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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第92話

巨大な目玉から女性の声が聞こえた。
麦野達は信じられないような表情をしている。
それもその筈。
誰だって、触手でできた目玉から若い女性の声が聞こえれば誰だって驚く。
だが、この男だけは驚かなかった。
身に覚えのある頭痛を感じながら、さっきよりも警戒しながらその目玉に話しかける。

「お前、俺の事を星の守護者と呼んだな。
 という事は、ラファルとか言う奴の仲間か?」

「ラファル?・・・・・・・あ~、あの男の事ですか。
 仲間というのは適切な言葉ではありませんよ。
 あの男は私達の部下のような者です。」

(私達?)

その言葉を聞いてあの男の言葉を思い出した。
前にスーツを着た男の言葉だった。

(ふむ、お前を倒せるのは私のような幹部クラスか教皇様くらいか。)

その言葉を思い出して麻生はその目玉に問い掛けた。

「お前、もしかすると幹部クラスに該当する奴か?」

「ラファルが口を滑らしましたのですか?
 まぁいいです。
 そう、私は幹部に属する者です。」

よし、と麻生は内心で思った。
あのスーツの男と同じ幹部なら今まで襲ってきた化け物などについて知る事が出来る。
そして、星の守護者についても。
自然と麻生の手足に力がこもる。

「でも、私が予めこの男に仕込んでいたのが発動するとは思いもよりませんでした。」

「仕込むとはどういう事だ?」

「簡単な事です。
 この男は学園都市に来る前に私と一回出会っています。
 そこで「中」に潜入する手立てから攻撃するまでの計画を立ててあげました。
 その時にその男の身体の中に卵を植え付けてあげました。
 卵が孵化する条件は、この男が私に関する情報を他人に話そうとした時です。
 ですが、貴方が相手なら仕方がありません。」

声だけしか聞こえないがおそらくこの女性はとてもつまらなさそうな表情をしているだろう。
麻生は刀を創り、構えをとる。

「話はここまでだ。
 お前には聞きたい事が山ほどあるんだ。」

「それは残念です。
 私は意識を共有しているだけで本体は別の所にあります。
 この触手達を殺しても私のいる所には辿り着けません。」

「それでもお前のような化け物を放置するわけにはいかないだろう。」

「まぁ、素敵です。
 それじゃあ始めましょう。
 貴方とは実際に戦ってみたかったのです。
 教皇様が危険視する貴方とはぜひ。」

その言うと、触手が合わさった身体から数十本が出現する。
麻生はそのまま襲ってくるのかと思ったが違った。
触手は麻生に向かう事なく、八雲の身体を取り込んでいく。
何十本の触手に取り込まれた八雲の身体は見えなくなったが、触手の中で骨が砕ける音や肉を引き裂く音、さらにはぐちゃぐちゃという奇妙な音をたてている。
触手の間から何かが飛び出てくる。
それは人間の目玉だった。
その音を聞いた麦野達は吐き気を覚えたのか、口元を手で当てている。
その音だけではなく、見ているだけで気持ちの悪い触手の目玉やそこから出てきたグロテクスな目玉、それらが合わさってさらに吐き気を感じるのだ。
滝壺に至っては、完璧に目を逸らし吐く一歩手前まで来ている。
それを見た麻生は険しい表情を作り、刀を強く握る。

「お前、まさか。」

麻生はその触手の中から聞こえる異音に気が付いたのか、睨みつけながら言った。

「そう、食べているのですよ。
 元々、処分するつもりでしたのでちょうどいいです。」

八雲の身体を取り込んだのか少し大きくなったように見える。

「あ・あああ・あああああああああああああああ!!!!!!
 な・なん・なな・何なんだよあれは!?」

その時、横から声が聞こえた。
麻生は視線だけ動かすと、どうやら気絶した研究者が目を覚ましたようだ。
その声に反応したのか続々と目を覚ましていく。
そして、この世の物とは思えない触手を見て驚きの声をあげた。

「うるさいですね。
 少し黙っててくださいませんか?」

声はそう言った。
麻生にはその触手が次にどういう行動を取るのか分かってしまった。

「お前ら逃げろ!!」

麻生の言葉に誰も耳を貸さない。
ふふふ、と笑う女性の声が聞こえた。

「もう遅いです。」

触手の身体からさっき出てきた触手の倍以上の触手が出てくると、男達に向かって襲い掛かる。

「へ?」

そう呟いた瞬間に、男のちょうど眉間の辺りを触手が貫く。
ぴくぴく、と数回痙攣した後に男は動かなくなった。
それを見た男達は悲鳴をあげるが、すぐに触手が男達を捕える。
捕えた男達を自分の身体に近づけ、取り込ませる。
その中にはまだ生きている者もいた。

