| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編
  第49話 血盟騎士団本部


~第55層 グランザム~


 此処、グランザムは 別名≪鉄の都≫とも言われている。
 他の街が大抵石造りなのに対して、街を形作る無数の巨大な尖塔。それは全て黒光りする鋼鉄で作られている。だからなのか、鍛冶や彫金が他の層に比べて比較的盛んだ。それで、プレイヤーの人口は多いが、街路樹の類は全く無い。
 自然に欠けるといったらそうだろう。つまり第一印象的は。

「……よくあるRPGでは、自然と決別した強国。だな。……故に他の領土を欲して、そして最終的には負けて滅ぶ。その自然と共に共存を選んだ国に。 まぁ、ファンタジーな世界だったら、の話だけど」

 リュウキはそう呟いていた。
 この街に来たのは少しばかり用があっただけでそれ以外で立ち寄る場所でもない。あまり、馴染めないといえば……そうだろう。鉄で出来ているせいか、寒くすら感じる気がするのだ。

「さて………」

 リュウキは、目の前にある、巨大な城を眺めた。
 そこは、KoB本部。
 そう血盟騎士団と呼ばれる、アインクラッド最大にして、最強のギルド本部の前に来ていた。来た理由は単純極まりない。
 
 ある人物に呼ばれたから。ある人物とは、此処のギルドリーダー。

 《ヒースクリフ》に。

 ヒースクリフ、この世界に置いて、最強のプレイヤーと謳われる。そして、そのカリスマ、それは己のギルドどころか、攻略ギルドほぼ全員の心を掌握しているほどだ。リュウキは初めの層こそは、積極的に誰も死なないようにと支えた。《ビーター》と罵られていたとしても、陰ながら判らない様に支えていた。
 そして、特にBOSSの攻略は、積極的に行っていた。ここでも、ビーターと呼ばれた為に、パーティを組む事は皆無だったが。素性を知っているキリト、そしてエギルやクライン、アスナ・レイナは快く歓迎してくれていたのだ。

 その内に、第三層から、ギルドを作ることが出来る。

 そこから、今のギルドで言う軍や聖龍連合、そしてKoB、《血盟騎士団》が生まれたのだ。安定したパラメーターを持つ者たちが増え、リュウキが手を出さなくとも捌ききるだけの実力者も増えてきたのだ。

 だからこそ、10層以上の攻略は、彼はそうは目立たなくなった。自分のしたい様に行動を取る事が出来たのだ。
キリト達もそうだが……中でもヒースクリフが一線を越えた強さだった。

 今では最強の男。生きる伝説。聖騎士等々の二つ名が巻き起こる。その数は片手では数え切れない。

「まあ……オレなら耐えられないな。そんな好奇な目で見られ続けるのは」

 リュウキは、ふぅ……とため息を1つしていた。

 そして、ヒースクリフ、彼の事を少し紹介しよう。

 その強さの源は、彼の持つ《ユニークスキル》の存在が一際大きく輝くだろう。

 その名は《神聖剣》。

 攻防自在の剣技。突出すべきはその防御力。リュウキも間近で《視た》事があるが、間違いなく絶大だと感じていた。だが。

「…………」

 拭えない違和感もあるのは確かだ。
 その違和感の正体。
 どういえば、良いのか言葉がまるで見つからないのだ。これは、リュウキにとって珍しい事の一つである。後何か……1つ欠片(ピース)が揃えば……しっくりくるものが見つかりそうなのも事実だった。

「まぁ……いいか。別に」

 リュウキ自身は自らの力が万能などとは思っていない。
 例え、たかがデジタルデータと思っていたとは言え、このSAOは最新のものだ。中々解析できないものもあるだろう。そして、何よりも ゲームの中からであれば、限界があるのも事実だった。システムコンソールでもあれば別なのだが。

