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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep15友達~Nanoha & Fate~

†††Sideシャルロッテ†††

フェイトもやる気を見せているし、なのは達もサポートに回ると言ってくれたわ。そうと決まれば、私のすることは彼女たちが傷つかないように守るのみよ。

「プレシア・テスタロッサ! あなたの娘の力によって落ちなさい!」

「・・・あなたが手を出さないのであれば何も恐れることはないわ。そんな人形の力なんて、私の前では無意味よ!」

――サンダースフィア――

「無駄よ!」

――干渉防御――

さぁ、戦闘開始よ。早速プレシアが魔法を放ってきた。私は魔術ではなく、“界律の守護神テスタメント”の力で防御したのだけど・・・。どういうわけかプレシアの魔法の威力がさっきより上昇していることが、伝わる魔力波の強さによって判った。
原因は何か? 私は真っ先にプレシアの側で光を放っている“ジュエルシード”を見た。ああ、なるほど。“ジュエルシード”から魔力を供給しているのね。随分と無茶なマネをするわ。

「クロノ。どうやら彼女はジュエルシードを完全に制御しているみたいよ。けど安心してくれていいわ。絶対になのは達は傷つけさせないから」

「なにっ!? ジュエルシードを完全制御っ!? というか、それを防げるわけが・・・」

――サンダーレイジ――

――干渉防御――

「「「っ!?」」」

頭上から降り注ぐ“ジュエルシード”の魔力を受けた雷撃を実際に防いで見せると、ユーノとクロノは驚愕のあまり後ずさっている。攻撃を放ったプレシアも「そんな・・・馬鹿なことが・・・!?」もちろん驚愕に目を見開いた。
なのはとフェイトはあまり驚いていない。アルフもユーノ達ほどに驚いていない。フェイト達はどうやらルシルの異常性からして慣れてしまっているようね。こういうあり得ない現象を。だったらプレシアはともかくとして、ユーノとクロノもそうでしょうが。ここまで何を見てきたのよ。

「ほらね。さぁ、行ってきなさい、フェイト。ルシルが来るまでの間、私があなたとなのは達の盾になるわ」

「あ、その、ありがとう。アルフ、行くよ」

「あ、ああ、あいよ!」

フェイトとアルフはプレシアへ向かっていった。それに続くなのはとクロノ。ユーノは私の側でサポートに移る。

「母さん、私はあなたを止めます、止めて見せますっ! バルディッシュ・・・!」

≪Photon Lancer Get Set≫

「フェイトちゃん達のために、私もあなたを止める! レイジングハート!」

≪All right, Divine Shooter≫

「シューット!」「ファイア!」

なのはとフェイトの魔力弾、計12発が、ショックで顔を歪ませているプレシアへと襲い掛かる。クロノも負けじと魔力弾とのタイミングをずらしてから「ブレイズキャノン!」砲撃を放つ。

「そんなもので、どうにかなると思っているの!?」

――エクスディフェンダー――

プレシアの前面に複数の六角形を組んだ障壁が展開された。直後に障壁に当たる3人の射砲撃。プレシアの障壁はただ防ぐだけではなく、大きな雷撃弾をカウンターで放ってきた。スピードはそれほど速くはないから、「無駄よ、プレシア・テスタロッサ」干渉防御によって余裕で防御する。

「あなた・・・一体何なのよ・・・!」

――サンダースフィア――

思い切り睨まれたから、「この子たちの友人よ」ほくそ笑んでやったわ。プレシアは諦めることなく、フェイト達へと雷撃弾を4発と放ってきた。それも無駄よ。もうプレシアにフェイト達を攻撃を通すことは不可能。私は“テスタメント”の能力・“干渉”をこれまでと同じように使うと、雷撃弾は初めからなかったかのように消滅した。

「だ・か・ら、無駄だって言っているでしょうが」

干渉とは、“テスタメント”の能力の1つ。現実の物理現象に干渉する実数干渉と、幻想などに干渉する虚数干渉の2つのことを言う。実数干渉は現実にある物質や空間、虚数干渉は幻想とされる霊体や概念などを、思うがままに操ることが出来るというもの。この干渉の力の前では、神秘を失ってしまい科学へと進んだ魔法は完全無力化されるし、元より初めからどんな力でも破ることは不可能。

