| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Epos3八神家の日常~Happy Birthday dear…~

 
前書き
むぅ。1万文字未満を意識してしまうと、グダることが判明。まだまだ修行不足ですね。一層精進しなければ。 

 
†††Sideはやて†††

目覚まし時計が鳴る前にスイッチを押して止める。文字盤を見て時刻を確認。目覚まし機能が動く6時30分の10秒前。うん、素晴らしいタイミングや。わたしの隣で「すぅ・・すぅ・・・」小さな寝息を立てて眠っとるヴィータを見る。夢やない。起こさへんように気を付けながら頭を撫でてみる。柔らかな髪の毛や。

「ん・・・」

「おっと。起こしたら可哀想やな」

もぞもぞ寝返りを打ったことで慌てて手を引っ込める。起こさせへんように気を付けてベッドから車椅子に移る。服を着替えて部屋から出て、リビングを通って洗面台へ。玄関まで来たところで「おはようございます、我が主」声を掛けられてちょうビックリ。声の方に振り向いて見れば、大きな青い「わんちゃん!」が階段から降りて来てた。その大きなわんちゃんからは「狼です、我が主」そんな聞き覚えのある声が。

「もしかして・・ザフィーラか・・・?」

「はい。この姿でお目に掛けるのは初めてです。我は盾の守護獣。これが我の本来の姿です」

わたしのところまで降りて来て寄り添ってくれたザフィーラ。そっか、狼さんやから耳と尻尾があったんやな。疑問が1つ解けたわ。そんなザフィーラに「触ってもええか?」って訊いてみる。ザフィーラは「どうぞお好きなように」って快諾してくれた。
お言葉に甘えてっと。フカフカな毛並みを撫でる。うわぁ、めっちゃ嬉しい。わんちゃんを飼うの夢やったから。まぁザフィーラは狼さんやけど。ザフィーラの毛並みを十分堪能して、「ありがとう、ザフィーラ」目的やった洗面所へ向かう。顔を洗って歯を磨いて、「よしっ」今日もバッチリや。と、鏡にルシル君の姿が映り込んだ。「おはよう、はやて。と・・・ザフィーラ」ってルシル君がわたしの後ろに控えてるザフィーラの顔を覗き込んだ。

「おはよう、ルシル君。そうや。この狼さん、ザフィーラなんよ」

「うむ」

ルシル君が顔を洗い終わるんをザフィーラを撫でながら待つ。そんでルシル君と一緒にキッチンへ。腕に縒りを掛けて朝ご飯を作らんとな。卵焼き、アスパラのベーコン巻き、焼き鮭、菜の花のおひたし、お味噌汁をルシル君と連携して作ってく。でも「和食やけど、みんな喜んでくれるかなぁ?」それが心配や。そやけどルシル君もザフィーラもそんなんは杞憂やって言ってくれた。

「いやいや。ウチに来てから初めての食事やもん。家主として美味しいもん食べさせてあげたいんよ。もちろんこれからずっと美味しいもんを一緒に食べることになるけどな♪」

ふと、リビングの入り口からわたしらを見てる「あ、シグナム、シャマル♪」に気付いた。なんや起きてたんならもっと早く声かけてくれても良かったのに。シグナムやシャマルとも朝の挨拶を交わして、ルシル君も「おはよう2人とも。まだ寝ていても良かったのに」って挨拶。2人にはテーブルに着いて待ってもらうとして。ルシル君と声掛けをしながら朝食づくりのラストスパートに入る。

「これでよし、っと。ルシル君、そっちはどないや?」

「こっちも終わったよ」

お互いに作ったおかずを確認。そして時刻を確認。7時半。ちょうどええ頃合いやな。

「ちょお気が引けるけど、そろそろヴィータを起こさなアカンなぁ」

「では私が起こしに行ってきます。シャマル。お前は主はやてとルシリオンの手伝いを」

「判ったわ」

席から立ってわたしの部屋に向かうシグナムに「ありがとう、シグナム」お礼を言って、「何かお手伝いすることがあれば言って下さい」そう言ってくれたシャマルにはお味噌汁をよそうのをお願いする。シャマルは「はい。お味噌汁に卵焼き。懐かしい香りです♪」お椀によそいながらそんなことを言うた。異世界にもお味噌汁があるんか訊いてみる。

「かつての主、オーディンさんに作ってもらったことがあるんです、お味噌汁。あと卵焼き、私の大好物なんですよ」

「オーディンさんって――」

「そのことなんだけどはやて。オーディンってどうやら俺のご先祖様だったようなんだ。俺とそのオーディンって顔立ちが瓜二つらしいんだ。な? シャマル」

「え?・・・・・・あ、はい。えっと、ルシル君の言う通りです」

オーディンさんの疑問はこれで晴れた。でもそれって「まるで運命やなぁ」ルシル君のご先祖様と同じ、“闇の書”の主になったわたし。そしてルシル君と一緒に暮らしてる。不思議なご縁や。とゆうかちょう待って。「何でルシル君がそんなこと知っとるん?」わたしとルシル君が別れた後、こっそり会って話さな知り得へんことやろ。ジト目でルシル君を見詰めると、

