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蒼き夢の果てに

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第5章 契約
  第72話 廃墟の聖堂

 
前書き
 第72話を更新します。

 次の更新は、
 9月26日、『ヴァレンタインから一週間』最終話。
 タイトルは、『夜景』です。

 その次の更新は、
 10月1日、『私は何処から来て、何処へ向かうのでしょうか?』第12話
 タイトルは、『今度は三人仲良く、だそうですよ?』です。
 

 
 風速にして四十メートルは有ろうかと言う北風(ミストラル)が巻き起こす巨大な波。
 白波が弾ける嵐の真っただ中、四方を切り立った断崖に守られたその小島は雄々しくその存在を誇示している。
 そう。何か言い様のない存在感を放つ小島。眼下に存在して居たのは、そんな、奇妙な感覚をもたらせる島で有った。

 もっとも、この感覚は俺自身がこの島。地球世界のこのイフ島の由来……マルセイユの街を護る為に要塞化された、だとか、主に政治犯を収容する為の監獄として利用された島だとか言う由来を知って居て、更に、その由来に相応しい周囲を切り立った崖に覆われている自然の要害と言う趣をこちらに向けて見せて居るから、そう感じて居るだけなのでしょうが。

 その瞬間、一際大きな風が周囲に吹き荒れ、今まで以上に大きな波が、高さにして二十メートルは有ろうかと言う断崖の上部にまで波を打ちつけた。

「このイフ島には、かつて湖の修道院と言う修道院が存在していたのですが、三年前の十月(ケンの月)、 第四週(ティワズの週)、ダエグの曜日に、周辺を荒らしまわっていた海賊に襲われ、修道院は焼け落ち、其処に居た修道女たちはすべて殺されるか、何処かに連れ去られたそうです」

 遙か上空から地上を見下ろし、そう説明を行う妖精女王ティターニア。
 そう言えば、確か地球世界に存在するイフ島に有った修道院も、十六世紀にオスマン帝国の海賊の襲撃を受けて壊滅したはずでしたか。

「ただ……」

 そう淡々と事実のみを告げていたティターニアが、その時、僅かにその美貌を曇らせた。
 そして続けて、

「その年以来、この十月最後のダエグの夜に、二年連続でマルセイユの街から少女が数人消えて居ます」

 ……と、不穏当極まりない台詞を口にしたのでした。
 それまで簡単に、と言う訳では有りませんが、一応、俺の知って居る地球世界の歴史にシンクロする形で話が推移して居た為に、そんなに強く意識を向けていた訳ではなかったのですが……。

 確かにそれが事実なら、そんな事件が存在する事を知って仕舞った以上、何らかの処置を行う必要が有るでしょう。それが仙人と言う物ですから。
 これが人知を超えたトコロで発生している事件ならば特に……。

 但し、

「子供が消えるのは確かに問題が有る状況かも知れないけど、それは、一年を通じて何時の時期でも起きて居るはず。この島で起きた悲劇と、その少女たちが消えると言う事件を同じ目線で考えるのは問題が有ると思うけどな」

 東洋人を思わせるティターニアを名乗る少女の、やや愁いに沈む横顔を見つめながらそう問い掛けた後、彼女の視線の先。……荒れ狂う水に削られつつある島に視線を移す俺。
 上空から見る限りでは切り立った断崖。最低でも二十メートルは有るかと言う切り立った断崖の上に石造りの城壁にも似た構造物を乗せた……まるで海上に浮かぶ要塞のような雰囲気の小島。
 そう。まるで、海に浮かぶカメの甲羅。まったく起伏を感じさせない自然に存在して居る島と言うよりは、人工島。判り易く言うなら、空港を作る為に埋め立てられた人工島と言う雰囲気。
 確かに、島の中央よりは北部側の海に面した断崖の上に建つ比較的大きな建物。一辺が三十メートル以上の正方形の建物だったであろう建築物が見えて居るだけですが……。

 ただ……。
 ただ、夜で有るにも関わらず、その建物からは灯火や、魔法の光が外部に漏れ出す事はなく、轟々と吹き荒ぶ北風の中に黒々とした廃墟に等しい雰囲気を周囲に放つのみ。
 まるで、有史以前からこの島のこの場所に立ち続けて居るのではないかと言う、そんな有り得ない想像までして来るような。
 そんな心の何処かをひっかくような。何処か奥深くをかき乱されるような、そんな不気味な雰囲気を漂わせている建物では有りました。

 しかし……。
 しかし、俺の問い掛けにゆっくりと首を横に二度振るティターニア。その彼女の動きに合わせて、彼女の腰まで届く長い黒髪がふわりと広がり、彼女に相応しい花の香りを俺の周囲にまで届けて来た。
 嵐の夜に相応しくない春の花の香りを……。