「さぁ、どうするプレシア? あなたの攻撃にいくらジュエルシードの魔力を使っていようとも、私の力の前では無意味よ」

「~~~~っ!」

驚愕と憤怒、そして理解できない力への恐怖でプレシアの顔が歪む。どうやらルシルが来る前に終わってしまいそうだわ。

「な、何なのその力は!? そんな魔法は知らない!」
 
「知る必要なんてないわ、だって使えるのは私とルシルの2人だけなのだし。それに知ったところで使えるようなものじゃないもの」

そう、この世界で使えるのは、世界の意思の執行者である“テスタメント”の私とルシルだけ。どういう理屈で、とか何だとか教えても理解できない。

「母さん! もうやめよう!? 母さん、さっきから血を・・・!?」

「げほっごふっ。このような結末・・・私は認めない!」

――サンダースフィア――

フェイトがもう1度説得に入る。プレシアは何処か患っているのか、先程から吐血している。けれどプレシアはそれを無視して攻撃する。そこまでして娘のアリシアに会いたいのだろうけど、それは叶わない。

「だから無駄だと・・・言ってるでしょうっ!」

――干渉防御――

私はまた干渉を使い、雷撃弾を消滅させる。今使っている実数干渉能力で、現実に存在しているモノ、と決定されたプレシアの雷撃という現象のみを選択して消している。

「フェイト! なのは! 口で言っても聞かないなら、力ずくで止めなさい! その後でゆっくりと説教でも何でも言えばいいから!」

「うんっ!」「はい!」

――ディバインシューター――

――フォトンランサー――

私の言葉に2人は返事をして、再度プレシアへと攻撃を仕掛ける。ユーノ、アルフ、クロノは少し邪魔になるので少し下がらせる。

「フェイトちゃん! 少し耳を貸して!」

「え?・・・っ!・・・うん、やろう」

どうやらなのはが何かしらの手を考えたようね。それなら私たちは2人のサポートに専念すればいいだけのこと。

「クロノ。2人が何か考え付いたみたいだから、それまでの間はあなたが攻撃に回って。ユーノとアルフはクロノのサポートよろしく。みんなの防御は、全て私が受け持つ。これで終わらせるわよ」

「ああ!」

「判ったよ!」

「うん!」

そういうわけで、なのはとフェイトの援護を開始。クロノは早速「ブレイズキャノン!」砲撃を放ったけど、それは容易く防がれてしまう。プレシアはクロノに反撃を試みようとしたけど、「今度こそぶん殴る!」アルフのバリアブレイクと呼ばれる(後で聞いたのよ)一撃によって、その機会を失った。苛立ち気に顔を歪ませたプレシアは、今度はアルフに標的を変えようとするけれど、ユーノのバインドによって再度妨害される。

「う~ん。なかなかの連携ね。さて、なのはとフェイトは?」

ユーノとクロノ、それにアルフの連携があれば、今までのルシルとやり合ってもおそらく勝つことが出来るわね。次に2人へと目を向けてみると、2人して砲撃に使用する魔力をチャージしていた。おお、これは結構すごいことになるかもしれない。

「行くよっ、フェイトちゃん!」

「うん・・・!」

バインドを砕いたプレシアへとデバイスの先端を向け、なのはとフェイトが発射体勢に入った。輝きを増していく“レイジングハート”と“バルディッシュ”。その様子に「ユーノ、クロノ、アルフ、退避!」と指示を出す。それに従ってプレシアの元から離れる3人。ギラッと狂気に満ちた目を3人に向け、プレシアは「逃がさないわっ!」と妖しく笑った。

――サンダーストーム――

プレシアの放った雷撃の嵐。当然それを許さない私は、干渉防御ではなく“第三聖典”を投げ放つ。

――遥かに遥か、白の真白の、高き夢々、汝よ祈れ――

“第三聖典”は純白の閃光の尾を引いて、雷撃を拡散しながらプレシアの足元へと着弾。プレシアの強固なバリアを完全に粉砕する。何度言えばいいのかしらね。今の私に一切の“力”は通用しない。

