THE HOBI~第一章 選ばれし者たちと祈りの力~
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第二話 『平和の村エリコ』
マナサ 「アサ?顔色が悪いわ…」
アサ 「いや、何でもない、大丈夫だ」
マナサ 「あなたは優しい人ね。メシアはあなたに似たのね。モイルから村の事は聞いたわ」
アサ 「何だと?あの馬鹿め!」
マナサ 「モイルはあなたが私に言えないと思って気を使ってくれたのよ。」
アサ 「あぁわかってるよ。あいつは親友だからな。シーを殺した男の首に例のアザがあった。モロクは…彼は正気じゃ無かったんだ。シーを助けられなかった。二人共…」
アサは悲しげな表情を浮かべ、マナサに言った。
マナサ「あなたは良くやったわ、シーはしっかりした子よ、あなた達を憎んでなんかいないわ。そうでしょアサ?」
アサ「あぁ、そうかもしれんな…ありがとうマナサ」
マナサ「直ぐに遠くに行くのでしょ?私の事は心配要らないわ。もう十分よ…」
アサ「そ、そんな事言うな!行かん!!お前を置いて行くわけないだろう!共に死ぬと誓った!何とかするさ…何とか…俺は…」
アサは声を上げて言った。
追い詰められているのは誰が見てもわかる様であった。
マナサ 「いいえ、駄目よ。メシアを守れるのはあなただけ。私はもう長くない。十分幸せを貰ったわ。足手まといになりたくないの、分かるわよね?」
マナサはいつもの優しい顔をしている。
アサ 「無理だ…そんな事…」
そう言うとアサは勢いよく家の外へ出た。
アサ 「メシア!聞いてたのか…」
扉の直ぐ外には顔を埋めて座るメシアが居た
アサ「少し歩こうメシア?来なさい。」
メシアは黙ってアサに付いていく。
しばらく歩くと例の川の畔に着いた。
アサ 「メシア、お前はもう母さんの言う事が理解出来るな?」
メシア 「出来ない…」
アサ 「…。母さんはお前が生き延びることが一番の願いなんだ。わかるな?ここで動かずお前が病にかかって死んだら母さんはどう思う?」
メシア 「…」
アサ 「ハァ。お前には過酷過ぎる現実だが、私はお前を守れなければならない。出発は明日の朝だ。準備しなさい。」
父アサはその後黙ってその場を去った。
―場所変わって村長の家―
アサは別れを告げる為村長の家へ来た。
アサ 「村長…」
村長 「ワシに触れるでないぞ、アサよ」
村長の腕にはアザが浮き出ている。
村長「ワシはもう十分生きた…命が尽きるまでマナサを看病しよう」
アサ 「お願いします…。明日の朝、皆で町を出ます。」
村長 「うむ、任せたぞ」
村長 「最後に一つ伝えるべき事が」
アサ 「何ですか村長?」
村長 「うむ、この村に来た客人は今までに数人だけだ。今からちょうど50年前…この町にある旅人が来たのじゃ。」
アサ 「そんなまさか。死の森か終わらずの峠を越えたと言うことですか!?そうしなければこの村にはつけないはず!」
村長 「彼はこの村の事を『守護の村』と呼んでいた。彼はある人物を探していると…」
アサ 「誰をですか?」
村長 「分からんのだ。彼は村を拝見したいと手土産にワシにこれを渡した。」
アサ 「水?」
村長 「不思議じゃろ?50年経っても決して乾かない。彼はセイスイと呼んでいた。外の世では高価な物だとな。病に効く物ではない。そう言い残し去っていった。これをお前にやろう。」
アサ「そうですか。ありがとうございます。幸運を祈ります、どうか御無事で…」
―場所変わりアサの家―
マナサ「ねぇえメシア?これを持っていきなさい。」
メシアに渡したものはとても小さな虹色のナイフのようなものだ。
メシア「すごい綺麗だ、どうやって作ったの!?」
マナサ「フフッ、魔法よ。」
メシア「秘密なんてズルいよ!けどありがとう、大切にするよ!」
メシアの目には涙が溜まり充血していた。だがメシアは笑顔を絶やすことなくいつも以上に母マナサとの時間を楽しんだ。マナサはそんな息子が心では泣いているのだと、当然分かっていた。この日だけは母マナサの笑顔を見るのがとても辛かったのだ。
【昔、私はある書物を見つけた。平和の村または別名『守護の町』と呼ばれる場所があると記してあり、地図を頼りに探した。実際はそんな場所は無く、平野が広がり川が流れているだけであった。 冒険家 レイフ・エリクソン】
―次の日、夜が明け別れの日が来た―
第二話 完
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