 そして、

「ブリミル教の聖堂となった時点で、その土地は私たち精霊に取っては影響を与えられない土地と成ります」

 この四月(フェオの月)にタバサに召喚されてから、ずっと感じて居た事。むしろ違和感と言っても良いレベルの事象。俺の探知魔法の邪魔をされるだけならば未だしも、ダンダリオンの鏡ですら邪魔をするブリミル教の聖堂。
 矢張り、この世界の中心と成って居る宗教と、俺やタバサの行使する精霊の魔法との相性はすこぶる悪いと言う事なのでしょう。

「あの湖の修道院に関しては、その信仰の拠点としての機能を失ってから既に三年。しかし、未だに私たち精霊の探知さえ受け付けない場所と成っています」

 そう言葉を続けたティターニア。
 確かに、それは異常。いくらかつて聖堂として機能していた場所だったとしても、それは、其処に暮らす者たちの日々の信仰心によって聖域としての機能が維持されて居たはず。
 そして、このイフ島がブリミル教への信仰を失ってから三年。しかし、未だブリミル教の聖堂としての機能を維持していると言う事は……。

「簡単に考えると、この地は未だブリミル教への信仰を失っていない」

 もしくは、三年前の段階でブリミル教以外への信仰を持つ何モノかの棲み家と成ったのか。
 其処まで考えが及んだ瞬間、少しの恐怖心と、そしてそれ以上の何かを強く感じる。
 そう。この世界に召喚されてから、向こうの世界ではあまり体験出来ない類の事件に度々遭遇させられましたから。

 そもそも、この世界に召喚された当日にレンのクモと言うレア物の魔獣と遭遇させられたトコロが始まりでしたから。

 そして、そいつらの中の一柱ならば、ヤツラに都合の良い結界を構築する事など訳は有りませんか……。

「タバサ。あの湖の修道院に関しての情報を何か持って居ないか?」

 この場所にやって来てから、俺とティターニアとの会話に一度も参加する事の無かった二人の内、蒼い髪の毛の少女に話を振る俺。
 それに、そもそも、その湖の修道院と言う名前すら胡散臭い状態。上空からその島……大体、東西に百二十メートル、南北に八十メートルほどの楕円形の小さい島の何処を探しても、湖など発見出来ませんから。
 しかし……。

「わたしは今夜ここを訪れるまで、プロヴァンス地方のここに、このような役割を持った島が存在している事さえ知らなかった」

 しかし、彼女にしては珍しい答えを返して来るタバサ。もっとも、彼女だって人間ですから、これは仕方がないでしょう。
 森羅万象、すべての事を知って居るはずはないのですから。

 それならば――

「湖の修道院とは、ガリアにプロヴァンス地方が併呑される前。元々独立領だった頃に建てられた修道院」

 もう一人の紫の髪の毛の少女に問い掛ける前……。彼女に対して視線を向けた瞬間、先に彼女の方から答えが返された。
 こちらも、この場所に辿り着いてからの初めての台詞なのですが……。
 それに、そう言えば地球世界でも、元々プロヴァンス地方と言うのはフランス領ではなかったような記憶も有りますか。

「そして、この修道院は本来存在していない人間を収容する為の修道院。故に、一般に知られる事はあまりない」

 まるで吸い込まれるような瞳で俺を見つめ続けながら、そう言葉を続ける湖の乙女。
 その瞬間、普段通り俺の右隣に立つ蒼い少女からかなり緊張したような気が発せられる。

 まして、彼女。タバサに取って、先ほどの湖の乙女の台詞には特別な意味が含まれて居る可能性が有りますから……。
 そう。本来存在しない人間。それはつまり、

【王家や貴族の表に出す事のない庶子。所謂、御落胤と言われる人間を収容していた修道院。そう言う事なのか?】

 かなり気が滅入る質問ですが、この質問は為さねばならない質問でしょう。
 もっとも、流石に実際の声に出しての質問などを行う訳には行かないので、【念話】に因る質問と成りましたが。
 ただ、この世界は中世ヨーロッパに似た世界で有るのですから、世嗣とそれ以外の間には明確な線引きが為されたはずですか。
 更に……。

 視線すら向ける事もなく、感覚のみをタバサに向ける俺。
 そう。本来存在しない人間。世嗣よりも年長の男子の庶子や、母親の身分が低い子供。そして、魔法至上主義世界と言う特殊なハルケギニアの貴族社会の中で魔法の才能に恵まれなかった者たち。
 いや、それ以外にもっと可能性の高い存在。忌むべき双子として生まれた片割れなどが幽閉される修道院の可能性が有る、と言う事ですから。

 俺の【問い】に対して、その視線だけで肯定の答えと為す湖の乙女。

 その答えを聞いた後、不自然に成らないようにゆっくりと視線を、波に洗われつつある小島に向ける俺。
 その小島。四方を切り立った断崖に囲まれ、その断崖の上に、更に城壁が積み上げられる堅牢な造り。
 そして、地球世界のこの時代のイフ島は、政治犯やユグノーたちなどを収容する監獄島で有った事実と照らし合わせて考えると……。

