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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos6八神家の日常・裏~LANCER~

†††Sideルシリオン†††

“夜天の書”が起動して早1ヵ月ちょっと。暦は夏である7月、その半ばへと突入していた。

「そんじゃあ、いってきますっ!」

シグナムとの朝練を終えて結界を解き、はやてから受け取ったタオルで汗を拭いているところにヴィータの元気のいい挨拶が家中に響き渡った。応えるのは「気ぃ付けてなぁー!」はやてだ。ヴィータは今日もヨークシャーテリア、チヨに会いに行くんだろう。
飼い主の元にチヨを帰してから数日と経たずにヴィータはチヨと再会を果たし、チヨの飼い主である老夫婦の誘いもあってゲートボールを始めた。今では老人会のマスコットキャラ・・・じゃなくて、アイドルのような扱いを受けている。まぁ、先の次元世界でもそういう風だったと聞いていたからよしとしている。

「先にシャワーを借りるけど・・・」

「ああ。私はもう少し素振りをしている」

「シグナム。お洗濯物には当てないでね」

木刀の素振りを始めたシグナムと、そんな彼女を注意するシャマルを横目に俺は風呂場へ。そこで汗を洗い流したら、今度ははやての授業だ。はやてはすでに中学1年レベルの理数系を修得した。本当に頭の良い子だ。聖祥にいつ転入しても十分にやって行ける。

「――あー、今日はここまでやなぁ」

「そうだな。病院へ行く準備しないと」

時刻は11時。これからはやては大学病院へ向かわなければならない。授業を途中で切り上げてはやての部屋を出る。と、病院に付き添いとしてついて行くシグナムとシャマルはすでに準備万端という出で立ちで佇んでいた。

「はやてのこと頼んだよ2人とも」

「ああ」「ええ」

そうしてはやて達を見送って、家には俺とザフィーラだけとなる。リビングで伏せているザフィーラに「少しの間部屋に籠るから。何かあれば呼んでくれ」と告げ、首肯したのを確認して自室へ。

「さぁそろそろ始めようか」

海鳴市に来た際にマリアから渡された物品の中に在った端末を取り出す。アクセスするのは、次元世界の秩序を管理する組織――時空管理局のデータベース。目指すは指名手配犯の捜査資料が保管されたエリア。ま、当然のことながら「そう簡単には出来ないよな」IDパスワードなど、何重ものセキュリティが邪魔をしてくる。このままでは不正アクセスとなり、いずれは探知されて逮捕、ということになる。そうなる前に・・・。

「おいで。アメナディエル、ソレウイエル、マカリエル、メナディエル、ライシエル」

――秘密を暴き伝える者達(ステガノグラフィア)――

『はい』『ウィ』『ヤー』『シン』『イエス』

目の前に展開した空間モニター内に3頭身の天使が5体と出現する。大戦時、ヨツンヘイム連合から鹵獲した巨人兵器、A.M.T.I.S.のシステムをクラックするために創り出した、対電子戦の疑似天使だ。いかなるセキュリティだろうがトラップだろうが自己判断で突破し、相手側にクラックの証拠などを一切の残すこともない。電子関連の契約にはとても役に立つ魔術だ。

「早速仕事だ。時空管理局の捜査資料のデータベースへのクラック。一切の手掛かり・足取りを残さず、相手に気付かれることなく情報収集だ」

『ステガノグラフィア一同。お仕事了解です♪』

『いってき~♪』

『いってら~♪』

『メナディエルも来るんだよ!』

『みんなでいってきま~♪』

ピョンと跳ねる仕草と同時にその姿を消し、電子の海へと潜って行った。あとは待つだけだ。とは言っても『お待たせでした♪』僅か10分ほどだけだったが。天使たちは一抱えある情報の塊(フォルダ)をえっちらおっちらとモニターの端にまで持って来ては反対側の端へと消えていく。それを繰り返すことさらに5分。

