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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―

作者:鳩麦
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第二章
  十六話 アルマゲドン!!

 
前書き
SAOも一息ついたし 16話 

 
時間は少し前に戻る。
アインハルトは、全速力で後衛を目指していた。無論彼等を叩くためだが……

「もし、お嬢さん、そんなにいそいで何処行くのっと!」
「っ!」
そんな彼女の下に、威勢のいい声が上から降ってきた。反射的にバックステップで大きく後ろに飛ぶと、つい先ほどまで彼女の居た場所に、大柄なハルバードが振り下ろされ、地面が抉れた。

「へぇ、良い反応だ。流石は格闘家、ってとこか?」
「ライノさん……」
振り下ろした状態のハルバードを持ち上げ、肩に担いで飄々とした様子で言ったのは、言わずもがな、ライノだ。

「さて、此処を突破したくば……ははっ、言われるまでもねぇって顔だな?」
「…………」
相手を前にしてあくまでもマイペースかつ軽口を叩く青年は果たして計算高いのか、あるいは唯愚かなだけか……いずれにせよ、アインハルトは彼の態度を前にしても緊張の糸を緩めない。
戦場に置いて一瞬でも油断する事はそれすなわち死と同義だ。これは訓練なのだから死ぬことなどあり得ないが、それでも彼女の脳内に有る覇王としての記憶は戦いにおける気の緩みを一切許容しようとはしなかった。

「やれやれ、もうちょい楽しんで「はぁっ!」うおっ!?」
言葉の途中で突撃を仕掛けた。踏み込んだアインハルトの一撃をライノは腕で防ぎ、その際後方に飛ぶことで衝撃を逃がす。

[バカですか?先程も油断してゴーレム創成を赦しておいて、またそのパターンですか?]
「うぐっ……おっと!」
「……!」
間髪いれずに更に間合いを詰めたアインハルトの拳は、ハルバードの柄で防がれる。しかし長物を使うなら懐は苦手な筈だ。であればする事は一つ。

「(このまま連撃で防御を崩す!)」
「おっ、とっ……!」
左右のラッシュで徐々にゆさぶりを掛けて行く。こう言った隙が小さくコンパクトな拳は、こうして数を出すことでいずれ相手の防御に綻びを作ってくれるものだと言う事を、この少女はよく知っているからだ。
しかし……

「っと……ふっ!」
「!?」
ライノとて、そうそう甘くもない。
短く息を吐くとともに、ライノは打ち込んできたアインハルトの右の拳を、左手で“受け止めた”

「捕まえたぜ?」
「っ!」
[Stun spark]
反射的に左の拳を突き出しかけたが、遅かった。

「くぅっ!!!?」

アインハルト DAMAGE 340 LIFE 1960

ライノの手から電撃に変換された魔力がアインハルトの方へと伝わり、一瞬全身に衝撃が走ったかと思うと、弾かれるように体が吹き飛ばされる。

「(接触型攻撃魔法……!)」
迂闊だった。決してライノは戦闘に慣れていない素人と言う訳では無かったのだ。それが証拠に……

「ふっ!!」
「っ……!」
後方に吹っ飛んだアインハルト目がけて、ライノは一直線に接近し、横一閃にハルバードを振り切る。
それを何とかバックステップで回避しても、其処に出来た時間で更に追撃が来る。

「そ、らそらそらそらぁ!!」
「くっ……!」
拳に比べて圧倒的に広い間合いを持つハルバード。重量のある筈のそれを器用に右に左にタクトを操るが如く旋回させて来るライノのラッシュを前に、アインハルトは防戦一方となりつつある。

「(このままではいずれ崩される……!)はぁっ!」
「おっと!」
即座に判断して、アインハルトは多少強引ながらもライノのハルバードを思い切りのよい拳を回転するハルバードの回転方向に対抗するようにぶつけ、柄の回転を乱す。それと同時に欲張って追撃するような事はせず、一気に大きく後方に飛んでライノから距離をとった。

