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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  36話:クリスマスイヴの夜にて

 
前書き
 
ようやく決まった……
  

 
 

フェイトの蒐集から約一週間。
世に言う、家族や恋人、リア充が楽しみのクリスマスを二日後、イヴを明日に控えた23日の今日、高町家ではフェイトと一緒に夕食を過ごしていた。

食卓に並ぶ料理は、いつもより豪勢に見えてならない。しかしこの中に我が姉、美由希さんの料理があるということを考えると、慎重にならざるをえない。

「…士君、今失礼な事考えてなかった?」
「そんなバカな」

なんとも鋭い感性。この家族は本当に恐ろしすぎて困る。
夕食も終わって、自分達の部屋へ。フェイトは机の下で肉を頬張っていたアルフと共に、美由希さんの見送りのもと、ハラオウン家へ戻った。

いで、今俺が直面している問題としては……

【明日の終業式の帰りの件、皆大丈夫ですか?】
【はやてに、プレゼントを渡すんだよね?】
【でも、明日急に行って大丈夫かな?】
【ま、都合が悪かったら石田先生に渡してもらえばいいし】
【俺は行くべきじゃないと思うんだけどな~】
【じゃ、そういう事で…また明日ね。おやすみ…!】

とまぁ、こう言う訳ですよ、はい。
いつもの四人組がサプライズと称し、はやてのところに行く、という。

さて、ここで問題になるのは、ついになのはとフェイトがシグナム達と直接接触してしまう恐れがある、という事だ。
厄介なのが、その場で戦闘に突入してしまう事。これは主であるはやてが目の前にいるから、可能性としては低いが、ないとは言えない。どちらにしても、遅かれ早かれ戦闘になるのは確実だ。

「…ダメだ、回避の方法が見つからない」

アリサやすずかもいる以上、色々話す訳にもいかず、結局二人にも話せずにいる。
シグナム達の方も、直接会う事はできないし……

「どうしようもねぇのか…?」

結局、夜まで考えても思いつかず、俺は眠りについた。










「……はぁ…」

んで、翌日のクリスマス・イヴ。目の前の四人の友人が楽しそうに歩いている。向かう先は、勿論はやての病室。
この約一日、登校中も、いつもなら欠伸をしながら聞く校長の長ったらしい話の間も、考えても考えても答えは見つからず、結局来てしまった。どうしたもんか…ダメだ…ダメだ……思いつかん!

「さっきから何?士がなんか変なんだけど」
「さぁ?なんか少し前から頭抱えるところとか見るけど…」
「聞いてもまともに答えてくれないんだよ…」
「何か悩み事かな…?」

前でこそこそと話しているが、そんなのは気にしない。いや、気にしていられない、の間違いか。

「あ、着いた」

あ~!もうダメだ!
すずかがノックしようと、扉に手を伸ばす。もう後戻りはできない。そう判断して、俺はなのはとフェイトの肩に手をのせる。

「?」
「どうしたの?」

それに反応して二人はこちらに向かって振り返る。俺は顔を二人の顔と顔の間に入れて、前の二人には聞こえないように言う。

「何があっても、騒がずに表情に出すな。絶対にだ」
「え?」
「それどういう…」
「こんにちは~」

フェイトが聞き返そうとしたその時、すずかが扉をノックする。

「はい、どうぞ~!」

扉越しにはやての声が聞こえる。すずかがその声で扉に手をかけ、開ける。アリサはすずかと一緒に病室へ入っていく。
俺の言葉に少し戸惑っている二人の間を通り、俺も病室へ入っていく。二人も俺の後に続くように病室へ。

