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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第70話 少年と少女は本気のようです

Side ネギ

「ぐ…………っ。」

「流石ハ魔人殿由来の機体。劣化品では壊しきれないカ。」


太陽の光の代わりに放たれた闇は全方位に広がり、グレンラガン一機では軽減さえし切れなかった。

遠距離にいたのどかさんとハルナさん、気を緩めなかった楓さんと千雨さん以外の機体はもう動けない程

バラバラに破壊され、コックピットが無事なのが不思議くらいだ。

その四機も戦闘はほぼ不可能、グレンラガンも左腕が残っているだけだ。


「しかしあっけないネ……一撃でコレとは。実の所、私も遊びが過ぎたようだ。」

「ね、ネギ……生きてる?」

「明日菜さん!皆さん無事ですが、もう………。」

「そう、もうこれでお仕舞イだ。」
ズァァァァッ!


そして、また夜が広がる。

またアレが来るのか・・・!?これ以上は、もう耐えきれない!!


「『約束された(エクス)』―――………ガフッ!ゴフッ、ガハッ!!ちっ……。」

「ちゃ、超さん!?」


魔力が溜まり切るその時、超さんがいきなり吐血し、黒い魔力が弾けて消えた。

それだけでなく、超さんを包んでいた黒い鎧まで掻き消え、白い法衣に変わった。


「劣化品さえ、二度使えないとハね………。完成品でさえ所詮は紛い物カ。」

「か、完成品……?紛い物………!?な、なに自分の事作り物みたいに!」

「ふ、ふふふふふ………!!あはははははははははははははははは!!」


明日菜さんの言葉に、狂ったように嗤い出す超さん。

未来人、完成品、戦争、紛い物、愁磨さんの武装―――僕の中で、今まで聞いて、見た事が合致して行く。


「な、何笑ってんのよ!何がおかしいっての!?」

「フフフ、ハハハハハハハハ!!いぃや、神楽坂明日菜。まさか君がそこまで的確な答えを出すとはネ。

驚いた……いいや、その通りだヨ。」

「なに……が、その通りだってのよ……!?」


最後に短く笑うと、超さんを再び闇が包み、再度現れたその姿は・・・・・・黒い、救世主(メシア)

あの時、森で魔王と対峙した愁磨さんと瓜二つの姿。その姿が出来る、その理由。


「王都の名にして二人の"創造者"が総べる組織であり王国、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』。

その軍の"千団長"を務める、創造主が最高傑作にして完成品、コードネーム『魔人』。」

「ま、さか………そんな。超!!」


宙に浮き、今度は両手に魔剣を握る超さん。

僕もラガンから降り、今出来る強化魔法を全てかけ雷槍を握る。

・・・・・僕には、止める権利も無いのかもしれない。けれど、止めないと超さんが死んでしまう。

例え、その命が―――


「創造主が"創り上げた"、『不可能を冠する者(ヴァール・レミリエス)』と対を成す人形。それが私ダ。」


創られた物だとしても。

Side out


Side 超

「『怒りの英雄譚(グラーム・グトホルム)』!『悪龍討つ不死身の剣(バルムンク・ザイフリート)』!!」

「『桜花』、『郷紅』!同技・混合『満る雨桜』!!」


私の放った二撃を、ネギ坊主は雨の様に降り頻る桜の爆弾によって防ぎ切る。

『宝具』―――英雄が用いたそれは、名を開放することにより伝説の力を蘇らせる。

私の使う物は全て紛い物だガ、それでも人間が妥当する事など出来る筈も無イ。


「(それを、二発も止めるとハ。情報が無かったから仕方なかっタとは言え……。準備不足もいい所だネ。)

バル・ボル・ベルグ・バルホルス!彼の地より流れ灌げ禁忌の檻!其に罷り狂うは夢幻の檻!!

