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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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百足巨人の猛攻

スリュムヘイムのダンジョンは全四階層で、残り二層。ユイによると第三層は第二層の七割程の広さ
第四層はほぼボス部屋だという

「リーファ、あと時間はどのくらいだ?」

「ん……一時間半くらいかな?」

リーファが自分の首に下げたメダリオンを見つめてそう言った
メダリオンに点る光が消えたときがタイムリミットらしい

「フロアボスが残ってるとしたら後ボスは三層とスリュムの二体だな」

「そう考えると結構時間が危ないね」

「……まあ、考えても仕方ないだろ。仕掛けはユイのナビゲートに従って突破すれば最短距離で行けるだろうしな。楽しむぞ、ユイ」

「わかりました!」

肩に乗ったままのユイの頭を撫でる

全員で一つ頷くと第三層へ進んだ
フロア自体の面積は少なくなっているらしいが、第三層は道が狭く、しかも曲がりくねり、無数に枝分かれした道や嫌らしい罠、時間を無駄に消費させるような仕掛けが行く手を阻み、普通に探索していれば第二層以上に時間がかかるであろうと予想できた

……あくまで普通ならばだが

俺達にはユイがいる
最短距離のルートがわかり、罠の配置やタイプ、解除方法が筒抜け、仕掛けなんかはすべて答えがわかっいる
思考なんてする必要は存在せず、ただユイの指示に従って機械的に片付けるだけ
中ボス戦もあったが、火力がインフレしているこのパーティの前に、壁にもならず、地面の染みとなる始末
結果、二十分弱でボス部屋まで到着したのだった

「なんか……冒涜的だったな」

「時間があればねー……」

なんとも言えない気分になりながらボソリと呟くと、それに反応してユウキもぼやく
心なしかしんなりしているし

「あはは……じゃあバフいくよ」

「私も手伝うね」

最近苦笑いが増えてきたアスナが苦笑いを浮かべて呪文を唱え始める
同時にリーファも呪文を唱え始め、数分後には戦闘準備が完了した

「じゃあ、いくよ」

「戦闘開始だね! このやるせなさ。ぶつけるよ!」

ユウキ、それはさすがに八つ当たりにもほどがあると思う

そんなツッコミを脳内で入れつつ、開かれた扉から中を覗き込む
それなりに広い広間の向こうの端。固く閉まった次層へ続く階段が奥にあるであろう扉の前に陣取っていたのは第一層のフロアボス、サイクロプスを上回るほどの巨体
上半身はオーソドックスな巨人と言えるだろう。普通の人間を巨大化して体色を変えただけの姿
しかし、普通ではないのは下半身だ
左右に大きく広がった下半身。そこには各五対、計二十本の足がついていたのだ

……分類的には多足類でいいのだろうか?いや、それ以前にこいつは脊椎動物だろう
なんというか……ゲームとはなんでもありだな

何年もゲームに身を投じていてなにを今更、という話なのだが、慣れないものは慣れない

「行くぞ!」

「俺様がミンチにしてやるぜぇぇぇ!!」

「クライン、うるさい。ペーストになれ」

クラインの雄叫びに文句を言いつつ、剣を鞘から抜いて走る
対する巨人は足を地面に落とすと、地面がせりあがり、巨人が掴んで引き抜くと、それは槍へと姿を変えた
頭上で二、三回ほど回すと巨人は準備ができたらしく、巨大な雄叫びをあげた

「おりゃぁぁぁ!!」

クラインの気合いとともに放たれた居合斬りが巨人の持つ槍とぶつかった
結果は、クラインの負け
弾かれて十数メートルほど後ろに滑るクライン
そこに追撃の突きが放たれた

「っ……重い……」

クラインの前に割り込んで突きを受け流す
線による攻撃の斬撃とは違って突きは点による攻撃だ
俺が得意とする受け流しは相手の攻撃に剣を添わせ、徐々に力を加えていって、僅かな力で軌道を変えるものだ
故に突きには使用しにくい
少なくとも俺はできない