「(よし、このまま体勢を……)」
「逃がすかよ!」
[Photon Lancer]
「っ!」
しかしそれをみすみす逃すライノでは無い。
即座に自身の周りに四つの魔法球を展開すると、それらを雷撃の槍と成し、打ち出す。
体勢を何とか取り戻したばかりのアインハルトに、雷撃の槍が迫る。が……

「覇王流……」
アインハルトにしてみれば、その手は悪手であると言えた。
放たれた雷撃の槍の内、直撃コースだった二本の槍を、アインハルトは両の掌で“受け止める”。

「なん……!?」
驚いたようにライノが目を見開いて居る間に、アインハルトはその魔力槍をそのまま向きを変えて……

「旋衝破!!」
「うおっ!?」
[Protection]
ライノに向けて、“投げ返した”。

覇王流 旋衝破
ライノは知りはしないが、アインハルトが今回の陸戦試合でこの技を使うのは初めてではない。先程ヴィヴィオと交戦した際にも繰り出したこの技。旋衝破は、言わば古代ベルカ系の魔導に通ずる、反射技(リフレクト)の一種とも言える技だ。
自身に向けて接近する魔法、及び魔力を、弾殻(バレッドシェル)を壊すことなく“受け止め”て、“投げ返す”。

真性古代(エンシェント)ベルカ式の術式を使う人間であれば、理論上は可能な技術だ。しかしそれを習得している人物は実際かなり少ない。
弾殻を壊さないように魔法弾を受け止めると言うのは、言うは易く行うは難し。実際かなり難しい。掌から魔力を放出することで受け止めるためのクッションを作り、そのクッションを用いて向かい来る弾丸の指向性を止めるため弱すぎず、弾殻を壊さないよう強すぎずの絶妙な力加減で受け止めるのだ。
本来ならば、若干12歳の少女に出来るような芸当では無い筈だった。
この事実だけを見ても、彼女が覇王流と言う武術をモノにするために一体どれほど苛烈な修業を積んだかは、想像に難くない。

「…………」
投げ返した雷槍の的となったライノの居た位置を、アインハルトは構えを解くことなく睨み続ける。今のような物で倒せるとは思っていない。問題はどの程度ダメージを与えたかと言ったところだが……

「……大したもんだな。それ」
「っ……」
土煙の向こうから、黄色い円形の魔法盾を展開した状態で、のんびりとした口調で言うライノが現れた。対して大きな損傷は見られない。

ライノ DAMAGE 70 LIFE 2730

「(やはり……この程度では……)」
予想以上にダメージが低かった事に内心奥歯を噛みつつも、アインハルトは冷静に分析する。

反射程度では致命的なダメージを与えられない事は分かっていた。しかしあのタイミングで防御魔法を展開されたとなると、ライノ自身の反射神経や戦闘経験も相当に有ると思った方が良いだろう。
いずれにせよ、先程のヴィヴィオよりも厳しい事は間違いない。
とにかく彼を撤退させるほどのダメージを与えようと思うならば……

「(何とか接近して、崩しつつ断空を当てるしか……)」
「接近して必殺技をドカンと一発!とか思ってるだろ」
「っ!?」
突然声を掛けられ、しかも自分の考えを当てられ、アインハルトはビクリと体をすくませる。

「ま、それしか無いもんな。今の所のお前の手札で状況解決する策ってったら」
「…………」
口調は面白がるようだが、ライノの眼は一切笑っていない。明らかに先程までと雰囲気が違う。

「さて、それ相手なら、割と真面目にやった方がよさそうだ。そんじゃあ、お前のそのご先祖様から受けついだもんを……」
そう言うと、ライノは突然ハルバードの柄を地面に突き刺す。

「見せてみな!!」
[Attraction]
「!っ!!?」
ガクンっ!と一気に体が重くなる。と同時に、体の自由が利かなくなった。地面に強制的に引き付けられている感覚が、全身に伝わる。

「く……!(これが……)」
ライノの魔力変換の力かと、アインハルトは内心で納得する。成程、確かにこれは辛い。
まるで重力が自分の居る場所だけ二倍になってしまったかのように体が重く、予想以上に動きにくい。
しかしそのまま脚を付いてしまえば一貫の終わりだし、何よりアインハルト個人の感情もそれを赦さない。故に、アインハルトは自身の体の重量に歯を食いしばって耐えながら、何とか構えをとる。直後。