出れ地獄の!!『黒翼封ぜし黒水晶の棺(ノワール・オブ・ノワール)』!!」

「本当に何でもありなんですね……!?『救世主の(アートロポス)聖天(ヴェチェクニクタ)』!!」


対象を永遠に封じる地獄の最下層にある棺。本来なら壊す事すら不可能なのだガ、魔法一つで全て消し飛ぶ。

ヤレヤレ、この魔法を使う為に何万の妹達が失敗したと思っているのカ。


「ふぅ………どうやラ、君の魔法と私の魔法では相性ガ最悪らしい。」

「そうみたいですね……!それを分かった上で、千日手を打ち続けるのですか!?」

「千日手?いいや?最悪だからこそ、私には勝つ手があるのダよ。」


再び、ネギ坊主から距離をとる。コレの使う魔法は、造物主のモノだ。

故に魔人殿(創造主)の技ではいい所相討ち・・・いや、その『目的』故にこちらの魔法が

打ち消されル。だからこそこの魔法は絶対なのだ。


「……実の所、私の魔力はこの一撃で底を尽ク。だから、"この一騎討ち"は―――君の勝ちだ。」

「でも、"この戦い"には負けない……とでも言いたそうですね。」


私達の魔力が急速に練り上げられ、大気を歪める。・・・そんな中で、頬が緩むのを我慢しなくてハならない。

尤も、ネギ坊主はいやらしい笑みを浮かべているがネ。

全く・・・不愉快で、愉快でならない。結局の所、初めての本気の戦闘で高揚しているのだ。


「バル・ボル・ベルグ・バルホルス!我を従え果てに導け、魔軍の王!」

「ラステル・マスキル・マギステル!契約に従い我に従え、高殿の王!」


私の詠唱に反応し、ネギ坊主も詠唱を始める。・・・お勉強の出来る君は咄嗟にそれを詠唱すると思ったヨ。

この『皇帝王神』召喚魔法は、各属性の最大顕現であり極大魔法の一つだ。

特性として、創造主達が使う魔法と、同じ極大魔法以外を無効化する。そして威力が一定と言う事だ。

故に、ネギ坊主は同じく絶対魔法を使うしかない。普通の頭(・・・・)ではそうなるのダ。


「来れ、偽天を滅ぼす翼を纏う巨人!果てる永劫、天照る御神!!」

「来れ、巨神を滅ぼす燃え立つ雷霆!聳える黄塵、吼える雷神!!」


ダガ、これは極大魔法などではない。13属性ある内の最上にして最下の属性を持つ魔法。

全てを飲み込み、全てと相容れなイ。使用者に超常の力をもたらし、そして使用者を殺す。


「『雷神召喚』!!!」
GuOoooooooooooooooOoooooooooOooOOooOooooooo!!!


ネギ坊主の後ろに、雷を周囲に迸らせ最速の神が顕現する。

シカシ妙だネ?ネギ坊主では使えない筈なんだが。この魔法を使うにハ、ネギ坊主が内蔵している

魔力の5倍程は必要なはずダ。・・・まぁ良イか。今終わる私達には関係ない。


「我に宿れ、万物を宿す魔の化身!『魔人招来』!!!」

「召喚じゃない……!?」


驚くネギ坊主をしり目に、私に再び黒い魔力が纏って行ク。私が創った、私専用の魔法。

魔人殿が自身の力の一部を宿させる人形専用のコアを創ったまでは良かったガ・・・完成形である

私でも使えなイ代物だったのに気づいたのは、使用段階になってからだっタ。

故に創ったのダ、この魔法を。尤も、始めたのハこちらに来てからだがネ。


ドシュゥ!
「あぁ………何だ、この馬鹿げた力ハ………フフフ、フハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「ま、まるでゲームのラスボスみたいですね!!」


その比喩は・・・まぁ的を得ている。

なんせ私は三段階目の変身後な上、こんな姿でこんなセリフ吐いているんだからネ。


「さて、時間制限付きだからネ。とっとと終わらせて貰うヨ。」
キィィィン―――
「―――!!」


僕が気付いたのは、超さんが真横で指先にエネルギーを溜め始めたその時だった。

力の限り横飛びしつつ、無詠唱で出来損ないの『迸る雷霆の腕(アルシャルド・ベリィオ・ライオッド)』を盾代わりに呼び出す。

槍を交差させた瞬間、拳大だった光は僕を飲み込む。


「うわぁぁああああああ!!」

「只吹っ飛ぶとハ……余裕がある、ネ!!」
ズドォン!!
「くっ!『銀龍』!!」


今度は闇を纏った拳を、銀龍で迎撃する。けれど一瞬で砕かれ、僕に正拳がまともに当たる。

僕は二重に吹き飛び、グレンラガンにぶつかった所で漸く止まる。だけど、ここで止まる訳にはいかない。


「さ、『魔法の射手(サギタ・マギカ) 集束(コンウェルゲンティア) 光の1001矢(セリエス・ルークス)』!『弐桜華崩拳』!!」

「器用なものダ!!」
ズドォォン!


