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路地裏の魔法少年

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プロローグその5:運命との出会い(前編)なんじゃね?

 
前書き
不定期企画、デバイス図鑑その1


名 称 :アイアン・ウィル
形式番号:MCCS-X101LS
形 状 :エンジン式削岩機

主人公日野槍一が使用する事になったデバイス。
「あらゆる物を穿つ」をコンセプトに設計された、近接戦闘特化型のインテリジェントデバイスで、本体に魔導エンジンという内燃機関を保有し、所有者の魔力を使って駆動する。
分類的にはアームドデバイスに近い位置付けであるのだが、このデバイスはミッドチルダでも、ベルカでも無い消滅したどこかの世界の人間が製造したデバイスらしく、本人(機?)もあまり覚えていない模様。
というか、デバイスですら無いのかも知れない。
ちなみに何故削岩機の形になっているのかと言うと、前ユーザーが初期設定にしていたというのもあるのだが本人(機?)が気に入っているのもあるから。
AIの性格はテキトーなダメ中年で、普段は偉そうな態度の割りに追い込まれると一気に大人しくなるヘタレの典型。
それでもやる時はやるみたいなのだが……。 

 


 俺と啓太が魔導師とやらになって1週間が過ぎようとしていた。

 魔法やデバイスの使い方にも段々慣れ、『マルチタスク』を活用したマジで凄ぇバーチャル訓練みたいな物を体験したり、人気の無い裏山で皆で魔法の上達具合を自慢し合ったり、ジュエルシードを探すために街中を歩き回ってみたり。
 不謹慎かも知れないが、毎日が冒険みたいで楽しいと思った。

 海鳴市の中は俺が思っていた以上に広いし、色んな物がある。
 ピカピカのビル街を突き進んで少し奥へ向かうと、じーちゃんやばーちゃんが俺達ぐらいの時に建った建物がまだ残っていたり、工業地区の方に向かえば真っ赤に錆びた煙突がズラリと立ち並ぶ光景があったり、山の奥には『ぼーくーごー』っつう戦争の時に掘られた洞窟がまだ残っていたり、昔のいろんなものが沢山残っている。

 なんつーか不思議なモンだなぁと俺は思った。

 表を見ればピッカピカの綺麗な今風の街だが、ちょっと裏を見るとずーっと昔の物がいっぱい転がっている。
 ボロボロだが不思議と汚いとは思わない、何ていうか懐かしい様な気がする。
 9年しか生きて無い俺が言うのも変かもしれんが……。

 そんな事を高町さんや、啓太、ユーノに話してみたら「意外、(なの)(だな)(だね)」と返してきやがった。
 普段俺の事をどう思っているのか良く分かった、こん畜生。
 まぁ、それでも特にユーノはこういった物にも興味が惹かれるらしい。
 流石は兄貴の知り合いなだけあって、好奇心旺盛だ。
 ただ、間違っても兄貴みたいに災厄を牽引して暴走する貨物列車みたいにはならないでもらいたい。

 兎も角、そんな感じで俺達はジュエルシードを探す我が町大冒険を行っていたのである。

 そうして今日も俺達はジュエルシードを探す為、俺達は海鳴の街の中を練り歩こうとしていたのだが……。
 この日に限って、ジュエルシード探しが出来る人間は俺だけしか居なかったっていうね。
 あるぇ?おかてぃーなぁー?