「おっ、らぁっ!!」
目の前に移動してきたライノが、彼女に向けてウォーロックを振り下ろす。何とか腕を交差させて魔力を腕部にまわし、それを防ぐが……

「……!!(重い……っ!)」
自分の体が重いのか、はたまた彼のハルバードもまた地面に引き付けられているのか。これまでに受けた事の無い程の強烈な衝撃がアインハルトの全身を駆け抜け、同時にまるで押しつぶすような圧力が彼女の体を圧迫し始める。

「……むんっ!」
「う……!」

アインハルト DAMAGE 100 LIFE 1860

ズシリ。とライノの一言と共に圧力が強さを増し、徐々にアインハルトの体が悲鳴を上げ始める。骨格が軋み、歪むような感覚に襲われる。
今アインハルトが受けている圧力は全身が地面に引き付けられている事に加え、ハルバードの重さに更にライノの筋力だ。重力を1Gとした世界上で本来受ける事がないはずの圧倒的な重さを支えるには、普段1Gの世界で暮らしているアインハルトでは筋力が足りない。
単純計算で今彼女に掛かっている負担が2Gだとしても、体を普段通りに動かすには通常の二倍の筋力が必要となるのだから。

「さて、このまま潰されてみるか?覇王っ娘?」
「……らぁっ!」
「おっ!?」
二ヤリと嫌味な笑みを浮かべたライノの顔を一瞬睨んで、アインハルトは自らを圧迫するハルバードを無理矢理横に弾き飛ばす。否、正確には弾き逸らす、と言ったところか……重すぎて返すのは不可能だった。

アインハルト DAMAGE 140 LIFE 1720

おかげでハルバードの威力を殺しきれず、アインハルトは一度後方に転がる。と……

「!」
突然、体が一気に軽くなった。即座に立ちあがり、その反動でバックステップ。再び距離をとる。
ライノは恐らく自身の居る周囲の極狭い範囲に限定してあの力場を張っていたのだろう。更に広く張られていれば離脱出来なかった筈である。しかし仮に距離をとっても、先程と同じか別の方法で遠距離攻撃が来る。
とにかく射撃系統に対処するため、アインハルトは掌に魔力を集める。顔を上げると、案の定ライノは自身の周りに黄色い魔力球を展開して……

「っ……!?」

アインハルト DAMAGE 600 LIFE 1120

突然、アインハルトの背中から強烈な衝撃が彼女を襲った。何か、自分よりも大きな巨大な質量が、自分に向かって衝突した感覚がして、遅れて全身を衝撃が駆け抜け、息が詰まる。と同時に……

「ほら、喰らっとけ」
[Photon Lancer]
「!」
ライノの周囲に展開されていた五つの光弾が一瞬で雷撃の槍へと変貌し……

射出(ファイア)!!」
彼女に後ろからぶち当たった何かごと、アインハルトに殺到した。

────

「…………」
茫然とした様子で、アインハルトは地面に仰向けに倒れ伏す。

アインハルト DAMAGE 1050 LIFE70

バリアジャケットはボロボロになり、所々彼女の肌は露出していたが、それ以上に受けたダメージの反動で動けなかった。
そして何より、こうなってもなお、先程何をされたのかが分からない。

「……物体を引き付ける。ってのは便利なもんでな」
「っ……」
ライノの声がして、アインハルトは何とかその場で起き上がる。が、ダメージが大きすぎて構えが取れない。

「今みたいに、相手の死角を突くってのも出来る」
「……引き付けた、物体で……」
言われて、アインハルトは理解した。つまり自分を地面に引き付けたように、周囲の物体を引き付けて死角を付いたのだろう。しかし一体いつ彼は自分の後ろの物体に魔力を……そう考えて、先程旋衝破を使った時を思い出す。
あの時自分を外れた、二発の直射弾……

「……あの時、ですか」
「お、多分ご明察。お前さんと普通にやり合うと面倒そうだったんでな?さて……」
と、そんな事を話していると、不意に遠くで、桃色の閃光が爆発するような光を放った。あれは……
と、ライノが苦笑気味に笑って呟く。