「くっ・・・一体どうなっているの!?」

プレシアはその衝撃で少し後ろへと弾き飛ばされるけど何とか踏み止まった。それだけの隙があれば十分よ。なのはとフェイトの準備は終わったのだから。

「ディバイィィン・・・」

「サンダァァ・・・」

2人のデバイスの閃光がさらに輝きを増した。

「バスタァァァーーーーッ!」「スマッシャァァァーーーーッ!」


放たれるのは極限にまで圧縮された桜色と黄金の閃光。それは間違いを起こそうとしている者を正すための光かしらね。それにしてもなのはには遠慮というか何というか、何か欠けているのかもしれない気がする。あそこまで容赦なく撃つなんて少し怖い。恐るべし。魔法少女9歳児。

「フフフ、アハハハハ! そちらの方こそ無駄よ! さぁ、ジュエルシードよ! 私の願いを叶えて! アルハザードへ私とアリシアを導いて!」

プレシアのその言葉を合図として、“ジュエルシード”が完全発動・・・違う、暴走だわ。完全に制御できる一線の臨界点を超えてしまったようね。なのはとフェイトの砲撃が“ジュエルシード”から放たれる魔力によってかき消されてしまった。あ~惜しい。もう少しで決まっていたのに。

「くっ、シャル、どうすればいいんだ!?」

クロノが必死な顔をして聞いてきた。それに対して問題ないって答えようとしたその瞬間・・・


「汝よ敬え、汝よ崇めよ、汝よ称えよ、汝よ祈りて、ただ跪け」


その言葉と共に落ちてきたのは、漆黒に輝くルシルの“第四聖典”。物凄い音を響かせながら床に着弾して、“ジュエルシード”の魔力を消し去った。完全に沈黙した“ジュエルシード”と、その衝撃に呆気にとられているなのは達。

「タイミングはバッチリだったようだな」

そこに聞こえるのはルシルの声。遅れて上から降下してきたルシルは、私たちに向けて親指を立てる。まぁ何はともあれこれにて終了ね。

「・・・・あ~、プレシア・テスタロッサ。大人しく投降してくれないか? これ以上こんな連中を敵に回すとどうなるか僕たちにも判らないから」
 
クロノはほとんど自棄になって、プレシアに投降するように呼びかける。ちょっと。「クロノ。こんな連中ってなによ?」ルシルはともかくとして、そんな目で私を見ないでほしいわ。傷つくでしょうが。一応、私は女の子なのよ。

「・・・母さん、もうこれ以上は無理、だよ。管理局へ行って、一緒に罪を償おう?」

フェイトは第四聖典の着弾による衝撃波の所為か、少し頭を振ってからプレシアに告げる。プレシアは未だに呆然としている。当然かもしれないわね。あんなにも簡単に“ジュエルシード”の魔力を消されてしまったら、この時代の連中は信じられず病院へと直行でしょう。

「・・・どうして・・・こんな・・・でも!」

プレシアが項垂れてそう呟いた瞬間、大きく振動する庭園内。再度光りだす“ジュエルシード”だけど、魔力はほとんど感じられない。あれじゃ何も出来ないだろうけど、散々暴れてしまったことと駆動炉を失ったことで、ボロボロになったこの庭園くらいは破壊するかもしれない。あまりの振動に堪らず膝をつく私たち。プレシアはアリシアの水槽へと体を預けて何かを喋っている。

『もうダメ! この規模の崩壊なら次元断層は起きないけど、庭園は崩壊しちゃう! だからクロノ君たちは急いで戻ってきて!』

そんな時、エイミィから切羽詰まった通信が入った。

†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††

母さんを止めることが出来た。その時はそう思ったんだ。でも、ダメだった。最後の最後まで母さんは、アリシアだけを娘だとしていた。それでもやっぱり私は・・・あなたの娘でいたい。