『重要度1から3までを収拾しました』

『重要度4から5にはさらに時間が掛かります』

『回収を続けますか?』

『続行ならご命令を。中止なら術式解除を』

『さぁどっち?』

地べたに座り込んでそう確認してきたから、「情報収集はこれで終わりだ。ご苦労様」と労いつつ任務終了を告げる。

『お疲れ様です~♪』

『乙~♪』

『甲~♫』

『意味不~』

『また何かあれば、その時はお呼び下さ~い♪』

全員が停止したのを見届け、回収された事件資料に目を通す。標的は魔導犯罪者、そのリンカーコア。先の次元世界でのシグナム達は、魔力を持っているなら無実な一般市民すら襲っていた。まぁそれでも保護観察と管理局への従事だけで済んでいたが。
どうせなら犯罪者どもから魔力を奪い、身柄を拘束して管理局に突き出す。魔力を手に入れることが出来、犯罪者も捕まることから犯罪率も多少は減るだろう。なかなかにいいアイディアだと思う。
ふと、あるデータに目が留まった。「フェイト・・・」プレシア事件の重要参考人として裁判中。以前は俺もそっち側だったな。

「っと。今はあの子に気を取られている場合じゃないな」

プレシア事件に関してのデータを詳しく見ることなく、指名手配犯の名前や活動世界に、その期間などと言ったものにだけ目を通していく。

「レーゼフェア・ブリュンヒルデ。シュヴァリエル。テスタメント・・・」

ここでまた俺に関係している単語を発見した。犯罪組織テスタメント(仮)を調査中。残念ながらテスタメントは俺独りだ。一応5thのマリアも次元世界のどこかには居るが、全くの音沙汰なし。訊きたいことが山ほどあるんだが・・・。とりあえず保留だ。

「単独転移で行ける近場で、雑魚い奴っと。・・・・コイツらでいいか」

ある指名手配犯のデータに目を留める。魔法犯罪を幾つも起こしている常習犯の3人1組のチームで、主な活動拠点は第28管理世界フォスカム。目撃例が多いことから、はやて達が通院・買い物・風芽丘図書館と行って帰って来るまでには終われそうだ。
となれば「早速出向くとしようか」左中指に“エヴェストルム”の指環をはめる。部屋を出、リビングで伏せているままのザフィーラに「少し遠出して来る。昼には帰って来られないから、君の分の昼食を用意しておくから好きな時に食べてくれ」と告げる。

「どこへ行くのだ、今日はお前が出かける予定はなかったはずだが?」

「ちょっと善行(そして悪行も)をしに行ってくるよ。そう。ゴミ掃除のボランティアをね」

ザフィーラの昼食を用意しながらそう答えると、「そうか。それは善い行いだ。気を付けて行くのだぞ」と疑うこともなく信じてくれた。いや多少は疑問を抱いてるかもしれないが。とにかくザフィーラの分の昼食を作り終え、「いってきます」玄関を出る。
それと同時に空間に溶け込む迷彩を発生させ姿を消す魔法、ミラージュハイドを発動。そして屋根の上へと飛び乗り、次元転移魔法を発動。フォスカムへは先の次元世界で訪れているため座標もすべて記録されている。

(それにしても。本当に嬉しい恩恵だな。ジュエルシードは)

時の庭園でのグランフェリア決戦時前まではAAA-までしか魔力が使えなかった。だが無理やりジュエルシードを魔力炉(システム)融合させたことが功を奏したのか、今ではSランクの魔力出力まで回復した。一対一の戦闘ならまず負けない。相手にもよるが一対多数戦でも負けないはずだ。
扱える魔力量が増えた事に喜ぶのも束の間、

「まぁ一気に飛べるわけもなく。中継点を幾つかおかないといけないな」

ひとりぼやく。幾つかの世界を跨いでフォスカムへ向かうことになる。少々手間がかかるが、今までの苦労に比べればどうってことは「・・・ない!」よな。そうして俺は地球より飛び出し、フォスカムへと向かった。

「――到着、っと。地球からフォスカムまで40分か。結構かかってしまったな」

第28管理世界フォスカムの薄暗い曇天の下、俺はようやくフォスカムに到着することが出来た。跨いだ世界は2つ。上出来な数だろう。で、ここで早速悪行を1つ犯してしまった。不法入界。正規の手続きではないからな。見つかれば即刻逮捕になる。だからこそ・・・。

(この変装なんだよな)

