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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第25話 精霊達の集い?私は呼んでません

 おはようございます。ギルバートです。土の精霊の好意で、洞窟の中で眠らせていただきました。洞窟の中は精霊の加護でもついているのか、目が覚めると疲れも完全に抜け頭がスッキリしていました。

 私達は土の精霊に挨拶とお礼を言って、その場を辞しました。その際に、土の精霊が顕現したのは驚きました。

 しかし、驚いてばかりもいられません。急いで木の精霊の安否を、確認しなければならないからです。

 私と父上はグリフォンに乗り、精霊の大樹が在る場所に向かいます。何故かグリフォンの調子も良く、昨日よりも早いスピードで飛んでくれました。(グリフォンも洞窟で眠っていました。あの洞窟には、やはり土の精霊の加護があったのでしょうか?)

 水の精霊の態度に大きな不安がありましたが、大樹は無事でした。……無事だったのですが、それよりも気になる事があります。

 それは大樹がある場所が、昨日とは印象がガラリと変わっていた事です。一番の違いは、沼の水嵩でしょうか? いや、もう沼という表現は正しく無いでしょう。この場所は湖と言った方が相応しいです。1月か2月もすれば、湖岸よりの浅い所は沈水植物で一杯になっているしょう。大樹も昨日一昨日とは印象が変わり、生命力に満ち溢れていました。昨日まで枯れかけていたのが、嘘の様です。

 しかし困った事に、湖の水嵩が増した事により、グリフォンを降ろす場所が無くなっていたのです。如何するか思案していると、ヒポグリフが2頭飛んでくるのが見えました。乗っているのは、エディとイネスです。

「良かった。テール山脈に行く前にこちらによって。行き違いになる所でした」

「ご無事で何よりです」

 エディが判断の正しかった事に安堵し、イネスは私達の無事だった事に安堵したようです。しかし騎獣3体ともなると、いよいよ騎獣を降ろす場所がありません。私達が困っていると、大樹が突然ざわざわと葉鳴りの音を立てました。私達は当然のように周囲を警戒します。

 ……すると突然、エディが声を上げました。

「アズロック様!! あれを」

 エディが湖の西側を指さしました。先程まで水際ぎりぎりまであった木々の一画から、木が無くなっていました。騎獣3体を降ろすには、十分すぎる程の広さがあります。恐らく木の精霊は「騎獣を降ろして早く来い」と、言っているのでしょう。

「あの場所に騎獣を降ろすぞ」

 父上の号令で3頭の騎獣が、指示された場所に降り立ちます。騎獣を降ろしてから一番最初に確認されたのが、昨日の地震と巨大な水柱についてでした。父上はエディとイネスに、事の詳細を手短に話します。エディとイネスが頷くのを確認すると、フライ《飛行》で小島まで飛びました。

(あれ ?昨日あれだけあった肥料が無いですね。如何言う事でしょうか? いくなんでも、吸収するには早すぎる様な……。まあ、精霊は我々人間の常識が通用しませんから。気にするだけ損ねすね)

 小島に渡ると、父上が大樹に向かってに声をかけます。

「木の精霊よ。我々は試練を果たしました。約束通り我々の話し合いに応じてほしい」

 今回も木の精霊は、すぐに姿を現してくれました。

「単なる者よ。よくぞ我が試練を果たした。約束通り、話し合いに応じよう。……その前に水の精霊には、どの様に協力を頼んだのだ?」

 木の精霊の質問に、父上が私を見ます。私は父上の代わりに答えました。

「水の精霊に、頭の中を覗いてもらいました」

「へっ?」

 後ろからエディの声が聞こえましたが、兎に角今は無視です。

「……暫し待て」

 木の精霊に言われたので待つと、すぐ横の湖の水面が光り、ラグドリアン湖で見た水の精霊が現れました。木の精霊と水の精霊に、これと言ったやり取りがある様には見えませんでした。しかし2柱の精霊に、何となくですが険悪な雰囲気が見てとれる……気がします。

(ひょっとして肥料は、吸収したのではなく水に流されたのでしょうか?)