 この島が高貴なる者たちの牢獄で有る可能性が高いと言う事ですか。

 ただ、ここにタバサの妹。一度、夢の世界で出会い、十月に再会を果たした少女が、このイフ島の湖の修道院に確実に幽閉されて居た、とは限りませんが。
 但し、この眼下に見えて居る修道院が三年前に海賊に襲われた際に、ここで神に仕えていた修道女たちはすべて殺されるか、何処かに連れ去られたと言う話。

 そして、このような貴人を閉じ込めて置く女子修道院が他に有る可能性と――
 俺は、其処まで考えてから、再び月夜の似合う蒼い少女の麗姿に視線を戻す。

 そう。タバサがこの島と女子修道院の事を知らなかった事実を重ね合わせると……。

「取り敢えず、準備をしてからあの島に乗り込む。そうすれば、毎年起きる少女の行方不明事件と、あの廃墟と成った女子修道院との間に関係が有るか確認出来る可能性も有る。
 それで構わないな、ティターニア?」

 俺の決断に、淡い微笑みを持って答えるティターニア。
 但し、その春の女神に相応しい彼女の優しげな雰囲気でも、今回の事件に纏い付く闇を払拭する事は出来ませんでした。

 その瞬間も俺の生来の能力で護られた空間の外側では、雨を伴わない吹き荒ぶ北風と、その風が産み出す、すべてを削り取るが如き波が支配する嵐の夜が続いていた。


☆★☆★☆


 かつては荘厳な、と表現すべき祈りの場所だったはずの其処は、ステンドグラスは完全に抜け落ち、正面に存在したはずの神の似姿を描いたフレスコ画は半ば以上が床にばらまかれている。
 外界との境界線を意味する扉、内部に並ぶべき椅子はすべて炭化。いや、そもそも、焼け落ちた天井の残骸が其処かしこに転がる。

 廃墟と化してから間がない事は感じられる元ブリミル教の聖堂。

 もう誰も祈る事のない礼拝堂。
 二度と流れる事のないパイプオルガンと聖歌の響き。

 ここが三年前の惨劇の現場で有る事を差し引いたとしても、かなり危険な雰囲気を湛えている場所で有る事は間違いなかった。

 刹那。外界にて、轟と風が舞う。
 同時に立って居られないほどの物理的な圧力にまで高まった魔力を全身に感じる。
 そう。これは明らかに巨大な呪力。身体を包む精霊の護りと、この土地……元ブリミル教の聖地にして、今は何モノか判らない相手が支配する呪力が反発し合い、荒れ狂っていたのだ。

 そして――――

 ひたひた、ひたひた……。
 聞こえるはずのない素足で石畳を歩く足音。
 外は嵐。風が荒れ狂い、波が白く弾ける。

 ひたひた、ひたひた……。
 しかし、聞こえる足音。いや、同時に聞こえて来る水の滴り落ちる音と――
 向こう側(幽世)から響くフルートの単調な音色。

 振り返る俺。その視線の先。
 完全に焼け落ち、二度と閉じられる事の無くなった、かつては重い木製の扉が有った場所から眺められる石畳の道をひたひたと。ひたひたと進み来る数人の少女たち。
 その表情はすべて夢見る者のそれ。足取りも覚束なく、ただ夢遊病の如く身体を揺らし、こちらへと近付いて来る。
 すべてが夜着姿。薄いヴェールの如きそれから、麻や綿を思わせるそれ。このハルケギニア世界では中世ヨーロッパと違い夜着を着て就寝する、と言うスタイルがかなり浸透しているようなので、夢遊病の少女たちと遭遇したと考えても絶対に有り得ない話ではない。
 但し、すべての少女たちが全身を水で濡らし、髪から水……おそらく、海水を滴り落として居なければ。

 そして、彼女たちのゆっくりとした歩みに重なる単調なフルートの音色。
 覚醒している俺の耳にも届き、眠りへの抗い難い誘惑を奏で続けるフルートの音色が、この夢遊病の如き少女たちを操っていると判断しても問題はない。

 しかし、どうする?
 彼女たちの様子から考えると、彼女たちはマルセイユの街より何モノかに操られて、このイフ島の湖の修道院跡にまで連れて来られた人間。
 つまり三キロもの距離を、海を渡って来ても正気に返っていない以上、少々のショックを与えたトコロで効果が有るとは考えられない。

 僅かな逡巡の後の判断は一瞬。
 交わされる視線と視線。微かに首肯く仕草まで同じ。
 次の刹那。俺の手の中に現れる愛用の笛。そして、同じくタバサの手の中にも俺の愛用の笛と寸分違わぬ笛が現れていた。
 そうそれは、龍種専用宝貝の如意宝珠『護』と、その如意宝珠をその他の仙人でも扱えるように調整された宝珠『希』によって再現された笛。