身に纏っているのは、詰襟の長衣は前後で燕尾。襟に隠れて見えはしないが、首には小さな南京錠が付いたチョーカー。黒長衣と同じく燕尾の黒いインバネスコートを羽織っている。黒のズボン。黒の編み上げブーツ。魔術師としての戦闘甲冑だが、神秘を抜いているから騎士甲冑になるか。
そして最大の変装が頭だ。人のモノじゃない。淡黄色で、黒い斑点が点在している。正しくチーターの頭部だ。今の俺は素顔を晒さないようにデフォルメされた可愛らしいチーターの頭部で限定変身している。

(これなら子供に見られても怖がらせないな。まぁ見られることにはならないと思うけど)

自由落下なままあるビルの屋上へと高度を下げて行き、「よっと」最後はフローターを発動して落下に抗うかのようにゆっくりと速度を落としてトンッと軽やかに着地した。ビルの屋上から眼下に広がるフォスカムの首都、グラーバの街並みを眺める。ここに魔法犯罪者集団が居るはず。

――発見せよ(コード)汝の聖眼(イシュリエル)――

闇雲に探していても疲れるだけ。ということで、サファイアブルーに光り輝く、手の平サイズの光球を創り出す。サーチャーとしての役割を持つイシュリエルをステルスモードで街に解き放つ。発見するまでの制限時間は1時間。そこから瞬殺してリンカーコアを奪い、管理局に突き出してから撤退。また40分と掛けて地球に戻る。曖昧だがこれくらいの予定組立で十分だろう。
地べたへと座り込み、屋上に誰か来ないか警戒しながらイシュリエルから送られてくる映像を見続ける。と、30分ほど経った頃、「見つけた」よくドラマなどで見かけるマフィアが好んで取引しそうな倉庫街で、アタッシュケースを持ってウロウロしているターゲットを発見。

「さぁ、始めようか。犯罪者狩り(オフェンダー・ハント)を」

――我を運べ(コード)汝の蒼翼(アンピエル)――

――ミラージュハイド――

背より12枚の剣翼を展開し、姿を消すミラージュハイドを発動。屋上から空へと飛び出し、連中を発見したベローナ湾岸倉庫街へと翔ける。その間にフォスカムのこの地区を担当する陸士部隊の連絡回線を、メナディエルを使って傍受する。
取引云々といった単語が出ていないため、どうやら連中は巧い具合に事を薦めたようだ。なら、管理局に知られず、まんまと取引を成功させたと喜んでいるその時、その取引をチーターの顔というふざけた俺に邪魔されたとなると、いったいどれだけの絶望を抱かせられるだろう。

「(その時の連中の顔を想像するだけで・・・)あぁ、実に楽しみだ」

少々性格の悪さを自覚しながらも、それでも抑えきれない。一刻も早くぶっ潰したい。そんな思いを渦巻かせ、俺は廃倉庫街上へと到着した。イシュリエルから流れてくる映像をもとに、「あれだな」どの倉庫にて取引が行われているかを見つけ出す。
ミラージュハイドを発動したまま廃倉庫の崩れ落ちて無い屋根から倉庫内に音を立てることなく侵入する。が、「いま何か・・・?」音は立てずとも僅かな風の動きを察した男もいた。

「気の所為か・・・」

その男はしばらく周囲を警戒していたが、何も感じられかったらしく警戒を解いた。俺が狙っていたターゲット連中じゃないが、確かこの男も指名手配犯だったはず。名前は確か・・・、フィリー・ニサン。ああ、思い出した。この男はティーダ・ランスター一尉を殺した奴だ。俺が捕まえた時より若い外見(髪がフサフサ)だから思い出すのに時間が掛かった。
ふと思う。ここでフィリーを取り押さえるとなると将来、ティーダ一尉が死なないという結末になるかもしれない。だがそんな思いもすぐに消える。そう。今さら。そんな事を思うのは実に今さらだ。これから先の未来など、もう知ったことか。
はやてや守護騎士、なのは(アリサとすずかは判らないが)が管理局入りする。そのルートだけを気にしていればいい。それ以外は俺の好きにさせてもらう。

(そもそも先の次元世界でさえ正規の歴史だったのかも疑わしい)

