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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep3ジュエルシードを巡る運命との邂逅~Destiny~

†††Sideシャルロッテ†††

時刻は早朝、学校生活の初日という興奮材料のおかげで(まるで子供みたい。あぁ今は子供よね)、朝の弱い私も早起き。そして今は士郎父さん、恭也兄さん、美由希姉さんと共に道場で汗を流していた。

「うわ~ん、シャルちゃんに負けたよ~(泣)」

士郎父さんが自己鍛錬していた私に突如、美由希姉さんと試合をしてほしい、と言ってきたので、かる~く相手をしてあげたわ。小さい子供の姿になって、身体能力も普段のものに比べればそれは酷い低下だったけれど、仮にも生前は騎士として生き、死後は“界律の守護神テスタメント”として数千年と戦い抜いてきた経験がある。負けるわけにはいかないわ。

「あの、ごめんなさい。美由希姉さん」

とりあえず美由希姉さん、先の動きが読めまくりです。私が生前参加し、死んだ理由である大戦においては騎士見習い以下、というか一般人クラスと言っても過言じゃないわ。

「いや~強いな、シャルちゃん。動きが洗練されていたよ。けど少し違和感のある動作が多々あったけど・・・どうしてだい?」

士郎父さんはなかなか鋭い観察眼をお持ちのよう。それなりに自然の動きをしたつもりだったけど、気付かれてしまっている。下手に嘘を吐くとあとあと首を絞める結果になりかねないから、ここは真実を語っておくことにする。

「えっと、やはり使っている得物の違いでしょうか? 私がいつも振るっていたのは、刀身が身長と同じ位ある長刀ですので」

半分正解な答えを告げる。動きの違和感の本当の原因は、体格がガラリと下がってしまった所為だ。165cmほどあった身長が、今では130から140の間くらい。当然筋肉など色々変わってくる。目線の高さや、手にしている木刀の長さ。
それらに慣れていないことが最大の原因。まぁ、大して気にはならないわ。何故なら今回の契約は子供の状態での召喚なのだから。かなり能力の制限も受けている以上は、全力を出す必要がないということだと思っている。

「そうなのか。いや、それは恐れ入ったよ」

それから少し話し込んで朝食を摂った後、「いってきます!」と、学校へと向かうためになのはと共にバス停まで向かった。いよいよ始まる学校生活。学業を修め、心身を鍛え、友をつくり、将来のための自分を育む場所。全てが初めてだわ。勉学に関しては家庭教師だったから、学校なんてものには当然通っていなかった。

「シャルちゃん、緊張しなくてもいいんだよ?」

「べ、別に緊張なんてしていないわ・・!」

そう。この程度で緊張などありえないわ。見なさい、なのは。私のどこが緊張しているとでも言うのかしら。フッと鼻で笑ってそう返すと「にゃはは。でも、腕と足、同じ方が動いてるよ」そんな指摘を受けてしまった。

「あ」

右足と右腕が一緒に出ていた。コホンと咳払いひとつ。

(で、でもこの歩法は別に恥ずかしいものではないらしいのよ)

“彼”の持つ知識から得た雑学の中に在った。重心の移動がスムーズになり、瞬発力が出て、捻らないためスタミナの浪費が少ないという素晴らしい歩法・ナンバ歩法というものらしい。
そんな話をしながら通学バスに乗り、バス内で合流したアリサとすずかと共にバスを降りて、学校へと歩いているのだけど・・・。

「なんか・・・すごい視線を感じるんだけど。ねぇ、私ってもしかして変なのかしら?」

先ほどから他の生徒からの視線が突き刺さってくる気がするわ。自分の制服姿を見て、そう聞いてみる。全てが初体験だから、らしくない不安ばかりが募ってくるのよ。

「ううん、どこも変じゃないよ。シャルちゃんが可愛いからみんな見てるんだよ♪」

すずかが笑顔でそう言ってくれる。可愛い、か。今までに縁のなかった褒め言葉よね。

「うんうん、私も同感だよ。長くて綺麗な水色の髪。目も綺麗なピンク色。シャルちゃんは可愛いの中にカッコ良さがあるから、だから注目されちゃうんだよ♪」

「確かにね~、シャルって絶対男子にモテるわよ。私が保証するわ」

「にゃはは。シャルちゃんの髪ってサラサラだから、風に靡くとまるで天使の羽のように見えるもんね~♪」

「私の髪をそんな風に例えたのってなのはが初めてよ。でも・・・ありがとう。すずかもアリサも、ありがとう、すごく嬉しいわ」

なのはもアリサもそう私の容姿を褒めてくれた。どうしよう、嬉しいわやっぱり。容姿を褒めてもらえるなんて、生前では絶対になく、“テスタメント”となってからも当然ないもの。

(この私が・・・この私が、まさかこんな事で緊張することになるなんて・・・!)

