では」
「案ずることはない」
 関羽は鬼に言う。
「そなたは人を殺してはいない」
「首を吊らせてはいませんか」
「吊らせそうになった」
 それはあった、だがというのだ。
「しかし殺してはいない」
「では私は罪は」
「犯していない、冥界でも問われることはない」
「それでは」 
 鬼の声は関羽の言葉を受けて安堵した様だった、そうして。
 その気配も消え去った、関羽はそれを見届けてから。 
 呉と彼の妻にだ、こう言ってきたのだった。
「これで鬼はいなくなった」
「縊鬼はですか」
「これで」
「そうだ、冥界に行った」
「ではもうこの納屋はですね」
「安全ですね」
「うむ、鬼がいなくなったからだ」
 だからだとだ、関羽は赤兎馬の上から二人に言う。馬に乗ったその姿は大柄な彼をさらに大きく見せている。
「安心していい」
「そうですか、しかし」
 ここでだ、呉は首を傾げさせつつ関羽に問うた。
「あの鬼は一体どうして」
「この屋敷にいるかだな」
「はい、それはどうしてでしょうか」
 呉はいぶかしむ顔で関羽に言うのだった。
「あの服は唐の頃の服ですが」
「そうだな、あの服は」
「ではあの鬼は唐の頃の」
「唐、それもだ」
「それも?」
「晩唐の頃の服だ」 
 つまり女もだ、その頃の者だというのだ。
 このことからだ、関羽は言うのだった。 
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