詠唱破棄で唱えた光の矢を拳に乗せ、『桜花』を超さんの蹴りに合わせる。

格闘戦(インファイト)で最速で使える一番強い技だったんだけれど、それで衝撃を軽減する程度・・・!

詠唱する暇なんて当然無いし、詰んだとはこの事を言うのかな・・・・。


「これでぇ!!「終わりな訳ないでしょうがぁ!!」
ドガッ!
ぬぁっ!?」

「今のウチに離れるでござる、ネギ坊主!!」
ズドォン! ズドォン! ズドォン!
「あ、明日菜さん楓さん!?」


いきなり跳び蹴りと爆撃苦無を受け、超さんが釘付けになった。

一応超さんが挟み撃ちになる形にして、雷槍を詠唱・待機させておく。

・・・いやいや、毎回の事だけど、明日菜さんの『魔力無効化』とでも言える能力はなんなんだろう?

あんなのチートだよ!頑張ってた僕が馬鹿みたいじゃないか!


「(いやいや、今は置いておこう・・・!)」
風の精霊539人(セブテンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス)縛鎖となりて(ウィンクルム・ファクティ)敵を捕まえろ(イニミクム・カプテント)『魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)』!! 」
ギュルルルルル!
「ぬ……!?こんなもので私を捕えたとでモ思うのかネ?」

「思いませんよ!『魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・雷の653矢(セリエス・フルグラーリス)』!

風精召喚(エウォカーティオ・ウァルキュリアールム)剣を執る戦友(コントゥベルナーリア・グラディアーリア)!捕まえて(アゲ・カピアント)!! 」
ドガガガガガガガガァ! ドギュギュギュギュギュギュゥア!
「……………ひ、酷いネ。動けない女の子相手にこれだけ攻撃するとハ……。」


最高に面白そうな顔でそんな事言われても、全然良心が痛まないよ!・・・いや、実は少しだけ。

もとい!超さんはさっき「時間制限付き」って言った。なら、このまま捕えてさえいれば!


「私を殺す必要ハない………まさカ、そんな巫山戯た事を考えては居まいナ!!」
ビキビキビキ―――
「―――!?え、解放《エーミッタム》!『雷皇の三鉾(ティレイス・ドライティス・ヴォローエ・アフトラークラ)』!! 」
ドンドンドン!


捕縛魔法が破壊される寸前、待機させておいた雷の投擲(ヤクラーティオー・フルゴーリス)で更に拘束を増やす。

まさか拘束する500の風矢と100の風精、600の麻痺させる雷矢が一瞬で弾かれそうになるなんて・・・。


「明日菜さん今です!超さんを思いっきりどついてください!!」

「どつ……って、ええ!?」

「早く!これ以上はもう保ちません!」

「あぁもう!意味分かんない上に嫌な役押し付けるわね!?」


今残っている全魔力で拘束している魔法を強化し続けている間に、明日菜さんが超さんに往復ビンタを始める。

・・・嫌な光景だよね、これ。超さんの強化魔法を手っ取り早く消すためとは言え、拘束されてる女の子を

同級生に殴らせてるんだから。


「もう、いい加減にしなさいよ!!」
スパァン!
「へぶっ!……ふ、巫山戯るな………!こんな阿呆な事で、この私が、この私がぁぁあああああ!!」
バシュゥ!

ォォォォォォオオォォオオォオオォオオオォォォォオオオオオオオオオオオオオ―――――――――!!!