 ……解析が簡単に出来るというのなら、この魂の牢獄から脱出する術も見出している、とも思える。

 それができない以上は、リュウキは積極的に事を起こそうとも思わなかった。そして暫くして

「お前は?」

 ギルドの一員だろうか、本部の扉の前に2名現れた。それぞれ、かなりのレアな装備だろう槍と剣。
それを交差させていた。それは、門番を彷彿とさせる動きだった。


「俺は、ここの団長に呼ばれたから来た。入るな、と言うなら無理にとは言わない、直ぐにでも帰ろう」


 リュウキは少々面倒くさそうにそう答えていた。
 まさに、RPGで言う、城に入る前の定番の門番と言う感じだ。こういう、イベントは大体同じようなもので、相手がNPCと違って、人間だから『面倒くさい』。
 そして、こうやって止められていたら呼び出しした本人が出てくるのも定番だ。

 リュウキがそう思っている内に、扉が開いた。

 どうやら、ベタな定番であるイベントが起きそうだ。

「だ……団長」

 現れたのがそう、ヒースクリフだった。足止めを喰らっている時、呼び出しをした本人がご登場するのも正に定番だ。

「私が呼んだのだ。構わないよ君達」

 ヒースクリフは2人にそう言うと、2人は離れていく。その姿を見たリュウキは改めて、そのカリスマ性を凄まじいものだと思った。全てNPCの普通のRPGならまだしも、これは生きた人間が行うVRMMOだ。 その世界で、こういった状況を展開する……強制でもない限り、中々出来るものじゃない。
 それに、基本的な事はNPCで事足りるのだが……おそらくは進んで彼らは門番みたいな事をしているのだろう。
 NPCだけでは 看破できない とある驚異が生まれているのだからそれも仕方がない。

「……随分と大層なものだな。気づかない間に、此処まで強大になった、と言う印象が強い。 それで、オレに用とは? まだ、BOSSの攻略には時期早々じゃないのか?」
「いや……そうではないさ」

 ヒースクリフは、城の奥を指差した。

「ここから先の事は中で話そう」

 そう一言 言うと、ヒースクリフは先に入っていった。

「……まあ、今は特に用は無いから良いか。」

 リュウキも、続いて入っていった。このまま、帰るのも手だと思えたが、リュウキ自身もヒースクリフとは、話をしてみたいと思っていたようだ。

 リュウキは、決して認めないと思うけど、共感した部分があるのだろう。ある意味似た者同士、この世界の生きた伝説と言われている男達なのだから。



~第55層 血盟騎士団本部~


 その城内を更に進んでいき
 ヒースクリフと共に、指定された部屋に入っていった。そこは、塔の一フロアを丸ごと使った円形の部屋。前面透明のガラス張りの部屋。
 そして、巨大な机が置かれ、そしてその奥に椅子が並んでいる。謁見の間に見えなくもない作りだった。

 部屋に入ると、椅子を一つ、ヒースクリフがオブジェクト化し呼び出す。そして、リュウキと対面になるように設置した。

「別に立ったままで良い」

 リュウキはそう返した。だが、ヒースクリフは眉ひとつ動かさず。

「まぁ、そう言わずに座りたまえ」

 そう答えると、ヒースクリフは、腰をかけた。

「………」

 リュウキもそれに続き、腰を下ろした。こうして、1対1で対面をするのは初めての事だった。

「……まずは、礼を言わせてくれ、リュウキ君。以前のボス攻略の際……助かったよ。君のおかげで我がギルドから死者が出なかったといっても良い」

 出頭にヒースクリフが頭を下げた。他のプレイヤーが見ていれば仰天すること間違いの無い光景だ。天下無双に近しいプレイヤーが頭を下げるのだから。その知名度ならば、リュウキを遥かに凌ぐ。