 今日は休日。
 学校は休み、俺の親父は残念な事に仕事。
 何でも、先月から仕事が立て込んでいるらしくなかなか家に帰ってこれないそうだ。
 あまり無理すんなよ……。

 そんな訳で、絶賛暇中な俺は皆に「ジュエルシード探しをしよう」と念話を送ってみたんだが、帰ってきた答えは「今日は無理」の一言だった。
 啓太は婆ちゃんの通院の付き添いだそうで、午前いっぱい大学病院に居なくてはいけないそうだ。
 それは仕方ない…。
 高町さんの方はと言うと、彼女の親友である『月村すずか』さんの家でバニングスさんと3人でお茶会なる物に誘われたとの事だ。
 凄ぇな、ベル薔薇か何かか?
 当然ながらユーノは高町さんとワンセットになるので、暇人は俺一人しか居ないという訳である。

 まぁいいや、一人でも探し物は出来るし、皆が居ない分俺が頑張れば良いだけの話だ。
 少し寂しい気もするが、二人も二人なりに色々あるのは知っているから我儘も言えんだろう……。

 (なら仕方無ぇな、俺が探しておくよ)
 (スマンな)
 (ごめんなの)
 (気にすんな二人とも)

 その代わり後でジュースの一つでも奢れよ、と付け加えて念話の送信を終えると俺は待機状態のアイアン・ウィルを半ズボンのポケットに突っ込んで玄関を後にした。



 思えば、この選択がbestだったのか、それともbadだったのかは今になっては分からない。
 ただ、この選択が切っ掛けで、後にとんでもない事をやらかしてしまう事になろうとは……。
 俺って何か呪いとか掛けられてんのかなぁ?


 そんでもって……。

 ≪…んん目的地先ぃ右方向ですぅ≫
 ジュエルシード探しを始めて1時間くらいが経過した。
 暇過ぎてカーナビごっこをしているアイアン・ウィルをシカトして俺は海鳴市のちょっと遠くの方までチャリを転がしていた。
 ここは住宅街の中でも所謂山の手に当たる地域であり、辺りを見渡せば明らかに高そうな家々が軒を連ねている。

 世の中ってのは不思議な物だ「平等だ何だ」と言っているくせに、方やデカい家に暮らすヤツが居るかと思えば俺ん家みたいにクソボロいウサギ小屋みたいなアパートに住んでいるヤツも居る。
 かといってデカい家に住んでいるヤツが皆幸せかっつったらそうでも無い、中には離婚なんてしちまう親が居るくらいだ。
 何を()って幸せとなすのか……。
 ガキの俺には分からんな。

 ≪右手をごらんくだせぇい、あちらに見えますのがぁ、名所でございますぅ、セェヴン・イ○ヴンでぇ、ございますぅ≫
 カーナビごっこに飽きたのか、今度はバスガイドごっこを始めるオッサン。
 しかも、ただのコンビニじゃねぇか。
 お前が擬人化してガイドになった姿想像したら恐怖画像だなこのブスバスガイド、バスガス爆発しちまえ。

 ≪ついでですのでぇ、休憩なんてされてみてはぁ、いかがでしょぉうか?≫
 「えぇ、はやくね?」
 ≪つっても、お前さんずーーっとチャリンコリンコをぉ、漕ぎ漕ぎしっぱなしっぱでぇ、そろそろ一息ついても良いんじゃないかと、オジサン思う訳よ…≫

 そう言われてみれば、そうかも知れない。
 ずーっとチャリを漕いでいたお蔭で、喉も乾いたし腹も減ってきた。
 ここはコイツの言う通り、コンビニでジュースとおにぎりでも買って早めの昼飯にでもしようかな。
 俺は、アイアン・ウィルの示した方向に見えたセブン・イレ○ンの看板を目指してペダルを漕ぐことにした。


 まさに、その時だった。


 「!!」
 全身を貫くような悪寒。
 肉体では無く『リンカーコア』に直接流れ込んでくる気持ちの悪い感覚は、禍々しいまでの魔力が解放された事を示すサイン。

 ≪ジュエルシードの覚醒を確認!2時の方角、距離2300、出力『それなりにヤヴァイ』、おいでなすったぜぇマイ・マスタァー≫

 「……間の悪ぃジュエルシードだな」
 ≪激しく同意するぜぇ、こんなKYシードちゃんには俺の熱く滾る魔法のドルィルヴィットちゃんで掘り掘りしちゃいましょう≫
 何か汚いなと思ったが無視無視。
 俺はチャリのハンドルをギュッと握りなおし、勢いよく前輪を上げてその場でターンすると、目的地に向けて力いっぱいペダルを漕ぎ始めた。
 モドキとは言えMTBはこんな時便利だなと思った。