「えっと・・・実は・・・『こういうわけなんだ』」

「ふわっ!?」

ビックリ。頭の中に直接ルシル君の声がした。

『思念通話っていう魔法の1つなんだ』

『闇の書が起動したことではやてちゃんも魔導師に目覚めちゃいましたから。思念通話くらいなら出来ますよ』

わたしがルシル君やみんなみたいに魔法使い――やなくて魔導師に・・・。ゾワッと全身に鳥肌が立った。ルシル君と同じ目線に立てる。それが嬉しすぎて。すぐに「どうやったら出来るん!?」みんなに尋ねる。ルシル君たちは顔を見合わせて、「じゃあ――」思念通話のやり方を教えてくれた。届けたい人のこと、心の中で伝えたいことを思い描く、と。目を閉じて、ルシル君とシャマルに目掛けて『こ、こうか?』届けっ。

『そうそう。その調子だ』

『上手ですよ、はやてちゃん』

『ホンマに? やった♪』

テーレッテレー♪ 八神はやては思念通話を覚えた♪ これでどんな時でもみんなとお話し出来るってわけやな。ルシル君たちとそんな話をしとると、「おはよ~」ヴィータがよたよたとシグナムに背中を押されるような形で歩いて来た。う~ん、無理やり起こされた感や。シグナムも「まったく」って呆れとるし。とりあえず「おはようさんや、ヴィータ。よう眠れた?」って挨拶、そんで質問。

「むぅ・・・よく眠れたぁ。久しぶりにフカフカの寝台だったし、その、はやてと一緒でぬくぬくだったから」

ちょう照れてる「ヴィータっ❤」の側に移動して、ぎゅうって抱きしめる。もうアカン。可愛すぎや、ヴィータ。そんなこんなで朝ご飯。みんなでテーブルに着く。「うわっ、コレ卵焼き! それに味噌汁! すげぇっ、めっちゃ久しぶりだ!」目を輝かせて興奮してるヴィータには笑みを零してまう。

「喜んでもらえて何よりや♪」

みんなの嬉しそうな笑顔を見ることが出来て、わたしの方が嬉しいわ。でも「ザフィーラ。あんな、ホンマにそれでええの?」狼さん形態のザフィーラはテーブルには着かんと床に伏せて、お皿に盛ったご飯とおかずを食べることに。正しくペットのわんちゃん。
ヴィータが起きて来る前にザフィーラにお願いされた。狼さんが本当の姿やから、そうゆう扱いでも問題あらへんって。そやから「構いません」って変わらへん答えしか返って来ぇへん。

「いいんだよ、はやて。ザフィーラはあんまし人間形態で居ることないし」

「そうねぇ。ザフィーラがそれで良いと言うのだから、はやてちゃん、気にしないであげて」

ヴィータとシャマルもそう言うてるし。ザフィーラもそれで良いらしいし。まぁええか。

「それじゃみんな、手を合わせて」

ルシル君の声掛けに合わせてパンッと手を合わせる。みんなも手を合わせて「いただきます!」元気よく一緒に挨拶。まずはみんなの反応を確かめる為に、ルシル君と一緒に料理を口に運ぶのを遅らせる。

「美味っ!」

「美味しいっ♪」

「・・・うむ。主はやて、ルシリオン。とても美味しいです」

「ええ。実に美味です」

「ホンマに!? 嬉しいわ♪ な? ルシル君♪」

「ああ。作り手冥利に尽きるというものだな」

みんなから料理の大絶賛を受けて、わたしとルシル君はニコニコや。わたしとルシル君も食べ始める。それにしても「みんな、お箸使うの上手やなぁ」お箸の持ち方も扱い方も上手や。みんなからの答えはオーディンさんに教わったってものやった。
そして話は昔の主のオーディンさんのことになった。オーディンさんは、わたしの考えとまったく同じ考えを持ってた人やった。みんなを従者やなくて家族として受け入れた。
みんなの顔を見とればよう判る。ルシル君のご先祖様のオーディンさんは、すごくええ人やったってことが。うん。話を聴いたらもっと強く思えるようになった。オーディンさんの夢、わたしが引き継ぐ。守護騎士のみんなをわたしが、ルシル君と一緒に幸せにしてみせる。

「はぁ。美味かったぁ。もう食べられねぇ~」

「もう。ヴィータちゃん。後片付けもしっかりしないとダメでしょ」

食べ終えた食器の片付けをみんなでしてる中、ヴィータだけは椅子に座ったままげっぷを出してる。シグナムに「はしたないぞ、ヴィータ」って怒られるけど、「出るもんは出るんだ、しゃあねぇだろ」ってヴィータは反論。

「まぁ生理現象やしなぁ。ヴィータの言う通りしゃあないよ。それに手伝いはせんでええよ、シグナムもシャマルも。みんな、ゆっくりしとってな」

「いいえ。こうして家事のお手伝いが出来ることがとっても嬉しいんです♪」

「シャマルの言う通りです。私もこういったお手伝いが出来るのは嬉しいです」

2人がそう微笑んでくれたから、「ん。それじゃお願いや♪」一緒に後片付け。シグナムとシャマルが洗ってくれた食器を、わたしとルシル君で食器拭きタオルで拭いてく。食器の後片付けも終わって、みんなをリビングのソファで休ませてからわたしとルシル君は洗濯物を済ます。で、わたしは洗濯済みの自分の衣服が入った籠を抱えながら、いま自分の服を洗っとる洗濯機を眺めるルシル君に話を切り出す。