 まあ、リュウキも≪ビーター≫と言う悪名もあるから、ヒースクリフほどのそれは無い。

 それはそれでリュウキにとっては、自分を翳らせてくれるという意味では好都合と言うものだった。

 少し……とは思えないが結構な確立で言い寄られる事は多々ある。
 それに、主に異性のプレイヤーからが要注意だ。対応に凄く困るから。だからこそ、リュウキはフードをあまり手放せないのだ。

 話は少し逸れたから戻すと、ヒースクリフの言葉を説明すると所謂前回のBOSS戦でのアシストの事だ。BOSSへのクリティカル・ヒットの連撃で後退させたから、仲間たちが回復することが出来た。と言う事なのだろう。

「……礼には及ばない。パーティ、レイドを組む以上は、助け合うのは至極当然。当然の事をしただけだ」

 リュウキは、そう言って返した。此処にくるのは、やはり少し抵抗があったから、邪険するのは無理無い事だが、流石に礼を言われたこの場合はそうはいかない。

「それに、礼ならばオレよりもキリト……アスナとレイナにだろう?正直、あの3人がいなかったら、もっと危なかったのも事実だ」

 リュウキは思い出しながらそうも言っていた。キリトは相変わらず、自分と同じソロでプレイしているが、あの姉妹は違う。そう、この最先端のトップギルドの一員。
 そして、副団長まで勤めているというから驚きだ。あの時は……そう、第1層ではスイッチ、パーティ申請すら知らなかった初心者だったのに。剣の技術はすばらしいものがあったが……。それでも最前線のトップにまで来るのは凄いとリュウキは正直感じた。

 妹のレイナはその補佐。
 立場的にはアスナが上だが、2人で互いを支えあっているとも思える。事実、あのBOSS戦においても……全体に指示を出しつつ、かなり優秀な働きをしていたのだ。

「……その通り。勿論、あの3人にも礼はしたよ。だが、君だけだったのだよ。君だけが捕まらなくてな」

 ヒースクリフは僅かながら苦笑いをしていた。そう……リュウキはとコンタクトをとるのは思いのほか難しい。リュウキは、大概ダンジョンにいるからだ。
 街にいるのなら、フレンド登録している場合、コンタクトをとることは容易に出来る。……が、ダンジョンはマップでの位置追跡もできない、そしてメッセージも送ることが出来ないのだ。
 だから……彼と接触するのは 並大抵じゃないのだ。

《リュウキに出会うために必要なもの、それはかなりの根気、そして努力、何よりも……運!》

 それだけを聞いたら、とんでもない奴だと思う実際に。情報屋のアルゴでさえ、非常に骨が折れるのだから。だが、当の本人はどこから、情報を得たのか……攻略会議には顔をだし、BOSS戦の際にも大抵は参加する。その時を狙って、フレンド登録をしようと狙っているプレイヤーも少なくは無い。

 特に、血盟騎士団に所属しているあの異性のプレイヤー(・・・・・・・・)は。

「……それもそうか」

 リュウキも自分自身そう思っているのか、納得をしていた。ダンジョンでの野宿も最早日常茶飯事だ。この世界の上層付近……最前線であるあたりまで登ってきたら、ある程度の≪慣れ≫というものも出てきて宿屋に戻るのが億劫に思えているのだ。まぁ、この世界のプレイヤーを探しても、そんな感性の持ち主リュウキくらいだと思われるが。

 兎も角、リュウキが街で宿をとるのは、主にパーティ行動を時だけなのだ。

「それで? 本題は何だ? ……まさかとは思うが、以前の礼だけ……なわけは無いと思うんだが……?」

 リュウキはヒースクリフの方を向いて、そう聞いた。

「うむ。用件と言うか、お願いなのだが……。そうだな、単刀直入に言おう」

 ヒースクリフは、一度目を閉じ……そして、目を開いて、



「ウチのギルド、血盟騎士団に入ってくれないか?」


 今回ばかりはリュウキは想像すらしていなかった事だ。

 その話の内容というのが、……まさかの団長自らの勧誘だったから。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