 (槍一君!?)
 (ソーイチ!?)
 ぐんぐんとチャリを加速させていると、高町さんとユーノから念話が送られてきた。
 どうやら彼女達もジュエルシードの反応を察知ようである。

 (あぁ今向かってる、…高町さんは?)
 (えっと、私はまだすずかちゃんの所)
 (来れそう?)
 (来れそうと言うか…それが、ジュエルシードの反応ってお屋敷のすぐ近くからなの)
 (なんですとぉ!?)
 幸か不幸か、ジュエルシードは高町さん達のすぐ傍にあったようだ。
 一人で何とか出来そうとは言え、戦力が大いに越したことは無い。

 (すぐ出れそう?)
 (僕が何とかするよ!)
 俺が高町さんにそう尋ねると代わりにユーノが念話に割り込んで答えた。
 (出来そうなのか?)
 (任せて、それに結界を張る必要もあるから!)
 (オッケー頼む、俺もすぐ向かうから)

 (了解!)
 (うんわかった!)
 二人の返事を確認して俺は更にペダルを漕ぐ力を強めた。


 ……そうして数分経過したその時、俺の目の前にある『世界』が広がるようにして『色』を変えて行った。

 ユーノが結界を張ったのだろう、流石はユーノ、仕事が早い。
 俺は周りに居た『普通』の人間が消えた事を確認すると、チャリをトップスピードで走らせながら右手をポケットの中に入れた。

 「出番だぞ、相棒!」

 ≪よぉーし、いっちょ暴れてやりますか、私の凄さにビビるなよぉ≫

 「うっせー言ってろ」
 俺はトップスピードのチャリから「とうっ!」とライダーっぽく飛び出すと、待機状態のアイアン・ウィルを取り出して高々と空に掲げて叫んだ。

 「アイアン・ウィル!!セットアップ!!」

 ≪オッケェ!!、スタンドぶぁイルェェェディイ!!セェットアッぶるぁぁぁあ!!!≫
 日に日にテンションが上がっているのは多分気のせいだ……。

 そんなアイアン・ウィルの事を考えないようにしていると、俺の周りが眩い銀色の閃光に包まれた。


 アイアン・ウィルは空中で眩い光を放ちながら、物理的にあり得ないような変形をすると、自分を核として周囲に何処からともなく現れたパーツ群を彼方此方に引き寄せて合体。
 出来上がったそれは俺達の世界でいう所の単気筒の2ストエンジンに良く似ている機械で、『魔導エンジン』というらしい。
 その出来上がった『魔導エンジン』を主機に更に機関部と外装がガッコンガッコンと音を立てて組み付くと、アイアンウィルは工事現場で見る『エンジン式削岩機』に非常に良く似たデバイスモードへと変身を遂げた。
 本人曰く、「あらゆる物を穿つ、究極の戦槍」らしいのだが「穿つ」って言葉以外まるで合ってないのなコレ……。

 デバイスの変形が終えると次は俺の番。
 つっても、着ていたパーカーと半ズボンの姿から、作業服をベースに前腕、両肘、両膝そして左肩にごっついプロテクタみたいな物を装着し、頭に緑色の十字マークの黄色いヘルメット、両足にごっつい安全靴、両手に白い軍手をはめた、武装系ガテンの格好に一瞬で変化するだけだが。
 野郎の裸なんぞ見たくもないだろう?
 それに男は飯とトイレと風呂と着替えは早くてナンボってうちの親父も言ってたし……。