なのは達と校舎に入り、そこで教員と、先に来ていた桃子母さんと合流。なのは達は先に教室に向かい、私と桃子母さんは応接室で少しお話。そして桃子母さんも家に帰り、私は担任となる皆本先生と共に、教室の前にまで来た。

「大丈夫よシャルロッテさん。みんなとても良い子たちだから、すぐ友達が出来るわ」

「え、あ、はい!」

どこまで緊張するのよ私。こんな経験なんてしたことないからそれはもう焦る焦る。唯一の救いは、なのは達と同じクラスだということ。もし別のクラスだったら・・・なんかすごいことになってしまう未来が見えてしまうわ。

「それじゃ、呼んだら入ってきてね♪」

「は、はい、判りました」

先生が教室へと入っていた。ひとり廊下で待ち、呼ばれるまで深呼吸を繰り返す。

「おはようございます。今日はみんなに新しいお友達を紹介します。ではシャルロッテさん、入ってきてください」

(よ、呼ばれてしまったわ!)

笑顔を忘れるな。桃子母さん直伝の笑顔を思い出すのよ。そして挨拶はハッキリと。

「はい」

さぁ教室に入ったわ、シャルロッテ・フライハイト。恐れるな、私は騎士なのよ。常に堂々と胸を張れ。そう意気込んでも、初めての経験は私の思考や精神を乱し続ける。みんな、私を見てるわ。なのはとすずかはいつもみたいに笑顔だわ。少し落ち着く。
そしてアリサ。・・・緊張している私を見て、あなたは必死に笑いを堪えてるわね。それで少しばかり冷静になれた気がするわ。とりあえず、まずは深呼吸して・・・よし落ち着いて行け。

「初めまして。今日から皆さんと一緒に勉強することになりました、シャルロッテ・フライハイトです。どうぞ、シャルと呼んでください」

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

シャルちゃんが同じクラスになることを、お母さんから教えてもらった時はとても嬉しかった。学校でも一緒ならシャルちゃんは独りじゃない。それにしても教室に入ってきて緊張しながら挨拶するシャルちゃん、可愛かったな~。
そんなシャルちゃんの紹介も無事に終わって、それから午前中の授業が1つ終わるごとにクラスのみんなから質問攻めを受けています。実に大変そうです。

「そろそろシャルちゃんを助けてあげた方が・・・」

「そうね、さすがにこれ以上は無理ね。シャルと一緒にお弁当食べたいし」

「にゃはは、そだね」

私たち3人は、シャルちゃんを質問攻めから救出するため、そして一緒にご飯を食べるために、シャルちゃんの机に出来てる人だかりへと向けて出陣したのでした。
で、午後からは私とアリサちゃんとすずかちゃんも一緒にシャルちゃんの元へ行き、全力で助け続けました。シャルちゃん、どこまで人気になってしまったの?


とまぁ、そんなこんなが起きたこの1週間はあっという間に過ぎて去ってしまいました。思い返すと魔法使いのユーノ君やシャルちゃんとの出会いっていう驚きの連続だったな~。
“ジュエルシード”の探索の方も結構順調だと思う。毎朝早起きして、ユーノ君とシャルちゃんに魔法の練習に付き合ってもらっているからかな。ユーノ君とシャルちゃんの魔法談義にも少し慣れてきました。
でも話の内容が難しすぎてサッパリ解っていないからだと思うとちょっぴりヘコみます。とりあえずこの1週間で見つけたのは合わせて6つ。1つ目はユーノ君と出会った日の夜、2つ目はシャルちゃんが助けてくれた日。

Mission:1/水着を狙う変態野郎を駆逐せよ

ある学校終わりの放課後、以前からアリサちゃんやすずかちゃんと約束していたプールへとみんなで遊びに来ました。せっかく楽しんでいたというのに、空気を読んでくれない“ジュエルシード”が発動。目の前に現れたのは、女の子の水着だけを狙って脱がし、脱がした後の女の子はポイ捨てするという水のおばけ。アリサちゃんもすずかちゃんもすでに被害者だった。そして油断していたのか、シャルちゃんも胸を覆う水着を盗られました。