「おぉ、派手にやってんなぁ……さて、ルーお嬢もそろそろ動くかね?そうなるとまぁ……そろそろお前も退場しとくかい?」
「くっ……」
唇を噛んで、何とかこの状況を打開する策導き出そうとを頭の中で思考を巡らせるが、思いつかない。が、どうやら運は彼女に味方したようで……

『前衛二人!よくやったわ!』
「っ!」
不意に、ティアナからの念話が届く。そう、赤組のCGであるティアナは別に、クラナやアインハルトが事実上の格上相手に全力戦闘を展開していた間、遊んでいた訳ではない。
現に今、ティアナの周囲には数えるのもばかばかしくなるほどの数。大量のスフィアが展開されていた。

「行くわよ……!クロスファイア・フルバーストッ!!!」
全てのスフィアから、一斉にティアナの得意技である貫通力に優れた徹甲狙撃弾が発射される。なのはにして、自分以上撃たせれば自らも無事では済まぬの言わしめたそれが、まるで雨の如く戦闘エリア全域に居る相手チームの下へと降り注ぐ。
当然戦闘エリア内に居る前衛達もまたベテランである。遠距離からの射撃に直撃を受けるほどへまも踏まないが……

「わわっ!とっ、とっ……!」
「うわっとぉ!」

スバル DAMAGE 200 LIFE 1950
エリオ DAMAGE 300 LIFE 1800

流石に全弾一発も喰らわず回避とは行かず、掠めた弾丸がLIFEを削るん。と、そんな中……

「ギィヤァァァァァっ!!!?」
ライノの下へは、何故か他と比べて明らかに量の多い弾丸がピンポイントで降り注いでいた。

「ちょっ、まっ!?て、ティアナさん何で俺、だけっ!集中、砲火ぁ!!?」
その声が聞こえたわけでも無いだろうが、後方のルーテシアとティアナが同時に呟く。

「「アンタ(ライノ)は少し反省するべきね」」
あえて一個人として申し上げる。彼女達に同意である。
さて、そんな混乱の中アインハルトはと言うと……

「彼方より此方へ……若き碧眼の覇王を我が下へ……」
アインハルトの真下に魔法陣が展開され、即座に彼女は転移移動させられる。
たどり着いた先は後方。FBのキャロの下だ。

「お帰り、アインハルト」
[Boosted healing]
彼女の少し後ろに辿りつくと同時、即座に彼女に回復魔法が掛けられる。

「すぐ治すから、また前線復帰お願いね」
「あ……はいっ!」
初めて体感する召喚魔法に戸惑いつつも返事をしたアインハルトのバリアジャケットが即座に再生し、数値上のLIFEも回復を始める。

RECOVERY 500 LIFE 570

別の場所では、ティアナからクラナへと念話が飛んでいた。

『クラナ!無事!?』
「っつぅ……(無事……です)」

クラナ DAMAGE 700 LIFE 2130

『そう。とりあえず、中衛のバックアップについてもらえる?流石にきつかったでしょう?』
『……いえ』
『そう?昔と比べると随分タフになったわね』
『……どうも……』
そんな事を言っていて、とりあえずクラナは中衛の方の援護へ向かおうと立ち上がる。が……

『っ……!待ってクラナ!』
「?」
突然、ティアナから鋭い念話が飛んで来てクラナは戸惑ったように立ち止まり、黙りこむ。少しして、少し切迫した様子の念話がクラナに飛んだ。

『ごめん。全力戦闘を休んでもらう暇は無いみたい。ルーの悪だくみが来た。2on1よ!』
「…………!」
『今、後ろのキャロとアインハルトがルーとライノに、フェイトさんがなのはさんとエリオ、ノーヴェがスバルとヴィヴィオを相手にしてる状態。フリーなのは私とクラナ、アンタだけよ!キャロの方に向かって、あの子と連携して防衛に当たって!』
『……了解……!』
言うが早いがクラナは後方に向けて走り出す。全く忙しい事だ。