だったら気にするのはもうやめだ。どうせ変わるならハッピーなものでいいじゃないか。意識を未来予想図から現実へと引き戻す。連中の会話から、今回の取引きされているブツは動物型の自立型戦闘デバイスの試験機体の設計データ。おまけに質量兵器――銃とか、銃とか、銃とか。
そしてフィリー。奴は魔導師としての腕を買われて用心棒としてこの場に居るそうだ。ティーダ一尉を墜とした以上は確かな腕を持っているのは間違いない。淡々と取引が行われていく。ターゲットの1人がデータの入ったアタッシュケースをスーツ姿の男たちに渡し、その代金としてジェラルミンケースをターゲットの1人が受け取った。双方が仲間内の所に戻った。

(今だ!)

――ゲフェングニス・デス・フェリエラー――

古代ベルカ式を使ったオリジナル結界魔法、ゲフェングニス・デス・フェリエラーを発動。俺の魔力光であるサファイアブルーに輝く正四角形の結界で魔力を持たないスーツ連中を閉じ込める。この魔法に閉じ込められると、気力・体力を気絶してしまう程度にまで吸収される。そしてそれらは俺の魔力へと変換される、魔術と魔法の合わせ技。閉じ込めた人数が多い程、俺は魔力を回復することが出来ると言うわけだ。

「なんだ、これは・・・!?」

「管理局の魔導師か!?」

「逃げろ、早く!」

一斉に出口へと向かうターゲットに向かって、「誰が逃がすか」と声を掛ける。俺は未だにミラージュハイドで姿を見せていないため、連中は「誰かいるのか!?」と慌てふためく。が、すぐに杖型・銃型・ロッド型のデバイスを起動させる辺り腐っても魔導師か。とりあえず一番近かった銃型デバイスを持つ男に接近し、転移魔法メタスターゼン・トーアを右手に発動させ男の胸に突き入れる。

「あ? え?・・あぁ・・あああ・・・あああああ!?」

「ひぃっ!?」「なんだこれ!」

「これは・・・!」

いきなり仲間の背中からリンカーコアが飛び出し、その男が苦悶の悲鳴を上げたらショックだろう。案の定他2人は恐怖に表情が引きつっている。が、フィリー・ニサンだけは恐怖を見せず、ただ驚きだけを見せた。俺はここでミラージュハイドを解除。連中に俺の姿を見せつける。怯えきって俺の頭のことにツッコミを入れない連中に、「回収完了」と告げてリンカーコアを無理やり引き抜く。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「うそだろ・・!?」

「コイツ、リンカーコアを引き抜きやがった!!」

――闇よ誘え(コード)汝の宵手(カムエル)――

リンカーコアを引き抜かれた激痛で男は意識を手放し倒れ伏した。仲間2人は腰が抜けたのかその場にへたり込んだ。俺はその2人を影の触手、カムエルで拘束した。その直後、「面白い頭のクセして嫌な魔法を使う奴だ」フィリーが一足飛びで俺に襲い掛かって来た。
手にするのは、管理局が制式装備としているヘッドが音叉型のストレージデバイスらしき杖だが、細部が結構違うため関連性は無いだろう。クリスタルが在るべきところには銃口らしきものが在り、石突部分には六角錐の突起が在る。フィリーのデバイスの一撃を、瞬時に起動した“エヴェストルム”のニュートラルモードであるランツェフォルムで受け止める。

「やっぱり侵入者が居たんだな! あの時の風の動き、もう少し気を張っていれば。と、後悔しているぞっ。おかげで俺の信用がガタ落ちだ、雇い主を守りきれなかったからな!」

「それは残念だったな。まぁ私も含めて互いに犯罪者だ。気落ちすることはないさ」

一人称を私に戻した上でそう返しつつ、“エヴェストルム”を大きく払う。フィリーは弾き飛ばされながら「何だこの馬鹿力は!?」と驚きを見せた。それでも上手く着地するあたりはさすが、か。奴が再度襲い掛かって来る前に残り2人のリンカーコアを引き抜く。そして魔力結界で覆い、“英知の書庫アルヴィト”に取り込む。3人分の魔力で2ページくらいだろう。フィリーを入れれば3ページ半は超えるはず。だから・・・