「アハハハハハハ!」

「コワッ!! 怖いよ、シャルちゃん!! 顔が鬼のようだよ!?」

「この変態野郎がぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

「痛ッ!」

突然手に痛みを感じたから、鬼のような形相をしちゃってるシャルちゃんから背けていた顔を戻すと、シャルちゃんの全身から電気のようなものが光っていました。まさしく、血の気が引く、というのを実感しました。こんな水気の多いプールで電撃なんか放ったら、私たちは間違いなく感電して、逝ってしまいます。

「ちょっ、ダメだよ、シャルちゃん! そんなことをしたら、結界内の人たちがとんでもないことになるよ!?」

最悪の光景を想像した私は、必死にシャルちゃんを説得する。というか私も死んじゃうよ。

「・・・チッ」

(チッ!? 舌打ちしないでシャルちゃん! 私の心が折れそうだよ!?)

その後いろいろありましたが、何とか新しい拘束魔法・レストリクトロックを使って、“ジュエルシード”を封印しました。
教訓、シャルちゃんを怒らせると血の雨が降ることになる(未遂)。
ちなみにユーノ君はシャルちゃんに怯えたり、私の捕獲魔法を見て驚いたりと、とても大変そうでした。


Mission:2 ヌイグルミの軍勢を包囲せよ

夜な夜なヌイグルミが街を徘徊するという噂を耳にしました。“ジュエルシード”の力かもしれないということで、ユーノ君とシャルちゃんを連れて見回りを行いました。1時間もしない内に目の前に現れたのは、噂通りヌイグルミの軍勢。種類が豊富でトコトコ歩くその姿はとても可愛かったです。

「あぁ、なのは、私はもうMPが無いから後は任せるね」

シャルちゃんは大きなあくびをしながら私にそう言った。アリサちゃんちのテレビゲームにハマり過ぎだよ・・・。

(MP!? え、何それ!? ただ眠いだけで魔力はまだ余ってるよね!?)

結局、私はシャルちゃんを拝み倒して(強制的に)協力させました。
教訓、シャルちゃんは強烈な眠気に襲われると、とてつもなく堕落する。そして嫌いなトマトを代わりに食べてあげると言うと、すごく嬉しそうになる。トマト、美味しいのになぁ~。


Mission:3 学校に現れるお化けさんを(力ずくで)成仏させよ

噂その2、お化けさんが夜な夜この学校に出るらしいとのことです。よし、今回は聞かなかったことにしよう。え、ダメ?
そういうわけで、いま私たちが居るのは深夜の校舎内。ヒィ、暗いよ怖いよ何か出そうだよ~。私は尋常じゃないくらいに震えている。だって苦手なんだもん、お化けとか。ビクビクしてると「えっと・・・なのは、大丈夫? ごめんね、こんなことさせて」ユーノ君が私の様子を見て、本当に申し訳なさそうに謝った。

「だ、大丈夫だよ。こ、怖くないから。早くジュエルシードを見つけて帰ろうね、ユーノ君」

精一杯の強がり。シャルちゃんはこんなことどうでもないと言わんばかりに前を歩き続ける。強いな~シャルちゃん。シャルちゃんが一緒に居てくれることに安堵していると、シャルちゃんが突然止まって、聞き耳を立てて廊下の奥を見据える。

「出た」

「~~~~っ!」

シャルちゃんのそのたった一言。それが私を一気に恐怖の臨界点まで押し上げる。

「なのは。それ以上はユーノが生物をやめるから放してあげた方がいいわ」

「ほぇ?・・・わっ! ごめんユーノ君! 大丈夫!?」

シャルちゃんに言われて初めて気付く。私が力いっぱい握っていたのは“レイジングハート”じゃなく、ユーノ君だったのだ。ダメだ、完全に魂が出てる。私は急いで外に出たユーノ君の魂を戻す。すると「ハッ!? ここは一体どこ!?」ユーノ君が目を覚ましてくれた。よかった~、生き返ってくれたよ。