────

さて、その頃各戦闘区域ではと言うと、2on1の赤組にとっては中々に分の悪い状況が続いて居た。

此方はフェイトの方面。相手はエリオとなのはの元六課教官&教え子コンビだ。

二対一の状況では下手に反撃する事が出来ず、得意の機動力を生かして建物の間を逃げ回るフェイトを、なのはは高速飛行と誘導弾で追いかけまわす。

なのは LIFE 1290
フェイト LIFE 1700

「……ソニック!」
[Sonic form]
次々に殺到してくる魔法弾をこれ以上現在の機動力でよけきるのは難しいと判断したのだろう。フェイトは少々つらそうな顔でバルディッシュに指令を出し、即座にバルディッシュはそれに従い、バリアジャケットを高速機動モードに移行する。

が、それが悪手だった。

「っ!」
「はぁぁぁっ!!」
既に上方から駆け降りる体勢を整えていたエリオが、その一瞬の牽制も何もない間に建物の壁を蹴って駆け下りだす。なのはの弾幕から逃れるため上方に逃げようとしていたフェイトは、それに気が付いて居なかった。結果、不意打ち気味にフェイトは既に攻撃態勢を整えたエリオと真っ向からはち合わせる羽目になり……

振り下ろしたエリオのストラーダが、フェイトの唯でさえ薄いバリアジャケットをバラバラに砕いてダメージを入れた。

フェイト DAMAGE 1360 LIFE 340

元々防御能力の低いバリアジャケットにクリーンヒットが入ったせいで、フェイトハ大ダメージを受ける。ただそれ以上に大変な事になっているのは彼女の格好で、何しろジャケットを砕かれたものだから上半身の大部分と下半身の一部に置いて殆ど肌が完全に露出──失礼、どうもモニターの調子が悪いらしい。モニターが切れたので描写はここまでにさせていただく。

────

さて、こちらはノーヴェ、お相手はヴィヴィオとスバルのFW二人。名付けて仲良し格闘型(ナックル)コンビである。

ヴィヴィオの射撃に対応した隙に、スバルがノーヴェの元へ一気に走り込む。と、(ノーヴェ)と比べ威力に勝るキャリバーナックルの一撃が真正面からノーヴェに叩き込まれる。

ノーヴェ DAMAGE 600 LIFE 1300

それをノーヴェは腕を交差させ何とか防ぐが、ラッシュはこれで終わらない。強烈な一撃の威力を殺しきれず、体勢の浮いたノーヴェの後方には既にヴィヴィオが蹴りの体勢を取っているのだ。

「リボルバー……!」
「っ!」
ノーヴェが気が付き振り返ろうとするが、既に遅い。
魔力で疑似的に作り出したジェットエッジの脚鋼に似た魔力武装を、一気にヴィヴィオは振り切る。

「スパーイク!!」
「あぁっ!?」
クリーンヒット。自分の技を自分にぶつけられ、ノーヴェはそのまま後方に吹き飛ばされた。

ノーヴェ DAMAGE 1060 LIFE 240

────

さて、立て続けに此方は後方、キャロだ。彼女のお相手はルーテシア&ライノのコンビ。特にコンビ名が有る訳ではないが、強いて言うなら青組でも最もタチの悪……もとい、厄介なコンビと言えるだろう。

ライノ LIFE 2730
キャロ LIFE 1700

「いけっ!」
[Photon Lancer]
「ケリュケイオン!」
[Protection]
ライノの放った雷撃の槍を、キャロの展開する防御魔法が全て防ぎきる。先程からキャロは回復中のアインハルトを守りながらと言う戦闘だったが、全体の支援を司り、また位置取りの重要性から機動力の確保も課題とされるフルバック。猛攻の全てを次々に防御し、回避しを繰り返し、攻性に出れないながらも互角の戦いを展開していた。と、此処に来て、キャロが動いた。

彼女の周囲に、移動用の足場の魔法とは毛色の違う魔法陣が展開される。

「錬鉄召喚……!」
「っ!ライノ!」
「わかってら!」
キャロのたくらみに即座に気が付いたルーテシアがライノに注意を飛ばし、ライノ自身も言われるより早く回避動作をとる。