 精神を整え、愛用の笛にくちびるを当てる俺とタバサ。
 その瞬間。紅蒼ふたつの月と北風。そして単調なフルートの音階に支配された世界に、新たに哀調を帯びたメロディと言う要素が加えられた。
 そう。たおやかで優美。高と低。強と弱。ふたつの異なった笛が創り上げる独特の世界観が、単調な音階をただ繰り返すだけで有った魔笛(フルート)の音色に重なり……。

 そして、次の瞬間。ふたつの笛が創り上げた世界に相応しい儚い歌声が重なった。

 淡々と……。

 そう。これはブレストの街でギアスにより操られ、暴徒と化した人々を解放した際に使用した術式のアレンジ。
 あの時と同じように俺を中心に置いて、タバサとは笛を通じて。湖の乙女とは曲を通じてお互いの霊気の増幅を行いながら、夢うつつの状態で歩み来る少女たちを操る魔笛の音色を凌駕して行こうとした術式。

 しかし!
 しかし、あの時と比べると今夜は状況が悪過ぎる。あの時は、土地神はこちらの味方。更に、近場に存在する龍穴もすべてコチラが支配下に置いた状態。
 対して今回の場合は、この場での土地神の召喚は行ってはいない。更に、龍穴に関しても、その場所の確認すら行えていない。
 まして、このイフ島自体が、俺や精霊魔法とは相性の悪い土地で有る可能性が高いので……。

 単調な音階を刻むフルートの調べと、長嘯術が産み出す拮抗。
 その拮抗により、髪より水を滴らせ、肌に張り付いた夜着により失いつつ有る体温をものともせずこちら……聖堂内へと進み続けて居た歩みが、この瞬間、停まった。

 その刹那。

「我は乞う。月とヤドリギを持って大地に城を描く」

 蒼穹より降り注ぐ蒼き光に導かれ、黒髪の少女の手より放たれる五本の矢。その矢が、廃墟と化した元ブリミル教の聖堂内に大輪の桔梗の花(五芒星)を咲かせる。

 そうだ。例えこの周囲の龍脈が相手の支配下に有ろうとも、コチラもガリアの龍脈をほぼ完全に支配下に置くティターニアが存在し、水の気を支配する湖の乙女が存在している。
 そして、この地は海に囲まれた小島の湖の修道院。名前も、そして地形からも水の気に溢れた場所で有り、精神支配された少女たちを操っているのも水の気。

 それならば、土克水。あふれ出す水の呪力を、土を用いて堰き止める。これが想像以上に効果を発揮する。
 更に、水生木。タバサと湖の乙女が集めた水気を木行の俺が少女たちの精神を揺さぶる長嘯の仙術として使用。
 これにより、半端な術など無効化する事は可能。

 まして、晴明桔梗印は、この世界に俺が召喚されてから度々遭遇して来た連中の能力を著しく減退させる効果を発揮する結界術でも有りますから。

 その瞬間!
 それまで、覚束ない足取りながらも、自らの足で大地を踏みしめ立って居た少女たちが、まるで糸の切れた操り人形の如き雰囲気で石畳の道に次々と倒れ込んで仕舞った。
 間違いない。矢張り彼女たちを操って居たのは水妖の類。
 そして、可能性として高まったのは、晴明桔梗印結界がかなりの効果を上げる神性を有して居ると言う事。

 そして、最後の少女が倒れた瞬間……。
 何処とも知れぬ場所から流れて来ていたフルートの音色が途絶え、世界は猛烈な北風が吹く、しかし、通常の理の支配する世界へと回復して居たのでした。


☆★☆★☆


「そうしたらワイバーン。彼女たちを連れて、マルセイユの街に先に帰ってくれるか」

 この島に操られて連れて来られた少女五人をワイバーンの背に預け、魔将ハルファス、炎の精霊サラマンダー、最後は俺自身の飛霊を護衛に着けて上空に送り出す。
 いや、本来ならばタバサも同時に連れて行って貰いたかったのですが……。

 そう考えながら、俺の右側に立つ少女に意識のみを向ける。
 何故ならば、俺と同期(シンクロ)状態に成った後に無防備と成るタバサの身体を護る為に割ける戦力がこのままでは……。
 しかし、ただ何となく危険な予感がするから、程度ではこの段階から同期状態を維持する訳にも行きませんから。

 そう考えた瞬間。

「折角集めた女の子たちを逃がしたのはキサマか?」

 背後から……この廃墟と化した元聖堂の奥から聞こえて来る若い男性の声。
 振り返った俺の視線の先。聖典の朗読を行う台の残骸が有る場所に立つ赤い僧服(カソック)を纏う青年神父。
 髪の毛は銀髪。肌は白人特有の肌。瞳は少し淡い茶色と、碧。視線はかなり強いがそれに比して、顔の造作は精悍と言うよりは西洋人の少年にありがちなやや線の細い美少年と言う容貌。