「来るわよ、なのは、ユーノ」

シャルちゃんは右手に白く変わった形をした(横棒が少し垂れた)十字架を作り出して、ギュッと握り締める。後で聞くと、その十字架は葡萄十字っていう形で、“第三聖典”っていう名前だって教えてもらった。でもデバイスじゃにみたい。魔術師が使う、魔導師にとってのデバイスの代わりなのかな~。

「私があれをどうにかするから、なのは達はジュエルシード本体を探して」

そう言いつつお化けさんに突っ込んでいくシャルちゃん。あまりの突然の行動に驚いた私とユーノ君は声をかけようとして・・・うん、やめた。だって・・・

「とっとと逝ってしまいなさい、地縛霊どもーーーっ!」

“第三聖典”を握り締めた右手で、お化けさん達をボコボコに殴り飛ばしているんだから。いろんな場所へとすっ飛んでいくお化けさんを哀れに思いながら、私とユーノ君は探索を開始した。
数分としない内に“ジュエルシード”を発見して、何の妨害もなく余裕で封印を終えた。正直、シャルちゃんを迎えに行くか迷ったけど、ユーノ君に諭され迎えに行きました。うう、何か来た時より怖いよ。そしてそこには、良い運動をしたと言わんばかりのシャルちゃんが肩で息をしながら仁王立ちしていました。
教訓、シャルちゃんはお化けさんだろうと何だろうと力での解決を望む。


Mission:4 暴走大樹を停止させよ

今日はお父さんが監督を務めるサッカーチーム・翠屋FCの試合の日です。アリサちゃんやすずかちゃんと一緒に味方チーム応援します。ある用事で遅れてきたシャルちゃんが応援に加わると、うちのチームはさらにテンションが高くなって、敵チームに大差をつけ始めました。

(ホント人気があるね、シャルちゃん。なんか羨ましい。運動で人気者になれるなんて)

アリサちゃんの話によると、男子の間でシャルちゃんは“サッカー女帝”と言われているらしく、そのシャルちゃんの前では格好悪いプレイは出来ない、らしい。
試合終了のホイッスルが響き渡る。今日の試合は翠屋FCの圧勝でした。その後、翠屋で昼食を終えた私たちは解散することになりました。でも私は1つミスをしました。サッカーチームに所属する男の子の1人が、“ジュエルシード”らしき物を持っていたように見えたことに。
それが本物だという確証もなく気の所為だと思い込み放っておいたのです。そして発動するする“ジュエルシード”。暴走する大きな樹。ユーノ君は、人間が発動させたんだ、と言いました。

「・・・っ! やっぱり、あの時の子が持ってたんだ」

私、気付いていたはずなのに・・・こんなことになる前に止められたかもしれないのに。後悔の念でいっぱいになる。どうして追いかけなかったんだろう。どうして確認しなかったんだろう。

「後悔も反省もあとにしなさいっ! ユーノ、どうすればいい?」

「あ、うん。封印するには原因となっているところまで接近しないとダメなんだ。でも、これだけの範囲に広まっちゃっていると、どうすればいいか・・・。難しいよ、これって」

「そう・・・。探査術式が使えればいいんだけど・・・」

ユーノ君とシャルちゃんの会話を聞いた私は「私がやる」そう買って出た。するとユーノ君は「ちょっとなのは、それは――」慌てたけど、「ユーノ」シャルちゃんがユーノ君の言葉を遮った。

「手があるのね?」

「・・・うん、大丈夫。任せて」

「・・・判ったわ。信じるわね。ユーノ、ここはなのはに任せましょう」

「・・・なのは、無理はダメだよ」

「大丈夫だよ、ユーノ君」

結果として私は“ジュエルシード”を封印できました。けど、みんなにいっぱい迷惑をかけた。それがすごく辛い。

「なのは、今日のことを忘れちゃダメよ。今回の失敗を反省して繰り返さないようにするためには、ね。・・・なのは。確かにあなたは失敗したけど、でも早期発見による被害拡大は防げた。それだけでも大したものよ」

「そ、そうだよ、なのは。被害が拡がる前に封印できたんだ。それだけでもすごいことだよ!」

「うん、ありがとうシャルちゃん、ユーノ君」

2人の言葉に心が少し軽くなりました。同じ失敗は起こさない、それが今日の教訓でした。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

