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ユーノに憑依しました

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カレラに協力を取り付けました

「さあ、全部話せ!!」
「そう思うならまずは襟から手を離せ、未来の艦長殿」
「逃げようなんて考えるなよ? お前の事は今エイミィが調べてる」
「クロノ君、魔導師登録も本物、この子本人だよ、お金もちゃんと支払い元から裏が取れてる」
「アレを相手にするんだ、自分の命に値段は付けられない、その金額が俺の本気だ」

「アレの主を知っているのか?」
「知っている、それで依頼は受けるのか? 受けないのか? 聞けば戻れんぞ?」
「コイツ!」
「クロノ君!!」

「受けないのなら俺自身が切り札のデバイスを弄らせて貰う、もちろんブラスターどころかブレイカーを撃つのが精々だ、世界一つ、闇に呑まれるのを眺めると良い」
「……良いだろう、話を受ける」


 ……急に落ち着いた? 冷静になったと言うよりは、表に怒りを出さなくなったな。


「マリエルさん本人の口から聞きたいな」
「わかりました」
「マリー!? 良いの――――クロノ君の事知ってるの!?」

「……知ってますよ、有名な事件でしたから、だからこの依頼受けます」
「よろしい、では全額受け取ってくれ、パーツも好きに使ってくれ、次に持って来るデバイスに全力で取り組んでくれれば良い」
「……でもブラスターシステムには出力の問題があってまだ改善されてないんです、その点はどうにもする事ができません」

「構わんよ、足りない分はカートリッジシステムで補えば良い」
「カートリッジシステム!? ベルカのアレですか!? アレは制御が難しくてブラスターとの相性だって問題点がいくつ出るか判らないんですよ!?」

「今直ぐ完成させろと言っている訳ではない、復活まで数年ある、それまでに最低でも収束砲を撃てるようにして貰いたい」
「魔導師への負担だって倍になりますよ? それこそ命そのものを削る負荷がかかります」

「構わんからヤレ、第一使うのは俺じゃない、俺と同い年の女の子だ、誰かの為だと言ったら喜んで命を捨てるだろう」
「……君、本気で言ってるの?」
「もちろんだ、俺と同い年にしてAAAクラスの女の子だ、俺が用意できる最高の人材だ、彼女で駄目なら世界が一つ消えるくらい、いや、世界が終わっても仕方ない」

「……話を戻せ、アレの主は誰だ?」
「とある世界で普通に女の子をやってるよ、アレの存在も魔法の存在も知らずリンカーコアから魔力を吸われ続けて下半身が麻痺している、いずれ心臓に達して闇に飲まれるだろう」

「……救う方法はあるのか?」
「ある、その切り札の一つが収束砲を扱える女の子と依頼したデバイスだ、他にも必要なものが沢山ある、人材も条件も、山ほどな」
「どうやってアレを止めるつもりだ?」
「ブレイカーを扱える者を最低でも三人、本体を摘出してアルカンシェルで完全消滅……それが確実にアレを止める方法だ」

「……勝率は?」
「ゼロではない、それだけで充分だ……そして今アレの主をお前の師匠二匹が監視している、少女ごと凍結封印する為にな」
「……」
「……クロノ君?」
「……大丈夫だ、自分がどうしようもなく子供だと言う事を思い知らされただけだ」

「解っていると思うが、一時的な感情で行動を起こしてくれるなよ? 少女ごと失踪されたら探しようがないからな」
「解っている……お前はこれからどうするつもりだ?」
「数日中に様子を見に渡航する、向こうの魔力にも慣れなきゃいけないしな」

「……僕も連れて行けないか?」
「……現状では無理だ、お前の師匠を何とかしないと計画が破綻する」
「……そうか」


 クロノの表情に影が差す……その痛々しい表情にエイミィが何とかしようと気分を切り替えていた。


「ねえ、クロノ君、依頼を受けたんだからこの子はもう私達の仲間だよね? 歓迎会をしようよ、リンディ提督にも会わせよう? この子には味方が必要だよ?」
「……そうだな……あの人が関わってるなら、母さんの力が必要になる……」
「……荷物持とうか?」