 そして、彼を取り巻くように傅く若い修道女たち。
 その姿は濃紺のゆったりとした質素な印象の衣装。所謂、修道女と聞いて最初にイメージされる丈の長いワンピースに大きな白い襟元。そして、頭をすっぽりと覆う形の白い頭巾(ウィンプル)。その上から、薄いヴェールを被る、典型的な修道女姿の少女たち。

 そう。この廃墟の聖堂にある意味一番似合わない存在で有りながら、ブリミル教の聖堂にならば存在していたとしても、何の不思議もない組み合わせ。

「まぁ、いいか。オイ、クソ餓鬼。そこの女ども三人を置いて行けば、オマエだけは見逃してやっても良い。さっさと何処かに消えろ」

 修道女たちに傅かれながら、とても聖職者とは言えないような口調でそう言う赤い僧服の少年。
 いや、修道女たちを傅かせている段階で真面な聖職者とは言えませんか。

 ただ、

「どうでもいいけどな、司祭さんよ。ここの聖堂は三年前に海賊に襲われて修道女たちは全員死亡か、行方不明状態になった訳やなかったのか?」

 赤い僧服の少年の周りに傅く少女と言って良い年齢層の修道女たちを見つめながら、そう問い掛ける俺。
 但し、その口調ほどお気楽極楽な気分では有りませんでしたが。

 何故ならば……。

 そんな俺の問い掛けに対して、不敵な……と言う笑みを見せる。
 そして、

「赤い僧服の意味は知らないのか、田舎者」

 かなり尊大な口調で逆に問い返して来た。
 しかし、赤い僧服の意味か……。

「赤い僧服とは、殉教者の色。神に捧げられた尊い聖人のための祝日に着用する」

 確か、ガリアでは十一月(ギューフの月)第一週(フレイアの週)、虚無の曜日は先祖を敬い、花を捧げる祝日と決まって居たはずですか。
 普通の場合ならば。

 俺の答えを聞いて、ニヤリ、と言う表現が似合う笑みを浮かべる少年。
 どうもこの銀髪オッドアイの少年は、顔の造作や全体から受ける印象と、口調や視線、更に雰囲気などが一致しない部分が大きいように感じるのですが……。
 何と言うか、妙に下卑た印象が有ると言うか……。

 そして、俺が訝しげな瞳で彼の事を見つめて居る事が妙に嬉しかったのか、かなり上機嫌な雰囲気で言葉を続ける。
 それまでの彼に相応しい口調で。

「此処に居た三十人以上の修道女たち。神に捧げられた殉教者たちの為の僧服。それが、この赤いカソックの意味だ」

 ほぼ、最悪の言葉を続けた赤い僧服の少年。
 そして、その台詞は大体想像通りの内容。

 何故ならば、俺の見鬼が、この目の前の少年に関しては生者のそれを発して居るのは感じて居たのですが、彼の周囲に傅いている少女たちに関しては、非常に強い陰の気を漂わせて居ましたから。
 間違いなく生者では纏う事が出来ない、死と言う雰囲気を……。

「判ったら、さっさとその女どもを残してここから消えな」

 そう言った瞬間、その赤い僧服の少年から何らかの魔力が発動する。
 そして、次の瞬間。赤い僧服の少年の両手に、黒白(こくびゃく)二振りの柳葉刀が握られていた。

 そうして、

「このジュール・セザールに殺されるか。好きな方を選べ、クソ餓鬼」

 ……と、彼の容姿や、服装に相応しくない口調でそう問い掛けて来たのでした。
 ジュール・セザール。成るほど、本名だとするとかなりの大物の名前を受け継いだ人物のようですな。

 しかし……。

 ………………。
 …………。

 ゆっくりと過ぎて行く時間。但し、この元ブリミル教の聖堂の廃墟全体が戦場の空気に包まれ、緊張している訳では有りません。
 いや、俺の目の前に存在している、腰を僅かに落とし、体重をつま先に掛け、両手に柳葉刀を構える姿のジュール・セザールと名乗った赤い少年からは戦意に満ちた気を感じる事は出来たのですが……。

「オマエ、一般人やろうが」

 前のシアエガ召喚の時に感じた妙な脱力感にも似た……。なんと言うか、やるせない、と言うか、もう、このまま宿に帰って眠りたいような、何処に持って行って良いのか判らない複雑な気分に囚われた俺が、そう問い掛ける。
 そう。俺がこの少年から感じて居るのは、確かにこのハルケギニア世界では貴族と呼ばれる魔法使いの中ではかなりのレベルの魔力を感じさせるモノでは有ります。

 しかし、彼に付き従う精霊は存在せず、両手に構えた黒白、二振りの柳葉刀からも、それなりの霊力を感じる事は出来ますが、どう贔屓目に見ても、俺の纏う精霊の護りを切り裂く事が出来る霊刀と言う程の業物でも有りません。
 こんな物を目の前で構えられたトコロで……。