なのはが見逃してしまった“ジュエルシード”による大樹暴走から数日が経過した今日、すずかに月村邸へと招待されたことで、私となのはは朝から騒々しい。

「なのは~! 早くしないとバスの時間に間に合わないわよ~!」

「なのは、まだか?」

「う~ん、ごめ~ん、もうちょっと~」

私と恭也兄さんがなのはに向けて声を掛ける。するとユーノを抱いていた美由紀姉さんが話しかけてきた。

「あれ? 今日はどっかお出かけ?」

「私となのはは、すずかからお茶会に誘ってもらっているので月村家へ。恭也兄さんには付き添いとして一緒に行くつもりなんですけど・・・」

「そうなんだ。ふ~ん、それで恭ちゃんは忍さんに会う、と」

美由希姉さんがニヤニヤと恭也兄さんを見る。私は美由希姉さんの言葉の中に知らない人名が出てきたのが気になったから聞いてみることにした。

「あの、忍さんって誰ですか?」

「うん? シャルちゃん、この前月村家に行ったとき会わなかった? なら教えてあげる。月村忍さんといって、すずかちゃんのお姉さん。そして恭ちゃんの彼女さんなんだよ♪」

「おい、美由希」

恭也兄さんが少し困った顔で美由希姉さんの名前を呼ぶ。それにしてもなるほど、恭也兄さんの恋人ですか、そうですか。カッコいい恭也兄さんの恋人なら、それは美人な女性なんでしょうね。会うのが楽しみだわ。

「お待たせ~!」

「遅いわよ、なのは」

「にゃはは、ごめんね~」

「じゃあ行くか、2人とも。バスの時間ギリギリだからな」

「おいで、ユーノ君」

なのはがユーノを呼ぶと、ユーノは美由希姉さんの腕の中から飛び降りてなのはの体を伝って肩へと登る。

「それじゃ、いってらっしゃい。恭ちゃん、なのは、シャルちゃん」

「ああ」

「「いってきます!」」

こうして私たちは月村邸へと向かう。バスに揺られて数十分。私となのは、そして恭也兄さんと一緒に月村家邸へと到着。私たちをエントランスで待っていてくれたノエルさんに、すずかと、一足先に来ているらしいアリサの元へと案内してもらった。
辿り着いたのは庭に直接出れる応接室だ。部屋に置かれているテーブルには3人。すずかとアリサ、そしてもう1人。あと、すずかの後ろに控えているメイド服姿の女の子。初見で察してしまう。あの子、絶対にドジっ娘だわ。

「あ、なのはちゃん、シャルちゃん、恭也さん。いらっしゃい♪」

すずかが私たちの名前を呼んで出迎えてくれる。そんなすずかに「お招きありがとう」と、私たちは挨拶してから椅子へと腰かける。

「なのはちゃん、いらっしゃい。そちらの子には初めまして。私はファリン・K・エーアリヒカイトです。すずかちゃんの専属メイドをしてます」

「初めまして。シャルロッテ・フライハイトです。シャルと呼んでください」

ファリン(さん付けはちょっとね~)の自己紹介に、私も応じる。

「あ、この子がすずかの言っていた新しいお友達ね。初めまして、月村忍です。すずかのお姉ちゃんです。よろしくね、シャルちゃん」

「はい、よろしくお願いします、忍さん」

あぁ、やっぱりこの女性が、すずかの姉だった。とても綺麗な女性で、理知的な女性に見える。

「お茶をご用意いたしましょう。何がよろしいですか?」

タイミングを見計らっていたのか、ノエルさんがお茶の要望を聞いてきてくれた。まずはなのはと恭也兄さんが答えるのだけれど、男性である恭也兄さんは「任せるよ」と、まだ幼いなのはも「あ、私もお任せします」と、紅茶の種類にはあまり詳しくようで、2人はノエルさんに任せることにした。

「シャルお嬢様は?」

「私はローズヒップティーでお願い出来ますか?」

即答。するとなのはが「すごい。シャルちゃんって、どこかのお嬢様みたい」なんて言ってきたわ。あながち間違いでもなし。生前は侯爵家の次女だったのだし。まぁ、紅茶の知識なんてものは“テスタメント”となってから取り込んだものだけど。

「かしこまりました。ファリン」

「はい了解です、お姉さま」

私たちの要望にも応えて、ノエルさんはファリンと一緒にお茶の準備に向かった。そして「それじゃあ、みんなはゆっくりしていってね♪」忍さんは、恭也兄さんを連れて部屋を後にした。やっぱり恋人なのだから、2人きりになりたいわよね。そんなことを考えていると、アリサが声を掛けてきた。