 お呼ばれするのに手ぶらと言うのもな。


「あー、いいよいいよ、お客様は招待されるのがお仕事なんだから……ちょっと待っててね」


 エイミィが何処かへ連絡してから暫く経つと、赤いテスタロッサに乗ったリンディさんが到着した。


「ただいま、クロノ、お久しぶりねエイミィ、元気にしてた? あらマリエルも一緒だったの?」
「おかえり、母さん」
「お久しぶりです」
「ご無沙汰してます」
「……初めまして、今日三人と友達になったユーノ・スクライアです」


 魔導師登録をリンディさんに見せる。


「あら、スクライアの? こんな小さい歳で魔導師なんて、将来有望ね」
「クロノの部下になると、物凄くコキ使われそうなので管理局入りを考えてる所です」
「あらあら、どうしましょう? クロノ、優しくしてあげなくちゃ駄目よ? 貴方がお兄さんなんだから」

「年上なのは確かだが――――納得が行かない!」
「えーと、立ち話もなんですし、さっさと荷物乗せちゃいましょう? 今日の料理は楽しみにしてて下さいよー、張り切っちゃいますから」


 エイミィが車に荷物を詰め込んでいく。


「俺助手席が良いです」
「そう?」
「あの中に割り込む勇気なんて、とてもとても」
「確かに両手に花ね、頑張りなさいクロノ」

「母さんッ!! ……覚えてろよ!!」
「悪い、俺の頭の中は楽しい事でいっぱいなんだ、覚えてられない」
「はーい、クロノ君、後部座席詰めるからもっと寄って来て」
「……わかった」


 暫くミッドの市街地を走ってると一軒の家に着いた。
 一階建てだが庭が広く、綺麗に模様まで手入れしてある……芝生の刈り方がプロ過ぎるし業者を雇ってるなこれ。


「はい、到着よ、遠慮なくゆっくりしていってね」
「お邪魔します」


 手荷物をいくつか持ってリンディさんの後に続く。


「お手伝い偉いわね」
「コレくらいは当然です」
「……そう」


 ……何だろうな? 何か違和感を感じる。


 エイミィ達が台所に篭ってる間、リンディさんと二人っきりになった。


「おばさんと少し大人のお話しをしましょうか?」
「貴女がおばさんだと定義すると、倍生きていると思われる人が凄い事になるので止めて下さい」
「あら、そこに反応するの?」
「精神年齢なら貴女の何個か下ですよ俺」

「……魔導師登録は本物だった筈だけど?」
「別の世界の記憶があるんです、この世界は十年先までならいくつか言い当てられます、本当に少しの事だけなら」
「証明できるかしら?」

「明日の天気を言ったとしても、明日になるまで判らないでしょう? 貴女の孫の名前とか」
「……そうね、そうだわ……。 でも何か分かり易い物は無いかしら?」
「明日の朝、太陽が昇るだろうとか、誰でも知ってる当たり前な事を言っても意味無いんじゃないですか?」

「ブラスターシステムについて知っていたそうね? 一体どこから聞いたのかしら?」
「……何処だって良いでしょう? 十数年後ジェイル・スカリエッティによって地上本部が襲撃されると言って誰が信じます?」
「ジェイル・スカリエッティと言ったら次元犯罪者の? 予言にしたって具体的過ぎじゃないかしら?」
「予言、予言ね、騎士カリムのレアスキルがどんな物かなんて価値あります? アレって……どうしました?」

「ユーノ・スクライア君」
「はい?」
「明日は私とデートしましょうか?」

「身長とか色々な物が足りないと思いますけど?」
「行き先は聖王教会よ?」
「……へー、騎士カリムに会えます?」

「もちろんよ、今日の宿はどうしてるのかしら? ウチに泊まって朝から聖王教会へ行きましょうか?」
「良いですよ、ロッサの魔法でも使いますか?」
「……ロッサ?」
「アレ? 騎士カリムに義弟さん居ないんですか? クロノの友達だった筈ですけど?」

「クロノのお友達にロッサって呼ばれてる子が居るけど、聖王教会とは何の関係もなかった筈よ?」
「……今のは忘れて下さい」
「クロノ、ヴェロッサ君に連絡入れて、明日聖王教会に行きましょう」
「了解」