その中にはベットに寝ているはやては勿論、シグナムにシャマル、ヴィータがいた。

「あ、今日は皆さんお揃いですか?」
「こんにちは、初めまして」

最初に入ったすずかとアリサはシグナム達に挨拶をする。その後に入った俺も、頭を軽く下げる。

問題なのは、なのはとフェイト。ここにシグナム達がいることに驚く。シグナム達も勿論、表情を変える。
それと共に急激に変わっていく空気に、はやては少し戸惑う。

「あ、お邪魔…でしたか?」
「あ、いえ……」
「いらっしゃい、皆さん」

その空気を察してか、アリサが控えめに問いかける。そこでシグナムも気づいてか、雰囲気を変える。

「ところで、今日は皆どうしたん?」

はやてがそういうと、すずかとアリサが顔を見合わす。

「「せ~の!」」

そして、腕にかけていた上着を派手に捨て、その下にあるものを露にする。

「「サプライズプレゼント!」」

そこにあったのは、リボンの結ばれた箱。それを二人そろってはやてに差し出す。
それを見たはやては、みるみる表情を変える。頬を少し朱に染めて、うれしさを全面に表す。

「今日はイヴだから、はやてちゃんにクリスマスプレゼント!」
「わ~!ほんまか~!?ありがとうな~!」
「皆で選んできたんだよ」
「後で開けてみてね」

その横ではなのはとフェイトが明らかに戸惑っている。ベットに寄りかかっていたヴィータは、下からなのはを睨みつけている。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、どないしたん?」
「え、あ…ううん、なんでも…」
「ちょっとご挨拶を、ですよね…」
「あははは…」

たく表情に出すなって言ったのにな…さすがに無理か。

「はい…」
「あぁ、皆。コート預かるわ」

真っ先に動きを見せたのはシャマルさん。皆がシャマルさんにコートを預け、アリサとすずかははやてとの会話にいそしむ。
なのはとフェイトも、時々こちらをちらちら見てくるが、ここで反応してしまうと後々大変だ。
念話を使って来ないところを見るに、通信妨害をされている筈だ。二人はシグナム達から逃げられないだろうから、俺がクロノ達に伝えるしかない。

「それにしてもヴィータ、少し恐いぞ」
「うるさい…士には関係な―――」
「ヴィータ、そんな口利くとこうやで!」
「んあっ!あ~!」

また鼻つまみの刑に処されるヴィータ。はやては強いな~、権限的な意味合いで。









その後、色々話している内に時間は夜になり、俺達は病院から去った。

「…じゃ、俺達も帰るか」
「士君…」
「ん?」

アリサとすずかが帰るのを見送ってから、俺はなのはに話しかける。なのはは俯きながら言う。

「…先、帰ってもらってもいい?」
「あぁ、わかった」

俺はそれだけ言って、俺は病院を離れる。

「―――気をつけろよ」
「……うん…」


















横に見える街並みが、流れていく。
別に街が動いている訳じゃない。俺が速く走っているだけだ。できるだけ早く、シャマルさんの通信妨害を抜け出さないといけないからだ。

「トリス、どうだ!?」
〈まだダメです!繋がりません!〉
「くそ!」

クロノへの通信が繋がらない。こうしている間にも、なのは達が戦っている。もしかしたら、闇の書が覚醒するかもしれない。仮面の男が介入して、予想外の状況になっているやもしれない。

そう考えると、マイナスな考えしか思い浮かばない。冷静でいなければならないのはわかるが、それでも焦る気持ちを止められない。

[―――…つ……かさ……!]
「っ!クロノか!?」
[士!]

そこでようやく、待ち遠しかったクロノの声が聞こえる。俺はその場で足を止め、周りを見渡す。

[士、そっちの状況は!?]
「なのはとフェイトが、おそらくシグナム達と戦闘中だ!場所は海鳴病院付近のどっか。地上じゃないのは確かだ!」
[僕もそっちに向かってる!ユーノやアルフも一緒だ!君もすぐになのは達の救援に!]
「わかった!」

その言葉を聞いて、俺は先程までとは真逆の方を向く。その方向の一番高い建物から、煙が立っているのが見える。

「マズいな…」
〈私達ではあそこまでの広範囲結界を張るのは、難しいですし…〉
「つべこべ言わずに、行くしかないか」

そう言いながら、一歩を踏み出そうとした瞬間、俺の周りに火花が散る。思わず顔を腕で隠す。
腕を退けながら前を確認すると、一つの人影が目の前を悠々と歩いている。

―――奴だ。

「行かせませんよ。もう少しで闇の書が完成するのですから」
「てめぇに指図される程、俺も落ちぶれちゃいねぇ」

俺はそう言いながら、トリスをディケイドライバーへと変え、それを腰に当てる。
奴は持っていた銃を捨て、エクストリームの力を行使する。左腕には盾が、右手には剣がある。