「私はアリシアと共にアルハザードへ、全ての眠る地へと行くのよ・・・。今度こそ、私はアリシアと幸せな時間を過ごすの・・・」

崩壊を始めた“時の庭園”。大きく振動する中、囁くほどの小さい声だったけどなんとか聞き取れた母さんの言葉。すぐには認めてもらえないかもしれないけど、私は時間が掛かってもいいから、母さんに娘だって認めてもらえるように頑張りたい。そう考えていた矢先、母さんの足元が崩れた。母さんは虚数空間へとアリシアと一緒に落ちていく。

「母さん!」

私は叫び、母さんの元へ駆け寄ろうとしたけど、「フェイト!? ダメ!」ってアルフが私を後ろから抱き止めてきた。

「離してアルフ! 母さんをたすけ――」

「チッ、このまま終わらせてなるものか!」

私の代わりにルシルが母さんを助けようと駆け出してくれた。それを見た他の人たちがそれを止めようと声に出しているけど、ルシルはそれを無視してさらに速度を上げていった。

(お願い、お願い、お願い、母さんを助けてルシル!)

ルシルが必死に手を伸ばして母さんの手を取ろうとする。あと少しで手が届くといったところで、浮遊していた“ジュエルシード”から衝撃波が放たれる。衝撃波をまともに受けたルシルは、「ぐぁ・・・!」私の横を通り過ぎて吹き飛ばされていった。
 
「ル、ルシル・・・!?」

一瞬何が起きたのか判らなかったけど、少ししてルシルが吹き飛ばされたのだと理解して、そちらに目を向けようとして気付く。

「か、母さん・・・母さん?」

もうどこにも母さんの姿もアリシアの眠るポッドもなかった。もう話せないんだ、解かり合えないんだ、そう思うと涙が止まらなくなって、その場にへたり込む。

「フェイトちゃん!」

その声を聞いた私は顔を上げると、あの白い子が私に手を伸ばしていた。そうか、私の居る場所も崩れてきているんだ。

「フェイトちゃん! こっちに跳んで! 早く! お願い、フェイトちゃんっ、跳んで!」

白い子が私に手を伸ばしてきていた。でもどうしても母さんのことを少し考えてしまう。それにルシルは? 少し見渡すと、男の子の肩を借りて立つルシルが「フェイト、生きろっ!」って叫んでいる。そうだ私は・・・私は、生きないと・・・。母さんとアリシアの分まで。今まで私に力を貸していてくれたアルフやルシルのためにも。だから母さん、アリシア・・・。

「さよなら」

そう呟いてあの子の元へと跳んで、その手を取った。

†††Sideフェイト⇒シャルロッテ†††

「いい加減止まりなさい。もうあなた達の出番は終わったのよ」

――干渉――

私はルシルをクロノに任せて、“ジュエルシード”の完全停止を行った。プレシアだけに集中していた所為で、あんなドジを踏むなんてらしいと言えばらしいかもしれないけど、少し間抜けかもしれない。

(でもこれで“ジュエルシード”関連の契約は終了した・・・はず)

本来ならここで私とルシルは契約執行完遂として消えることになるのだけど、“界律”からは何も言ってこない。どうやらまだこの世界でやるべきことがあるみたいだわ。うん、まぁ嬉しいのだけどね。

崩れゆく“時の庭園”から帰艦した私となのはとユーノ、クロノは、今はアースラの医務室に居る。足を怪我していたなのはの治療を行うために。本当なら干渉能力で怪我を無かったことにする、ということにしたかったのだけど、戦闘後すぐに能力を制限されてしまったのよね。まったく。戦闘しか能がないって言われているようで、結構ショックだわ。

「あの、クロノ君。フェイトちゃん達は?」

なのはがユーノに包帯を巻かれている中、そう質問した。

「彼女たちは今、護送室に隔離している。彼女たちは今回の一件の重要参考人だからね。申し訳ないが、しばらくあそこに入っていてもらうことになるだろう」

クロノの返答になのはは「そ、そんな・・・!」納得できないといった感じで声を上げる。私は当然の処置だと思っているから口を挟まない。罪は罪だしね。でも、情状酌量みたいなものがあってもいいと思うのだけど・・・。

