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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  35話:動き出す運命の歯車

 
前書き
 
書き忘れてましたが、怪人の剣と盾のイメージは「魔弾戦記リュウケンドー」のゴッドリュウケンドーの奴で。
  

 
 
 
「てめぇぇぇぇ!!」

目の前の光景を見て、士は地面を蹴り出す。
だが、人間よりも強化されているとは言え、アギトのフォーム中一番スピードの劣っているバーニングフォームであり、地面も砂漠である為か、進みは若干遅い。

そして、それを見過ごさない者もいる。

「私を忘れてもらうと、困りますよ!」

士よりも先に仮面の男との一直線上に立つ怪人。盾と剣を構え、立ちふさがる。
それを見て、士は奥歯を軋ませる。それでも足を止める事はない。止める訳にはいかない。
怪人の剣には光が纏われる。先程と同じものだ。

「邪魔だぁぁ!!」
「行かせはしませんよ!」

そして怪人の剣は、士に向けて振るわれる。
嫌な音が響きわたる。怪人の振るった剣は、士の肩にめり込んでいる。そこから少し血が流れ、生々しく見える。だが、剣の進行はそこで止まっている。士の左手が、その進行を食い止めているからだ。

〈 FINAL ATACK RIDE・a a a AGITO!〉
〈 Burning Rider Punch 〉
「っ!?」
「どぉぉっけぇぇぇぇぇ!!」

士はいつの間にか取り出していたカードを発動する。炎を纏った右拳を、怪人に向けて突き出す。
拳は怪人の盾に当たるが、士はそのまま振り切る。二人の姿は爆煙に呑み込まれ
、怪人は士の攻撃に耐える事なく、フェイト達とは別の方向へ吹き飛んでいった。

「フェイト!」

すぐに爆煙から士は飛び出し、フェイトの元へ走り出す。

「―――動くな」
「っ!?」

だが、冷たい声に士は足を止めてしまう。その声の主は、今フェイトのリンカーコアを取り出している、仮面の男だ。

「この娘の事を考えているなら、今私を動かさない方が得策なのではないか?」
「くっ…!」
「もうすぐ終わる。それまで動くな」

淡々と指示する男は、それでもこちらへの警戒も怠っていない。今のフェイトは人質も同然。下手な事をすれば、フェイトにも危害が加わる。

「………(ギリッ)」

その事がわかって、さすがに手を出せなくなってしまった。何もできない歯痒さに、歯ぎしりが鳴る。
ふと、視線が今まさに蒐集を行っているシグナムへと映る。視線に気づいたのか、シグナムは一回顔をこちらに向ける。視線が合うと、バツが悪そうに目をそらす。

次第にフェイトのリンカーコアが小さくなっていき、不意に闇の書が閉じられる。それと同時に、仮面の男はフェイトから手を引いた。
士はすぐに駆け出し、怪人の元へ行こうとするが、男はフェイトを士に向けて押し出してきた。

「っ!」

男の元へ行く途中とは言え、フェイトを見捨てる事もできない。こちらに来るフェイトをしっかりと受け止める。その際、先程怪人から受けた傷が痛み、声を詰まらせる。
視線を上げると、仮面の男は先程いた場所よりも離れた場所にいた。バーニングフォームだと、追撃はできそうにない。

「………」
「………」

士と仮面の男、二人がまっすぐ睨み合い、長い沈黙が続く。
先に動いたのは仮面の男。俺達に背を向けるように振り返り、そのまま飛び去っていく。

「………」

士はそれを見届けた後、警戒を解くようにアギトからディケイドへと戻る。

「やはり、ディケイドだったか」
「……あぁ」

ディケイドに戻ってから、シグナムが声をかけてきた。士は男が飛び去った方向を向いたまま、返事をする。

「どうする?これから、俺との決着をつけるか?」
「いや…止めておこう。私もこれ以上、消耗したくはない」

そうか、と士が小さく呟くと、シグナムは踵を返す。

「……すまなかった」

そう言うと同時に、シグナムの足下に魔法陣が展開される。

「言い訳はできないが、すまないと伝えてくれ」
「……あぁ、伝えておく」
「決着の方も、いずれ」

魔法陣も大きく輝き始める。それと同時に、シグナムの体も消え始める。

「…シグナム!」
「……?」

消える直前、士は叫ぶ。シグナムは転移を止めることはなく、顔だけで半分振り向く。

「―――――――――」

士が叫んだ瞬間、シグナムの姿が消えた。聞こえているかどうかは、士にはわからなかった。


















「フェイトさんは、リンカーコアに酷いダメージを受けてるけど、命に別状はないそうよ」

会議室の一番奥に座るリンディさん。あの後、エイミィとの通信が繋がって、アルフとも合流。その後やってきたアースラに乗り込み、現在は本局。

「私の時と同じように、闇の書に吸収されちゃったんですね」
「アースラの稼働中でよかった。なのはの時以上に、救援が早かったから」
「だね…」

俺の両側で言うなのはとクロノ。クロノの言葉を聞いたアリアは、そう言いながら頷く。

「三人が出動してからしばらくして、駐屯所の管制システムがクラッキングで粗方ダウンしちゃって。それで、指揮や連絡が取れなくて……ごめんね、私の責任だ…」
「んなこたないよ。エイミィがシステムをすぐ復帰させたから、アースラに連絡が取れたんだし、仮面の男の映像だってちゃんと残せた」