「ねえ、シャル。あんたの注文した紅茶、即答だったけど。好きなやつなの?」

「それもあるけれど。目を付けてるのは効能の方ね。肌の新陳代謝促進、美肌・美白効果、免疫力アップによる風邪や感染予防・健康促進などなどなのよ」

「へぇ。あたし、味とかで決めてたけど、そういうのを考えて決めるのも良いかもね」

「別に味で決めてもいいんじゃないかしら。まだ焦るほど歳を取っていないのだし」

まだ10歳にも満たないなのは達。今から気に掛ける程じゃないわ。私の場合もそうだけど、知識があるのだから利用しない手はないのよね。いつ契約が終わって消えるのか判らないけど、消えるまでは人生を楽しみたいわ。

それから私たちはお茶会を始め、私はアリサとすずかから、なのはについて話を聞いている。どうやら今回のお茶会の目的は、近頃、元気がないなのはが抱えているであろう悩みを相談してもらえるようにするためのようね。
なのはは2人の気遣いで目が潤んでいる。うんうん、良いわね、女の友情。だというのに、そんな良い雰囲気をぶち壊すのは、猫に追い駆けられているユーノ。それにしてもこの家には猫が多い。あっちを見てもこっちを見ても猫、猫、猫。

(猫はどちちかというと好きだけれど、数が多ければいいってものじゃないわよね)

ユーノが追い駆けられるだけなら大して問題は無いのだけど、お約束というか何というか、ファリンがティーソーサーの載ったトレイを持って現れる。この先に起こると思われる被害を阻止するべく、私はユーノを抱え上げる。

「ふぅ、大丈夫? ユーノ」

「キューキュー『ありがとう、シャル! 本当に助かったよ!』」

怖かったわね、よしよし。それから場所を屋外へと移し、お茶会を続けた。屋外に移ってしばらくの後、私は“ジュエルシード”の気配を感じた。なのはに『ジュエルシードの魔力ね』と、念話で伝える。

『うん、すぐ近くだ』

『どうする? なのは、シャル』

どうする?って。すずかとアリサが居る今、どうやってこの場を離れて“ジュエルシード”を封印しに行けばいいのかしらね。2人揃って席を外す何か良い方法はないかを考え、1つの案が浮かんだ。

『ユーノ、森の方へ走って。私たちはそれを追い駆ける』

『あ、うん、判った。行くよ!』

私の提案をすぐさま受け入れたユーノが森の方へと走りだした。

「あらら、ユーノどうかしたの?」

「えっと、何か見つけたのかも。ちょっと探してくるね」

「一緒に行こうか?」

ユーノを探すというのを口実にして“ジュエルシード”の封印へと向かうために、2人にはここに居てもらわなければならない。

「私も一緒に行くから大丈夫。2人はここで待っててちょうだい」

私が同行することで、アリサとすずかを留まらせた。変に感付かれないためにも早々に終わらせないとね。森へと入った途端、“ジュエルシード”の発動を感じた。さすがにこのような場所でも魔法を使うと、アリサ達に気づかれる可能性があるため、ユーノに結界を張らせた。

(それにしても、この結界という魔法はなかなかのものよね・・・)

現実世界と結界内の時間進行をズラす。私たちの魔術においても結界と呼ばれる術式はあったけれど、これほどの効果を持つのはそうそうなかった。たとえあったとしても、結界術式を使えるのは結界王アリスとか大魔術師ぐらいかしらね。そもそも戦時中のため、こういうのはあまり必要のない術式でもあったわ。

「結界展開、完了だよ」

「よし。早速探索開始よ」

「うんっ!」

結界が完成したのが判った途端、私たちは奥から光が広がったのを確認した。そして光の中から現れたのは、大きくなった・・・可愛らしい仔猫だった。その様に私たちは口を半開きにして、仔猫を見上げていた。