「怪我せん内に、さっさとここから逃げ出した方がええで。俺の目で見る限りでは、少なくとも、オマエよりも、オマエの周りに居るその修道女たちの方が余程危険な気を放っているからな」

 コイツがここに有った聖堂を襲って、この少女たちを生きて居る死体状態に出来たとは思えない以上、コイツ以外に誰か黒幕が居る事は確実。
 それに、俺は弱い者イジメをして喜ぶようなゲスでは有りませんから。

「その余裕の態度が何時まで持って居られるかな!」

 徒手空拳。いや、それどころか、雰囲気を戦闘時のそれに持って行こうとしない俺に焦れたのか、魔力で実体化させた双刀を構え接近して来るジュール。
 その姿は、普通の人間の目で見たとするのなら、正に疾風。
 しかし、精霊の加護を得、アガレスを起動状態にして有る俺の目から見ると、鈍重なカメの歩みにも劣る動き。

 俺やタバサが存在している世界は大気さえ物理的な圧力を発生させる超高速の世界。
 対して、このジュール・セザールと言う名前の少年が存在して居るのは、人間の達人レベルの世界。

 正直、相手をするのもアホ臭いレベル。

 右手に構えた柳葉刀の左斜め上からの斬撃を軽く左脚を下げるだけで躱し、
 それに続く左腕が突き出して来る一閃は、上体を左に倒すだけで躱す。

 そして、突っ込んで来たヤツの身体に対して――

 一瞬の交錯の後、再びノロノロとした動きで離れるジュール。
 その見事な銀髪と、白磁と言うべき肌のおデコに、赤い痣を残して。

「キサマ!」

 再び、最初と同じ五メートルの向こう側から、今度は最初とは違う殺意の籠った瞳で俺の事を睨み付ける赤い僧服の少年ジュール。

「今のデコピンが本気の一撃なら、オマエの頭は吹っ飛んでいるトコロやで」

 もうアホ臭くて、説明をしてやるのも疲れるのですが……。それでも、まぁ、何が起きたのか、ジュールくんには理解出来ていないでしょうから。

「そもそも、正面から相対した段階で、相手の実力も理解出来ない程度の人間では話にもなる訳がないでしょうが」

 もっとも、この部分に関しては、俺の方が武器を構える事さえ行っていないので、その構えた姿から、俺の実力の一端を計る事が出来なかった以上、俺を殺意の籠った視線で見つめるこの少年の方に大きな落ち度は無かったとは思いますが。
 ただ、そんな相手に本気で斬り掛かって来る事が出来る性根のヤツだと言う事は理解出来ました。
 この目の前の銀髪オッドアイの美少年がね。

 いい加減、この馬鹿を排除して、さっさとこの事件の黒幕を引っ張り出した方が早いかな、と考え始めた俺。
 その瞬間、

 寸前までジュールが手にしていた柳葉刀が消滅。
 その代わりに現れる二メートルあまりの和弓と、刀身の捻じれた禍々しいまでの気を放つ剣。

 そして、その剣先を俺に照準。
 強き瞳に俺を映し、呪文を唱え続ける薄いくちびる。
 その弦を引き絞る姿は、ある種の神々しさを感じさせる。

「成るほど、接近戦は得意なようだな。それなら、これはどうだ!」

 その言葉と同時に放たれる螺旋の剣。
 それは高速の飛翔物体となって――――

 素直に俺に躱された螺旋の剣は、乾いた、空しい音を立てて俺の後方……開かれたままの聖堂の扉を抜け、石畳の道に着地。そのまま、放たれた時のベクトルを維持して少し身を滑らせ、カランと言う音と共に停まって仕舞った。

 ………………。
 空しく過ぎて行く時間。
 呆然とした表情で、その剣の滑って行く様を見つめるジュール。

 そして……。

「おまえ、なぁ。禁呪と言う仙術を知って居るか?」

 手の中に次々と武器を出現させるなど、色々と芸だけは達者な雰囲気のジュールくんに対して、そう問い掛ける俺。
 しかし、完全に失調状態のヤツから言葉を返される事はない。

「普通に考えて、あれだけ、これから何かやりますよ、と言う雰囲気を発して居て、それを黙って見ているほどのノータリンばかりやないで。世の中の人間と言うのは」

 まして、この目の前のオッドアイの少年ジュールくんは精霊を支配出来ない一般人。魔法への抵抗力はゼロと言っても言い過ぎではないレベル。
 あれだけ前振りが長い技に介入して、技の効果を発揮させない禁呪の術式を組み上げる事など児戯に等しい。

 はっきり言うと、駆け出しの道士が操る禁呪の初歩の初歩。術を禁ずれば、すなわち現る事あたわず……だけで禁止して仕舞える程度の抵抗力しか持って居ませんでしたから。

「俺の技が通用しない?」

 完全に失調状態のジュール。呆然と何処かを見つめる瞳が――――
 しかし!