「今回の事件は1つ間違えば、次元断層さえ引き起こしかねなかった重大な事件なんだ。時空管理局としては、関係者の処遇には慎重にならざるを得ない。それは解かるね?」

「・・・うん」

なのはは渋々納得した。クロノは私を見て、「君も解かってくれるね?」と確認してきたから、私は「ええ」と頷き、ルシルの今後を考えた。

それから数日は地球に帰れないということでアースラの中で過ごした。退屈なこともあったけれど、まぁまぁ楽しめたかしらね。いいえ、とても幸せな時間を過ごせたわ。だってすぐ手が触れ合えて、話が出来る友達と一緒なのだから。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

あれから数日が経った。いま私とユーノ君、それにシャルちゃんは、クロノ君の後について通路を歩いているんだけど、私はフェイトちゃん達のこれからが気なったから、「クロノ君。フェイトちゃん達はこれからどうなるの?」って聞いてみた。するとクロノ君は足を止めることなく答えてくれた。

「事情があったとはいえ、彼女たちが次元干渉犯罪の一端を担っていたのは紛れもない事実だ。次元干渉犯罪は一番重い罪だからね。普通なら数百年以上の幽閉になってしまうだろう。が――」
 
「そんな!」

「す、数百年!?」

私やシャルちゃんはそれには驚いてしまった。数百年って多すぎるよ。そんな私たちを見て、すぐにクロノ君は話を続けた。

「なんだ、が! 最後まで話を聞いてくれ。今回のケースは状況が特殊だ。彼女自らの意思で次元犯罪に加担していなかったことは判明している。それに、ルシリオンはプレシアの目的を知らずに、ただフェイトとアルフの為として戦っていた。その事実を上層部にどう理解させるかなんだが、その辺にはちょっと自信がある。だから心配はないよ、なのは、シャル。完全な無罪には出来ないかもしれないが、数百年単位の幽閉にはさせないから」

「クロノ君。お願いします」

「・・・ええ。その辺りはあなたに任せるわ、クロノ」

「ああ、任せてくれ。フェイトは何も知らされず、ただ大切な母親の願いを叶える為に一生懸命なだけだった。そして、それをただ手伝いたかったルシリオンとアルフに罪を問うほど、僕たち管理局は酷いな組織じゃないから」

「ふふ。クロノってとても優しいんだ、私は嬉しいな~♪」

クロノ君の前に回り込んだシャルちゃんがそう言って、クロノ君を下から見上げるようにしながら笑顔を近付けた。すると私でも判るくらいにクロノ君の顔が真っ赤になってしまった。

「し、し、し、執務官として、と、当然の発言だ! し、私情は別に入っていない!」

かなり動揺しているみたいで、クロノ君は慌ててシャルちゃんから離れる。顔が赤いのはまだ直っていない。にゃはは、クロノ君ってば可愛い。

「あはは、そんなに照れなくてもいいじゃない、可愛いんだから」

「な!? て、照れてなんかいない! まったく! もうまったく、年上をからかうな!」

通路に響き渡る私たちの笑い声と、クロノ君の否定の言葉。シャルちゃんは最後にクロノ君へそっと「ありがとう」と告げていた、耳元で。それでさらに顔が赤くなってしまったクロノ君は、ついには黙って先に行ってしまった。シャルちゃん、あんまりからかい過ぎるとクロノ君が可哀想だよ。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

私があまりにからかってしまった所為で、クロノは顔を真っ赤にしたまま行ってしまった。仕方がないから予定通り、私たちだけで食堂へと向かうことにした。辿り着いた食堂でリンディ艦長と一緒になり、これからについての話を少しした。
海鳴市へはもうすぐで帰れるらしいのだけど、ミッドチルダ方面へはジュエルシードの影響でまだダメらしい。で、ユーノの今後のことで話題が出るけど、なのはは今までどおり高町家へ住まわせることにした。私としてもなのはの魔法の先生をここで失うわけにはいかないから、それには賛成している。