「ルシル君。今日な、みんなの服を買いに行こうって思うんや。そやから今日の授業はその・・・」

今のみんなの格好はアノ黒い薄着。ルシル君が着せたパジャマは魔法で創られたモンやからずっとは着せてられへん。とゆうわけで、みんなの生活に必要なもんを買い揃えたいって思ったわけや。

「俺も賛成だよ。服だけじゃなくて日用品も揃えないとな」

ルシル君からも賛成を得た。この事をみんなに伝えやな。洗濯物をシグナムとシャマルとヴィータに手伝ってもらって庭に干す中、「今日はみんなでお出掛けやよ」今日の予定を伝える。

「判りました。戦場へ赴くのですね。護衛はお任せください」

「ちゃうよ。そもそもこの世界も国も街も、そんな危険なところやないから」

シグナムは物騒や。ヴィータにも「これだから戦闘直結思考は」って窘められてるし。そしてシグナムは「む? それではまるで私が戦しか考えていないようではないか」不満そうやし。

「みんなの服を買いに行くんよ。言うたやろ? みんなの衣食住を管理するのは家主であるわたしの務め。いつまでもそんな薄着にさせておくわけにはいかんからな。もちろん遠慮なしやよ♪」

「服を・・・。ありがとうございます、主はやて」

「ありがとうございますっ、とっても嬉しいですっ♪」

「はやて、ありがとうっ♪」

シグナム達は喜んでくれてるな、よしっ。じゃあ問題は「ザフィーラやけど・・・」服は着てくれるやろか。ヴィータは「要らないと思う」、シグナムは「要りませんね」、シャマルは「はい、要らないと思います」ってゆう返答やった。

「う~ん。一応本人に訊いてみようか」

とゆうわけで訊いてみたんやけど「お心遣い、感謝します。ですが我はこの姿で居ることが多いゆえ」ってやっぱり断られてしもた。じゃあ衣服は3人分やな。さてと。買い物に行く前にやっておかなアカンことが1つある。シグナムとシャマル、ヴィータをわたしの部屋に入れる。

「ルシル君、ザフィーラっ。わたしの部屋、ちょう出入り禁止なっ」

掃除を任せてるルシル君とザフィーラに伝えておく。これからシグナムとシャマルには裸になってもらわなアカンからな。お風呂場の方から「判った!」「判りました」2人の了承の声。これで間違って部屋に入って来るってことは無くなったな。
机の棚から「まずはシグナムとシャマルのサイズを測らせてもらうな」メジャーを取り出す。で、シグナムとシャマルのスリーサイズを測ったんやけど・・・。やっぱ凄かったわ、見た目通りに。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

「いってきま~すっ!」

はやてのそんな挨拶に倣ってシグナム達も「いってきます」と挨拶。それだけなのに嬉しいのかヴィータとシャマルは笑顔。シグナムとザフィーラもハッキリと顔には出さないが嬉しそうだ。俺と別れてからこう言った当たり前をすることが無かったようだ。前回の起動は11年前。現代だが、転生先や主との関係によってはそうなるか。

「それじゃ行こか♪」

創世結界・“神々の宝庫ブレイザブリク”から見繕った外出用の服(先の次元世界で彼女たちが着ていた衣類と同じデザイン)をシグナム達に着せ、俺たちはみんなの日用品を揃えるために買い物に出かけた。
バスに数十分と揺られて到着した都市部のデパート。しかしやはり注目を浴びるな。特にザフィーラが。耳と尾は隠してある。が、メンバーが悪い。そして俺の外見も悪い。女5人(内3人が10歳以下の子供)の中で男1人という構図になってしまう。本当は俺を含めて男2人なのに、だ。
しかもザフィーラの体格や性格にも問題あり。筋骨隆々。寡黙。防衛の騎士らしくメンバーの最後尾を歩いている。見る人が見れば、女の子たちを静かに追っかけている変質者。現に・・・

「ちょっとお兄さん。お話を聴かせてもらってもいいかな?」

「む? 何用だ。我は――」

「わぁわぁ! 警備員さん、この人はウチの身内です!」

デパートに入ってから1分と経たずに警備員に声を掛けられた。俺たちは警備員をなんとか説き伏せ、解放されることに。で、ザフィーラの目立ちようをどうにかするための解決策として。

「うわぁ、マジでオーディンだな」

「オーディンさんもこんな姿やったんやね~」

トイレの中で大人へと変身して出て来た俺の周りをヴィータがくるくると動き回る。そしてシャマルは何を思ったのか俺の右手を取り、トンッと肩に額を当てて来た。僅かに震えるシャマルの手に空いている左手を重ねて「シャマル?」と声を掛ける。すると「きゃっ? ごめんなさいっ」慌てて手を放し、頭を下げて謝ってきた。

「そこまで必死に謝られると俺が悪いことしたみたいなんだけど・・・」

他のお客さんから「やだ、痴話げんか?」「女の子に頭下げさせるとは感心せんなぁ」「別れろ」などなど冷たいお言葉と視線が。とりあえずそんな視線から逃れるために場所を変える。

