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ソードアートオンライン~to the unknown world~

作者:涼那
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地下洞窟にて

虹の谷・地下洞窟。
暗闇の中を慣れた足つきでスタスタ歩く。
まさかあの後「ごめん、用事あるから抜けるわ」の一言で解散になるなんて思ってもいなかった。
結局シノンには終始睨まれたままだし・・・。明日必ず謝ろう。

「しっかし、本当長い道だなあ・・・」
何回も歩いたことがあるが、歩くたびにこう愚痴を溢してしまう。
虹の谷からウンディーネ領まではそのまま谷を抜けるだけでなく、途中から下の地下洞窟に下りてから少し歩いて、また上に上がらないといけないというとても面倒な道になっている。いくらゲームの中といえど、流石にこの距離を歩くのはとても疲れる。
・・・しかしメールの通り本当にここで良いのだろうか。もう直ぐ地下洞窟からまた上に上がる道に差し掛かる所だ。ここまで歩いて何も無いということはやっぱり何かの罠だろうか。
もし何もなかったらウンディーネ領で何か遊んでこよっかな・・・。
多分アスナが隣に居たら何されるかわからないであろう事を考えていると突然、右側の壁が雫が落ちたような波紋とともに隠し扉が現れた。
「・・・・」
特に周りに人はいないが、これは入れということなのだろうか?多分俺の姿を確認したからメールの差出人が幻術を解いたんだろう。
恐る恐る中に入ると、中はとても広い空間の部屋になっていた。もちろん灯りはついていないが、円になって間隔的に立っている六つの人影が見えた。

「メールでここに呼び出されたんだが、何の用だ?」
広い空間だったので、立っている全員に聞こえるよう、強く言った。
すると手前に立っていた一人の男が口を開いた。
「待っていたよ、キリト君」
男は俺の方に歩み寄って握手するように手を出してきた。だが俺からしたらこの男に見覚えは無いので易々と手を出して握手するわけにはいかない。
「お前は・・・誰だ?」
すると、男は少し口を緩めて言った。
「名乗るのを忘れていたな・・・、すまない。俺はオルセ、君を呼んだ目的は・・・・・」
そう言うとオルセは立っていた場所に戻って、俺の方を振り返った。
「俺達の仲間になってほしい」
その一言は俺の体に深く響いた。