 私がそんな事を考えていると、再び木の精霊から質問が飛んで来ました。

「重なりし者よ。水柱が上がった時、水の精霊が何か言ってなかったか?」

 何故か突然矛先が私に向きました。ここであの時の水の精霊の言葉を言ったら、取り返しのつかない事になりそうな気がします。

「……いえ、それは」

 私は思わず言い淀んでしまいました。そんな私に埒が明かないと感じたのか、木の精霊は昨日と同じように、蔓を私の体に巻きつけました。そして棘が刺さり、私は悲鳴を上げます。

「ほう。……『力加減を誤った』か」

 また頭の中を覗かれた様です。木の精霊と水の精霊の雰囲気が、更に険悪な物になりました。無力な人間である私達4人は、この状況にガタガタと震えている事しか出来ませんした。て言うか、覗き終わったのなら放してほしい。痛いから。

 そこに追い打ちをかける様に、突然地震が起こりました。私達は地面を這う様な姿勢で、揺れが治まるまで耐える事しか出来ませんでした。(巻き付いた蔓の棘が、物凄く痛いです)そして卵が腐った様な臭いが、その場に立ち込めます。私達が状況を把握できずにオロオロしていると、湖の南側の畔にある木が数本燃え上がりました。炎は木を一瞬で燃やしつくし、空中で一つの塊になるとこちらへ飛んで来ました。

「何の用だ? 火の精霊よ」

「貴様など呼んだ覚えは無いぞ」

 水の精霊は冷静に問いかけましたが、木の精霊は目の前で木を燃やされた所為か、敵対的な声を上げました。

「土の精霊に呼ばれた」

 火の精霊は、水の精霊の質問に淡々と答えました。木の精霊の反応は、奇麗サッパリ流した様です。……火の精霊なのに。

 無視された木の精霊は、険悪度がまた上がりました。今にも精霊大戦争が勃発しそうな勢いです。

 この状況に、待ったをかける存在が現れました。私達のすぐそばの地面が突然盛り上がり、人に近い形になりました。洞窟の時とは微妙に姿が違いますが、間違いなく土の精霊です。

「火の精霊は、争わせる為に呼んだ訳ではないぞ」

 土の精霊の仲裁に、木の精霊は険悪な雰囲気を散らしました。私は心の中で、胸をなでおろしました。

 しかし現状は凄い事になっています。木・水・土・火の4柱もの精霊が、この場に集っているのです。ひょっとしたら、一生自慢できるのではないでしょうか? 余裕が出て来た私は、現状がどれだけ凄い事になっているか考えていました。

(これで風の精霊も居れば、地水火風の四大属性が全部そろいますね)

 ファンタジーに多少の造詣が有ったマギ知識の所為か、私がそう思ってしまったのは悪く無いと思いたいです。

「重なりし者よ。風の精霊が望みなら、呼び出してやろう」

 水の精霊が、突然そんな事を口走りました。私の口から「へ?」と言葉が漏れると同時に、空気が一点に集まる様に流れます。そこには水蒸気か何かの煙で、薄らと白く色がついた透明な人型が居ました。……身長20サント位の。

(他の精霊と比べて、……ちんまいな)

 他の精霊は2~3メイル程の身長になので、風の精霊だけ極端に小さいのです。

「ちんまいとは無礼だな。重なりし者よ」

 この瞬間、私は自分の血の気が引くのがハッキリと自覚出来ました。

(私と繋がっているのは木の精霊だけでは無いのですか? そう言えば、水の精霊も……)

「重なりし者よ。貴様は我を通し、この場の全ての精霊と繋がっている」

 木の精霊の答えに、私は固まってしました。しかし固まっていては、事態を収拾できません。

「ちんまいのは事実だろう」

 しかも、水の精霊が追い打ちをかけてくれました。水の精霊のくせに燃料投下するなと言いたい。そんな水の精霊に、風の精霊が言い返します。

「黙れうっかり精霊」

 水の精霊には、どっかの宝石魔術使いの家系と同じ呪いでもかかっているのでしょうか? 否定しておきたい所ですが、昨日今日でそれが不可能な事を嫌と言うほど思い知らされました。

「……ほう。誰がうっかりだと?」

 図星を指されると頭に来るのは、精霊も人間と同じ様です。今度は水の精霊と風の精霊が、険悪な雰囲気を作り出します。しかし今度も、土の精霊が2柱の精霊の仲裁に入りました。そんな他の精霊など眼中に無いと言わんばかりに、木の精霊は私に説明を続けます。

「今我らは、単なる者の言葉で話しているのではない。我と繋がる事により、我らのやり取りを一時的に、単なる者の言葉で認識しているのだ」

 私は血がにじむ自分の体と、身体に撒きつく棘付きの蔓を見ました。

(木の精霊を中継した、有線テレパスみたいな物でしょうか?)