「アルケミックチェーン!!」
魔法陣から召喚されたのは尖端に刃を付けた鎖。
召喚され、キャロの物体操作魔法の管理下に入ったそれは、ライノとルーテシアを捕えようと空中へと伸びあがる。
が、事前に回避動作をとっていた二人にとって、それを躱す事は容易い。

「うっふふ~♪当たらない当たらない!」
「この位ならダンス踊ってでも躱せるぜ~♪」
何故か楽しげに笑いながら言ったライノとルーテシアはひょいひょいと器用に鎖を躱す。が……キャロはそれを見て、ニヤリと笑った。

「それはそうだよ。当てるためじゃなくて──」
「っ!」
その気配に、一瞬速く、ライノが気が付いた。

「──撃墜の為の布石だから!クラナ!」
『アルッ!行くよ!』
[Roger!!]
既に右手に魔力を充填したクラナが、少し離れた場所から彼等を睨みつけている事に。

「デストラクト・バスター!!」
カートリッジから実体化する魔力をロードし放たれたのはクラナの持つ最大の砲撃魔法。行き成り横から迫ったそれにルーテシアは反応できず。

「へっ!?」
建物ごと、吹っ飛ばされた。

「うそ────っ!!?」

ルーテシア DAMAGE 2360 LIFE 0

「クラナ!ナイスだよ!」
ビッ!とブイサインをクラナに示したキャロに、クラナは五指をそろえた片手をヒョイっと上げて答える。

「……油断大敵」
[ですね♪]
ふぅ、とクラナは息を付く。その時、気が付いた。

「っ!!」
「?」
キィィィンッと言う高い音。恐らくは……魔法弾の飛来音!

カコーンッ!!

「へうーっ!!?」
「っつぉ!」
直後、クラナとキャロの居た場所に其々魔法弾が着弾する。油断していたキャロはもろに頭にそれを喰らって妙な声を上げながら倒れ、対しクラナは気が付いた時点でその場を離れていた事でかするだけにとどめる。

キャロ DAMAGE 1700 LIFE 0
クラナ DAMAGE 110 LIFE 2020

「うん!よく避けられたね!」
「……油断大敵……でした」
「そう言う事!現場での鉄則だからね!」
「だな!今もだけど!」
「っ!!」
声と同時に反射的にバック転でそれを避けた。上に居たなのはを見ていたクラナの居た場所に振り下ろされたのは、大型のハルバード。
誰だかは、考えるまでもない。

「避けんなっての!」
「っ!(お断りだよっ!!)」
横一閃に振り切られたライノの一撃を、クラナは上体を思いっきり反らしてギリギリで避けつつ、そのまま地面に手を付いてライノの顎を蹴りあげようとして……

「っと!」
即座に察知したライノがバックステップでそれを避ける。

ライノDAMAGE 200 LIFE 2530

「ったく!殺す気だったろ!さっきの!」
「……(当たり前でしょ……)」
「ですよねー!」
呆れ顔になったクラナにライノが清々しいくらいの笑顔で言った。とは言え、向き合った互いの構えに隙は無い。
さて、そんなライノの後ろで、既になのはは次の動作に入っていた。

「ライノ君!クラナの抑えお願い!ブラスター1ッ!!」
「了解です!」
「っ!(げっ!?)」
なのはの最後の一言を聞いて、クラナは内心で顔をひきつらせた。
ブラスターモード。
多大な体力と魔力のロスと引き換えに、通常の限界値を遥かに超えた威力の魔法を放つ事が出来るレイジング・ハートに搭載された強化機構だ。
一応近年の調整で、体への負担は最低限に抑えられており、訓練であっても一瞬で有れば全く問題ないレベルになっているが問題なのは其処では無い。

問題なのはなのはが「それを発動した」と言う事。つまりなのはの次の一撃は、これまでにない高威力の攻撃。十中八九、「あれ」だ。
そう判断するや否や、クラナは“逃げ出した”。

「あっちょっ!」
ライノが一瞬追いかけようとしたが、クラナにスピードで敵う訳がない。と、遠くの空に、オレンジ色の巨大な魔力光が見えた事で、ライノも顔をひきつらせる。