「は?」
思わず口から気持ちが零れる。
「突然で済まない。これには理由があるんだ」
オルセは顔色一つ変えず、話を続ける。
「君は、最近クエストをやったか?」
突然の質問で少し戸惑ったが、さっきの打ち上げはクエストクリアによるものなので、「ああ」と
肯定する。
「クエストクリア時に君達がもらったユルドの金額は、クエスト実行前の金額よりも低くなっているのに気づいたか?」
俺は咄嗟に考えた。確かに、言われてみれば今回のは0一つ位違ったような・・・・・。
「そういえば、そうだな・・・」
「それが何故かわかるか?」
今度は目を見て話してきた。何故だろう、この人に見られると一瞬思考と体が動かなくなる。
「いや・・・わからない」
「中央」
「!?」
目の前のこの男が言ったのか?いや、それにしては声が違ったような・・・。と、視線をオルセより後ろに向けると一人こちらへ歩いてきた。
「中央サーバーを誰かがイジってこんな不具合がでたんだぜ、キリトの旦那ァ」
オルセより背の低い男は彼の肩に手を置いてそう言った。
「離せ、ヴィルヌス」
「つれねえなあ、ったく」
するとヴィルヌスという男はオルセの肩から腕を下ろした。
「金額減少の他にも、アイテムが違ったり、場所が別の場所だったり色々と問題が出ている。それを管理しているのは央都アルンにある中央サーバーでそれは現在ある三人によって管理されている」
「三人?」
オベイロン以外にもサーバーをいじれる人がいたのか、と内心驚く。
「ああ。名はシイン司法卿、ユビナ内務卿、そしてタカリ陸軍大将。その三人から許可を得なければ中央サーバーを動かすことは出来ない。シイン卿からは既に承諾を得ている。だが問題は後の二人だ、ユビナ卿はどうやら少し前に職を辞めたらしい。タカリさんは・・・行方がわからない」
三人とも初めて聞く名前だ。そんな、いかにも強そうな人がまだいたとは・・・。ユージーンの言うとおり、ALOはまだまだ広いな。
「で・・・なんで行方不明なんだ?」
俺のその問いにはオルセじゃなくヴィルヌスが答えた。
「<陸軍大将>ってのは、ALOでたった一つだけの称号なんだよ、旦那。陸軍大将って称号はALO内では地上・空中での戦闘に於いて最強ってことだ。そんなやつが普通に街を歩いてたら、いつ襲われるかわからないからな。だからどっかに隠居してプレイしてるらしいんだけど、場所が全くわからねえんだよ」
陸軍大将・・・、いかにも軍を象徴する称号だな。まさかそんな意味だったとは。地上・空中戦に於いて最強って、どんだけ強いんだよ・・・・・。
「それで、だ。キリト君」
オルセは俺に問いかける。
「君にも今回の不具合に件で協力してほしいんだ、ウィンドウを開いてほしい」
「あ、ああ・・・」
言われたままにウィンドウを開く。下に下に動かしていると、Titleという文字が目に入り、タッチする。
「見つけたか?」
おそらくオルセもそれが目的だったんだろう。タッチしてみると今までに取ったであろうタイトルが沢山表示されて、こんなに取っていたのかと意外と驚いてしまう。
「!?」
下へスライドしているとそこには驚きのタイトルがあった。
「<海軍大将>と<陸軍中将>!?俺、いつの間に・・・」
自分でも驚いた。名称こそ軍隊のものだが、まさか自分がここまでタイトルを取るほどALOに時間を費やしていたとは・・・。時間を気にしないって、怖いな・・・・・。
「<海軍大将>を持っているのか。流石だなキリト君は・・・」
これには驚いたのか後ろで立ち尽くしている四人もざわつき始める。
「俺ら全員、<陸軍中将>を持っている。つまり君と同じで中央サーバー使用権限を持つ「卿」になる条件を持っているということだ」
「それで協力して、その陸軍大将さんを探して許可を得ると同時に、卿になると?」
「・・・そういうことだ」
俺が話の趣旨を理解したとわかると、オルセとヴィルヌスはそれぞれ立っていた場所に戻った。
確かに、ユルドの金額がおかしいというのは薄々気づいていた。てっきり小さなバグだと思っていたが、まさかALO全体でそんなに事例があったとは。もしかしたら、このまま大きな事件に繋がるかもしれない。それに今は運営会社が事実上いない状態だから、俺達が何とかするしかないということか。
「わかった。協力するよ」
「ありがとう、キリト君」
そう言ったオルセは初めて口元を緩めた。この人は笑うとこういう顔になるのか。意外過ぎる。
「・・・どうした?」
「あ、いえ・・・」
意外すぎてついまじまじと見てしまったので、直ぐに勘づかれてしまった。
「メールに指輪が添付してあっただろ。それを嵌めといてほしい」
そう言われたので、俺はアイテム欄からダイヤモンドの指輪をだして右手薬指に嵌める。
「その指輪は連絡、移動手段に使える。移動の仕方は転移結晶と同じだ」
へえ~。転移結晶と連絡のできる指輪、しかもダイヤモンド。いかにもゲームって感じの能力だな。凄ェ。
「それじゃあ、また後日連絡する。今日は解散だ」
「あいよっ」
合いの手のようにヴィルヌスが答えると他の四人も次々と消えていった。
えーと、転移結晶と同じなんだっけ?
「転移、スイルベーン!」
俺はオルセが転移するのと同時に淡い光と共に姿を消した。 
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