「お前の魔力も頂くぞ。ツヴィリンゲンシュベーアト・フォルム」

“エヴェストルム”の柄を半ばで分離させての二刀形態にし、今度はこちらから仕掛けるためにゆっくりと歩いて接近していく。対するフィリーは身構え、俺の一挙手一投足に注意を払いながらデバイスのヘッド部分を俺へと向けた。魔力反応。射撃魔法が来るのだと判る。そう判断してすぐ、銃口から魔力弾が連射されてきた。銃弾の壁へ真っ向から挑む。力の差を見せつけるために。

――知らしめよ(コード)汝の力(ゼルエル)――

騎士甲冑の防御力を上げて突っ込む。全身に着弾していくフィリーの魔力弾幕。だがそれらは俺に一切のダメージを与えることなく弾かれていく。フィリーは「堅い・・・!」歯噛みし、弾幕を張るのをやめて砲撃を放ってきた。その砲撃を右手に持つ“エヴェストルム”で斬り裂いて対処する。
左右に分かれていく砲撃の合間を縫って目と鼻の先にまで最接近し、驚愕に目を見開いているフィリーに「運が悪かったと諦めてくれ」言い放つ。と、「ふざけ――」奴は顔を真っ赤にして怒鳴ろうとしたが、その前に左の“エヴェストルム”をフェリーのデバイスに叩き付け、ヘッド部分を真っ二つに破壊する。

「な・・・っ!?」

「陸戦は苦手だったか?」

「何故それ――を゛っ!? が、ぁああ、ああああ、あああああ!」

返答を全て聴く前にフェリーの胸に手を突き入れ、「貰い受けるぞ」リンカーコアを抜き出す。フィリー・ニサン。一般的な魔導師ランクで言えばAAランクの空戦魔導師。同じく空戦魔導師で、しかも管理局で鍛えられたティーダ一尉を撃墜したとなると、やはり陸戦より空戦の方が強いのだろう。どちらにしろ、俺の敵じゃないが。
意識を手放してドサッと倒れたフィリーを見下ろし、「見られているな・・・」周囲に気を巡らす。何かしらの――サーチャーの気配だ。ステルスで隠れているサーチャーの方に振り向くと、この場から撤退していった。

「誰だ? 管理局か、それともコイツらに関係している組織とか、か。まぁどうせ彼女たちだろうな」

ある程度予想は出来ているから放っておくことにした。スーツ連中も含め倒れ伏している全員にフープバインドを掛けてから一ヵ所に集め、「じゃあ行くか」転移魔法トランスポーターを発動。転移先はフォスカムの地上本部のロビー。

「突然ですがお邪魔します、っと」

「うわぁっ!?」「なんだ!?」「転移魔法!?」「顔がチーター!?」「けど可愛い!」

局員やら訪れていた一般人が俺の突然の出現にビックリ仰天。そしてすぐさま「何者だ!」ストレージデバイスを手にした武装隊員が数人奥から出て来た。俺は「コイツらの逮捕、任せるよ」後ろに転がしている全員を指さす。傍にはアタッシュケースとジェラルミンケース。それらも一緒に回収してもらえるように置いておいた。

「何を言っているんだ・・・?」

「いや待て。この連中の顔、見覚えが・・・」

「そうだ! こいつら指名手配されている・・・!」

「なに?・・・確かにそうだ! おい、手を貸してくれ!」

俺が連れてきたのが指名手配犯だと判って一気に騒然となる武装隊。すぐに確保に動き出したそんな彼らを確認してから踵を返す。と、「待ちなさい!」当然のごとく呼び止められてしまった。振り返ると、連中を連行していく隊員とは別の隊員たちがデバイスを俺に向けていた。

「君の身分を確認したい。それにその頭の被り物らしきモノも外して素顔を見せなさい」

「何故このようなことをしたのか、事情を伺いたい」

先程の隊員たちのような高圧的な態度は無い。本当にただ事情を聴きたいだけというのが判る。が、ここで止まるわけにはいかない。

「私は槍騎士ランサー。ある目的の為に、魔法を使って罪を犯す連中を退治する。今回はたまたま先ほどの連中だっただけのこと」

前から決めていた名乗りを上げて、簡単に事情を話す。と、「目的とは?」そう訊き返された。

「いま連れて来た連中から事情を聴けばおのずと判るかもしれないですよ。それでは私はこれで失礼させていただきます」

――トランスポーター――

足元にベルカ魔法陣をわざわざ展開して見せつける。慌てて俺の確保に動いて向かって来る隊員たちに手を振りながら、俺はフォスカムから中継世界へと長距離次元転移を行った。
そうして中継世界2つを跨いで地球へと俺は帰還した。時刻は午後4時前。悪くはない時間だが、「はやてからのメール・・・?」海鳴市上空に転移し終えた途端に通信端末にメールが届いた。チーター頭の部分変身を解き、メール画面を開く。