「クロノ」

「・・・」

そこで合流するクロノ(私と目を合わさないようにしていて、少し反省)とエイミィ。みんなが揃ったことで、次の話題はプレシアの目指した地であるアルハザードについてとなった。ユーノは「いくつもの秘術が眠る土地」と、クロノは「とっくの昔に次元断層へ落ちた」のだと言う。リンディ艦長もそれに続き、説明をしている。

(真実は知れど闇の中へ、ね)

実際は次元断層に落ちたのではなく、ルシルの干渉によって近くにあった流星群の軌道がアルハザードに修正されて、直径何百mという隕石がぶつけられて粉砕・消滅した、が正しい結末ね。アルハザードの連中はどこで大戦や魔術の記録を手に入れたのか知らないけれど、禁呪を、しかもよりによってラグナロクを研究し、その上で発動させようとした。それゆえに滅ぼされたのだ。

「そういえばシャルロッテさん。ルシリオン君が時の庭園に向かう前に、プレシア女史に言っていた“世界の意思”というのは何なのかしら?」

リンディ艦長が急に話を振るので驚くけど、それについては一応説明しておく。

「世界の意思。私たち魔術師はそれを世界を律する法、界律と呼んでいます。それはその星そのものと言っても過言ではありません。自分自身である世界の秩序を管理するもの。全てがそこから生まれ、そして還っていく永久機関。過去、現在、未来の全ての情報があるともされる知識の蔵。それぞれの星に必ず存在する、究極にして絶対たる力の根本、といったところでしょうか」

そして私とルシルは、そのあらゆる世界の意思・“界律”が1つに集約する“神意の玉座”に取引を持ちかけられ応じ、魂を取り込まれた後、存在を昇華された最高位の抑止力、“界律の守護神テスタメント”だ。まぁルシルはまだ死んでいないために魂ではなく、精神を取り込まれている状態だけど・・・。

「判っていたつもりだったが、やはり僕たちの知識とは全然違うな。でも本当にそんなものが存在しているのか?」 

クロノが私の説明を言い終えるのを待ってからそう告げた。当然の疑問ね。すでに次元世界には、“界律”という単語すら残っていないのだから、その存在を疑うのも無理はない。

「この前は魔力炉(システム)での供給量でランクが変動すると言ったけど、それだけじゃなく私たち魔術師は、その界律によって力の強弱が決定されるの。だからプレシアとの戦いで、世界は私たちに力を貸してくれたというわけ。あのままジュエルシードを放置していたら、地球という自分が消滅する可能性があったから」

魔術師の部分には本当は“テスタメント”と入るところだけど、ここは黙っておくのがいいでしょうね。いま説明したところで、どうせ今のところなのは達は理解できないようにされているんだから。

「そうなのか・・・。じゃあ今はあの時のような力は出せないのか?」

「ええ。星の危機が去ったのなら、もうあれ程の力は要らないでしょ? だから使用できないようにされてしまっているの」

クロノの質問にも答えたところで、ようやく食事を再開できた。あ~あ、折角の料理が冷めてしまったわ。少し勿体ないわね。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

リンディさん達、アースラのみなさんとお別れして、私たちは日常へと帰ってきた。思い返してみれば短かったような長かったような、そんな色々なことがあった時間。私はその大切な時間を決して忘れないと思う。私を成長させてくれた、とても大切な時間だから。
そして日常へと帰ってきて数日後の朝、クロノ君から連絡がきた。それはフェイトちゃんとルシリオン君とアルフさんの今後の予定、それと2人がほぼ確実に無実となるという話だった。

『――ということだから、今からならフェイト達と会えるんだが・・』

「い、行きますっ。すぐに行きますっ!』

それとすごく嬉しいことに、フェイトちゃんが私に会いたいって言ってくれているみたい。そのことが嬉しすぎて、涙が出ちゃいそうになる。クロノ君とどこで会うかを決めてから通信を切り、私はすぐに着替えを始める。

「あ! そうだ、シャルちゃんにも教えてあげないと!!」

私はシャルちゃんを叩き起こして、すぐさまフェイトちゃん達が待っている海鳴臨海公園へと向かった。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