「さて。警備員に目を付けられないために、歩く位置を決めようと思う」

俺の独断だが、俺たち八神家の家主であるはやてが中央。車椅子を押すのがヴィータ。ヴィータの後ろにシグナムとシャマルが横に並ぶ。そして問題の男であるザフィーラと俺だが。男が女性の後について歩くのが悪い。となれば。

「俺とザフィーラは2人のどちらかの隣を歩く。横を歩いていれば知人友人として見られるだろう」

隣を歩いていても声を掛けられた場合は自分たちの外見やその人の仕事熱心さを理由に諦めるほかない。位置としてはシグナムの右隣をザフィーラ。シャマルの強い要望で俺がシャマルの左隣、となった。ご機嫌なシャマルに「では行きましょ、はやてちゃん♪」と促されたはやては「そやな」と頷き、俺たちを率いて洋服店へと向かう。そうして洋服店に着き、はやては3人からのリクエストや自分の意見を交えて3人の衣服を見繕い始めた。

「シグナムもシャマルもスタイルすごく良えし、ヴィータも可愛ええから、選びがいがあるわ~♪」

そんな彼女たちを眺めている俺とザフィーラ。時折こちらに振り向いて、服を胸の高さまで掲げて見せるはやて達に「似合ってるよ」と微笑み返し。やっぱり同性と買い物することが嬉しいようだ。姉のようなシグナムやシャマル、妹のようなヴィータが出来て、はやての笑顔は途切れることを知らない。

「シュリエルって子にも早く会いたいなぁ~。こうゆう風に一緒に買い物してみたいわ~」

「っ、そ、そうですね。あの娘ったらお寝坊さんですから」

「いずれ起きますよ、主はやて」

「そっかぁ。もう少しの辛抱やな」

しょんぼりしたはやてだったが、すぐに笑顔になった。そんなはやてを見て俺は後悔中。俺は失敗した。はやての優しさを思えば、シュリエルの事は黙っておくべきだった。シュリエルに会いたいという思いと、シュリエルを起動するのに必要な魔力を集めるために人に迷惑を掛けたくないという思い。
家族を選ぶか人への迷惑を選ぶかの二択。その葛藤を抱かせないために俺は、シグナム達にシュリエルの起動条件をはやてに隠すようお願いした。シグナム達もそれでなんとか納得してくれた。

「――じゃあ、服はこれくらいでええな♪」

「ありがとうございます、はやてちゃん。大事に着ますね♪」

「ありがと、はやてっ♪」

「ありがとうございます、主はやて」

3軒もはしごしてシグナム達の衣服を買い揃え、次は下着を買い揃えるためにランジェリーショップへ。そこは男子禁制が暗黙のルールだと俺は考えている。だから俺は「店の外で待ってる」と告げ立ち止まった。はやては「ごめんなぁ~」とみんなを連れて店内へ。
ああ、みんなを連れて。ザフィーラすらも連れて行った。あまりに自然な移動だったため止めることを忘れていた。はやて達もスルーしているし。しかしやはり、だ。早速、店内に居た他の女性客がギョッと目を見開いて、手にしている物を急いで隠す仕草を取る。

「ん?・・・ちょっ、ザフィーラ!?」

俺が呼び戻す前にはやてが周囲の異変からザフィーラの存在にようやく気付いた。あの図体で天然のステルス性能とか。自然体、恐るべし。ザフィーラは「どうしました?」と今の状況が解っていないようだ。

「あんなザフィーラ。男の人がここに入るん、あんま良おないんよ。そやからルシル君と一緒に外で待っとってな」

「しかし――」

「いいからザフィーラっ。ここは女の子のお店なのよっ」

「男は早く出てけっ」

「ザフィーラ。早々に去れ」

はやてからは困惑の目を向けられ、シグナム達には睨み付けられたザフィーラはたじろぎ始めた。しょうがなし。俺も店の中に入り、「ほら、出るぞ」ザフィーラの腕を引っ張って店外へ出る。

「解らぬ。使用済みならまだしも、新品かつ商品である下着を見られたところで何を恥じる?」

「いや・・・あー・・・なんだ。そういうものなんだって思うしかないんじゃないか・・・?」

微妙に納得いっていないザフィーラと共に店外のベンチに座り、はやて達が満足して戻って来るのを待つ。

「う~ん・・・。あっ。ザフィーラ、少し荷物番を任せる」

そんな空き時間を無駄にしない方法を思いつき、ザフィーラにそう告げる。当然「む? 何か用があるのか?」そう訊かれた。はやて達に聞かれることのないように『はやての誕生日プレゼントを買いに行くんだ』念話で答えておく。

『贈り物か? では我らも――』

『もうみんなからは貰ってるよ。家族。守護騎士みんなが、はやてにとっては最高の贈り物なんだ』

『・・・そうか』

黙ったザフィーラを置いて、近くの服飾店へ向かう。その店ではやてへのプレゼントを購入。急いでザフィーラの元へ戻る。はやて達が居ないことからまだ下着を選んでいるようだった。

「お待たせや~♪ って、あれ? ルシル君。その袋・・・」

はやては早速新たに増えている袋に気付いた。が、今は「秘密だ♪」言えないから答えない。「ええー」って文句を言うはやてだが、もう少し待ってほしい。そして下着類を揃えた後は日用品だ。歯ブラシやタオルやシャンプー等々。最初の警備員の呼び止め以降、大した問題もなく全ての買い物を済ませることが出来た。