俺もライドブッカーからカードを取り出し、前へ突き出す。

「変身!」
〈KAMEN RIDE・DECADE!〉

そしてカードをベルトへ。周りに九つの影が現れ、俺の体と重なる。そして俺の姿が変わり、ディケイドへと変身する。

「行くぜ…!」
〈Sword mode〉

俺はライドブッカーを剣に変え、構える。
そして、一歩を踏み込もうとした瞬間―――

「あぁ、そう言えば」
「っ!?」

怪人の言葉に、思わずつんのめってしまう。ギリギリでこけるのは避けたが、はっきり言って拍子抜けだ。

「一つ報告がありましてね」
「…なんだいきなり」

剣を盾にしまい、怪人は人差し指を立ててゆっくりと歩き出す。俺は剣を降ろす事なく、警戒を緩めない。

「遂に私の名前が決まりましてね」
「何…?」
「私は別にいいのですが、組織に身を置く故、名前は必要との事でしてね」
「………」
「…随分と冷たい反応ですね。まぁ、いいでしょう。勝手に言うだけですから」

一息いれて、嬉しいのか何なのか、怪人は口元を歪ませる。

「開発コード『ライダーモンスター』。固有名称、『プロトW(ダブル)』」

自分の名前なのであろう。それを言いながら何も持たない右手で拳を作る。
そして盾から勢いよく剣を引き抜き、切っ先をこちらに向ける。

「一回釘ってしまいましたが、やるとしましょうか」
「てめぇ…長々と時間使いやがって…!」

少しいらつきながらも、俺は剣を構える。

「じゃあ改めて…行くぞ!」
「フフフ…」

それを見ていた怪人―――もといプロトWも、同時に走り出す。

「うおおおおおおお!!」
「はあああああああ!!」

雄叫びと共に織りなされる剣と剣の打ち合い。激しく打ち合うそれは、夜の街に金属音を奏でる。

「はぁっ!」
「ふっ!」

俺の剣をプロトWは時には盾で防ぎ、時には剣で防ぐ。奴の攻撃も、俺は剣で、腕で防ぐ。
だがあるとき、それまでの金属音よりも大きな音が響き渡り、鍔迫り合いが始まる。

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか!?お前らの本当の目的を話しても!」
「……フッ、いいでしょう。闇の書の完成はもうすぐそこまで来ているんですから、今更ですがね」

そこでプロトWの方から剣を弾き、俺達の間にある程度の距離が生まれる。

「私達が闇の書を狙う理由、それは今の世界を壊す為」
「今の世界を…壊す…?」

「もっとはっきり言えば、世界を作り替える為に、一度無に返すのですよ」
「世界を…作り替える…」

プロトWはそういうと、剣を再び盾に戻した。そして今度は抜刀術のような構えを取る。

「はぁあっ!」
「ぐっ!?」

そこから一気に飛び出し、俺に向け抜刀する。俺はライドブッカーでそれを防ぎ、またも鍔迫り合いに応じる。

「あなたは感じた事はありませんか?この世界の矛盾を、闇を…そして人間のもろさ、愚かさ…不完全さを」
「何…!?」

「このままではいずれ世界は終わりを迎える。人間の手によって。
 ならば今世界を終わらせ、新たな世界に作り替える。そしてその世界を、大ショッカーが統べ、世界に秩序をもたらす。完全な世界を…作り出すのですよ」

「なんだと…!?」

そこでプロトWは剣を弾き、またも距離を取る。

「不完全なものなどない世界。その世界に、今の人間は不必要なんですよ。だから人間を滅ぼす。あの闇の書の力を利用し、この世界を一度リセットする」
「そんなバカな事、させると思うのか!」

俺はそう言いながら剣を構え、走り出そうとする。
だがその瞬間、大きな振動と共に一筋の光の柱が立ち上がる。確かあそこは、先程煙が立っていたビル。

「まさか…!?」
「遂に……遂に完成した…。闇の書が…世界を破壊する力が…!!」

その光が収まると、今度は黒い球体がビルの上空に出現する。

「あれは…?」
〈あれはどうやら魔法のようです。魔力反応があります〉

魔力反応……あれが、魔法だっていうのか?

「まさかここまでは来ないよな…」
〈…わかりません〉
「不安だな…」

そう呟いた瞬間、あの黒い球体が徐々に小さくなると、爆発するかのように大きく弾けた。

  
 

 
後書き
 
怪人の名前、安易すぎるかな…?
恨むなら、私のネーミングセンスを恨んでください
  
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