「オイオイオイ……!」
言いながら、ライノは急いで術式を起動させた。

と、其々のチームに、CGからの通信が入る。

『赤組!生存者一同!』
『青組、生存メンバーに通達!』

『なのはさんを中心に広域砲を撃ちこみます!動けない人はそのまま、動ける人は、合図で離脱を!』
分割多弾砲(マルチレイド)で敵残存戦力を殲滅、ティアナの収束法(ブレイカー)を相殺します!!』

そうして、魔力が彼女達の元へ収束しきると同時、それらは放たれる

《モード:マルチレイド》
《シフト:ファントムストライク》

「「スターライト──!!!」」」
それは管理局内で確認されている中でも、有数の破壊力を持つ収束砲撃魔法。
そう、読者諸君、全員御存じの、星をも砕く破壊の光。

「「ブレイカ──────ッッ!!!!!!!!!」」

────

なのはの放った桃色の光と、ティアナの放った橙色の光が激突し、周囲の建物、がれき。何もかもをなぎ倒し、破壊し、砕け散らせる。
凄まじい重低音が大地を震わせ、観客席にすら地震のような振動が怒る。

「「…………」」
「……これ、なんて最終戦争?」
口を唖然と開けたまま何も言えないチビッ子二人の横で、セインが呟いた言葉に、メガーヌが流石に苦笑しながら答える。

「まー、収束砲(ブレイカー)同士が激突すればねぇ……」
正直に言わせていただきたい。
管理局は過去の戦争で使われた質量兵器が危険であると言う理由から主戦力を魔法に切り替えたそうだが、いくら人数が限られていて、[非殺傷設定]と言う仕組みが不明の設定が出来るとは言え、都市区画丸ごと一つを(しかもあくまで制限付きで)吹き飛ばせる破壊力を、個人に持たせておくと言うのはどうなのだ?正直場合によっては質量兵器よりも危険な気がするのは気のせいだろうか?と言うか、崩れた瓦礫だけで十分に人を殺せるぞ。オイ何処へ行く、戻ってこい非殺傷設定。

「さて、みんなは……?」
と、此処でメガーヌが全員の状態を確認しようとモニターを開いた。

それでは、破壊の光が起こした結果を見てみるとしよう。

フェイト LIFE 0 [SLB直前にエリオの一撃にて撃墜]
エリオ LIFE 0 [SLB-PS直撃により、撃墜]
青組、赤組其々のGW前衛の二人は撃墜である。ちなみにフェイトハ最早体の前面のジャケットが完全に破けており、見ようによってはエリオがひん剥いたようにも──失礼。モニターが爆発した。

さて、別の場所ではなのはが半泣きで地面にペタンと座り込んでいた。

「あ~ん!や~ら~れ~たぁ~!」

なのは LIFE 0 [SLB-PSを相殺しきれず、撃墜]
バリアジャケットはかなり破損しているが、特に問題はなさそうである。
と言うか直前まであの凶悪な砲撃を撃っていた彼女が半泣きだと、何と言うか、物凄くギャップを感じる。無論可愛らしいと言えばそうなのだが、見ようによってはあざといとも──失礼。モニターが消し飛んだ。

さて、対してもう赤組のCG事ティアナはと言うと……

「……な」
ティアナ DAMAGE 2390 LIFE 110

「何とか生き残った……」
生き残っていた。
この結果は、双方のSLBの性質が出たともいえよう。
なのはの放ったSLB-MRは、《マルチレイド》……つまり、ブラスターモード時に展開されるブラスタービットによって弾頭を分割し、目標を個々にロックオンする事で確実に敵戦力を一人一人殲滅するタイプの発射形態である。
対して、ティアナのSLB-PSは、砲撃の威力が一点から周囲に対して拡散するタイプの砲撃である。
ちなみにティアナはこれを放つために一度赤組の前衛メンバーに戦闘を行いつつ就寝に気に集めるよう指示を出しており、威力の集中率がティアナの方が高かったため、ブラスターモードで威力を底上げしているとはいえ、弾頭分割によって個々の弾頭の威力が下がったなのはのSLBでは、ティアナの破壊力を相殺しきれなかったのだ。