――ザフィーラからボランティアに出かけたって聞いたけど、そんなんあった? もしかしてまた魔法関係でなんかあったん? もしそうなら話してくれへんでもええ。そやけど無茶なことだけはせんでな? それだけがわたしからのお願いや――

メールには気遣いの言葉が記されていた。メールの返信をしようとしたところで、「さっきから私を覗き見してるのは誰だ?」正直に言えば訊くまでもなく見るまでもない。感じる魔力反応は2人。俺が知っているものだ。先の次元世界ではそれはもう世話になったものだ。
ああ、とことん俺の邪魔をしてくれたアノ・・・。俺の呼びかけにも応じずに姿を隠したまま。だったら、「無理にでも姿を現してもらう」魔力反応が在る空間へとソニックムーブで瞬間移動し、一切の行動に移れない速さで魔力を付加させた手刀を繰り出す。

「っぐ!?」

懐かしい声での苦悶の呻きが耳に届き、視界には空間が揺らいでいるのが映る。そしてその揺らぎの中から1人の女性が現れた。猫耳と猫尾を生やした、少々冷たい目つきをした。

「こ、こんなにも早く見破られるなんて・・・」

俺の手刀を受けて痛む腹に手を置いた彼女は俺を、正確には俺の背後に目をやっている。もう1人居るよな。魔導戦に優れた君とは違って格闘戦に長けた彼女が。振り向きざまに、跳び蹴りを繰り出して来ていたもう1人の女性の足裏を受け止める。

「「っ!?」」

「以前からちょくちょくと私を監視してたよな? 気付かないとでも思っていたのか」

俺がはやての家に世話になってから数日と経ったある日から、時折サーチャーや直に向けられた視線に気付いていた。敵意や戦意は感じず、ただ強烈な猜疑心だけは感じていた。そのことから誰が俺を見ているのかすぐに判別できた。

「この・・・!」

空いているもう片方の蹴りを繰り出してきたため、俺は彼女を大きく振り回してもう1人の女性へと放り投げた。

「名乗らず、事情を話そうともせず、いきなり攻撃。しかも盗み見について謝らない。君たちは一体誰なんだ? 話を訊く権利くらい有ると思うけど?」

全てを知っていながら俺はそう問う。すると2人は互いに顔を見合わせて頷き、俺へと改めて向き直った。

「・・・確かに。私は時空管理局・提督、ギル・グレアムが使い魔、リーゼアリア。で、この子はリーゼロッテ」

そう、俺の前に現れたのはリーゼだった。いつか俺に会いに来るだろうと思っていた。はやてと関係を築いた時からずっと。ロッテは警戒心丸出しで俺を見、アリアは自分の前に小さなモニターを展開した後ある程度操作して、目的のページを開けたのか操作をやめた。そして小さく咳払いを1回。

「ルシリオン・セインテスト。第12管理世界フェティギアはサンクト・アヴィリオス出身。年齢は8歳。2月5日で9歳になる。ご家族とはすでに死別。莫大な財産を受け継ぎ、現在は独り暮らし。君のプロフィールはそれでいいかしら?」

マリアが俺に用意してくれたプロフィールを告げたアリア。それに対し「そうだけど」と答え、変身魔法を解いて大人から子供の姿へと戻る。はやてに俺の事を告げるならこっちのプロフィールの方が良いだろう。シグナム達に告げた真実半分虚偽半分のものよりかは。