 私がパッと思いついた事を、木の精霊は肯定しました。父上達を見ると、未だガタガタ震えています。(本当に聞こえていない見たいです)

「父上。精霊達は、私達に害意を持っていません。安心してください。……それから」

「(重なりし者よ。“ゼロの使い魔”と“大いなる意思”について話したい)」

 私は木の精霊から伝わって来た意思に、父上に向けていた視線を木の精霊に戻しました。見ると精霊たちの意識は、私に集中している様です。

「少しの間だけ、私に任せてください」

 父上は先程まで一緒に震えていた私の変化に、何かを感じ取った様です。一瞬で落ち着きを取り戻すと、大きく頷いてくれました。そして未だに震えているエディとイネスを、落ち着かせようと動き出しました。

「(重なりし者の記憶と知識は見た。だが、我々は重なりし者の意志を聞きたい)」

 5柱の精霊の統一された意思が、声となって私の中に流れ込んで来ました。

(私の目的は、大いなる意思の言葉である「この滅びゆく世界に、運命を変える一つの因子たれ」を、実行する事です。私は世界にとって、良い因子になりたいと思っています。しかし私は、英雄である必要はありません。そんな物は、サイトやルイズに任せておけば良いんです。私は2人の足を引っ張る者を排除する事で、私は良き因子となれると考えています)

 私は嘘偽りない本心を、精霊の晒しました。私の中のありったけの意志を込めて……。

「(ならば我等は、精霊としての矜持が許す限り、重なりし者に協力する事をここに誓おう)」

 予想以上に精霊達が協力的な事に、私は疑問を感じました。しかしその答えは、すぐに帰ってきました。

「(大隆起は我々にとっても、歓迎出来る事ではない。またあの戦いの再現は、絶対にあってはならない)」

(あの戦い?)

「(風の精霊を消滅させてた戦いだ。今の風の精霊は、その後で再生した存在だ)」

(精霊を消滅させた?)

「(そうだ。重なりし者よ。あの戦いは風の精霊を消滅させただけでなく、東の地を不毛な砂漠へと変えた)」

(不毛な砂漠? ……サハラの事でしょうか? ……精霊よ。その話を、もっと詳しく教えてくれませんか?)

「(残念だが、我々にも詳しい事は分からない。分かっているのは、その地で戦いが起こり、その地に存在した全ての精霊が、風の精霊ごと消滅した事だ。そして精霊の消滅と共に、肥沃な土地は砂漠へと変貌した)」

 この情報は、原作にもまだ載っていない新情報です。大いなる意思が言った“滅び”の手がかりになるかもしれません。しかしそれよりも重要な情報は、風の精霊が一度消滅した事です。もしかして地下に風石が溜まっている原因は……。

(精霊達よ。私の質問に答えてほしい)

「(なんだ?)」

(地下に風石が溜まる原因は、風の精霊の消滅に関係ありますか?)

「(然り。風の精霊に集まるべき力が、地下に溜まり風石となっている)」

 ……確定。しかしそれならば、土の精霊の力を借りれば、如何にかなるのではないだろうか?

(風石が元は風の精霊の力なら、風の精霊は風石を分解して除去する事が出来ますか?)

「(可能だ)」

(土の精霊が風石の鉱脈まで穴を開け、風の精霊が全て分解する事は出来ますか?)