「ちょうどええ時間やし、ここでお昼食べてこか」

「さんせー♪」

「ここは俺が奢るよ。好きなだけ食べていい、と普段なら言うけど、夕食はご馳走だから食べ過ぎないようにな」

というわけで、レストランで昼食タイム。商売と言うことでやはり美味いが、「はやてやルシルの方が美味いなぁ」と嬉しいことを言ってくれるヴィータ。そうは言うヴィータだったが、結局はアレも美味いコレも美味いと言いながらハンバーグセットを平らげていた。
こうして買い物も終わり、家に帰るためにバスに乗る。このバスの中で俺ははやて以外に念話を通し、あるお願いをした。シグナムとザフィーラは少々恥ずかしいようだが、ヴィータとシャマルは快く乗ってくれた。バスを降り、ザフィーラとふたり両腕に買い物袋を提げ、楽しそうにお喋りしているはやて達を眺めながら家路を歩く。

「(っと、帰る前に)はやて。ちょっと離れるな。すぐに戻るから」

「え? あー、うん」

「みんな。はやての事、少しの間頼んだよっ」

近くに在る小さな児童公園のトイレに入る。公園には人っ子一人居ないことは確認済み。これなら問題ないだろう。

「我が世界(うち)より来たれ、貴き英雄よ。・・・フェンリル」

トイレの中で“異界英雄エインヘリヤル”のフェンリルを召喚する。耳と尾を隠し、白のタートルネック・カットソー、デニムのサロペットワンピースといった格好だから職質はされないだろう。閉じられている目をスッと開けたフェンリルは「ひゃっ? ここ男性用のお手洗いじゃないですか馬鹿ッ!」そう怒鳴ってきた。
今さらだろうに。大戦に参戦する前は風呂だろうがトイレだろうがベッドだろうが、所構わず侵入して来たくせに。とりあえず顔を両手で覆い隠して「早く出ましょう~よ~」と恥ずかしがっているフェンリルを連れてトイレから出る。そしてフェンリルを召喚した理由を伝える。

「これから翠屋という喫茶店に行き、そこではやてのバースデーケーキを受け取って来てほしいんだ」

「はやてのケーキ? うん、いいよ。それでお礼は?」

即答してくれたが、その手伝いの報酬を求めてきた。報酬、ねぇ。じゃあ「パーティに参加してよし」と答えると、「いってきますッ!!」ビシッと敬礼した後、翠屋の場所を聴かずにダッシュで去って行った。ま、翠屋の場所は、翠屋を監視している俺の魔術、イシュリエルを辿ることで判るだろう。フェンリルを見送った後、俺ははやて達と合流。

「どこ行ってたん、ルシル君?」

「ちょっとフェンリルにお使いを頼んでいたんだ」

「フェンリルさんに? そっか」

「フェンリルって誰だ?」

ヴィータにそう訊かれ、

「俺の使い魔だよ。ザフィーラと同じ、狼と人の2つの形態を持っているんだ。夕食を一緒に食べることになるから、よろしく頼むよ」

フェンリルが使い魔であることや、今日の夕食を一緒にすることを伝えておく。シグナムが「使い魔。アンゲルスではないのか」と呟いたのが聞こえた。居るには居るが、アレらをこんなところでは召喚できない。
家に辿り着き、「ただいま~♪」元気よく挨拶して家に入っていくはやて達の後に続いて入り、ザフィーラと一緒にはやての部屋へ荷物を置きに行く。

「はーい。ルシル君もザフィーラもお疲れ様や。じゃあ、少しの間、立ち入り禁止な♪」

はやてに言われるままに部屋を出、ついでに夕食の準備をするためにキッチンへ移動。食材は昨日の内に買い込んだが、足りない物がある時の為に「我が手に携えしは確かなる幻想」“ブレイザブリク”の蔵にアクセスしておく。

「子供の誕生日にバーベキュー・・・は可愛げがないか」

昼食で肉を食ったしなぁ。そうだ。『はやて。夕食なんだけど、中華はどうだろう?』念話をはやてにだけ通す。

『ぅわっ? あ、あぁ、思念通話やね。これ、慣れてへんとビックリするな~。えっと、中華やね。わたし好きやから良えよ♪ 確か、石田先生も好きみたいなこと言うてたから問題ないはずや』

『そうか。良かった。じゃあ夕食は俺が作るから、はやては休むこと。もちろん拒否権はない。今日の主役だからな』

『ん~、そうか?・・・判った。楽しみにしてるな♪』

『ああ、任せてくれ』

念話を切る。よし。中華料理で決定だ。ベルカ時代でのシグナム達も喜んでくれていたし。そうと決まれば手間と時間の掛かる料理の仕込みを始めよう。
作る料理はチャーハン、中華おこわ、焼きそば、餃子、焼売、小龍包、エビチリ・エビマヨ、麻婆豆腐、スープ。あと、から揚げでも作るか。メニューを決め、手間がかかる料理の仕込みを始める。足りない食材を“ブレイザブリク”から取り出し、すぐに使わない物は冷蔵庫へ。

「たっだいま~♪」

家中に響き渡るハイテンションな挨拶。狼形態に戻って俺の側に伏せていたザフィーラが「誰だ?」と警戒して見せる。それに対し「俺の使い魔、フェンリルだ。気にしないでいい」と返し、下準備を続ける。ドタバタとリビングに入って来たフェンリルに「潰してないだろうな?」と問う。