「じゃあ訊くわ。なぜ八神はやてに近づいたの? 君は知っていたのよね、闇の書のことを・・・? 君の目的は何?」

「闇の書については確かに知っていたけど、はやてが主だったことを知ったのは世話になるって決めた後。だから、闇の書をどうにかしたいとは思ってない」

「・・・・そう。じゃあ、あたし達から忠告をしてあげる。悪いことは言わない。今すぐあの家を出なさい。その方が君の為よ」

アリアはモニターを消し、心から気遣いをしているといった風な視線と声色で俺にそう告げた。これから仮面の男として暗躍するのだから俺のような奴が居たら邪魔だろうし、家族関係を築いていたはやてと守護騎士の永久凍結後は俺が悲しみに暮れる、などと思ったわけだ。

「嫌だと言ったら?」

「あんたのことを管理局の捜査部に報告する。プレシア・テスタロッサ事件で死亡扱いを受けてる被疑者、テスタメントの正体があんただってことや、今回のフォスカムでの一件でランサーって名乗って指名手配犯を捕まえたこととか」

フォスカムでサーチャーを使って俺を見ていたのはやっぱりリーゼだったか。脅しをかけてきたロッテに目をやる。

「それが嫌だったらあたし達の言うことを聴いて。それが君の――」

「為になる、か? 冗談じゃないですよ、リーゼアリアさん。俺はこれからもはやて達と過ごします。管理局のあなた達がはやてや闇の書をどうにかしようとするのなら・・・」

“エヴェストルム”を二刀形態ツヴィリンゲンシュベーアト・フォルムで起動。するとロッテは「やるってんなら子供でも手加減しないよ!」身構えた。が、アリアがロッテを手で制し、「セラ!」誰かの名前らしきものを叫んだ。急いで周囲の魔力探査を行う。セラという女性の名前らしき人物を探り当てるより早く、俺に対してある魔法が発動した。

一方通行(サンダルフォン)の聖域、いきます」

そんな声と共に俺を閉じ込めるのは桃色の六角柱の結界。まんまと捕獲されたことより術式名があまりにも信じられないものだった。さらに「こ、これで良かったでしょうか?」リーゼの間に展開された桃色のミッド魔法陣上に転移してきた少女を見て俺は、「なっ・・・!」ベルカ時代からこの瞬間までの時間の中で一番驚愕した。
その少女はターコイズブルーの長髪で桃色の瞳。ワンピースにジャケット、コルセットスカートというバリアジャケットに身を包んだ、俺の知っている外見の少女。

(・・・アリス・・・ロードスター・・・!?)

この感じは間違いない。イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトにも感じた。外見ではなく存在レベルでの懐かしさ。目の前のセラと呼ばれた少女と、俺の知るアリスとは同じ魂だ。
セラはリーゼ達と話しているようだが俺の耳には入らなかった。それほどまでにショックだったからだ。まさかアンスールメンバーの転生者と会うことになろうなんて。

「時空管理局本局・特別技能捜査課所属、セラティナ・ロードスター三等空士であります。その結界からは逃れられませんから、そのつもりでお願いしま――するであります」

サンダルフォンの聖域という術式名からしてそうだろうな、とは思ったさ。けどな、セラティナ・ロードスター。コレが魔術なら俺もお手上げだった。でもこれは所詮「魔法に過ぎない・・・!」魔力炉(システム)の稼働レベルを上げ、魔力に神秘を乗せた。

――破り開け(コード)汝の破紋(メファシエル)――

障壁・結界破壊効果を持つメファシエルを両手に持つ“エヴェストルム”に付加し、サンダルフォンの聖域に叩き付ける。1発でヒビを入れ、2発で粉砕する。

「え!?」「うそ!?」「なんで壊せんの!?」

三者三様の驚きを見せた3人に、“エヴェストルム”を待機形態の指環に戻した上で「取引をしましょう」俺はそう持ちかけた。


 
 

 
後書き
ミンガラ・ネレーキンパ。
ANSURシリーズの完結編でやってみたいことであったアンスールメンバーの転生者の登場、それがようやく叶いました。
魔術師史上最高の結界術師、アリスの生まれ変わり。それがセラティナです。
もしかしたら読者の皆様の中には予想されていた方もいらっしゃるかもしれませんね。
「Epic14-Bそれはもうジュエルシードの回収は大変で~StrangE~」でイリスが少しセラティナ、結界術師のことにに触れましたから。

 
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