気持ちよく眠っているというのに、なのはが「シャルちゃん!」といきなり部屋へと押し入ってきた。しかも私の耳元で「起きてシャルちゃん!」と何度も叫び、尚且つ体を揺らしまくるという悪行を働いてくれた。安眠妨害をしてきたなのはにアイアンクローをかけながら、私は未覚醒の状態で体を起こした。

「それで? どうして私の安眠を妨害したのかしら?」

「あの、痛いよシャルちゃん。手を顔から話してくれないと痛さで喋れないかも」

なのはに今回の悪行の釈明をさせると、クロノからルシル達の処遇が決定したと連絡があったそうだ。何故それだけで浮かれているのか?と聞いてみると、フェイトがなのはに会いたがっているというらしい。

(なるほど。それでこの浮かれようってわけね。嬉しいのは判るけど、もう少し起こし方に気を付けてほしいものだわ)

ま、ルシルと会えるということで私も出かける準備をして、なのはに手を引かれながらあの公園に向かった。そして公園に入ってしばらく行くと、クロノ、ルシル、フェイト、アルフが海のすぐ近くの休憩場所で待っていてくれていた。

「なのは、私たちは向こうで話しているから、2人はここで言っておきたいことを話しておきなさい。いいわよね? クロノ」

「ああ、あまり時間はないけど、それまではゆっくり話すといい」

私の意見をクロノは快諾してくれた。さて、私もルシルに何かしらの言葉でも掛けておこうかしらね。

「ありがとう、シャルちゃん、クロノ君」

「ありがとう」

なのはとフェイトの感謝の言葉を聞いてから私たちは2人から離れて、ベンチのあるところまで行って座る。なのはとフェイトの2人だけにしているから、ここには私とルシルだけでなく、ユーノにクロノにアルフも居る。そんなに時間もなさそうだから、「さてと、ルシルはこれからどうするの?」と本題を切りだす。

「・・・しばらくはフェイト達と行動を共にしようと思っている。クロノの話だと、嘱託魔導師という資格を取ると、裁判などで有利なカードになるらしいから、まずはフェイトと一緒に取ろうと考えているよ」

ルシルがそう言いながら、クロノに視線を向けた。嘱託、か。管理局という一組織に、少しの間とはいえ身を置くということになるのね。

「まぁ、有利になると言えばなるし、今後の為にも取っておいて損はない。でもその試験は結構ハードルが高いから、勉強はしないといけないぞルシル」

ルシルの視線を受け、クロノがそう答える。それならルシルは大丈夫でしょうね。何せ知識すら容易く複製して溜め込むのだから、資料に目を軽く通せばいつでも頭の中に浮かぶ。全く、ルシルは本当に反則の塊よね。

「それなら大丈夫ね。ルシルの頭は反則だから無事に受かるはずよ」

「なにかトゲを感じるんだけどな」

ルシルはジト目で私を見てくるけど、私はスルー。そういえばもう1つ聞きたいことがあったのよね。

『ルシル、あなたはこの世界に確固とした存在として登録されているの? 私は色々と用意されているけど』

念話ではなく、“テスタメント”間用のリンクでそう尋ねる。私の場合は、ドイツという国に家も偽りの家族も用意されていることが判っているけれど、ルシルはどうなっているのか知っておきたかった。

『登録? あぁ、戸籍のことか、それなら用意されている。もちろん家の方も存在しているが、どうやら独り身――天涯孤独というやつみたいだな。ま、家事はこの数千年の間で鍛えたから、生活には困らない』

『ふ~ん。9歳で天涯孤独なのね』

それからアルフとも他愛無い話をして、話題が途切れたところで私はなのは達に目を向ける。するとクロノが立ち、「もうそろそろだ」と言って2人に近付いて行く。私たちもそれに続いて立ち上がり、なのは達の元へと歩き始めた。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

フェイトちゃんが私と友達になりたいって言ってきてくれた。でも友達になるにはどうすればいいか判らないとも。だから私は、私の持論をフェイトちゃんに教える。

「フェイトちゃん、友達になるのはね、すごく簡単なんだよ。それはね、名前で呼ぶことなの。君とかあなたじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、ハッキリ相手の名前を呼ぶの」