落ち込むエイミィに、男の映像を出しながら励ますアリア。

「それに、それを言うなら、俺だってフェイトを助けられなかった。もう少し気にかけていれば…」
「ち、違うよ!士君だって、そんな怪我までしてフェイトちゃんを助けようとしたんだよ!」
「でも結局は、フェイトの蒐集を阻止できなかった」

俺はそう言いながら、その斬られた傷を服と包帯越しに摩る。傷事態は体がバーニングフォームであったのが功を奏したのか、そこまで深くはなく、体への支障はないそうだ。

「士君、あなたは色々背負い込もうとしすぎよ。あなただって、怪人と張り合っていたんだから、仕方ないわ」
「………」

リンディさんにそう言われても、俺の気分は晴れることはない。どうしても心の奥に溜まってしまう。

「それにしても、可笑しいわね。向こうの機材は管理局で使っているものと同じシステムなのに…それを外部からクラッキングできる人間なんて、いるものなのかしら?」
「そうなんですよ!防壁も警報も、全部素通りで、いきなりシステムをダウンさせるなんて…」
「ちょっと、あり得ないですよね」
「ユニットの組み替えはしてるけど、もっと強力なブロックを考えなきゃ」

そういうが、魔法のある世界であり得ないという言葉を聞くのは、少しばかり違和感を感じる。地球の一般人からしてみれば、空を飛ぶこと事態あり得ない事なのだから。

「それだけ、すごい技術者がいるってことですか?」
「うん…もしかして、組織だってやってんのかもね」

管理局という大きな組織のシステムに手を出すんだ。それなりの技術を持っていなければ、やろうと思う気にもならないだろう。
なのはの言う通り、技術の飛び抜けた人間がいるのか、アリアの言う通り組織で動いているのか。そして最後の可能性としては……

「士が言ってた状況も、不明な点がある」
「……あぁ。直接見た訳じゃないが、どうも仮面の男はシグナム達と仲間関係にある訳じゃないようだ」

蒐集しているときのシグナムの顔を見れば、仕方なくやっているのがわかる。おそらくフェイトと戦っている最中に仮面の男が手を出し、渋々蒐集したといったところだろう。

「あいつも最後に、すまなかったと伝えてくれって言っていたし…」
「そうか……」

俺の言葉を聞いたクロノは、手を顎に当てて何やら考え始めた。

「アレックス!アースラの航行に問題はないわね?」
「ありません」
「では、予定より早いですが、これより司令部をアースラに戻します。各員は所定の位置に」
「「「はい!」」」
「っと、なのはさんと士君はお家に戻らないとね」
「あ、はい、でも…」
「フェイトさんのことなら大丈夫。私達でちゃんと見ておくから」

そういうリンディさんを疑う訳もなく、俺達はリンディさんの言う通り地球へ戻る事になった。


















「助けてもらった、てことでいいのよね?」
「少なくとも、奴が闇の書の完成を望んでいるのは確かだ」

シャマルの疑問に、シグナムは口を開く。昨日の戦いにおいて、ヴィータを助け、シグナムに蒐集を促した人物。その前にも、管理局に捕まりかけたシャマルを助けたのも、奴だ。

「完成した闇の書を利用しようとしているのかもしれないな…」
「ありえねぇ!だって、完成した闇の署を奪ったって、マスター以外に使えないじゃん!」

床に座っていたザフィーラの言葉に、側にいたヴィータが立ち上がりながら叫んだ。

「完成した時点で、主は絶対的な力を得る。脅迫や洗脳に、効果がある筈もないしな」
「まぁ、家の周りには厳重なセキュリティを張ってるし、万が一にもはやてちゃんに危害が及ぶことは、ないと思うけど…」
「念のためだ、シャマルはなるべく主の側を離れん方がいいな」

ザフィーラの言葉に、シャマルは首を縦に振る。

「ねぇ…闇の書を完成させてさ、はやてが本当のマスターになってさ…それではやては幸せになれるんだよね…」
「なんだ、いきなり?」
「闇の書の主は大いなる力を得る、守護者である私達が、それを誰より知っている筈でしょ?」
「そうなんだよ、そうなんだけどさ…私はなんか、なんか大事なことを忘れているような気がするんだ…」

ヴィータの言葉に、シャマルとザフィーラは小さなうなり声を上げる。だが、シグナムだけ、まだ前日の…ディケイドからかけられた言葉を思い出していた。

(ディケイド…お前は一体何者なんだ?)