 ≪セットアップ・コンプリィイイト!!行くぜ相棒ぉぉう!!≫
 「応!!」
 変身を終えアイアン・ウィルを両手に持つと、俺は魔力の循環を背中に集中。
 吹き出る魔力がまるでロケットブースターの様な煌きを見せながら背中を力強く推し進め、俺は空を舞う。

 ―ガシャン!という音が足下で聞こえたが無視無視。
 あの程度の衝撃で壊れる程、俺のチャリはヤワじゃ無ぇだろ……多分、ちょっと不安だが……。


 ≪あのでっかいお屋敷の庭に例のブツがあるみてぇだぞ≫
 「あそこが月村さんとか言う子の家か」
 上空から見下ろした先に、周囲に比べても抜きん出て広い敷地を持つ屋敷が眼に入り、俺は少し唖然とする。
 広い広いとは思っていたがそれにしたって広すぎだろ、つーか日本人の住む家じゃなくね?

 ≪世界は埋まらない格差で出来てんだよ……んな事より気をつけろぉ相棒、何だかちょいっと様子が変だぞぉい≫
 「何がだ?」
 突然不吉な事を言い放ったアイアン・ウィルに俺はそう尋ねた。
 コイツは腐ってもデバイスとやらで『機械』なのだ、ソイツが何かを察知したという事は、ほぼ確実に何らかのイレギュラーが発生している事を示唆している。

 ≪何だかしらねぇーが、あの娘っこの他に魔導師の反応が一つ、デバイスなんかも持っていやがるぜ≫
 「啓太じゃ無ぇのか?」
 ≪違わい、ポンコツ野郎なら結界の外だ、データァルィンクも受け付けねぇから確実だ≫
 「お前ら兄弟みたいなモンだもんな」
 ≪ケッ!やめてくれ相棒、あんなカチンコの堅物ポンコツ野郎と兄弟だなんて想像しただけで産毛まで逆立っちまう≫
 お前の何処に毛が生えているのか小一時間ほど問い詰めたい所だが、そんなのは後だ。
 俺は段々と拡大されていく前の光景に目を凝らしながらお屋敷の庭を目指して飛んで行った。


 そうして見えた光景に俺は言葉を失った。


 ほんの数分、それだけの時間だった。
 その間に何があったのかは知らない。

 「なっ!!」
 確認してからの俺の第一声がそれだった。

 目についたのは、黒いボディースーツみたいなバリアジャケットに黒いマント。
 同じく黒いデバイスの先から黄色いビームの様なものが鎌の刃のように放出されていて、まるで死神魔導師である。
 その死神の様な装束の人物は俺や高町さんと同い年くらいの女の子、長い金髪を黒いリボンで分けているのが印象的な子だった。

 そして、その女の子は高町さんを撃墜した本人でもあった。

 俺は見てしまった。
 死神装束の女の子が放った黄色い魔弾をモロに喰らった高町さんが、煙を吹いて地面に叩きつけられる光景。

 それを目の当たりにした瞬間、俺の血は沸騰したように熱くなった。

 「野郎ぉおおおお!!!」

 俺は魔力で形成された杭を突き出すと、魔導エンジンを呻らせて死神装束の女の子に突っ込んで行った。
 ダチを落としてくれた分はテメエでキッチリ払ってもらおうか!

 魔導エンジンが「ブオォォン」と呻り、銀色の魔力光で形成された杭が振動を始める。
 ハツリ作業用のモイルポイントに良く似た杭は、バリアであろうが魔弾であろうが木っ端微塵に粉砕する狂気の杭。
 俺は「あらゆる物を穿つ」その杭を力いっぱい敵の魔導師に叩き付けてやろうとした。

 「死にさらせやおんどりゃぁぁあああ!!!!」
 ≪ぶるぁぁああああ!!!!≫

 ここだけ聞くと、俺達のほうが悪役っぽいような気もしないでは無いが……。
 兎も角、それが俺とその金髪の死神魔導師との戦いの合図となった。

 
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