「天の鎖よ!」

 一瞬の閃き。その言葉の発せられた瞬間、それまで何も無かった空間に穿たれる穴。
 その、何処とも知れない空間より顕われた鎖が俺を絡め取ろうとした正にその刹那!

 俺とその鎖の間に現れる防御用の魔術回路。蒼く光り輝くその明かりに因り、世界が完全に包み込まれ、
 その光が消えた瞬間、自ら召喚した鎖に雁字搦めにされ、大地に転がって居るジュール。

「せやから、オマエさんの攻撃は遅すぎて、更に術への抵抗が低すぎるから簡単にカウンター用の術式を組み上げる事が出来る、と言う取るだろうが」

 床に転がされたジュールを結果的に上から目線となる位置関係から見つめながら、そう話し掛ける俺。
 但し、この部分に関しては少しばかりの欺瞞が存在しています。この作用は自らに施して有る神明帰鏡符の効果により、一度だけあらゆる物理攻撃を完全に反射させただけ。
 流石に、あの瞬間に現れた鎖の持つ呪いをすべて解析して、その効果を完全に反射する術式を組み上げられるほど、俺は完璧超人と言う訳では有りませんから。
 もっとも、兵は詭道。こんなトコロですべてのタネを明かしてやる必要は有りませんから、この説明だけで、廃墟の聖堂の床の上に己の召喚した鎖に因って雁字搦めにされて転がって居る、このジュールくんには十分でしょう。

 そして、完全に簀巻きにされ、身体の自由を奪われたジュールに無造作に近付き、懐から取り出した二枚の呪符をヤツの額に張り付ける俺。
 一枚は、先ほどから術として使用している相手の術の発動を防ぐ呪符。
 もう一枚は、身体の自由を完全に奪って、身動きする事さえ出来なくする呪符。

 これで、自ら召喚した鎖でぐるぐる巻きにされたコイツが、これ以上何かを出来る事は無くなりますから。

 最早、物理的な影響さえ出ても不思議では無いレベルの視線で俺を見つめるジュール。もっとも、この程度のヤツにどう思われようとも、俺自身は屁とも思わないのですが。

「何故、神にすべての系統魔法のスクエアクラスの才能や、その他の能力を与えられた英雄に成るべき俺が、キサマのようなクソ餓鬼に負けなければならない」

 何か、良く判らない理由で、言葉のみで俺に噛みついて来るジュール。
 ただ、そんな簡単な事も判らないから、俺に喧嘩を売った挙句、返り討ちに遭うと言う醜態を晒す事と成るのでしょうが。

 少し肩をすくめて見せる俺。そんな俺を、相変わらず殺意の籠った視線で見上げるジュールくん。

「どんな神の恩寵でその能力を得たのか判らへんけど、その神から与えられた能力と言うのは、おそらく、その神を殺す事は出来ないレベルやろう。
 それとも何か。その神に牙を剥く可能性の有る英雄に、自らを倒せるだけの能力を与える自殺願望の有る神様だったと言うのか、オマエに能力をくれた神様は」

 非常に判り易い説明を行う俺。
 そう。どんなに一般人よりも優れた能力が与えられたとしても、コイツの能力は神に与えられた能力。それ故、その能力を与えた存在以上には絶対に成り得ません。
 対して俺の能力は、神話上でも……。更に現実でも、その神を屠る能力を持つ龍種で有り、仙人でも有ると言う存在。

「つまり、オマエさんに能力を与えた神と言う存在が、俺よりも能力が低かった。ただ、それだけの理由やな」

 そんな相手に真正面から挑んで勝てる理由と言う物が有るのなら、そちらの方を教えて貰いたいぐらいですよ。

 刹那、俺の左右から挟み込むようにして、その年頃の少女に相応しい細い腕が振るわれる。
 しかし!

 一瞬前まで俺の頭が有った場所で、むなしく空を切るかぎ爪。
 そして、その瞬間、左右に存在していた白き修道女の衣装に身を包んだ少女たちが、足払いを受けその場で倒れ込んで仕舞った。
 そう、その攻撃を仰向けに倒れ込む事に因り完全に回避する事に成功した俺が、間髪入れずにその場で体操選手があん馬の技を見せるような自然な流れで、左右から挟み込むように接近していた白き修道女たちの足を払って居たのだ。

 その瞬間!
 俺の周囲を取り囲もうとした白き修道女たちが緑色の液体を撒き散らしながら、次々と倒れて行く。
 ティターニアが放つヤドリギの矢、更に湖の乙女が放った氷の刃が、白い手袋を引き裂いて巨大なカギ爪を露わにした元修道女の少女たちを瞬時に打ち倒して行ったのだ。