これが私の持論だ。まずは名前から、名前を呼ぶことから始まると思う。だからもう1度、私は自分の名前を告げる。

「私は、高町なのは。なのはだよ!」

「・・・なの、は・・・」

「うん! そうだよ、フェイトちゃん!」

「なのは・・・」

「うんっ」

「なのは」

フェイトちゃんが私の名前を呼んでくれている。それからフェイトちゃんは何度も名前を呼んでくれた。フェイトちゃんが笑顔で私の名前を呼んでくれるのを見ていると、それがすごく嬉しくて、涙が止まらなくなっちゃった。

「少し解かったことがあるんだ。友達が泣いていると、同じように自分も悲しいんだ」

その言葉を聞いて、私は我慢できずにフェイトちゃんに抱きつく。私のしてきたことは無駄じゃなかったと、そう思えるこの瞬間が嬉しかった。

「ありがとう、なのは。少しの間お別れになるけど、きっとまた会える。そうしたら、また君の名前を呼んでもいい?」

「うん! うん! 待ってる。ずっと待ってる。待ってるから、フェイトちゃんとまた逢える日を・・・!」

「会いたくなったら、きっとなのはを呼ぶよ。だから、なのはも私を呼んで。なのはに困ったことがあったら、今度はきっと私が、私たちがなのはを助けるから」

フェイトちゃんがシャルちゃん達の居る場所を見た。そこにはアルフさんとルシリオン君が居る。もう言葉が出てこない。出てくるのは嗚咽だけで、まで話したいことがたくさんあったはずなのに。

「すまないがもう時間だ。そろそろいいか?」

クロノ君やシャルちゃん達がそこまで来ていて、クロノ君がそう告げる。私は思い出に何かを残しておきたくなって、咄嗟に髪を結っているリボンを解いて、フェイトちゃんに差し出す。するとフェイトちゃんも同じようにリボンを解いて、私に差し出してくれた。お互いにリボンを受け取り、笑顔で再会を約束する。するとアルフさんがユーノ君を私の肩に乗せてくれた。

「ありがとう、アルフさん、ルシリ――」

「ルシル」

「え・・・?」

アルフさんとルシリオン君にもお礼を言おうとして名前を呼ぶけど、ルシリオン君は途中で遮ってきた。

「ルシルだよ、なのは。フェイトの友達なら俺とも友達、でいいかな?」

「あ・・・うん! ルシル君も私の友達だよ!」

「そうか、それはよかった。・・・なのは、ユーノ。シャルのこと、頼んだよ」

ルシル君とも友達になれたことがまた嬉しい。長く伸びた銀色の髪が朝日に輝いて、風に靡くその姿がとても印象に残った。

「ちょっとそれ逆じゃない? 私がなのはを頼まれるのが普通と思うのだけど?」

「ほう、居候がいい身分だな」

シャルちゃんとルシル君がおでこをつけながら、それはいい笑顔でお互いを見ている。でもちょっと怖いよ2人とも。フェイトちゃんがオロオロしだすし。お別れの時くらいは笑顔だよ。

「あ~もう、時間なんだって。そろそろ行くぞ」

クロノ君が堰払いをしてそう言ったら、フェイトちゃん達の足元に魔法陣が展開されて輝き始めた。少しの間のお別れ。けどお別れには涙じゃなくて笑顔で。お別れは終わりじゃなくて始まりで。

「またね、フェイトちゃん、アルフさん、ルシル君、クロノ君」

精一杯の笑顔で送り出す。するとフェイトちゃんとルシル君が手を振ってきてくれて、私とシャルちゃんも手を振り返した。私たちは光に包まれて消えていくフェイトちゃん達が見えなくなるまで見送った。海から吹いてくる風に靡く髪を片手で押さえる私とシャルちゃんは笑顔を浮かべ合う。

「・・・帰ろうか、なのは。ユーノ」

「うん!」「うん」

いつかまた逢える日を楽しみに。私たちは帰路についた。


1st Episode:全てのはじまりはここから Fin

Next Episode:夜天の主と雲の騎士
 
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