「もちろんですともっ♪」

両手の間にある翠屋と書かれたケーキ箱。フェンリルはそっとテーブルに置き、箱を開けた。ショートケーキのホールが1台。形もケーキの表面に掛かれている英字のハッピーバースデーも崩れていない。俺が「良い仕事をしたなフェンリル」と満足げに頷くと、フェンリルはしゃがみ込んでテーブルに指を掛け、顔の上半分だけをテーブルの上に出し期待に満ちている上目使いで俺を見、耳をピコピコ、尻尾をフリフリと動かし始めた。

「なんだ?」

「んっ」

頭頂部を向けてくるフェンリル。とそこに「フェンリルさん、久しぶりや♪」はやてや新しい服を着たシグナム達が出て来た。俺がそっちに意識を傾けると、「あとちょっとで撫でてもらえたのに」と不満そうに呟くフェンリルだったが。

「うん、久しぶり、はやてっ。そしてはじめまして。マスター・ルシリオンの使い魔、フェンリルですっ」

すぐに笑顔を振りまいてシグナム達に自己紹介した。シグナム達もそれぞれ名を名乗り、バースデーケーキを受け取って来たフェンリルを労った。しょうがなしにフェンリルをしゃがみ込ませ「よしよし」頭を撫でてやる。それだけでコイツのテンションはうなぎ上りだった。
さてあとは、俺が料理を完成させ、石田先生が来たら誕生日パーティを始めるだけだ。ケーキを冷蔵庫にしまい、料理の下準備の続きに入る。と、「あの、私に手伝えること、ないかしら?」シャマルが訊いてきた。

「やめとけシャマル。お前、オーディンの時代から今まで料理なんてしてねぇだろ。ぜってぇ失敗するに決まってる」

「そうだな。お前もこちらで主はやてと共に洗濯物を取り入れる手伝いをするべきだ」

「うぅ。だって久々にお料理できると思ってぇ・・・」

しょんぼりするシャマルを見たはやてからの「ええよ。ルシル君。シャマルも手伝わせたって」直々の頼みに、「判った」と答える。今のシャマルの料理の腕を知るにもちょうどいい。シャマルには簡単かつ有名どころな和・洋・中の料理を教えた。それを憶えているかどうか。

「じゃあまずは、このエビの殻を剥いてくれ」

「はいっ♪」

エビチリ・エビマヨに使うエビの殻剥きを頼むと、シャマルは嬉しそうに返事をして一心不乱に向き始めた。俺は餃子や焼売、小龍包の餡作り。殻剥きの終わったシャマルに、餃子などの皮作りに入ってもらう。
これはシャマルには教えた事が無いため横から方法を教えながら、となる。俺の説明を一生懸命に聴き、皮作りに勤しむシャマル。そんなシャマルと一緒に作業を始めて小一時間。シャマルの料理はさほど落ちていなかったというのが判った。

「ルシル君。石田先生、急な宿直のお仕事が入ったって連絡が・・・」

別の料理の下準備も半ばに差し掛かった頃、はやてが残念そうにガックリと肩を落としながらそう伝えてくれた。みんなのことを紹介するって張り切っていたからな。ここで不参加は痛いな。

「寄ってもらう時間もないのか?」

「えっと・・・。5時からってことやけど」

17時からか。今から作れば間に合うな。となれば「はやて。石田先生を招待してくれ。大急ぎで夕食を作る」これしかないだろう。みんなの紹介は後日にすればいい。という考えも過ぎったが、はやての笑顔を曇らせるのだけは避けたい。彼女が生まれたこの祝いの日にだけは。
はやては「うんっ」と頷き、メールの返信を打ち始めた。俺は動きの効率をよくするために大人バージョンへ変身する。そんな俺を見て頬を僅かに赤らめているシャマルに「シャマル。チャーハン、作れるか?」と問う。

「え? あ、はいっ。大丈夫ですっ!」

チャーハン作りの準備を始めるシャマルを横目に、俺も残りの料理を並行して作り始めた。途中ではやての協力の申し出を受け、結局は主役のはやても調理に参加。そのおかげでサクサクッと終えることが出来た。完成した料理が冷めないように1皿1皿結界で包むと、ヴィータに「またオーディンみてぇなことやってんなぁ」と言われた。しょうがないだろ。何せ本人なんだからな。
俺――ルシリオンとオーディンを区別させるために、クローンだとか生体兵器だとかある種の真実を含めた嘘を吐いたんだが、外見を合わせると無意味になるようだ。とりあえず「料理は出来た。あとは石田先生が来るのを待つだけだ」と、一段落したところで変身を解いてふぅっと一息つく。

「なんや忘れとる気が・・・」

「忘れてるって何が?」

時刻が4時に差し掛かった時、はやてが唸りだした。ヴィータがそう訊くと、「ルシル君のことでな」と俺を見てきた。ヴィータとシャマルもそれに釣られ俺を見、洗い物と後片付けを終えてきたシグナムとフェンリルとザフィーラも俺に視線を向けてきた。俺も何があったかと考えてみる。ケーキ、料理、プレゼントも問題ない。クラッカーが無いのが問題か?