 そう。彼女たちが手を出して来るのなら、俺の背後に存在する少女たちが俺を護るために動き出す事は必然。
 華奢な手に不釣合いなカギ爪を振り上げた瞬間、緑の液体を撒き散らせて跳ね飛ばされて仕舞う、薄いヴェールと白のウィンブルに覆われた元修道女の首。

 ほぼ一瞬の内に俺の傍へと進み来て並ぶ蒼き吸血姫の右手には、彼女の霊気の高まりに合わせて光り輝く七星の宝刀。
 その輝きに、少し気圧されるかのように包囲を縮めようとした元修道女にして、現在は異形のモノと化した存在たちの動きが一瞬止まる。

 光りを恐れ、緑色の体液をばら撒く従者――――
 アンデットを操る能力と湖の修道院と言う名前――――
 更に、夢遊病者のような状態で犠牲者たちを自らの元に招き寄せる邪神――――

 一瞬、今回の事件の黒幕に関するヒントから類推出来る邪神の名前が頭の中に過ぎて行く。
 しかし、それも刹那の時間。

 二人の修道女の足払いを行った姿勢から、身体のバネと腕の力を利用して前方へ向け跳ね上がり、床に転がされたジュールを越え、その包囲を縮めようとした元修道女。現在は、アンデットの化け物の少女たちの中心に飛び込む俺。

 その瞬間。
 屋根が完全に焼け落ちた廃墟の聖堂内が蒼白き強力な光りに包まれ、
 そしてそれに続く爆音。最後に、すべてを吹き飛ばす猛烈な衝撃破が発生した。

 そう。飛び込んだ瞬間に、俺の生来の能力で召喚された雷撃と、湖の乙女。更にはタバサに因り召喚された雷公の腕が周囲に存在していた元修道女の少女たちを吹き飛ばし、彼女たちを可憐な修道女の姿から、本来のおぞましい姿へと変えて行ったのだ。
 おぞましい姿。身体の各所を失い、其処から緑色の体液を発しながら徐々に擬似的な生命体としての機能を失って行く修道女たち。

 但し、それが本来の自然な姿。この緑色の液体とは、彼女たちを操っている邪神が注入した物。
 彼女らは本来、三年前。もしかするとそれ以前の段階で、すべて人間としての機能を失っているはずですから。

 そうして……。

 完全な沈黙。
 大地には身体の各部位を失い、其処から緑色の液体を流し続けるアンデットの少女たち。
 そして、自らの召喚した鎖に因り完全に拘束された上に、俺がヤツの魔法と四肢の自由を奪われたジュール・セザール。

 しかし、これは仮初の終わり――――
 そう考えた俺が……。

 
 

 
後書き
 今回の話は異例中の異例です。
 元々、無双モノと成る部分を含んでいる物語なのですが、私自身が俺様無双の物語はどうも苦手で……。
 それでも、この物語は『神を殺す』物語。故に主人公やタバサにはかなりの能力を始めから持たして置かなければならなかった。それでなければ、最終的な結果を得る前に、能力的な部分にかなりの下駄を履かせる必要が出て来ますから。

 それで、一般人。ゼロ魔原作のキャラから離れて、完全に独自のルートを進めば良いか、と思って居ました。
 まして、登場している敵はクトゥルフの邪神を始めとする『神話級の化け物』。これで、十分に能力に関しては伝わって居るだろうと、考えて居たのですが……。

 どうも、それだけでは主人公やタバサの能力が伝わり難かったらしい。

 その部分を指摘されて、仕方がなく、普通の二次小説ならば十分俺様無双が出来るレベルの人物を登場させて、そいつ等ではどうしようもないレベルの登場人物たちなんだよ、と判り易く説明する回と成ったのです。
 もっとも、このレベルの転生者では、ゼロ魔原作のジョゼフの『加速』を相手にした場合にでも瞬殺されるのですけどね。
 ゼロ魔原作のガンダールヴの能力でもジョゼフの動きを見切る事が出来なかったので、人間から見て、そいつの動きが凄いと判る程度の能力しか発揮出来ない連中では、本来、ゼロ魔原作に近い世界では『俺様無双』は不可能だと思うのですが。

 尚、この『蒼き夢の果てに』内の主人公の周りの人外に付いては、虚無の加速以上のスピードで戦闘を繰り広げている心算です。
 大気すらも物理的圧力と成って居る超高速の世界での戦闘ですから、精霊の護りと言う特殊な防御能力を使用しているのです。

 あれがなかったら、身体がすべて燃え尽きちゃいますから。
 所詮、肉体は肉体。人間や普通の生命体を構成する物質と同じ物から出来上がって居ますから。主人公やタバサたちも。
 ついでに、周囲に甚大な被害を与えて仕舞いますから。動いた際に発生する衝撃波でね。

 それでは次回タイトルは『湖の住人』です。
 ……言って居る傍から危険な内容を予感させるタイトル。 
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