「あれは・・・?」

「たぶん、あの猫の大きくなりたいって思いが正しく叶えられたんじゃないかと・・・思うんだけど・・・」

「大きく、ねぇ。・・・ジュエルシードの願いの叶え方ってどこかずれてる気がするわね」

私たち3人は呆れ果ててしまっていた。だって何か馬鹿馬鹿しいから仕方がない。

「さ、呆れるのはこれくらいにして、さっさと終わらせるわよ。こんなのがいたら大変な騒ぎになるから」

「そ、そうだね。すずかちゃんも困るだろうし、早く終わらせよう」

なのはが“レイジングハート”を起動させようとした瞬間、私たちの後方から仔猫へと向けて金色に輝く攻撃が加えられた。

「なっ、魔法の光!?」

「つまり、他の魔導師というわけね。なのは!」

「あ、うん! お願い、レイジングハート!」

変身を終えたなのはは猫の背を目指し飛び出し、その背に降り立った後はなお続く攻撃から猫をラウンドシールドという防御魔法で守る。すると敵の魔導師は猫の足元への攻撃に変更、バランスを崩させ転倒させた。上手い手だわ。
私は念のために“キルシュブリューテ”を具現化させて、地面に降り立ったなのはの横へと並んだ。そこに現れたのは、長い金髪をツインテールにした、黒衣を纏った少女だった。その少女の顔を見て、真っ先にある少女の姿が脳裏を過ぎった。だけど、そんなはずはないと振り払う。


「同系の魔導師・・・ロストロギアの探索者か?」


あまり感情の感じられない声で問うてくる少女。その所為かは判らないけれど、なのはが少し怯えている。それに彼女を見る限り、立ち振る舞いからして戦闘を意識した鍛え方をしている。今のなのはではまず勝てない相手でしょうね。

「間違いない、僕と同じ世界の住人だ。それにこの子、ジュエルシードの正体を知っている」

「いきなりの攻撃なんてあまり感心できないわね。ねぇ、何が目的? 教えてほしいのだけど・・・」

「その必要はない」

冷たくあしらわれる。当然かしらね。少しでも情報がほしいのだけど、話し合いを最初から受けるなら攻撃なんてしないはずだもの。

「なら、力づくで吐かせましょうか? なのは、サポートお願い」

「え? あ、う、うん」

1人でも十分だろうけど、なのはにも実戦を体感してもらい、力を持つ者としての自覚を与えておく必要があるわ。

「さぁ、始めましょうか。招かれざるお客様?」

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

私はシャルちゃんに言われてサポートをしている。正直あの女の子に攻撃するなんて嫌だけど、ユーノ君と約束したんだ。“ジュエルシード”を全部集めるって。だからごめんなさい、名前も判らない女の子。
シャルちゃんがあの子を誘導したところへ、私は魔力弾ディバインシューターを放つ。女の子はすごい速さで避けながら、大きな鎌で魔力弾を迎撃して、シャルちゃんに電撃の槍を撃った。

「うん、悪くないわね」

4発の電撃の槍を刀で斬り終えたシャルちゃんはあの子に近付いて、「これはどう?」って斬りかかる。あの子はスッと速く後ろに下がって避けて、すぐにくるっと回転して鎌を振るった。シャルちゃんはその一撃を刀で受け止め、空いてる左手で女の子を捕まえようとするけど、あの子はまた後ろに下がった。

「強い・・・。なら、フォトンランサー、ファイア!」

「おっと。結構な実力を備えているわ。師は腕のある魔導師のようね」

シャルちゃんが感心しながらも襲い来る攻撃を切り裂いていく。女の子はシャルちゃんの強さが判ったのか、攻撃の手数で決めに掛かってきた。それでもシャルちゃんにはたった1つも攻撃が通らない。焦り始めたんだと思う。だから私たちへの警戒が一切なくなってしまっていた。

「これで終わりだよっ・・・!」

――チェーンバインド――

「しま・・・っ!」

ユーノ君が鎖の形をしたバインドであの子を捕える。シャルちゃんは圧倒的だった。あれだけ動いて汗ひとつ掻いてない。
こうしてこの戦いは、いとも容易く終わりを迎えた。捕まえた女の子へと歩き出したシャルちゃんに向かって空から何かが落ちてきて、「っく・・・!」その衝撃でシャルちゃんが木の葉のように宙を舞った。

「シャルちゃん!?」

「シャル!?」

だけど私とユーノ君の心配は杞憂だったようで、シャルちゃんは「伏兵が居たのね」綺麗に着地した。

「大丈夫かい、フェイト?」

知らない誰かの声が聞こえる。晴れてきた土煙の向こうには大きな犬・・・ううん、狼さんがあの子を背に乗せていた。そしてもう1人。全身黒い服、黒いフード付きのマント、黒い仮面をしている子だ。その子はあの女の子を守るようにシャルちゃんとの間に立っていた。 
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