「い、嫌だ!!
 死にたくない!!
 あ、あんた!!助けて」

言葉を言い終える前に身体は完全に取り込まれてしまう。
触手の内部から悲痛な悲鳴とぐちゃぐちゃという音が聞こえる。
男達全員を取り込んだ、触手の身体はさっきよりも数倍に膨れ上がっていた。

「見捨てるなんて酷い人ですね。」

「俺が此処を動いたら、お前は後ろの女性達まで取り込むだろう。」

「あら、ばれてましたか。
 本当はそっちの雌達に興味がありましたが、まぁいいです。
 貴方を取り込めばそれで私達の勝ちです。」

すると、さっきよりもさらに多い触手が出現する。
麻生はそれに警戒しながら、後ろにいる麦野達に話しかける。

「おい、あんたら。」

「・・・・・何よ。」

「さっさと此処から逃げろ。
 さっきの男達みたいになりたくなかったらな。」

「む、麦野、その男の言うとおりだよ。
 此処はさっさと逃げた方が良いって訳よ。」

「私もフレンダの意見に超賛成です。
 滝壺さんも体調を乱しています。
 あの化け物相手にするのは、超厳しいかもしれません。」

「・・・・・・・・・・・・・分かったわ。
 絹旗は滝壺を連れて、後は車に急ぐわよ。」

その指示を聞くと、迅速に行動する。
絹旗は能力を使い、滝壺を抱き上げる。
絹旗の能力である「窒素装甲(オフェンスアーマー)」は空気中の『窒素』を自在に操ることが出来る。
その力は極めて強大で、圧縮した窒素の塊を制御することにより、自動車を持ち上げ、弾丸を受け止めることすらできる。
滝壺一人抱きかかえる事など簡単だろう。

「ごめんね、きぬはた。」

「滝壺さんがあれを見て体調を崩すのは仕方がありません。
 正直、私も超気持ち悪いですけどそうも言ってられませんから。」

滝壺を抱え、自分達が入ってきた穴から施設を出て行く。
それに続いて、フレンダも走って出て行く。
最後に麦野も出て行こうとするが、直前で止まる。

「あんた、名前は?」

「麻生恭介。」

麻生は視線を逸らさずに麦野の質問に答える。

「次が合ったら、一応礼を言ってあげるわ。」

「それじゃあ、それを楽しみしておく。
 後、俺は死なないぞ。」

そこまで話をした時だった。

「あら、誰が帰すと言いましたか?」

そう言うと、五本の触手が出現するとこちらに向かって襲い掛かる。
麻生は刀を構えるが、麻生を通り越しさらには麦野を通り越して触手が外に出て行く。
それだけでこの触手は何をするのか分かってしまった。

「絹旗!!!」

麦野は大きく叫ぶ。
それに反応した絹旗は一瞬だけ後ろを確認する。
五本の触手がこちらに向かって襲い掛かって来るのが確認できた。
前にいるフレンダの腕を掴み、横に跳ぶ。
触手は絹旗達を素通りすると、前にあるキャンピングカーに突き刺さる。
そのままキャンピングカーを持ち上げると何度も叩きつけ、完全にキャンピングカーを破壊する。
麻生は後ろに下がり、麦野を片手で抱きかかえると絹旗達のいる所まで下がる。

「もしかして、逃げる事が出来ないって訳?」

「超まずい展開です。」

「とりあえず、降ろしてくれない?」

麻生は乱暴に麦野を降ろす。
麦野は麻生を睨みつけるが、それを無視する。
バゴン!!、という音と同時に施設を破壊してあの触手の集合体がこちらに向かってゆっくりと近づいてくる。

「貴方達は逃がしません。
 特に能力者を取り込めば、どうなるか興味があります。
 まぁ、こちらには実験体もいますが。」

「実験体だと?」

「学園都市から攫った学生達ですよ。
 能力者の脳はどういう構造になっているのか興味がありましたので、攫うという簡単な方法を取りました。」

「そいつらをどうするつもりだ?」

「脳を解剖して、色々と弄ります。
 どうなるかは実験してからのお楽しみです。」

「どうやら、お前には聞かないといけない事が一つ増えたみたいだな。」

刀をもう一度握りしめ、構えをとる。
それを見た触手も身体から何十本の触手を出現させる。
麻生の本当の戦いが今、始まる。 
 

 
後書き
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