超さんの纏っていた黒い服鎧が弾けると、それは無数の怨霊になって空に消えて行った。

アレが・・・超さんが完成するまでに散っていった妹達?あるいは、それ以外の・・・。

でも、これで超さんは無効化出来た筈だ。だけど・・・!


「………そウ、君達にはもう"アンサラー"を止める事は出来ないイ。

あと五分もすれバ加速を始め、十分後には成層圏外に到達。我々の勝ちだ……。」

「じゅ、十分!?十分でアレを落とせって言うの!?」


まだ拘束されたまま再び白い法衣に戻った超さんが、勝ちを確定させた顔で自信満々に勝利宣言をする。

あと十分・・・いや、あと五分でアレを落とさないと、僕達は再び負けてしまう。

そうなったら、人が皆消えてしまう!


「あそこまで辿り着ける人は着いて来て下さい!例え駄目でも、精一杯足掻きます!」

「「「「アホかぁ!!」」」」
スパパパパァン!!
「へぶぅ!!」


僕の号令に合わせ、明日菜さん・古菲さん・楓さん・千雨さんのハリセンが後頭部へ炸裂する。

そのまま空中で強制前転、一回転して地面に顔を叩き付ける羽目になる。

い、痛い・・・!?ハリセンでこの威力とかありえないでしょ!?てかなんで叩かれたの!?


「叩くでしょうが!馬鹿なの!?」

「ここまで来てそれはいくらなんでもテンション下がるアルよ!指揮官失格ネ!」

「あぁ、いや何というか……拙者でもいかんと思うでござるよ?」

「リーダーがんな半端な事言ってたら勝てる勝負も勝てねぇだろうが!ここで言う事ったら一つだけだろうが!」


ハリセンを持って腕を組んだ四人と、その後ろに不満顔の皆さん。

・・・駄目だな。気を抜いてるつもりはないけれど、前のネガティブと言うかグダグダモードに入っちゃう。

ポジティブ、前のめり、全力、特攻、カミカゼ、大丈夫、マイペース、何とかなる、僕は僕。信じろ。


「皆さん……あの城を落とします、絶対!大丈夫、きっと何とかなります!」

「微妙っ!」

「もう一言!」

「えぇっ!?えーっと……僕は、僕と皆さんを信じます!い、行きますよ!!」

「まぁ、60点って所でござるな。」

「そうだな。イマイチリーダーっぽくないけど。」


・・・まだ好きな様に言っている皆さんより先行して、空に浮く"アンサラー"と呼ばれていた城へ突撃する。

若干遅れてついて来たのは、先程のハリセン四人衆の武闘派三人。・・・いや、根に持ってなんかいないよ?


「(ああ言ったはいいけれど、今の僕達じゃ絶対にあの衛星兵器を落とせない・・・!

魔力も殆どないし、自爆させるくらいしか方法が思い当たらない。)」

「皆さん、乗ってください!」

「せ、刹那さん!?助かります!」


僕達が海の上を飛んでいると、黒い武士の様な機体に乗って今まで見えなかった刹那さんが飛んで来た。

何をしていたのか凄く気になる所だけれど、機体が破損しているし、どこかで戦っていたんだろう。

それよりも今は、戦力が増えた事だけを喜ぶべきだ。


「刹那さん、一時停止してください!

"ラステル・マスキル・マギステル 集い来たりて敵を撃て 全てを掻き消せ、暁の焔!!"『穿てり魔砲の大天(メガラオウラニア・マギルペリエス)』!!」
ズギャォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