今回ばかりは、事前に準備したうえで的確な砲撃形態をチョイスした、ティアナの勝利と言えるだろう。

さて、そんなこんなで既にコロナ、リオ、ルーテシア、キャロはダウンしている。

「残ってるのはあたしと……後……」
モニターを確認して、ティアナは驚愕した。

「あと、四人!?」
予想よりも遥かに多い。
しかもその内一つが、全速力で此方に接近してくる……

「ちょ、このスピードって……スバル!?」
隠していたサーチャーからモニターを開く。

「じゃなくてヴィヴィオです!!」

ヴィヴィオ LIFE 1800

「うそぉっ!?なんでほぼ無傷!?」
間違いなくヴィヴィオは自分のSLBの範囲内に居た筈だ。あの砲撃を喰らって無傷と言うのは流石に……!

「……あ!」
其処で気が付いた。あの時ヴィヴィオのすぐ横に居たのは……

────

別の場所で、その立役者は快活に笑っていた

「えへへー、見たか!特救(レスキュー)魂!!」
「あー、くそ、やられた」

スバル LIFE 20 [SLBからヴィヴィオを庇い、行動不能]
ノーヴェ LIFE 0 [SLB着弾後、ヴィヴィオにの攻撃により撃墜]

そうなのだ。
ヴィヴィオのすぐ隣に居たのはスバル。彼女は元々救出のプロだが、同時に防御魔法、そして要救助者を自らの魔法で危険から庇う“保護”のプロでもある。
あの一瞬で其処までの判断が下せたのはまさしくレスキュー魂。見事の一言だ。

────

「この……!」
「アクセルシューター!」
「きゃあっ!?」
ティアナが迎撃の為に魔法弾を放ったが、焼け石に水。
ヴィヴィオの放った魔法弾が直撃し……

ティアナ DAMAGE 470 LIFE 0

その場でティアナは戦闘不能になった。
さて、ティアナを倒したからと油断は出来ない。まだ戦闘は終結していないのだ

「(よっし!残り二人!何処に……)」
そうヴィヴィオが考え、周囲を見渡そうとした……その先に、彼は居た。

「……あ……」

────

別の場所では、また別の人物が言葉を躱していた。

「こりゃ驚いた、一試合に二度も同じ奴が当たるとは……リベンジマッチかい?」
「……どのようにでも」
向き合っているのは、再び金髪と碧銀の少年少女。
ライノと、アインハルトだ。

────

ヴィヴィオ LIFE 1800
VS
クラナ LIFE 1720

アインハルト LIFE 1300
VS
ライノ LIFE 1210


試合の終結は、近かった。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

と言うわけで今回はSLB発射までを一気に駆け抜けましたw
いやぁ、ライフ管理疲れました!
そこらじゅうで変動する変動するw常にメモリながらの執筆でしたよw

しかしこれでようやく解放される。

さて、次回は注目のクラナVSヴィヴィオ!
え?ライノとはだれか別の奴をぶつけろよって?

す、すみません……展開の都合上仕方なく……し、しかし!次回はライノもちょっと驚く魔法を披露しますので!

では、予告です!


アル「どうもです!いやぁ激しいですね!この試合!」

ウォーロック「えぇ。まぁウチのマスターはふざけてばかりですが」

ア「そうですか?先を読んでの磁力による物体操作!かっこよかったじゃないですか!」

ウ「ずる賢いというのが正しい気もしますがね……と言うかウチのマスターは女性しか相手にしていない気がします。やはり変態でしょうか……」

ア「いや、それは比率の都合上仕方ないのでは……」

ウ「かばい伊達は無用です。いずれにせよ変態ですから。さて、それにしても次回は……あぁ、今度はあれを使うのですね」

ア「あれ?」

ウ「えぇ。少し、マスターの十八番のもう一つです」

ア「まだあるんですか?」

ウ「えぇまぁ。あの人は手数の種類だけは豊富なので。それよりも、そちらは大変ではないですか?」

ア「え?あぁ、あはは……ま、まぁ何とかなると」

ウ「……そうですか。では次回」

ア「《傷跡》です……うぅ、嫌な予感のするタイトルですねぇ」

ウ「そうならないよう祈りましょう……是非見て下さいね」 
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