あのとき…転移する直前、聞こえるか聞こえないかの瀬戸際で言い放った言葉は、しっかりとシグナムの耳に届いていた。

『家族を大切にしろよ』

(奴は…主と私達の事を知っているのか?だとしたら奴は一体…)

その瞬間、八神家に大きな音が響き渡る。
音の出所はシグナム達の主―――はやてが眠る寝室。そしてここにはこの家に住む五人の内四人がいる。よってその音を出した原因は……

「はやて!」
「はやてちゃん!」

すぐにシグナム達は動き、寝室の扉を開く。そこには床に倒れ、苦しそうに胸を抑えるはやての姿があった。


















彼等との接触の二日後。昨日休んでいたフェイトも体調に問題がないとの事で、学校に登校した。
学校ではすずか経由ではやてが入院した事を三人が知らされ、見舞いに行こうという話があって、俺も連行されている訳で。

病院にやってきて、はやての病室へ。ノックも忘れずに。マナーは大事だ。

「は~い!どうぞ~!」

その言葉を聞いて、俺達五人は扉を開ける。

「「「「こんにちは~!」」」」
「こんにちは、いらっしゃい!」
「よ、久しぶり…とも言えないか」
「ふふ、確かになぁ」

…なにその目線は?

「なんで士君ははやてちゃんとそんなに仲が良さそうなの?」
「挨拶ぐらいちゃんとしなさいよ」
「久しぶりじゃないってどういうこと?」
「オハナシ、スル?」

俺の横から来る視線と共に放たれた言葉は三者三様、ならぬ四者四様。てか最後、抑えて抑えて。病院ではオハナシは止めような。
最初は俺とはやての関係の説明から始まり、結局のところはなのはに怒られた。でも、今度おいしいもん作る事を約束すると少し機嫌がよくなったようだった。

で、それが終わったら俺を覗いた五人は色々話し始め、俺は蚊帳の外。居心地が少し悪いので、一旦病室を出る事に。
そして一回外の空気でも吸おうと思い、外に出ようと一階のロビーに降りたとき。

「―――シャマルさん?」
「ひゃっ!?」

そこには病院の先生らしき人と一緒にいるはやての家族、シャマルさんがいた。思わず声をかけてしまい、シャマルさんも急なことで驚いた様子だった。

「すいません、急に声かけたりして」
「い、いえ!」
「はやてちゃんのお友達?」
「あ、初めまして、門寺士です」
「初めまして、石田幸恵です」

おそらくはやての主治医の人と軽めに挨拶を交わす。
その後、石田さんやシャマルさんと少し話した後、病室に戻った。


















んで、今はと言うと……

『と、言う事だ』
「色々わかるもんなんだな~」

クロノ送られた資料を見ながら、クロノとモニター通信を行っている。資料はユーノが現在進行形で調べている、闇の書についてのものだ。

「闇の書―――本当の名前は“夜天の魔導書”。本来の目的が世界中の魔法の研究の為。完全に封印することはほぼ不可能で……蒐集しないと持ち主の体を蝕み、完成しても最終的には死に至る、か……」
『羅列するとそんなところだな』

ここまでの事をふまえて、はやてが主と考えるなら、はやての足の麻痺は闇の書が原因ということがわかる。

『で、どう思う?』
「どう思う、とは?」
『彼等の行動について、だ』

難しい顔をしながら問いかけてくるクロノ。俺も顎に手を当てて、思考を巡らせる。

「…微妙だな。はっきり言ったら、判断するには情報が少ないな」
『確かに、そうだな…』

今のままの情報だと、確かに判断は難しい。
だが、はやての事やその家族の事をふまえると、色々と見えてくるものがある。

おそらく、ヴォルケンリッターの四人は闇の書の主の結末については知らない、もしくは覚えていないのだろう。彼等の目的がはやての足を治す事だとすると、そうでないとおかしい。
だとするならば、止めるのが難しい。状況はフェイトの時と似通っている。相手の思いが強すぎて、周りの声が聞こえにくくなる。
だが今の状態では、はやてを救う手だてがないのも事実。

『…それと、もう一つ』
「?まだあるのか?」
『あぁ』

クロノは一旦間を置いてから、

『仮面の男について、教えてくれないか?』

と言ってきた。

「それまた唐突だな」
『君なら、何か予想ぐらいは立てているだろうとふんでいたんだが?』

そこまでお見通しか、と頭をかきながら呟く。

「予想の範囲内だが、いいのか?」
『それでもいい』
「お固いお前にしては意外だな」
『うるさい』

明らかに不機嫌な声をして、表情で早く言えと言ってくる。

「…それともう一つ」
『いい加減に話してくれないか?』
「重要な確認だ」

俺はそう言ってから一息入れて、

「お前にとっては、酷いもんかもしれないが?」

と前置きのように問いかける。

『いいから話せ。僕も暇じゃないんだ』
「そうかい」

だが、返ってきた返事はあっけらかんとしていた。それを聞いて、俺は一回息を吐く。

「俺の予想だと―――」

  
 

 
後書き
 
いよいよ最終決戦が近くなってきた
気合いいれてこう
  
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