「ああああああッッ!!」

はやての大声に俺たち全員がビクッと肩を跳ねさせた。はやては勢いよく俺へと振り返り、「着替えやなアカンよっ、ルシルちゃんっ!」焦りながらそう言ってきた。ハッとする。「ルシルちゃん?」と首を傾げているみんなを横目に、「我が手に携えしは確かなる幻想」詠唱し、“英知の書庫アルヴィト”にアクセス。

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

ブラウスにリボンタイ、キュロットという衣服へと瞬時に変身。あと、髪を二房に分けて両耳下で結っておさげにする。この間、「何やってんだ?」「ルシル君? 急にどうしたの?」「何故女物に着替える?」などなど、当然の疑問を浴びせかけられた。フェンリルだけは「マスター可愛い❤」と抱きついてきた。俺がはやての家に世話になった時のことなど、こうして女装する羽目になった事情を説明する。

「なるほど。でも私たちが一緒に住むことになったのだし、もうその必要はないんじゃないかしら・・・」

「今さら実は男でした、なんて言えるわけがないだろ・・・」

「そうか? つうか、これからもずっと黙ってる方がまずいんじゃねぇのか?」

解ってる、解ってるともさ。実は男だったと告白するのは早い方が良いってことくらい。そうこうしている内にピンポーンとドアチャイムが。

「とりあえず俺の――いや、私のことは後、じゃなくて後よっ。全員、石田先生は魔法とは無関係な一般人! あなた達の出身は!?」

「「「「ドイツ」」」」

「よしっ。何か困ったことがあれば思念通話!」

「「「「ヤヴォール!」」」」

テーブルに置かれている大皿全ての結界を解き、はやてに「それじゃあ呼んでくる」と告げ俺は玄関に向かう。そして「どうぞ」と応え、「お邪魔します」石田先生を招き入れる。

「お招きありがとう、ルシルちゃん」

「いいえ。忙しい中お越しいただき、ありがとうございます」

石田先生を連れリビングへ。そこではシグナム達(ザフィーラは狼形態のまま)+フェンリルが横一列に並んで待ち構えていた。そして「はじめまして」と挨拶し、自己紹介をしていく。「はじめまして。石田幸恵です」石田先生も自己紹介。

「はい。はやてちゃん。誕生日プレゼント。喜んでもらえると嬉しいのだけど」

「ありがとうございます、石田先生♪ ささ。どうぞ~♪」

石田先生から受け取った小包を大事そうに抱え、ダイニングテーブルへと案内するはやて。石田先生は幾枚もの大皿に盛られた中華料理に「すごいっ」心底驚愕していた。そうして俺たちも席に着き、

「はやて」

「はやてちゃん」

「ある――コホン、はやて」

「はやて」

「はやてちゃん」

「はやて」

「「「「「「お誕生日おめでとうっ!」」」」」」

「おおきに、ありがとう!」

順にはやての名を呼び、祝いの言葉を告げる。はやては嬉しさからか若干涙目だが綺麗な笑顔を作った。さて。少し早目の夕食となるが、冷めないうちに頂こう。楽しい会話をしながらの誕生日パーティ。はやてもみんなもとても喜んでいる。そういう俺も心底楽しいと思えている。

「そう言えばゼフィランサスさんはいらっしゃらないのかしら?」

「「っ!」」

これにいち早く反応するのは俺とはやてだ。俺はすぐさま「姉は残念ながら仕事で、帰りは遅くなると」と答える。その間にはやてがみんなにゼフィランサスの正体を念話で伝える。すっかり失念していた。最近出番が無かったからな。

「そうなの。・・・あ、ごめんなさい。そろそろ行かないとダメみたい」

残念ながら石田先生はここで途中退席となる。俺たちは玄関まで石田先生を見送ることにした。靴に履き替えた石田先生は改めて最後まで付き合えないことを謝った。が、はやては「気にせんで下さい。十分祝ってもらいましたから」と返した。

「そう言ってもらえて助かるわ。・・・あの、みなさんはいつまで日本に滞在なさるのでしょうか?」

石田先生の問いに「みんな期限を決めてません。許される限り、はやてと一緒に居るつもりです」と俺が答え、シグナム達を見回す。

「ええ。これからも共に過ごすつもりです」

シグナムが代表してそう続けた。石田先生はそれで満足したのか「これからもはやてちゃんをお願いします」と一礼してから八神宅を後にした。そして俺たちはダイニングへと戻り食事を再開。話は石田先生の事。真っ先にシグナムが「良い方だった。どれだけ主はやてを思ってくれているか、話を聴いていて判った」と称賛。

「うん。わたしのこと良う考えてくれて、ずっとお世話になって来たんよ」

「はやてちゃんの病気、難しいものなんですか?」

「んんー、よう判らんらしいわ。原因不明の麻痺。治療法も今のところ無いみたいや」

「じゃあさ、シャマルに診てもらおうよ、はやて。コイツ、のんびりしてそうだけど医者としてはかなりの腕だと思うし」

「のんびりって・・・」

「そうですね。一度診てみましょう」

というわけで、シャマルがはやての脚を診るんだが。結局は「う~ん」悩むだけで終わった。そして今度は魔法による回復を試すってことになったが、「効いてないみたいね」徒労に終わった。当然だった。はやての麻痺は治らない。元凶である“夜天の書”からの侵食を止めなければ。みんながこの事実を知るのはもう少し後になる。みんなには悪いが、俺は口を噤ませてもらおう。