やむおえず槍の先を払うように軌道を変えたのだが、その際に発生した衝撃が大きく思わず声が出てしまう

「わりぃ、助かった!」

「礼なんて、してる、暇なんか、ないだろ!」

縦横無尽に振り回される槍を逸らし続ける
衝撃は最小限に軽減しているはずなのに、気を抜けば腕が弾かれて死に体を晒しそうなほどの衝撃が腕や剣に走る

後ろでポーションを飲んでいるクラインに切れ切れながら文句を言いながらも時間を稼ぐ

剣撃の音が聞こえることからキリトたちも攻撃しているのだろう
ここは俺が耐えなければ誰が耐えるのだろうか

恐らく、メンバーで最も継戦能力が高いのは俺だろう
キリトやクラインはパリィメインだし、ユウキやアスナは回避メインだが、こちらもまたパリィを織り交ぜる
衝撃を最低限に抑えられる受け流しを操る俺でさえこうなのだ
パリィで防ごうものなら力に負けてそのまま斬られるオチが見える

「リン、スイッチだ!」

「無理だ。クライン、お前は、足の方に、回って、くれ」


回復を終えたクラインが俺にスイッチを宣言するが拒否する
理由は前述の通り
クラインでは抑え切れない

「……チィ、死ぬなよ!」

「お前こそ、ペーストに、なるなよ?掃除するのが、面倒だ」

自身が受けきれないのは先程こいつの攻撃を受けてみて重々承知だったのだろう。悔しそうに顔を歪めているが否定の言葉が一つも出てこない
クラインもこんな性格だが、アインクラッドでは一握りの猛者だったのだ。敵と自分の戦力の分析はおてのものである。そうでないと生き残れない

「はっ、言ってろ。ラストアタック盗られて泣きべそかくんじゃねぇぞ!」

捨て台詞を吐いてキリトたちの加勢に向かうクライン
なんだかんだで気のいいやつなんだよな……女にはモテないが

「アスナ!」

「うん、回復いくよ!」

スプラッシュダメージでレッドゾーンにまで減っていたHPをアスナに回復してもらう
ポーションを飲んでいる暇など存在しない
故にアスナからの回復に頼ることになる

「アスナ、任せた」

「わかった。絶対にクリアしようね」

「言うまでもない」

絶妙なタイミングで飛んでくる回復魔法
アスナの戦闘判断力は飛び抜けている
背中は任せていいので、俺が今回するべきことは、巨人の攻撃を受け切ることだ

話している間も断続的に続いていた斬り払いがいきなりピタリと止まった

「下がれ!」

足を撓ませているのを見て、次の行動を予測した俺は叫びながら自らも後ろに下がる
俺の指示に全員が迷うことなく下がろうとすると同時に巨人が跳び上がった
そして、落下した

強い揺れと共に地面から大量に飛び出してきたのは鈍く輝く氷の槍の林

事前に俺の言葉で下がっていたため、誰もその速贄にはならなかったものの、背筋に走る冷たいものを抑えることはできない

しかし、巨人の攻撃はこれで終わりではなかった

「まだ、終わってない!?」

「やべっ!?」

巨人は手に持つ槍で生えている槍の林を一閃
根本から斬られた槍は重力から解放されたかのように宙に浮かび上がり、高速で全方位に射出された

「くぅ……っ!!」

かわす暇もなかった上に軌道を変えるとさらなる二次災害を呼びそうだったため、剣をクロスし受け止める

保有エネルギーが凄まじく、かなりの距離を削ってようやく動きを止めた
俺のHPはだいたい三割ほど消え、他のメンバーは少なからずダメージを追っている
直撃を受けたであろうユウキとリーファのHPはレッドゾーンに突入している