 その後、料理が出来てご馳走になった……リンディさんは楽しく食事をしていた、クロノは言うまでもなく不貞腐れていたが。


 翌日、聖王教会、騎士カリムが待機している部屋まで何度も身分証明や持ち物チェックが行われやっと通された。


「初めまして、私が騎士カリムです」
「……リンディさん、この人は寝惚けてるんですか?」


 騎士カリムと名乗ったその少女はショートヘアー、と言うかシスターシャッハだろこの子。


「何か問題でも?」
「さっさと騎士カリムを出して欲しいのですが? シスターシャッハ?」
「……何処かで、お会いしましたか?」
「いいえ、初対面ですよ、お会いするのはコレが初めてです」
「……騎士カリムにどのようなご用件ですか?」


 シャッハの眼つきが更に厳しくなった……そりゃあ、こんな不振人物、リンディさんの紹介じゃなかったら近づけたくもないだろう。


「話が伝わってませんかね? 未来知識を売りに来たから高額で買い取ってくれって話ですよ、コレがその全てです収めて下さい」


 一枚のデータチップを取り出してシャッハに投げる。
 この時渡した未来知識が『ユーノ・レポート』などと名付けられて数々の事件を大量生産して行く訳だが、当時の俺は多少の悪用くらい構わんと軽く見ていた。


「検証に質問、何でもどうぞ、時間いっぱい待たせてもらいますから」
「……拝見させて頂きます、暫くお待ちください」


 シャッハが退室した後、部屋には俺とリンディさん、クロノとロッサが残った。


「……あの、そろそろ僕が何故此処に居るのか説明して欲しいのですが?」
「ああ、ヴェロッサさん、呼び辛いんでロッサと呼んでも良いですか?」
「ええ、どうぞ」

「どうも、簡単な話ですよ、俺が数十年先までの未来知識を一部持っていて、そこにロッサの名前があった、それだけです」
「僕の名前が、ですか」
「何なら見ますか? まずは自分の名前で調べてみれば良いと思いますよ?」

「……何処でそれを……と言うのは、おかしな事になるんでしょうか?」
「視りゃ早いからな、クロノ、念の為に準備しておいてくれ、俺の頭に何か制限が掛けられてるかもしれないしな」
「……話を聞く限り、ロッサが『思考捜査』のレアスキルを持っている、で間違いないんだな?」
「ご名答、ロッサの反応がおかしかったら直ぐに引っぺがしてくれ」


 ロッサが俺の頭に『思考捜査』をかけて数十分、変な拒絶反応もなく、俺はリラックスして少しでも簡単に覗ける様に心掛けた。


「……終わりましたよ、『ユーノ先生』」
「ふむ、何か分かったか?」
「……貴方の未来知識は大変危険です、貴方はそれをまったく理解していない事が恐ろしい」

「そうかい、俺はその気になれば何時でも投げ捨てられるからな、それで? 俺には何故ロッサが騎士カリムの義弟なんてやってるか知らないんだが?」
「……それは僕にも分かりません、今の僕には『家』もありますし『家族』も健在です……事件か事故でこれから失う可能性が高いですね」
「もしくは、俺が居る事で未来が分岐したって事だろうな」


 コンコンコンコン、お仕事的なドアノックが部屋に響き、シャッハと騎士カリムが入って来た。


「初めまして、私が聖王教会 教会騎士団 騎士 カリム・グラシアです」
「ユーノ・スクライアです、興味はお持ちいただけましたか?」
「ええ、大変興味深いレポートでした、何をお望みでしょうか?」

「ギル・グレアムとの闇の書に関する共同戦線の後ろ盾、ジュエルシード発掘にレイジングハート発掘の協力と言った所でしょうか、できればナカジマ姉妹の救出もお願いしたいんですけど?」

「……良いでしょう、お金だけ欲しいと言うのならお帰り願った所なのですが、この騎士カリム全面的に協力させて頂きます」
「おー、話が上手く行き過ぎて怖いね」
「これから『物凄く』忙しくなるので、覚悟してくださいね?」


 ニコニコと微笑を向けてくるカリム……地獄への道連れを見つけた様な笑顔だ。


「さて、早速ですがヴァロッサ・アコースさん?」
「はい?」
「貴方の『家』の事でご相談があります、長くなりますので今日の所は解散と言う事でよろしいでしょうか?」
「ええ、連絡先はレポートに書いてあるので何時でも呼んで下さい」

 ……早速ロッサ『家』の事かよ、どんな不幸か知らないが幸多からん事を。 
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