「ごめんなさい、はやてちゃん。お役に立てなくて」

「でもシャマルの魔法でも治せねぇなんて」

「ええよ。もう半分諦めとるし。それに、別にこのままでも問題あらへん。だってみんなが居てくれるからな」

「主はやて・・・」「はやてちゃん・・・」「はやて・・・」

笑顔のつもりだろうが、やはりそこには僅かな悲しみが混じり込んでいた。

「ささ。せっかくルシル君とシャマルが作ってくれたんや。冷めへんうちに食べよな」

はやては何度も何度も俺やシャマルが作った料理を「ホンマ美味しいわぁ♪」と褒めてくれた。そういうはやての作った麻婆豆腐(俺が教えた)も美味い。食事中にはどこかへ遊びに行く予定を立てたりし、楽しくお喋りをした。こうしてはやてを祝うパーティは終わり、そして・・・・

「さぁ、お待ちかね。フェンリル。バースデーケーキを」

「は~い♪」

フェンリルにバースデーケーキを持ってくるように指示。フェンリルは元気よく手を挙げて返事をし、トタトタと冷蔵庫へ。その間にはやてとヴィータ以外で空いた皿を流し台へ持って行く。それすら手伝おうとしたはやてには「主役はどっしりと」と言って制しておく。そしてケーキをテーブルに置いたフェンリルにろうそくを9本立て、火を灯すように伝える。

「了解♪」

――CEN(ケン)――

ルーンを使ってろうそくに火を灯したのを確認。テーブルへの戻り際に「明かりを消すよ」と確認を取ってからパチンとスイッチをOFF。さすがにまだ太陽が落ち切っていないため、真っ暗とはならない。ここは俺の出番だ。

――闇よ誘え(コード)汝の宵手(カムエル)――

窓を闇黒系魔力で創りだした触手で覆い隠し、夜と同じ状況へと変えた。これで室内を照らすのはろうそくの灯りだけとなった。

「ふわぁ、綺麗やな~♪」

「はい。幻想的です♪」

「ろうそくの火だけが灯りだと言うのに、とても温かいですね」

揺らめくろうそくの火に目を輝かせている少女組。ここで俺は『よし。じゃあ行くぞ』とはやて以外に念話を通す。みんなが頷くのを確認。「せーのっ」と俺が合図を出す。

「「「「「「ハッピーバースデー・トゥ・ユー♪ ハッピーバースデー・トゥ・ユー♫ ハッピーバースデー・ディア・はやて~♬ ハッピーバースデー・トゥ・ユー♪」」」」」」

みんなで歌い終える。目を丸くして驚いているはやてに、

「誕生日、おめでとうっ」

「主はやて。おめでとうございます」

「はやてっ。おめでとうっ!」

「はやてちゃん。お誕生日、おめでとうございますっ」

「おめでとうございます。主はやて」

「じゃあ私も。はやて、おめでとうねっ♪」

祝いの言葉を順に言っていく。はやては僅かに目の端に涙を浮かべて「ホンマにおおきに、ありがとうっ」満面の笑みを浮かべてくれた。

「じゃ、じゃあろうそくの火を消すな。ふぅーっ」

はやては1回ですべての火を消した。みんなが拍手する中、窓を覆っていたカムエルを解除し、俺は部屋の明かりを点けるために立ち上がってスイッチを押す。そして席に戻り、創り出した魔力剣でケーキを切り分ける。「お前やオーディン・・・、セインテストの魔法ってホント何でもアリだよな~」またもヴィータが呆れた。

「はいはい。なんとでも言ってくれ。では。本日最後のご馳走だ。いただきますっ」

翠屋のショートケーキの美味しさに頬を綻ばせているはやて、ヴィータ、シャマル、フェンリル。そんな彼女たちを微笑みながら見守る俺、シグナム、ザフィーラ。保護者的な立場だな。
そして楽しかった誕生日パーティは終わり夜も更けた。はやてとヴィータとシャマルを先に風呂に入れ、次にシグナム。最後に俺となる。そんなだから彼女が出て来るまでに「はやて」ドライヤーで髪を乾かし合っている3人の元へ。

「これ、プレゼント。気に入ってもらえると嬉しいんだけど」

買っておいたプレゼントの入ったビニール袋を手渡す。

「えっ? あ、この袋・・・! そうやったんやね。あの時増えてた袋はわたしの・・・。開けてもええか?」

すごく期待に満ちた目で見られ、かなりのプレッシャーだ。「どうぞ」と返し、内心ドキドキしながらはやての反応を見守る。ガサガサと袋から取り出し「おおっ、エプロンや!」俺のプレゼント、はやて用のエプロンを広げて見せた。桜色を基調とし、機能性重視のため装飾は無い。

「今使ってるのがダメになってからでも使ってくれたら良いな~、っと」

「ううん。明日から早速使わせてもらうな♪・・・おおきに、ありがとうルシル君っ」

「ああ。どういたしまして」

八神はやての運命の日は、こうして終わりを告げた。



 
 

 
後書き
サワッディー。
――そして文字数は1万5千を突破。もう少しで前後編基準へ突入するところでした。ガリガリ削った事で少々粗いかもしれません。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