機体を止め、火と闇の大砲を"アンサラー"へ撃つ。威力は上級魔法に匹敵するこれが通じないなら、

やっぱり内部に入って、どうにかして自爆させないと―――
パシンッ

「な、そんな……!!」

「なによ、アレ…………。」


僅かな希望を乗せた砲撃は、緑のビームシールドの様な物に軽い音を立てて消えた。

当たった一瞬見えた緑の盾は、巨大な"アンサラー"を包み込んでいた。つまり・・・


「外部からの攻撃も受け付けず、中にも入れず……ただ見ているしかない。

絶対守護領域"ブレイズ・ルミナス"、そして、アレを突破しても概念反転の装甲魔法が全体に張られています。」

「アレ突破してもまだ先があるアルか!?」

「…………つまり刹那殿には、その両方を破壊できる策があるのでござるな?」

「いいえ、私がやれるのは外側の楽な方だけです。」


そう言うと刹那さんは、僕達に離れているよう指示する。僕は50mほど後方で風魔法で皆さんと一緒に浮遊しておく。

・・・外側の楽な方、って言った?じゃあ中の難しい方は一体どうするのか―――


「"斬月"、神経電位接続。操縦者との追随時間差を0.2秒に設定。コックピット開放。」


刹那さんはいつもの物と違う長い刀を携え、"斬月"から降りて来た。その背中には見慣れない装置をつけ、

そこから機体へとつながる太いコードがズルリと延びている。

な、なぜ態々機体から降りるんだ?愁磨さん達じゃあるまいし、素の状態の方が強いとでも!?


「起きなさい、『十束剣(トツカノツルギ)』。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

subSide 刹那

「ハァァァァァァアアアア!!」
ズドォン!
「おぉっと。危ないじゃないかお嬢さん。」

「無事ですか、学園長?今のウチに傷を癒してください。」

「せ、刹那君か………正直助かったぞい。」


ネギ先生達が使っていたダイオラマ内、"グレンラガン"の更に奥に隠されていた"斬月"を起動・繰り出し、

超さんが召喚した(と思われる)悪魔と戦っている学園長を発見、助太刀に入る。

情報が正しければ、七大罪を持つ悪魔の王がそれぞれ持つ()、その総帥師団を取りまとめる者。


「魔軍師団長、『"天我爆散"松永久秀』。歴史に違わぬ奇人変人ぶりで。」

「おや、卿は私の事を知っているのかね。割と嫌われ者……いや、マイナーな部類だと自負していたのだが。

認識を改めるべきかな?」

「いいえ、あなたはどうしようもなくクソッたれな下種野郎ですよ。」

「フ、フ、フ……!なんとも口の悪いお嬢さんだ!」
ガギィン!

松永の長剣を斬月の制動刀で受け、投げられる爆弾を頭部の衝撃拡散自在繊維と輻射障壁で防御する。

・・・なんとも便利な事だ。生身ではこうはいかない。

そして、それを使ってもなおあの人数で超さん一人に勝てないあの人達にはいつまでも任せられない。


「技巧設定"大斬撃・陰ノ太刀"、発動キー"斬魔剣・二の太刀"!コクピット開放!」 

「ほう、自分から盾を捨てるとは。」

「まさか。私は盾など持ち合わせません。私はいつでも剣です!神鳴流奥義『百花繚乱』!!」
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザン!
「それこそまさかだよ。高々百連撃で私に届くとでも思うのかね?」


"百花繚乱"を全て受ける松永。ですが、そんな事は分かってました。

だから、93,94,95・・・ここ!!


「神鳴流奥義『斬魔剣・二の太刀』!!」
ザンッ!
「おぉっと。危ない危な―――
ガドンッ!
ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」


"百花繚乱"の98撃目を無理矢理"二の太刀"に繋げる。これで倒せれば御の字でしたが、当然の様に防がれる。

そこへ斬月の大上段から放たれる斬撃が降る。いくら魔剣と言えど、所詮は細身の剣。

星鉄の塊で作られた大剣を真上から受け止めれば、折れる!

バキンッ
「ふっ!まだまだ終われんよ、このようなものでは!」
ドガォンガドォンボゴォォン!!
「ええ、その程度でも終わりませんよ!『翼族流 光皇・虚神』!神鳴流奥義『斬魔剣・参の太刀』!!!」
ゴォゥッ!