「(不可能だ。風石の鉱脈付近は、土の精霊の力が届かん。鉱脈寸前で穴が止まり、そこからでは風の精霊は風石を分解出来ない)」

(ならばその部分だけでも、ジャイアントモール等の地中生物の力を借りられませんか? 運が良ければ、力を借りなくても亀裂等から鉱脈に侵入出来るかもしれませんし)

「(……可能だ。本来ならば自然の摂理に反する事だが、放っておけば更なる危機を招く事になる。実行する事を約束する)」

(ありがとうございます)

 余談ですが、この時より2年ほど各地で地震が相次ぎます。ロマリアが地震の原因究明に、とんでも無い額の賞金を懸けていましたが、私は知りません。

 まさかここで、大隆起の問題が解決するとは思いませんでした。これでロマリア組の最大の大義名分を、無効化出来た事になります。棚から牡丹餅(ぼたもち)とはいえ、エルフとの最大の戦争理由を潰す事が出来たのは大きいです。しかし油断は出来ませんね。ジュリオはともかく、ヴィットーリオはいまいち信用出来ないイメージがあります。

 そうこうしている内に、父上達がそろそろ交渉を始めたいと言って来ました。

 先ず最初に出た交渉内容は、森の拡大を止めてほしいと言う事でした。これに木の精霊は、条件付きで了承しました。

 一つ目の条件は、今後一切精霊に攻撃しない事です。当然の条件なので、これは問題無いでしょう。二つ目は、ドリュアス家が交渉役になる事です。こちらもドリュアス家にとって、願っても無い話なので即座に了承しました。

 次の交渉内容は、森の開拓についてです。これが荒れました。木の精霊が「他の人間が信用出来ない」と言い、ドリュアス家以外の開拓を拒否したのです。これには父上も頭を抱えてしまいました。バカ貴族の嫉妬や妬みを、もろに受ける立ち位置だからです。しかし結果的に、それは杞憂……もとい、それ以前の問題でした。森の中の幻獣・魔獣・亜人に対して、何ら対策が無いからです。

 要するに森が広がらなくなっただけで、以前と何も変わらないのです。楽になったと言えば、これまでほど背中を気にしなくて良くなった事くらいです。この状況はドリュアス家にとって、非常に不味いです。森の無茶な開発を押しつけられれば、財政破綻でドリュアス家が潰れます。

(何か対策を考えなければいけません。父上も頭抱えて、唸り始めてしまいましたし)

 私が思案を始めると、精霊達が有線テレパスで私に話しかけて来ました。

「(重なりし者は、我等にどの様な加護を望むのだ?)」

 これは先程までの統一された声ではなく、土の精霊単独の声でした。

(加護?)

「(我がドリアード家に与えたのは、豊作の加護だった)」

 私の疑問に木の精霊が答えてくれました。

(……そうですね。木の精霊には、引き続き豊作の加護がほしいです。土の精霊にも、同じく豊作の加護が欲しいです。やっぱり食は大切ですから。水の精霊には、治水面の加護が欲しいです。風の精霊には、……良い風を提供して欲しいです。風車とか)

「(風車?)」

 風の精霊は、私の頭の中から風車の知識を漁ると、その後何故か機嫌が良かったです。しかしここで問題です。火の精霊には、どのような加護を頼めば良いのでしょう?

「(我には、どのような加護を望むのだ?)」

 何故だろう? 火の精霊が加護の内容を、凄く楽しみにしているのが分かります。とても「要らない」とは言えません。思いつくのが、鍛冶や剣等の兵器関連ばかりですし。エゴかも知れませんが、精霊にはそんな事させたくありません。

(……温泉とか?)

 私が絞り出した案は、温泉でした。怒られるかな?

「(温泉? それはどの様な兵器なのだ?)」

 いや兵器じゃありませんから。と言うか、また人の頭の中漁るのですね。

「(素晴らしい。我の力を、癒しの為に使うとは……)」

(喜んでいただき光栄です)

「(その温泉とやら。我が全力を持って、応える事としよう。水の精霊と土の精霊も、是非協力を頼む)」

 なんか燃えています。火の精霊だけに。

 そうこうしている内に、頭を抱えていた父上が復活し領に帰る事になりました。木の精霊が蔓を外す際に、私の懐に道具袋をねじ込んで来ました。中身については、最後の瞬間に頭の中に叩き込まれました。中身は貴重なマジックアイテムです。






 それよりも、この財政破綻のピンチをどうやって切り抜けるかですね。 
 

 
後書き
旧題がイマイチだったので、なろう時のタイトルから変更しました。
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