巨人のHPはだいたい残り二割ほど
あの落下で自身もかなりの衝撃を受けたのであろう。すぐには動けそうにない

しかし、それも時間の問題であろうし、なにより巨人は槍を量産できるのだ
今、手に持つ槍を投げてくると考えるべきだ

「アスナ、シノン。援護頼む」

「わかった。すぐにみんなを回復させるね」

「任せて」

だいぶ離されてしまった距離をダッシュで詰める
俺が向かってくるのを見た巨人は手に持つ槍を俺に向かって投げた

俺はそれを跳び上がることで回避
石突きを蹴ってさらに加速する

投槍が俺の足止めにもならないと悟ったのか巨人は一言吠えると先程よりも短い槍を二本、地面から抜きとった

「双槍か……。キリト、あまりもたないぞ!」

「わかった。全員、ソードスキルを解禁! 押し切るぞ!」

「その言葉、待ってたぜぇぇ!」

双槍。剣に比べて脆い槍を二本持つという一見して愚の骨頂に見える戦術だ
剣よりも槍は長いために双剣に比べ双槍は難易度が遥かに高い
しかし、使いこなすことができれば双剣をさらに上回るリーチから凄まじい手数を実現できる超攻撃的な戦術だ

双剣との相性は双槍の方が絶望的なレベルで有利
敵の技能レベルはわからないが、仮にもボスが最後に出してきた技能となると、ミスに期待するというのは無理がある

対双槍ならばガチガチに固めた盾戦士か重力級の武器を持った重戦士が望ましいというのに、俺達の中でそれを満たす人物は今頃、接客の真っ最中だろう

「……ふぅ……」

文句を言っても始まらない。当たって砕けるくらいの心構えでやるか

巨人の猛攻は斬り払いから始まった
斬り下ろし、斬り上げ、薙ぎ払い、多彩な軌道を描いて先程よりも密度を上げて迫ってくる凶刃を剣による受け流しの他に鋼糸や魔法を交えてかい潜っていく
HPが凄まじい勢いでガリガリと削れていくが、後ろから飛んでくる回復魔法でそれが押し戻される

辺りを火花と風に巻き上げられた鋼糸の切れ端が宙を舞い、高エネルギーの塊が空を斬り裂く

金属と金属が擦れる音や風圧によって発生する風の音が辺りを埋め尽くす

そんな死のロンドもやがて終演を迎える

キリトたちの放った多段ソードスキルが巨人のHPを音もなく削り切ったからだった
「……さすがに疲れたな」

集中していたがために体感時間は実際の何倍にも引き延ばされ、正直俺には何時間も戦っていたような気がするが、実際の時間は十分程度だそうだ

「お疲れ様、リン」

「リン、凄かったよ!」

「ああ、ありがとう」

後ろから寄ってきたシノンが軽く肩を叩き、前から走ってきたユウキが興奮覚めやらぬ様子ではしゃぐ

元気だな……

「リン、大丈夫か?」

「いや、もう布団に潜り込んで寝たいくらいだ」

「……大丈夫そうだな」

どう見たら大丈夫なのか小一時間ほど問い詰めたい。お前の目が節穴かどうかも含めて

「だってリンってさ。本当に無理なときは無言で消えるよな。50層のボス戦の時とか」

「……」

それは知らなかった 
 

 
後書き
前話との投稿時間の差、一日しかないんだぜ……蕾姫ですw

この話ですが、なんと四時間ほどぶっ続けで書き切りました
作業用BGM(授業)を聴きながら机の下でポチポチと
指が痛い……

さて、本編に話を移しますが、今回の敵さんは原作でサイクロプスと同じく省かれてしまった百足巨人さんです
ちなみに原作より大幅に強化されています(当社比二倍以上)。キリトやクラインだとタゲを取ったら最後、文字通り瞬殺されますw
火力が桁違いで初撃で崩され、二撃で確殺されます

そして後半の双槍。イメージが完全にFate/Zeroの輝く貌お兄さんでした
床から生えるのは赤い弓兵イメージ
そして投げるのは犬兄貴……一体、何フーリンなんだ……

ちなみに双槍云々は私個人の考えです。異論は認めますが反論は認めません

百足の足が最大の特徴のはずなのに戦闘中、全く出てこなかったのは一人称故です
リンはずっと正面と戦ってましたしね
キリトたちは足による突きとかを弾いていたんですよ?こちらはそんなに火力ありませんから

ちなみにラストアタックはユウキです。マザロザが炸裂しました
クラインェ……

次回は謎の美女(笑)拾ってスリュム戦かな?

一話で終わるだろうか……?無理だな

感想その他お待ちしていますね。ではでは 
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