刀を折られた松永がばら撒いた爆弾を斬月で防御する。流石に多かったようで、あちこちが破損する。

それを無視して、肉体強化と気を増加させる。そして放つのは、斬魔剣の第三技。

一は選んだものを、二は防御を無視する技。しかし参は、あまりに別物ともいえる技。それは―――


「どぉりゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
ズッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「ぐぅぅぅぅぅ、はははははははははははは!」


自分の力と気によって、無理矢理相手を斬る力技。

しかし、無理な強化をした甲斐あって松永を斬り伏せる事に成功する。ですが、これで―――

パキンッ
「……ご苦労様です、"夕凪"。無理に付き合わせてしまいましたね。」


愛刀"夕凪"は、奇しくも先程の松永の刀と同様、真ん中から折れてしまいます。

いくら鍛えられた刀と言えど、普通の刀。愁磨さんの技による強化と魔王級の障壁との激突・・・

耐えきれるものではありません。


「おや、おや………私を倒すため、だけに……刀を犠牲にするとは。」

「!?まだ、生きてっ!」

「いやはや、勘違いしないでいただきたい……。この様だ、もうすぐ地獄に帰るよ。

だが、その前に……。」


上半身だけになった松永は、下半身の方についている鞘を取り、そこで何か呪文を呟く。

するとそこに先程とは別の刀が現れ、それを私に差し出す。


「……何のつもりですか?」

「いや、何。刀が折れれば、贈呈するのが信条でね。それと……卿の成長に少々先を見た。」

「………いいでしょう。刃を交えた者として信じましょう。」

「ふふふ、思い切りも良い。それは宝刀"十束"。あぁ、ついでにこれも進呈しよう。

やはり武士には脇差あってこそだからね。」


更に(こちらはごく軽く)脇差をポイと放って来る。な、なんだか異常に禍々しい気が張り付いて・・・。


「それの名は"不動行光"。信長殿の持ち物であったが、少々くすねて来たのだ。」

「ちょ、そんなものを私に渡されても―――ああ、もう……。」


文句を言う前に、松永は砂の様に消えてしまう。・・・災厄を撒き散らす悪魔の長の割に、随分呆気ない。

まぁ史実の通り自爆とかされるよりは全然いいのですけれど。


「さぁ、急がないといけませんね。」


代わりの武器が手に入って良かったと思うに留めておきましょう。

次の相手には、いくら武装があっても足りないでしょうから。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「更に面を上げなさい、"不動行光"!」


刹那さんが刀の名前を呼ぶと、呼応したかのように長短両刀が鈍く光り出す。

こ、この魔力の感じは何回か感じた気がするんだけれど・・・。


「『翼族流 光皇・虚神』!神鳴流 我流奥義!『魔王之剣』!!」
ドッザァン!!

長刀と短刀から伸びた闇は天まで伸び、"アンサラー"を同時に上から切り伏せる。

その軌跡と全く同じ場所にほぼ同時に"斬月"の剣が奔る。

・・・やっぱり第六天魔王信長の刀じゃないか!なんでそんなの持ってるの刹那さん!?


「連 斬!『陰ノ太刀』!!」
ザゥン!!

そこへ更に、目にも止まらない速さの二連撃が天へと昇る。

そして、魔人と魔王と魔軍師団長の六連撃を受け、絶対防御と謳われた緑の防御壁が砕ける。

バッギャアアアアアアアアアアア!!
「後は、任せましたよ……。」
ドサッ
「せ、刹那さん!って、このまま投げっぱなしな訳!?」

「いいえ、刹那さんが作ってくれたこの好機。逃す訳にはいきません!!」


"アンサラー"を見ると、先程までは見えなかった白い膜が覆っているのが見えた。

こっちの防御膜の方が硬いって言ってたけれど、刹那さんと同じ方法、かつ高出力ともっと連撃を叩き込めば!


「………ん?何か聞こえんでござるか?」

「こんな時に何を?…………た、確かに。って、これはまさか!?」


耳を澄ますまでも無く、音は徐々に大きくなっていく。

そして、この曲は麻帆良際でちょくちょく流れていた、あの人の登場曲の一つ―――!!


―――ガガ・ガガガ・ガオガイガー! ガガガ・ガガガガ・ガオガイガー!
ジャーン バァーーン!!

「フハハハハハハハハ!!待たせたな諸君!!」

『来た!来た来た来た来た来たぁぁぁーーーー!この時を待っていたとばかりに登場しやがった!

天誅の曲その背に背負い、敵の首領な筈の織原、ここに推参んんーーー!!』


手製の効果音と共に、獅子型のロボットの頭に乗って登場したのは・・・今まで姿を見せなかった愁磨さんだった。

Side out
 
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