ニュルンベルグのマイスタージンガー
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第二幕その二十一
第二幕その二十一
「躊躇、転倒もあろうとも」
「ですから院長さんも丁度お相手を」
「名誉も職も品位もパンもかけて」
「全てではないですか」
「そう、全てを」
かなり意固地になってしまっていた。
「乙女も我をこそ選び乙女も我をこそ選び御身等の喝采を得んことを」
「そうですか。まあ頑張って下さい」
「応援ということですかな」
「少なくとも反対はしません」
またザックスは言ってきた。
「努力はいいことですから」
「全く。貴方には何かというと色々ありますな」
不機嫌そのものなのはそのままだった。ところがそんな話をしているとここで先程よりさらに酔っている徒弟達が来たのだった。
「夜遅くに随分歌っているのがいたな」
「ああ、こっちだな」
「そうだな。こっちだ」
へべれけになりながら来てそれぞれ言うのだった。
「確かこっちだ」
「一体誰だ?」
「近所迷惑だぞ」
「全く。騒がしいな」
そしてダーヴィットも家から出て来て目をこすりながら言っていた。
「誰なんだ、全く・・・・・・ん!?」
ここでポーグナーの家の窓にマグダレーネがいることに気付いた。
「あれはレーネじゃないか。それに」
その下を見る。そうして顔を見る見るうちに紅潮させるのだった。
「誰だあいつは、レーネに言い寄っているのか!」
そうして我を忘れて飛び出た。マグダレーネもそれに気付いてあっとなる。
「大変、本当に出て来たわ!」
「やい、こら!」
「こら!?」
「誰だ御前!」
こう言って何も知らずおっとり刀で振り向いたベックメッサーをいきなり殴り飛ばした。見事なアッパーカットで身体をのけぞらすベックメッサーだった。
「うわっ!」
「御前か、レーネを!」
「レーネ!?何を言ってるんだ?」
「しらばっくれるなこの野郎!」
何が何だかわからないベックメッサーをさらに殴り飛ばす。アッパーの次はストレートだ。
「よくもレーネを!」
「だから何だというのだ!」
「誤魔化すつもりか!」
「誤魔化すも何もだ!放せ!」
「ああ、放してやる」
掴み掛かってもいたがここで手を放すダーヴィットだった。
「ただしだ」
「ただし?」
「手足をばらばらにしてからだ!死ね!」
「だから何だというんだあんたは!」
「成敗してやる!」
「何だ成敗だの何だのと」
「おい、何をしているんだ?」
徒弟達だけでなく騒ぎを聞いたマイスター達まで出て来たのだった。皆寝巻きと普段着をごちゃ混ぜにした訳のわからない格好になっている。
「喧嘩か?」
「いや、そんなものじゃないぞ」
「おい、何だ何だ?」
「騒ぎが起こっているのか?」
町の皆が出て来た。そうして口々に言い合うのだった。
「喧嘩か?」
「酔っているのか?」
「あそこで喧嘩があるぞ」
「何なんだ、あいつ等は」
ここでそのダーヴィットとベックメッサーに気付いたのだった。
「やけに暴れているけれどな」
「何をしているんだ?」
「だから喧嘩だろ」
「それはいかん!」
ここでやっと気付く者もいた。
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